「ハリー、少し、協力してはくれぬか?」
「は、はい。もちろんですダンブルドア先生」
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もう素潜りしか無い(正解の音)
杖だけの持ち込みしか許されない第二の課題を前に、私は会場に覚悟を決めてやってきた。
寒い、死ぬほど寒い。ピーターが一年の時に教えてくれた魔法が無ければ寒くて凍えるところだったわ。愛してる。
湖の水際に観客席と金色のタレ布で覆われたテーブルガ置かれ、審査員達が着席していた。
審査員席に近い観客席にはハリー達がいる。
教師陣も警戒のためか私たち選手の近くにいた。
「よしコワルスキー、棄権だな!」
「棄権しないんだけど!? いいから貴方は天使のそばに居て!」
シリウスが喧嘩を売ってきたので丁寧に買い付けると、私はフラーとその他の元に行った。
「こんにちはフラー、あとビクトールとセドリック」
「ついでかい?僕らの存在は君にとって不要の何かかい?」
「少なくとも皆におモテになるイケメンたちに振りまく愛想は無いのよ?」
「褒められ、てる?」
「ビクトール、これは一旦褒められていると思っておこう」
「ところで、ダイゾョーブなのでーすか?ミリ、貴女は魔法が苦手と聞きまーした」
「………………聞かないでフラー」
するとバグマンはソノーラスを唱え、拡声器のような音量で言った。
「さて、全選手の準備が出来ました。第二の課題は私のホイッスルを合図に始まります。選手たちは、きっちり一時間のうちに奪われただいじなものを取り返します」
「大まか想像通りだな……」
「だいじなもの、恐らくでーすけど、人、ですよね?」
「僕も同じ意見だ。……チョウの姿が見えないから」
人質かァ。
考えなかったわけではないけど、選手たちの意見は理にかなっている。
「だいじなものにキスをすることが最終上限です。あ、もちろん口ではなく頬でも手でもいいですよ。
では、三つ数えます。いーち、にー、さん!」
バグマンの合図を元に選手たちは変身術や
私の可愛いものセンサーはきっと正常だわ。
ローブを脱いで教師陣の元に行った。
「み、ミリ・コワルスキー?合図は入りましたよ?」
「セブルス」
シリウスの隣で真っ黒な服を着た天使に近付いた。満月草やニワヤナギの薬草の匂いが鼻をかすめる。
「な、なんだコワルスキー。我輩に構わずさっさと行け。寄るな去れ」
「まぁまぁ、そんなつれないこと言わないでよ。今日も可愛いね、愛おし、美し……」
「コワルスキー……」
彼は腕を組んで
「無事に帰ってくるから、待っててね」
私はそのまま彼を引き寄せ、頬にキスをした。
「な──」
「セブルス、逆の人差し指よ」
さーて、頑張るか!
素潜りだけどね。
ローブをシリウスに投げ捨て、私は湖に潜った。
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「(バレ……てる……っ!!!)」
セブルス・スネイプ──の、フリをしたリーマス・ルーピンはダンブルドアに咄嗟に視線を向けた。
ダンブルドア達は天を仰いだ。
第二の課題は持ち込み可能な水中での捜し物からルールを変更し、持ち込みは杖のみに変えられた。
それはフェアではないコワルスキー対策であり、ホグワーツ側の総意だった。実際セドリックなど他の選手は呪文を問題なく使えるが、コワルスキーは使えないため苦しんでいる。
しかし、その改変に反対したのはカルカロフとマダム・マクシーム。第一の課題は得意分野で勝利を譲ってしまったとはいえ、流石に四年生の女の子を相手に、それは無いだろうと。
傍から見れば確かにそうなんだけどなぁ、みたいな気持ちを抱きながらも、ホグワーツ側はこのルールを譲らなかった。
ホグワーツで行う生徒へのいじめにしか思えなかった二人は猛反対をした。
そして妥協点で追加されたルール。
