─矛盾─   作:恋音

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4-19.ハンディーキャップ

 

「──急遽すまぬが、第二の課題は杖のみでの参加で、道具の持ち込みは無しじゃ」

「終わった………………」

 

 突如告げられたその言葉に、私は膝から崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

「シケたツラしてるわね」

 

 私が女子トイレで項垂れていると、マートルがやってきていた。

 

「マートル、ねぇマートル、魔法薬学なしでどうやって水の中で息が出来るようになるかしら……」

「酷いわ、私の前で『息をする』って言うなんて、私は出来ないのに……ぐすん……」

「──私も出来ないでもいい状態になるべきかな」

「──最大級のトラウマよ、やめて」

 

 本当にこまっていた。

 

「はぁぁぁぁあ…………」

 

 まさか、また杖以外の持ち込みが禁止されるだなんて

 

「もちろん、泡頭(あぶくあたま)呪文が最適解なのはわかってる、分かってるのだけど、使えるわけが無いじゃないそんな高等な魔法を!」

「知ってる。何年の付き合いだと思ってんの?」

「……嘆きのマートルが嘆いてくんない」

「嘆いてるわよ。──あぁ!どうしてこの馬鹿な子はわかってくれるの!杖振る魔法が使えないなんて!とってもとっても、悲しいことだわ」

 

 私はバジたんのお散歩のために秘密の部屋の入口である女子トイレに来ていた。

 つ、使えるようになったもん。1.2年生の魔法は……。ところどころ怪しいけど。

 

「全く、あんたがシケてたってあんたがやることは変わらないんじゃない?」

「うん……」

「あなたがやるべきなのは昔も今も、命を大事にすることだけ。もちろん、また死んだら私とずーっと一緒に居てもらうけどね」

 

 そうね、ゴーストになったら永遠に可愛い子探したいし、灰色のレディのストーカーしたいし。

 死ぬことは怖くない。

 でも、また悲しませたり泣かせたりするのは、嫌だなぁ。

 

「100年後ゴーストになった時は、マートル、同室ね」

「……仕方ないわね」

 

 

 マートルは100年で我慢してあげる、と言いたげな表情を浮かべ、掠れた声で返事をした

 

 

 

 そんな将来の進路が決まっても勝敗の進歩はゼロの私。ダントツの癖に結局『水の中に入って課題のものを探す』という断片的な課題を解決する方法を探していた。

 

「絶望してるところ悪いけど見てよミリ!」

「あどうしたのロン」

「じゃーん!クラムのサイン!」

「フラーのサインが欲しい……。出来れば色紙じゃなくて婚姻届に」

 

 杖を振っても振っても上手くいかなくて陸の上で息が詰まって溺れそうになっていたところ、ロンが現れた。

 なんと珍しい組み合わせで、ロンの後ろにドラコもいる。

 

「こんにちはドラコ。最近めっきり話せないから寂しくて仕方ないわ」

「ずっとグリフィンドール生に囲まれてるし、ボーバトンの後ろを追っかけてるから、そうなる。この浮気者」

「はう……っ!」

 

 胸がときめいた。とんでもなくときめいた。

 

「嫉妬してくれたの?可愛くて仕方ないから食べちゃいたい」

「やめろ」

「やめます……」

「君のミリに対する取り扱い、年々スネイプ先生に似てきてない?」

 

 いーやロン、それは違うわ。

 ドラコは内心の不安感や伺いからくる冷たさ。まるでどこまで許されるかを探っているような親子の感覚。

 対してセブルスは自信と呆れからくる冷たさ。こいつならこの程度嫌わないしむしろ喜ぶだろうという信頼の感覚。

 

 このふたつの冷たさには比較にならないほどの尊いさと好きが溢れているのよ!どっちもー!最高にー!愛してる!

