─矛盾─   作:恋音

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4-21.コワルスキー説明会

 

 グリフィンドールは常にお祭り状態だった。

 

「ミリ・コワルスキーがまたやった!」

 

 本来の代表、セドリック・ディゴリーを押しのけて暫定トップをキープ。

 飽きるほどに言われ続けている。

 

「たまたま課題内容が得意分野だったからなんだけどなあ……」

「ミリ、本当にすごいよ!」

「ありがとうハリー。そうなの、ハリーの審美眼は正しいから私ってすごいの」

 

 ハリーの褒め言葉に私は浮き足立ってしまった。

 

「私やスネイプ先生は見た目を貸してたから別室で見てたのだけど、本当に凄かったわ」

「ハーマイオニー♡♡ハー子と呼んでも?」

「なんだか嫌だわ」

「辞めます」

 

 天使たちに褒めて貰えてとっても嬉しい。人に頼れないのは残念だけど、頑張って素潜りしたかいがあったってもんだ。

 

「……でも気を付けろよミリ」

「ロン?」

 

 騒がしいグリフィンドールの中で、ロンが低い声で私に警告を促した。

 

「僕でさえ、たった一瞬でも、君が『ズルをしたんじゃないか』って思っちゃったんだ。ごめん」

 

 まるで疑ったことを懺悔するような表情。

 

「だから気を付けて、僕みたいに、君やルーピン先生のことを悪く言うやつが現れると思う。出来ればずっとグリフィンドールの誰かといろよ」

「えーー」

 

 それはなんだかとてもつまらない。他の寮の人達ともお話したいんだもの。

 

 

 

 ==========

 

 

 

 ロンの予想は良いことか悪いことか分からないけれど、ピタリと当てはまった。

 

「湖は暗い。初見で地理を把握できるとは思えん」

「えら昆布を偶然採取は無理がある。作り話でももっとマシな案を思いつくだろう」

「仲間がどこに沈められたか、迷いがなさすぎるわ。知らされていたとしか思えない」

「ルーピン先生が助言したのではないか。あの人なら人質の正しい場所を把握している」

「奇跡が二度続けば、それはもう奇跡ではない。仕組まれたものだ」

「関係者に甘い者が多い。教師陣と通じていても不思議ではない」

 

 そんな感じの噂が飛び交っている──らしい。

 

 いやリーマスのこと言われているのに関しては捕まえて懇切丁寧に3時間くらい説明したのだけどね、リーマスの実直さとかフェア精神とかを。感動の涙を流していたので良しとする。

 

 で、なぜ『らしい』という伝聞なのかと言うと。

 

 

 

「──ではこれより、ミリ・コワルスキー説明会を開始する」

 

 とんちきな説明会の冒頭に教えられたからである。なんでや。

 

「さて、理事の方々、此度の審査員の方々。わしとセブルスでコワルスキーの生態について説明せんといかん」

 

 隣のスネイプ先生は腕を組み、黒衣の袖が揺れるほど盛大にため息を吐いた。きゃっセブルス、今日も可愛いね。そのため息、私が吸い取ってしまいたいわ。

 

「今回集まってもらったのは他でもない、わしの栄光を語るわけでも、ましてや三大魔法学校対抗試合の審査をする訳でもない」

 

 ダンブルドアのながったらしい挨拶から始まる。私はまるで裁判を受けている囚人のようだ。

 まぁ、シリウスってこんな気持ちだったのね。

 

「今、校内でまことしやかに囁かれる『カンニングをしたのではないか』という疑惑、皆様ももちろん耳にはしたであろう、もしくは脳裏に浮かんだであろう。わしも同じ気持ちじゃ。むしろカンニングの証拠が出てきた方が気持ちが楽とも言える」

「ダンブリィ??」

 

 貴方私の味方じゃないの??

 

「しかしながらミリ・コワルスキーはカンニングをするような者でも、カンニングさせるような者も、この場にはおるまい」

 

 壇上のダンブルドアはあえてゆっくりと周囲を見渡す。

 カルカロフは椅子の背もたれに寄りかかり、指先でテーブルをコツコツと叩いていた。

 

「その憶測を、憶測のままにせぬために。本日は皆様にお集まりいただいたんじゃ。その状況証拠の理由を順に説明していく」

 

 と、ダンブルドアの説明は私にも理解できた。なるほど。

 

「しかしダンブルドア。状況証拠は『カンニングをした場合にも、していない場合にも成立するもの』ではないだろうか」

 

 カルカロフが言った。

 淡々と、しかし探るような視線でこちらを横目に流す。

 

 ダンブルドアに向かって『だからお前はどうやって証明するつもりだ?』と言外に言っている意図は明らかだった。私もそう思います。

 

「良い質問じゃ、カルカロフ」

 

 ダンブルドアは嬉しそうに目尻を下げた。なぜあなたはそんなに楽しそうなんですか。私は楽しくない。

 あっでもでも天使に囲まれちゃうこの場所はひたすらに幸せ!もうずっとセブルス見ておこうかな。

 

「まずミリ・コワルスキーについて大雑把な概要を話さねばならぬ。第一の課題、第二の課題。共に魔法生物という強大な課題に当たった。選手たちは皆悪戦苦闘しながらもそれぞれが課題をクリアし、栄光を手にする事となった。大変に喜ばしいことじゃ……おっと、話題がそれてしもうたの」

 

 セブルスの横顔ってなんでそんなにうつくしくて麗しいの?