それは──水の中を潜らなくてもゴールする方法がある。という隠しゴールだった。
選手たちの手が届く場所に『だいじなもの』を既に配置しておく。
湖の中でも、湖の上でも、両方だいじなものがあるという救済措置だ。
「(ミリーの天使センサー、半端ないからな)」
マッドアイに化けたクラウチ・ジュニア。
透明マントに隠れた悪戯仕掛け人。
もう、即座に見抜く。
もちろんダンブルドアも、マクゴナガルでさえそれを知っていたので、対策として──『ミリの好みの見た目にミリの好みの人間を入れる』という荒業で誤魔化そうとしたのだ。
つまり。
選手たちのだいじなものはポリジュース薬を飲んでいる。
リーマス・ルーピンはセブルス・スネイプに。
ジネブラ・ウィーズリーはハーマイオニー・グレンジャーに。
チョウ・チャンはアリシア・スピネットに。
ガブリエル・デラクールはマリア・ブロワというボーバトンの生徒に。
これはあくまでも救済措置であり、人質の安全のための策。そのため本人も変化されている者も決して悟られてはならない。
ハリー・ポッターは忍びの地図を持っていた為、決して誰にも見せないように、とダンブルドアに釘を刺されていた。
「おい、スネイプ?」
「……自信がなくなる。ブラック、本当になんなんだコワルスキーは」
「ただの変態だろ。つーかあいつ、魔法も使わずに潜ったけど、ガチで素潜りか」
「……だろうな」
シリウスですら騙し通している変装だ。セブルスの特徴はしっかり把握しており、本人からのレクチャーもあった。
だと言うのに、だというのに!
「(これ、ミリーはひと足早くゴールしたって事になるんだよね……)」
審査員達が頭を抱えながら話し合っている姿を見て、リーマスはセブルス風にため息を吐いた。
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湖に潜ったのはいいのだけど、視界は二、三メートルほどしかない。普段湖に潜る時やスーツケースの水中に入る時はえら昆布や酸素草を齧るから話も出来ない。
息継ぎ無しで潜水出来るのは二分間ほど。
ジャイアントケルプやツヅレグサはあるけど、えら昆布は見つからない。
「ぶはっ!……はー、腹立つ」
マーピープルの気配も感じないから、きっとダンブルドアが何かしらの指示をしているのだろう。
「もういっかい!」
息を大きく吸い込んでもう一度潜り始める。水中は寒くて、流石に手が震えてきはじめた。
──探す時間は一時 取り返すべし だいじなもの
歌が聞こえた。
マーピープルの歌だ。
──時間は半分 グズグズするな 特にお前
私に向かっていったね!!??
「ごぽっ!!!」
思わず空気が漏れた。
マーカス、貴女ねぇ……。
息継ぎでもう一度上がり、私はもう一度深くまで潜って行った。
……みーっけ。
えら昆布だ。
品種改良していない原種だろうから、エラが生えるだけだろうけど。
ジェームズの改良版はなかなか効果が消えなくって、開発者本人は半日は湖にいたかな。しかもホグワーツのマーピープル達と喧嘩していたし。あの時は水瓶に移送してスーツケースの中で効果が切れるまでまって、ケピーにお世話を頼んでいたのを覚えてる。
あくまでも、ケピーが、ジェームズの、お世話をしていた。普通逆よね……。
私は水の上に1度顔を出して、えら昆布を齧った。
「よし、問題なし」
持ち込めないなら現地で収穫すればいいじゃない。私は呼吸というタイムロスが無くなったおかげで、水中を泳いだ。
マーピープルの住居区域にある広場までようやく辿り着く。
あ、場所なら当然知っていたわ。行ったことあるもの。だからダンブルドアは私にハンデをつけたんでしょうね。
「コワルスキー?」
「やっほー、ルアンナ、マーカスは?」
「秘密」
「残念。……それでだいじなものって広場よね?」
槍を構えたマーピープルに話しかけ、広場へ向かうとそこには天使が4人眠っていた。
こ、この美しさで……本物ではないの……?