 

「あんまりにも可愛いことをされると、本当にどうにかなってしまいそう」

「ドラコ、こいつの言うことは無視しようぜ?やんなっちゃう」

「ところで二人揃ってどうしたの?ロンがサインの自慢に来たのは分かっているんだけど」

 

 すると、ドラコは数枚の原稿用紙の束を取り出した。

 

「これ、来週出す選手インタビューの原稿だ。お前以外には全員聞いて、これで承諾を得たから、お前にも聞きに来た」

「あぁ!ギルデロイがインタビューしてくれたやつ?原稿出来たの?」

 

 受け取って読み進め、フラーの所を二週したあとドラコの手元に戻した。

 

「いいと思うわ!ギルデロイのセンスにケチは付けられないもの。……というか、あの派手な女の人はどうなったの?」

「……ブラックが」

「あ、ごめんなさい。聞かなくていいかも」

 

 不興を買っちゃったのかなぁ。

 可哀想に。

 

「絶対どこかで嗅ぎ回るタイプだから、インタビューとかは受けないようにって父上が」

「ルシーに言われたのなら仕方ないわ」

 

 ギルデロイ以外のインタビューには極力受けないようにします。

 

「ま、そういうこと。ドラコにくっついて行ったのと、ミリが紹介してくれたおかげで、クラムのサイン貰えたって言う話」

「へぇ、良かったじゃない。好きだものね」

「うん!彼って、とんでもなくクールで、やさしくて、最っ高なんだぜ!今度一緒に箒に乗ってみたいなぁ……」

 

 ロンは恋する乙女のように顔を赤く染めた。

 

「第二の課題終わったら一緒にやってみたら?」

「無理無理、眠るドラゴンに話しかけるみたいなもんだよ?」

「簡単ね」

「簡単じゃないから言っているんだ。全く。ウィーズリー、ドラゴンの糞まみれでドラゴンに乗るヤツ相手にドラゴンの慣用句は無意味だ」

「最悪ぅ」

 

 そんな雑談をしていた時、遠くから私の名前を呼んでくる先生がいた。

 

「Ms.コワルスキー!」

「ケトルバーン先生?」

 

 久しぶりに見た顔があった。

 

 さらに言うなら、ケトルバーン先生の後ろにハグリッド、それから臨時講師のプランク先生が揃っていた。

 ちなみにプランク先生というのは女性の先生で、数年に1度見るか見ないか、という先生だ。1年の時に姿を見たのと、7年の時と5年の時に1回ずつ教えてくれたんだったかな。ケトルバーン先生が遠方に出る時の代打でね。

 

「Ms.コワルスキー、聞きたいことがあってな。君は、一体どれくらいの魔法生物の知識がある?」

 

 ケトルバーン先生は私の肩をがしりと掴んで聞いた。ふむ、知識ね。

 

「ニュート・スキャマンダーが書物に書き記した魔法生物は全て知識として入れてあるわ」

「ゲェ」

「まぁ実際関わったことのある生物はすごく少ないけどね……。あっ、ハグリッドがこの前連れてきたユニコーンの幼獣、本当に神秘的で綺麗で可愛かったわ……!」

「ありがとう、ミリなら喜ぶと思っちょった」

「ドラゴンのことは聞きましたよ。ほんと、貴女エミリー・コワルスキーより凶悪ですねぇ」

 

 プランク先生はかつての私と比べて感心したような顔をした。ふふん、そうでしょう、進化しないなんて私じゃないわ。もっとニュート伯父さんに近付きたいもの。

 

 

「……ふむ。分かりました。ありがとう」

「どういたしまして?」

「この試合が終わったら四人で魔法生物座談会でもしませんか?私ケトルバーン先生とハグリッド先生が子供相手に知識で負けるのを見てみたいんです」

「ホッホッ、プランク先生、それはすこぶる嫌ですな!」

「俺もだな……楽しいっちゃ、楽しいとは思うがな。もちろん」

 

 さーて、楽しみも出来たし。

 

 

 

 課題どうしよう。

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