─矛盾─   作:恋音

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4-17.クリスマスパートナー

 

 職員たちはみな、第二の課題について顔を突合せて話し合いをしていた。

 

「「「「はぁ……」」」」

 

 ちなみに、やかましいのでシリウス・ブラックは少なくとも呼ばれていない。

 各校の校長やホグワーツの教員。そしてバグマンやクラウチといった三大魔法学校対抗試合に関係する面々が集まっていた。

 

「コワルスキー、なんとも不思議な子だ」

「あぁ。まさか魔法生物の資格をいくつも持っている子だったとは……ドラゴン使いだと言うのには驚いた。学生が、いやしかもホグワーツに在籍中に取るのは期間的に難し……」

 

 バグマンとクラウチが『ドラゴン使いの資格試験って授業中に行われるよね?』みたいな話をしたところ。ホグワーツの校長であるダンブルドアは頭を抱えた。

 

「…………入学前じゃよ、取ったの」

「「「入学前!??」」」

 

 ホグワーツの教員以外は驚愕に染まった。

 

「……それより第二の課題の、だいじなものですが。Ms.コワルスキーのだいじなものと言うのはどうする?」

「セブル──」

「──お断りします」

 

 ホグワーツ勢から『お前じゃん』って視線を向けられるが、スネイプは即座に否定した。

 

「……。要は、コワルスキーを操縦出来、こちら側の意図も拾え、それでいてコワルスキーがきちんとルールを守れるような『だいじなもの』を選択させれば良いのであろう。我輩に任せていただきたい」

 

 巻き込まれたく無いが故に全力でサポートをする涙ぐましい努力に、ダンブルドアは苦労を感じて涙を流した。心の中で。

 

「ヒョホッ、しかし、ミリ・コワルスキーが魔法生物のジャンルに置いてスペシャリストという部分は、一切変わりませんぞ」

 

 ここで口を出したのは──シルバヌス・ケトルバーン。片腕があるうちに、そしてミリを教えないうちに引退した魔法生物育成学の教師だ。

 ホグワーツは、急ぎ魔法生物攻略対策の対策としてケトルバーンを呼び戻した、いわゆる特別講師。

 

「課題は、水中でしたかな」

「水中人。……さて、ミリ・コワルスキーは水中の魔法生物に強いか弱いか」

「強い」

「……強いだろう」

「セブルス・スネイプの即答なら分かるが、Mr.クラウチもか」

 

 クラウチも静かにうなずいた。

 水に浸かることなくマーピープルの歌声を解読できた時点で、水中の魔法生物も思う存分実力通りの力を発揮することは、まあ間違いないのだ。

 

「では、ミリに与えるべきものは、ハンデじゃな」

「でもダンブリードール?ミリが、まだ四年生だといーうことは、変わりありませーんよ」

「マダム・マクシーム、そうは言うがな。第三の課題まで魔法生物の出番は、非常に多い。ミリ・コワルスキーのみが有利になる。それはその、ホグワーツとして、少々フェアプレイに欠けるのでは無いかとの……」

「だがダンブルドア。それに関しては私もマダムと同じ意見だ。あくまでも有利の科目とは言え、高学年の2学年差は大きい。水中で探索する解決策も、4年生には荷が重すぎるだろう」

 

「(その年齢差も、ほぼ意味が無いハンデじゃから言っておるんだが……参ったのう……)」

 

 ダンブルドアやマクゴナガルは特にだが、ミリが卒業と同等の知識や資格を有していることを知っている。そのため、ミリにハンデを与えたいのだ。もちろん、負荷の方を。

 

「実技、じゃな」

「そうですね……」

 

 

 

 ==========

 

 

 

「こんばんは……クリーチャーはお前のような穢れた血めに……世話をしなければならないのです……」

「……こんばんはクリーチャー、屋敷しもべ妖精のプロの腕にかかれるなんて幸せね」

「レギュラス様の言いつけでなければ墓から蘇った人未満の小娘など……」

「えっレギュラスが♡」

 

 クリスマスの夜、パーティーの準備のタイミング。私はクリーチャーが逢いに来てくれたことで

 うふふ、屋敷しもべ妖精で構ってくれる子なんて、ホグワーツのキッチン以外ではほぼ居ないから嬉しいわ。ドビーはハリーばかりで全然相手してくれないし。いや、むしろハリーしか見えないだなんて審美眼に優れているのよね。

 

「それでは着替えを始めます……」

「はぁい」

 

 この部屋で、でいいのかな?と首を傾げるとクリーチャーはこくりと頷いた。

 

 クリーチャーは指をパチンと鳴らすと私にドレスを着せ始めた。グルングルンと体が回る。

 

 

 化粧の筆が踊り、櫛がうねり、ドレスとアクセサリーがみるみるうちに付けられていく。

 

 

「終わりました」

 

 姿鏡を見ると、そこには綺麗なドレスを身にまとった私がいた。

 

 胸下で切り替えられたエンパイアライン。

 ビスチェは茎のようにまっすぐ、どこまでも潔癖な直線。

 白ではなく、光を抱いたような柔らかな白で、動くたびに内側から淡い緑が滲むように見えていた。

 

 裾はふわりと落ち、空気の層を滑るように揺れる。ヒラヒラと広がるそれはしなやかに垂れる花弁型ラインで、まるで百合の花弁を身にまとっているみたいだ。

 

 髪は崩し気味のギブソンロール。花の根元のように柔らかくまとめられている。

 耳元にはしずく型のパール。朝露のように、揺れずに静か。

 胸元に飾りはないけれど、腕には白金のキラキラしたブレスレットがある。

 