ガッツリ水草の縄で縛られた4人のだいじなもの。持ち込み不可なのでナイフすら持っていない。
「ルアンナ、槍貸して♡」
「いーや。我々は力を貸さない」
「チッ」
私は水草の根元まで潜った。
「ミリ!」
「セドリック……早かったわね」
「でも制限時間はギリギリだ。道に迷って……」
「正直何も見えないもの。気持ちは分かるわ」
私は思いっきり水草を引き抜いた。
「!?」
「こういう水草は、硬いけど根元はそうでも無いの。水草ごと持ち上げちゃう」
「う、うん。魔法、使わないのかい?」
「使えないのよ」
「でも君なんで水中で呼吸……あぁえら昆布か……もしかして採取したのか?」
「その通りよ」
私は水草に包まれたリーマスの人形を抱えた。
セドリックもそれに習ってチョウを抱える。ジニーとフラーの妹さんの人気は後ね。
「冷たい……早く引きあげてあげないと」
「まぁ、大丈夫よ。水中から出たらこの子任せてもいい?」
「へ?え、うん、いい、けど」
セドリックと一緒にそれぞれの質を水面に押し出した。セドリックはチョウの額にキスをする。
「チョウ!チョウ!起きてくれ……お願いだ……」
「セドリック、陸地に連れていけば大丈夫だから。あとはよろしくね」
「待って!どこに行くつもりだい!?」
「フラーを助けに行くの」
私はそれだけ告げるともう一度潜った。
「コワルスキー、他の人質は持っていかせないぞ。お前が魔法を使えないことは分かっている」
「手の内知られてるってすっごく厄介ね。大丈夫、ルール違反はしないわ」
私は質を置いて別の方向に向かって泳いでいった。
途中、ビクトールとすれ違ったけれど時間もないことだし軽く一言告げてフラーの元へ急いだ。
フラーの場所は正直分からないけれど、可愛い子センサーの導くままに行けば──まぁいるよね。
「フラー!」
「ミリ!どうしてここに、危険よ!」
フラーは水魔、グリンデローに襲われていた。ローブも破れ、ところどころ怪我をしている。
焦っているのか英語ではなく母国語のフランス語で喋っていた。
「フラーこっち!」
私はフラーを背中に呼び、グリンデローを見た。マーピープルにしか飼い慣らせないと言われている魔法生物で、とても攻撃的な子だ。恐らく何匹もいるだろう。
「フラー、グリンデローはね」
「危ない、危ないから」
「
マーピープル語で命令すれば問題ないのよ。
「…へ?」
マーピープルにしか飼い慣らせないというのはマーピープルの武力や文化に従っているということ。
本当は適切な呪文とか、ニュート伯父さんみたいな方法が取れるはずなんだけどね。
私は原始的な方法しか使えないので叫ぶだけよ。
「ひ、引いていく……。ミリ、なーにしたですかー?」
「それは後ね。今はガブリエルちゃん!」
「そっ、そうです!」
私はフラーと水中デートを楽しみながら残された質のところにいく。デラクール姉妹の姿は大変に美しく、わたしはフラーのサポートをしながら彼女を水面まで連れていった。
水面には既にセドリックの姿はなく、審査員席に移動しているのだろう。
「フラー、私は昆布の効果があと30分は切れないから、水中を進むね」
「えぇ、えぇ、ありがとう、ありがとうミリ!」
おっ、ダイオウイカ。フラーの方に来ないように牽制しておこ。
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「──人質は偽物だった!!??」
「ガブリエル……起きないと心配していまーした」
「そっか、なにか間違えたんじゃないかと、良かった……。良かった……」
水中に潜ったまま顔を出すと、三人の選手たちが毛布でぐるぐる巻きにされたまま元気爆発薬の影響で耳から湯気を吹き出しながら驚いている。
フラーは寒さのせいではないレベルの青白い顔をしていたようだけど、ガブリエルの姿を見て涙を浮かべている。
セドリックはチョウの姿を見て安堵したように驚き、ビクトールはジニーが目覚めなくて焦っていたのだろう。深く息を吐いて毛布に潜り込んだ。
「本当に良かった……ガブリエル……」
「ふふっ、冷たいわフラー」
姉妹の微笑ましい感動的で美しい映像をこの目で焼き付けたい選手権、ダントツで優勝しました。
すると、セブルスの服を着たリーマスが私の方へ声をかけた。
「で、君はなんで上がってこないの?」
「えら昆布の効果が消えないのよ。途中で齧ったから」
「あぁ、そういう事。お疲れ様、無茶してないだろうね?」
「もちろん。悲しませたくないもの」
セブルスの服を着たリーマスもとっても素敵ね。普段茶色っぽい服を好んで着ているから、黒の服が露出もしてないのにセクシーにリーマスを染め上げている。
コリン!!!私の代わりに写真を!!!写真を撮っておいて!!!!
