私は怪我もしてないということで特にマダムのお世話になることなく点数を見ることが出来た。
採点者は5人。三校の校長と、バグマン、クラウチ。10点満点の中でそれぞれが点を出す。
ルード・バグマン──10点
クラウチシニア──8点
アルバス・ダンブルドア──6点
オリンペ・マクシーム──9点
イゴール・カルカロフ──7点
1番低いのが己の所属する校長だと言うのは納得いかなかったけど、バグマンがダンブルドアに聞いてくれた。
「うむ、無傷の勝利、圧倒的な速度、みごと、あっぱれとしか言いようは無い。しかしながら、ミリ、お主は杖を手放し、ドラゴンに手綱を全て渡した。ドラゴンの判断に全てを任せた。──お主ならもっとやれる、そうじゃろう」
そう言われてしまえばぐうの音も出なかった。
まぁもっとも、僅差で1位を獲得したのだけど。魔法生物のスペシャリストとしては?完璧には程遠い見せ方だったかも知れないけどね?年齢のハンデを他の三人に与えているのだから、私がやるべきは善戦ではなく圧勝以外取れないよね?
「ダンブルドア……目にもの見せてやるから覚悟しておきなさいよ……!」
「いや待て、待てミリ、冷静に、冷静になるんじゃ。お主の望む覚悟は並大抵ではすまん」
課題が終わった私は色々と用事を済ませ、唯一怪我をしたセドリックのお見舞いに軽く行ったあとクリフィンドールの談請室に戻ると、歓声と叫び声が出迎えた。山のようなケーキ、大瓶に入ったかほちゃジュースやバタービールが、どこもかしこもびっしりだった。
リーがドクター・フィリバスターのヒヤヒヤ花火を破裂させたあとだったので、周り中に星や火花が散っていたけどね。
「糞まみれの英雄ミリが帰ってきたぞ!」
「おかえり!ドラゴンに乗るだなんて、頭イカれてるな!もちろん褒めてるぜ」
「はいはい、ありがとう」
口々に私を褒め称える先輩たちに軽く挨拶をして、私はハリーの横に座った。
「ねぇミリ、この金の卵が次の課題なんだよね?」
「うん、そうみたい。ハリー可愛いわね、課題中もハリーの顔しっかり見えてたわ、応援ありがとう。おかげで力が漲るもの」
流石に疲労した体をぐるぐると解せば、今度はハーマイオニーが不思議そうな顔をして私を見た。
「あら、ミリでも疲れるのね、良かった人間で」
「ありがとうハーマイオニー。そうなの、流石に疲れたわ。一日に5匹のドラゴンを相手するのって体力的に厳しいわね」
「…………ん?」
「流石の私も疲れるわよ?」
「ごめんなさい、今引っかかったのはそこじゃなくて5匹のドラゴンって所」
あーなるほどね。私は指折り数えてみた。
「まずはノーベルダ、それからハンガリーホーンテール」
私は机の上にホーンテールのミニチュア模型を置いた。
「それからウェールズ・グリーンにチャイニーズ・ファイアボールに、セドリックのスウェーデン・ショート・スナウト」
コトコトと机の上に置けば精巧な作りに惚れ惚れする。
「──ほら、5匹」
「どういうこと!!!???」
「バグマンとドラゴン使いにお願いして会えなかった子達にも合わせて貰ったの。ほら、一応私もドラゴン使いの資格は持ち合わせているし……」
興奮して盛り上がりすぎて、飛び跳ねの筋肉痛だ。
あの肉体美、ドラゴンの鱗、どれをとっても最高。
「ねぇ、そんなことよりミリ、これ開けてみてよ」
「ちょっとロン、ミリは自分一人でヒントを見つけることになってるのよ」
まぁ開けるだけなら問題ないでしょう。
そう思って金の卵の周りにぐるりとついている溝に爪を立ててこじ開けた。
──キーーーーーッ!!!
途端に金切り声の爆音が鳴り響いた。
皆が耳を塞ぎ、双子の片方が『黙らせろ!』って叫んでいる。私はひとしきりその声を聞いたあと、バチンと卵を閉じた。
「な、長かった……永遠に続くかと思った」
「性格が悪いぜミリ・コワルスキー!」
グリフィンドールの生徒たちがブーブー文句を言う中、私は金の卵を持って外に向かおうとした。
「どこ行くの?」
「ドラゴンに卵返そうと思って。本物の卵はドラゴン使いが保護しているだろうけど、この卵もドラゴンの子供だからね」
「でも、その卵がミリの次の課題のヒントなんじゃないの?」
ハリーの心配する顔は間違いなく天使です。
心優しい子に育ってくれて、私は本当に幸せものだわ。リリー、見て、私たちの子、すごく天使。
「大丈夫、課題の内容はわかったから」
「はい!?」
金の卵からマーピープルの歌声が響いた。
探しにおいで声を頼りに
地上じゃ歌は歌えない
探しながらも考えよう
われらが捕らえし大切なもの
探す時間は一時間
取り返すべし 大切なもの
一時間のその後はもはや望みはありえない
遅すぎたならそのものはもはや二度とは戻らない
私は謎解きが苦手だけど、
それから大事なものを取られちゃうから、紛失の危険性あり。
うーん!分からない!