 頬には血の気が少し、唇の中心だけに花芯のような紅。

 

 

「……すっっごく、綺麗だわ」

 

 流石私。

 己の顔面は割と私の美的感覚では好みの中に入っているのだけど、ここまで惚れ惚れする姿は見たことないかも。

 

 ほう、と浸っていると、お礼をしていないのを忘れそうになっていた。

 

 

「クリーチャーちょっとまっててね」

 

 私はスーツケースの中にしまったクッキーを取り出した。

 

「これ、レギュラスも好きなアールグレイクッキー。クリーチャーにあげるね。こんなに素敵にしてくれるだなんて、最高の気分だわ。メリークリスマス」

「……穢れた血が、作った、ものなど」

「うふふ。でもレギュラスが好きなの。ね、それなら受け取ってくれるでしょ。いーい、あくまでも、貴方にあげたのよクリーチャー。クリーチャーが大事な聖夜に誰と食べるかは、分からないけどね」

 

 クリーチャーは私のクッキーを受け取ると、両手に乗せて見つめ、一瞬僅かに頭を下げたあと姿くらましで消えてしまった。

 

 

 

 

 

「──ミリ?貴女、すっごく素敵だわ」

「ありがとう、ジニー。私も同じことを思っていたの。素敵に仕上げてもらったわ。もちろん元がいいのだけどね」

 

 ジニーに挨拶をして、私はジニーの姿を眺める。

 ピンクと緑の淡い色のレトロなドレス。前髪は後ろで結んで、その艶やかな髪はシルクのように美しくて。眼福そのもの。

 

「それよりジニーこそ、すっっっごくすてき。ヨダレ出ちゃうわ。どうしましょう、貴女の魅力が留まるところを知らないわ」

 

 ゆ、誘拐されたりしないかしら……。

 

「ミリ〜!」

「フラー!あぁ、女神……」

 

 フラーのドレスは、とてもシンプルなドレスだった。胸元の花と柔らかい生地のグレーのドレス。キラキラとスワロフスキーが輝いているけど、フラーが着るとその輝きでさえ霞んでしまうわ。

 

「ミリはいつも素敵な服を着てるけど、貴女の好みでは無さそうね」

「チョウ……っ、どうして、そんなに素敵なの!!??」

 

 びっくりした、チャイナドレスだった。体のラインがスッキリ出るマーメイドのチャイナドレスは、普段のローブ姿とはうってかわってぐっとした色気が出ている。あ、あまりにも美しさが大渋滞して混乱してきたわ。

 

 

「セドリック、セドリック、顔を見せて」

「え、なんでだい」

「あわ、落ち着く顔」

「……褒められた気にならないんだけど?」

 

 セドリックの姿を見て脈拍は正常に戻った。ふぅ、一安心。

 

「ミリ。素敵な、装いだな」

「ビクトール。ビクトールも、素敵よ」

「ありがとう。……君にパートナーを断られたのが、今となってはとても悔しい」

 

 実はパーティーのパートナーを決めるにあたって、ビクトールに申し込まれていたのだ。

 お互い代表選手だし、何より私はパートナーが既に決まってるから余計なことをするなとお達しがあった身。

 丁重に断らせていただいた上で、パートナーにおすすめの人を何人か紹介したのだ。

 

「そうだったんだ?」

 

 セドリックが首を挟む。

 

「四年生未満の子はほぼパーティーに参加できてないから、折角ならと。クィディッチのできるちょーぜつ可愛い女の子をプレゼンさせてもらったわ」

「……。ジネブラが素敵なクィディッチ選手ということは、同じ選手として否定はしないよ」

「でしょう!?」

「でも、ミリって非常に残酷。人の心がない。差別主義者」

 

「こんな言われることある!?」

 

 私セドリックに何かしたかなぁ!?

 

「もー。可愛くないセドリックは置いておき、ロジャー、貴方大丈夫?」

「……ゲボ出そう」

 

 フラーのパートナーとして幸運にも七年のレイブンクロー生が選ばれたのだ。女泣かせのイケメン野郎なので私は嫌いなのだけど、フラーのエスコート役に選ばれたのなら仕方ないわ。

 

「イケメンにイケメンにイケメン、はー。好きじゃないわ。貴方達のパートナー私が奪ってもいいかしら」

 

 三人の可愛くて美しくて最高に幸せを送り届けてくれるクリスマスの精霊達の手を握ると、ビクトールが何かに気付いた。

 

「ミリ、ヴぉくらはいいんだけど、君のパートナーは、どこだ?」

「さぁ?」

 

 誰なんだろう。

 

 私がそう首を傾げていると、扉が開いた。

 

 

 こつり、こつり。

 ドレスローブが翻し、光沢のある革靴が床を鳴らす。

 

 ふわりと優しい茶色の髪は、今だけはきっちりとまとめられていて、優しい柔らかな目元は困ったように目尻を下げている。

 キュッと結ばれた袖口から伸びる骨のラインは造形美。

 血管の浮き出た手は細長く、大きい。

 

 顔の傷を指でかきながら、美しくて可愛いを両立させたその男は国民全員が惚れるしかない声を発した。

 

「おじさんが、若い子の集まりの中に入るプレッシャーってすごいよねぇ」

「──結婚してください!!!!!!」

「嫌です」

 

 リーマス♡♡♡♡♡♡愛してる♡♡♡♡♡♡♡

 

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