 

「コワルスキー、集中しろ。スネイプの顔を見ることに集中するのではなく、この話し合いに集中しろ」

 

 実は居たシリウスが私に警告を飛ばしたわ。ほんと邪魔な男。べーっだ。

 

「少なくとも、マーピープル語をきちんと理解して話せるのは私、バーテミウス・クラウチが保証しよう」

「ありがとうバーテミウス。さて、ミリ?お主の親族について教えてくれぬか」

 

 私の口から話させるんだ?

 あっ、そういえば真実薬ってこのために飲んだの?

 

 実はこのお話し合いの前に確認されながら一気飲みしてました。

 

「本日はミリ・コワルスキーについての説明であって、余計なことを喋るな、ノイズだ」

「わかった」

 

 要はエミリーとしては話すなって事でしょう。任せて欲しい。それがセブルスのお望みならば、命をかけても守るから。

 

「えーっと。私の父親はアメリカのマグルで母親もマグル。両親ともに魔法は使えないわ」

 

 リアム父さんとイオ母さんのことを伝える。

 

「それから祖父も魔法は使えないわ。でも彼の作るパンは魔法みたいにすっごく美味しいのよ」

 

 

 言った途端、理事席の左端から小声で、『やはり穢れた血か』と漏れたがスネイプが即座にそちらへ鋭い視線を投げ、相手は肩を跳ねさせ黙り込む。

 

 ひーん、愛おし!

 

「で、ええと……魔法側の血筋は、祖母がアメリカの純血魔女です」

 

 ざわりと空気が揺れた。

 

「それからその妹のティナ様は嫁いでアメリカからイギリス国籍に変わったでしょ。それからその嫁ぎ先はニュート伯父さんでしょう」

 

 カルカロフは露骨に眉をひそめ、マダム・マクシームは目を見開いた。

 

「その息子のアベルはブルガリアの純血貴族のかわい子ちゃんと結婚して、更にその息子は今ホグワーツの4年生。魔法界側はこんな感じね」

 

 ざわめくその空気をダンブルドアが穏やかに静めた。

 

「──以上が血筋の説明じゃ。これで分かる通り、ミリは生まれた頃より魔法生物に囲まれた生活をしておる」

 

 皆が口々に『ニュート・スキャマンダーなら』と言っている。伯父さんのネームバリュー本当にすごいなぁ。

 

「特別な才能だけではなく、『環境によって形成された適性』じゃ。ゆえに魔法生物関連の課題には強く、実技全般は不得手。それだけのことじゃ」

「実技全般不得手っていうのは不必要な説明じゃない!!??」

「ミリ、お主は黙っておれ」

「喋れって言ったり黙れって言ったり忙しい!」

 

 ウギーっ!と駄々をこねると、説明を補足するようにケトルバーン先生が手を上げた。

 

「ミリ・コワルスキーはもちろん才能もありますが、その機会にも経験にも大いに恵まれた。ドラゴン使いの資格は既にご存知だとは思いますが、サラザール・スリザリンの遺物など、魔法使い殺しと言われる魔法生物の飼育も多く経験しております」

「本当にか……!」

「ごく最近発表されたマーリン勲章がどうなったか、皆様ご存知ではないようですね!ホッホッホッ」

 

「…………あれ。私の授賞式ってどうなったんだっけ?」

「すまない、それどころじゃないため引き伸ばししている」

「クラウチーっ!責任取って息子さんと結婚させなさいよ」

「ダメだ」※クラウチ

「ダメだろ」※シリウス

「止めろ」※セブルス

 

 総却下食らった。あの、セブルス、シリウス、どうして貴方達が反対するの?

 

「貴様みたいな問題児を世に放つ訳にはいかない。貴様は一生独身である」

「ぐぬぬぬぬぬぬ」

 

 悔しい。セブルスに言われたならそれも仕方ない。

 

「──では次、だいじなものを即座に見つけ出した件について。これはわしも業腹ではある」

「おーいアルバス・ダンブルドア?」

 

 やっぱ味方のフリして刺しに来てるよね。

 

「ホグワーツとしては『コワルスキーだから』という言葉で説明がつくんじゃが、この場にはコワルスキーを知らぬ者も他国の者もおる。端的に言うと──変態だからじゃ」

「……変態、だから」

「へんたい?」

「なん、えっ、説明……変態?」

 

 ホグワーツ勢、全員無言で頷いている。

 