とりあえず卵を返しに戻ろう。細かい事は気にせず行こう。
「「ちょーーっと待て!」」
去ろうとする私をグイッと引き止めたのは双子だった。
「今のでなんで?何がわかった?何をしたの?」
「課題はなんだったんだよ!7年の俺らが分からない内容ってなんだよ!?」
ちょっとうるさいので、私は無視をした。
マーピープル語は人語の進化形態にあるため、慣れれば他の言葉よりは簡単だ。特に爬虫類。
「ミリ・コワルスキー!?お前本当に興味が無い人間に対しての扱いが酷すぎないか!?」
リーもなんか言っているようだけど、私はかわい子ちゃんたちに手を振ってパーティー楽しんでと伝えて去っていった。
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「あら、代表選手3名が揃って何してるの?」
もうじきドラゴンは居なくなってしまうけど、ドラゴンの宿舎に戻ればフラー、セドリック、ビクトール、そしてクラウチシニアにチャーリーが居た。
「お疲れ様デース」
「やぁミリ、無事だと思ったよ」
「三人で、反省会をしていた。だいたい終わったけどね。良かったらミリもおいで」
「お誘いありがとう。是非とも喜んで」
クラウチがいるのは結託して不正をしていない、と証言するための人物なのだろう。私は三人の輪の中にヒョイと入り込んだ。
「チャーリーがあまりにもミリの課題をべた褒めするものだから、最上級生として負けてられなくてね。僕が二人を誘ったんだ。決してキミを除け者にしようとしたわけじゃないよ?」
「ええ、セドリックはそう言う人よ。ところでフラー、スカートどうしちゃったの?」
フラーは苦笑いを浮かべた。
「わたーしの課題は、魅惑呪文で眠らせる方法をとりましたー。でも、鼻息の炎で、スカートはめちゃくちゃでーす」
それで麗しいフラーの姿に儚げな様子が見えたのか。燃えて消えてしまいそうな美しさを内包しているのかと錯覚してしまったわ。ぜーんぶ綺麗。好き。
「僕は、変身術で岩を他の生物に変えたんだけどね。卵を取る時に標的がこちらに移って負傷。顔に火傷だよ」
とはセドリックの言葉。まぁ、仕方ないわよね。
「……ドラゴンの弱点は目だと分かっていたから、結膜炎の呪いをかけた。するとドラゴンが暴れて、本物の卵もいくつか潰してしまったんだ」
とビクトールが言う。
ドラゴンの卵……あぁ……貴重なドラゴンと素材……!
「卵の殻、買い取れないかしら!チャーリー!」
「スネイプ先生が既に買い取ってるからもう売り切れだよ」
「よっっっし!よくやったわセブルス!愛してる!」
元々セブルスに貢ぐつもりだったので問題ない。
「あくまでもスネイプ先生のものだよ、強請るのも程々にね。殻とは言え結構な金額なんだから」
「大丈夫大丈夫、多分資金源シリウスだろうし。もしくは魔法生物の素材ってことで合同金庫の方かも……まぁいいわ。どれになっても幸せハッピーだもの」
セブルスは強かだからきちんと私かシリウスのどちらかにお強請りするに違いないわ。一旦ポケットマネーでしょうけど。
「ところで、ミリは魔法生物に強いのか?」
「ええ、得意分野よ!並大抵の大人達じゃ敵わないと思うの。ニュート伯父さんには流石に負けるけど……」
「危ない目に遭う予想は出来ていたが、ミリが無傷なのは驚いた」
「そうでーすよ!本当に、驚きまーした!」
フラーのお目目が宝石すぎて直視できない。キラキラで脳の奥側の柔らかいところを玉ねぎで突き刺してくるみたいな感じで涙が止まらなくなるわ。
好きとか可愛いとか、そんな単語で済ませていい顔面じゃないんですけど。何より美しいのは顔面じゃなくて姿勢、フラーは本当に、姿勢が美の集合体……!指先ひとつまできちんと整列しているような美しさ、猫背では横に立つことを許されないそんな王家の風格を醸し出してるわ。
「でも、皆ぶーじで、良かったでーす」
「──おまんをしぬきでまもらせていただく」
「コワルスキー現象起きてるよ、ミリ」
私がフラーの騎士となる。これ絶対ね。
「出涸らしみたいな言葉だけど、僕も4人が五体満足で本当に良かったよ」
「あぁ、同意だ。……しかし、次の課題のことも考えなければ。2月までに課題の内容と解決策をこの卵から探し出さなければならないな」
ビクトールがヒョイと持ち上げる。
「試しにいくつか魔法をかけてみたが、まだ分からないな」
「気長に解くと言っても、来月のこともあるし、2月まであっという間だろうね。せめて1月に入るまでには見つけだしたいところだよ」
「引っかかーりすら、みつけてませーん。あまり、情報共有もできませーんし……、難航しそうでーすね」
「この金切り声が唯一のヒントだが」
金の卵をバチンと開いた。
探しにおいで声を頼りに
地上じゃ歌は歌えない
われらが襲い来る前──
「──ビクトール!閉めて!」
「っ!?」
私の大声にビクトールは反射的に金の卵を閉じた。
「す、すまない。うるさかったか」
「いいえ、うるさくは無かったんだけど、これ以上聞くと公平を期すことが出来なそうだったから……」
これ、歌の内容個人でちょっとずつ違うね?
その気持ちを込めてクラウチに視線を向ければ、クラウチは『お前まさかマーピープル語も出来るのか!?いや、そうだよな、比較的簡単だもんな』って視線を向けてきた。
「クラウチ、貴方どれだけ優秀なの?」
「やめろ、馬鹿にしてるようにしか聞こえん」
珍しく純粋に褒めているのに。失礼な。
「そういうことだから、クラウチ、返して来てもいいかしら?ホーンテイルに」
「……まぁ、忘れなければ」
「ありがとう」
私は三人と向き直った。
「…………ねぇミリ?」
「なぁにセドリック」
「もしかしてもう解けてる?次の課題のヒント」
「…………………得意分野なのよ」
セドリックは頭を抱えてしまった。あーあ、お前のせいです。お前よ、クラウチ。