するとリーマスは不服そうに顔を顰めた。
「──ところでどうして僕がセブルスに変装しているって分かったんだい?」
「愛」
「えっ、ミリ、人質の場所が分かってたのかい?だからルーピン先生……の人形を僕に渡したの?」
驚いた様子でセドリックが湖を見下ろした。
「少しだけ癖が違うのよ」
セブルスは腕を組んで二の腕を叩く癖がある。けれどそれは、左手の人差し指で2回叩くのだ。
右手は杖を持つためにあけてあるからね。
「レディーズアンドジェントルメン!さぁ、審査結果が出ました。水中人の長マーカスが湖底で何があったかをこまかく話してくれました。そこで、五十点満点で、各代表選手は次のような得点となりました」
バグマンがまたしても拡大された声で宣言した。随分長い話し合いだったけれど、私のえら昆布の効果はまだ消えなかった。
「Ms.デラクール。すばらしい泡頭呪文を使いましたが、水魔に襲われました。しかしMs.コワルスキーの助けを借り無事人質を救い出しました。得点は三十五点」
「ミリ、本当にありがとう。わたーし、貴女がいなければリタイアしてまーした……」
余計なことをしていなかったかな、と不安になっていたけど、フラーは感謝してくれたのでひと安心だ。
「Mr.ディゴリー。やはり泡頭呪文を使い、最初に水中にいた人質を連れて帰ってきました。ただし、無限時間の一時間を一分オーバー」
ハッフルパフから大きな声援が沸いた。
チョウがセドリックに熱い視線を送っていて、イケメンを湖に沈めたくなったわ。
「そこで、四十七点を与えます」
おお!これは高得点!
「Mr.クラム。変身術が中途半端でしたが、効果的なことには変わりありません。人質を連れ戻したのはMr.ディゴリーの次でした。得点は四十点」
カルカロフが誇らしげに拍手をしている。
「最後にMs.コワルスキー。君はね、本当に悩んだよ。まず、本物のだいじなものを見つけた時間は僅か1分。その時点で優勝は間違いなしだ。……そこから潜るとは思わなかったが、途中えら昆布を採取し続行。よく学んでいる。しかし、だいじなものを得た時点で審査は終了だというのにどうしたものかと」
「そうよねぇ……」
「それに加え水中の人質の元には1番最初に辿り着いた。その上人質をMr.ディゴリーに渡すし、Ms.デラクールのところに行くし。流石にマーカスが呆れていた」
バグマンは私の方を見た。
「そこで話し合いを重ね。Ms.コワルスキーの得点を──四十八点とする」
満点では無かったかぁ。
二点減らしたのは、カルカロフとダンブルドアかな?
「第三の課題、最終課題は、六月二十四日の夕暮れ時に行われます」
バグマンの宣言に私はえら昆布の効果が切れてきたのを感じて、慌てて陸に上がろうと手を伸ばした。
「上がる?」
その手をパシッと掴んだのはリーマスだ。
「上がるわ。リーマスが引き上げてくれるなんて最高ね」
「優勝者へのご褒美だからね。おめでとうミリー」
「ご褒美は是非ともリーマスの熱いKISSを」
「あ、ごめん手を離しちゃった」
──バシャーン!
これはリーマスに手を離されて湖にリリースされた私の盛大な水飛沫の音。