「我が友アラスター・ムーディに化けたクラウチ・ジュニアを発見したのはこのミリ・コワルスキーである。わしですら長年の友と思うておったと言うのに。本当に、変身術の元教授としても大変に業腹」

「大変に業腹」

 

 バーティだとは思わなかったけど、あのギョロ目から可愛い子の気配が何故かしたのは分かっていたわ。

 

「ミリには好みの人間を見抜く変態的な嗅覚を持っておる。それを──可愛い子センサーと言おう」

「ふざけているのか?」

「大真面目なんじゃよ」

 

 真面目に可愛いだとどこにいるのか分かるわ。

 

「それが、セブルスに化けたリーマスを見抜き、1人苦しめられておったMs.デラクールの元へ向かい、水中のだいじなものも迷わず向かえた。これが此度の『カンニング疑い』の真相である」

「……にわかに、信じ難いでーす」

「そもそもその美醜の感覚はどうなっているんだ。リーマス?という男も別に大した顔じゃないだ──」

「ガルルルルルルッ」

「コワルスキー、ステイ」

 

 威嚇をしたのにセブルスに止められた。

 ふっ、そうね、分かっているわセブルス。目が腐っている憐れな男なのよね。分かっている、わかってるとも。

 

「では証明をせねばならんな」

 

 ダンブルドアはクラウチの肩に手を置いた。

 

「??」

 

 私が首を傾げると、クラウチはため息を吐いて疑うような目で私を見た。

 

「さて、この場にミリ・コワルスキーのそのちゃんちゃらおかしいセンサーに引っかかる人物は誰だ?」

「まずセブルスでしょ」

 

 私はセブルスを視界に入れた。うっ、美しい。

 

「それから貴方、もしかしてポリジュース薬飲んでる?美しい気配がするのだけど」

「……。」

 

 のっぺりとした顔の理事会の人らしき人物に聞いてみると、その相手は無言で眉間に皺を寄せた。

 

「あ、あとあそこ」

 

 私は何も無い空間を指さした。

 

「透明マントか魔法薬か分からないけど、見えない状態でフラーが居るわ」

「……ほう?それ以外は?」

「んんーー。その羊皮紙、なんだか美しい気配がするのと、あとフクロウ。あなたも多分美しいわよね?」

「ほかは?」

「他には無いわ。あとは全員特に好みでもなんでもないもの」

 

 きっぱりと言い切った瞬間だった。

 

 バサッ!

 

 目の前の空間が急に揺れ、厚手のマントが剥がれ落ちるようにして一人の巨漢が姿を現した。ギョロッと光る眼球、太った体躯。見たことあるけど、いきなり現れたそれに私は大いに驚いた。

 

「ぎゃあ!!!???」

 

 思わず椅子ごとひっくり返る。

 ビッ、びっくりしすぎて心臓のバクバクが止まらない。これってもしかして、殺意……?

 

「ダンブルドア、こいつは本物だ。本当に見抜いてやがるし、嘘がない。開心術を使っても一切淀みがなかったな」

「おお、アラスター。そこにおったか」

 

 と、透明マント……?

 

「フラーだけじゃない……ってこと……?」

 

 マッドアイ、と呼ばれた男。

 やっぱ全然可愛くないなこの男。バーティが可愛さ貫通していただけか。

 

「……まさか、本当に見抜くとはな」

 

 カルカロフの持っていた羊皮紙はしゅるりと姿を変え、ルシーに変わった。

 

「うっっっそ!ルシーだったの!!???うっっつくしすぎる」

「やぁMs.コワルスキー。相変わらず変態のようで何よりだよ。私も理事だからね」

「はい、私は貴方様の忠実な僕であり変態です」

 

 私がルシーに欲望のまま膝まづくと、ルシーは非難するような視線をセブルスに向けた。

 

「セブルス、これ真実薬効きすぎじゃないかい?」

「えっでもこの真実薬多分セブルス作じゃない……」

「(こいついよいよ気持ち悪いなって顔)」

「(本当にヤバいやつだなって顔)」

 

 私の幸せ空間ここに極まりにけりって感じだな。

 

「コワルスキー、本当にズルはしてないのか?」

 

 カルカロフが念を押すように聞いてくる。

 

「私の年齢以外は素直な実力よ。年齢をズルと言うならズルなんだけど、魔法を使えてはや4年、いや4年生としての魔法も正直使えないけど、うん、まぁズルじゃない……いえ年齢は流石にズルかしら……」

 

 だって私、本来生きてたらセブルス達と同い年だもの。年下の子供たちと勝負しているのだから、ちょっと申し訳なさが出てしまう。

 

「さてさて、これで皆様、証明出来たじゃろうか。そして出来ればこの特性を理解した上で第三の課題をめちゃくちゃな難易度にしたいとも考えておる。打倒ミリ・コワルスキー」

「ダンブルドア!!!!」

 

 だから!せめて!貴方は味方しなさいよ!!!

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