─矛盾─   作:恋音

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4-31.死から蘇った者達

 

 目の前には未来のトム──ヴォルデモートであろう人物が居た。錬金術か何かで蘇り、その傍らにはピーターとクラウチジュニアがいる。

 

 ピーターの腕は既に準備をしていたのか、ヴォルデモートが治療した瞬間義手を取り付けていた。

 

「お前の手は貴重だからな……」

「ありがとうございます」

 

 そして次に起こったことは。

 ローブを着た魔法使い達が沢山現れたことだ。闇の印を手にしたものが、闇の帝王の復活に気付き駆けつけたようだった。

 

「(これ、僕どうなるんだろう)」

 

 ピーターがいるからハリーはそこまで酷いことにはならないだろう。

 それだけを考えて目の前の男を見た。

 

 その男はこの世のものとは思えないほど醜悪で、恐ろしい顔をしていた。赤く光る眼光は体内をゾワゾワと掛け巡らせるほど。あと何故か鼻がない。

 

 吸魂鬼(ディメンター)とはまた少し違う恐怖だ。

 

 ハリーはこちらに意識が向かってないのをいいことに敵を観察していた。

 

 目が合う瞬間額がビリビリと痛む。

 

「ハリー・ポッター……貴様のおかげで俺様は復活した……。ふん、随分ジェームズ・ポッターに似ているな。リリー・エバンズに似ているのはその瞳だけか」

「お前が……ヴォルデモート……?」

「あぁそうとも」

 

 ジロジロとハリーが観察される度、ハリーの額が激しく痛む。

 

「クィレルの時以来だ。あの時はろくに見ることが出来なかったが、なるほど……?」

 

 ヴォルデモートは枝のような指で縛られたハリーの顔を撫でる。そしてその指が額に触れたその時、更にズキズキと傷んだ。あまりの痛みに涙がに滲む。

 

「僕の父さんと母さんを殺した!」

「そうとも!」

「僕は、母さんの悲鳴を聞いた!」

「ほう?」

「なんで……なんで殺したの?貴方は笑っていたけど、苦しそうだった……」

 

 ハリーの言葉に今度はヴォルデモートが顔を歪ませる。

 

「妄想はそこまでにするのだ」

「妄想なんかじゃない!僕は覚えてる、貴方の、ヴォルデモートの笑い声と母さんの悲鳴と、父さんの倒れた姿を!」

 

 なんで殺したんだろう。

 予言がなんだっていうんだろう。

 

 生き残った男の子だなんて大層な名前で呼ばれ、ハリーは何をしたって言うんだ。

 

 ハリーはヴォルデモートも理解したい。

 どうしてトムがそうなったのか。

 

「僕は──」

 

「我が君、どうやら来れる者は皆揃ったようです」

「ほう?」

 

 パチンと姿くらましをして現れた人影は10数名。不自然に空いている空白を除けば全て円形になるように並んでいる。

 ピーターの声にヴォルデモートはぐるりとその場を見渡す。

 

「ふむ……」

 

 輪の1番大きく空いてるところに立ち、口を開いた。

 

「ここには六人の死喰人が欠けている……三人は任務で死んだ、ひとりは臆病風に吹かれて戻らぬ。1人は永遠に戻らず、そしてもう1人、忠実なる下僕であり続けた我が友は既に任務に就いている。その下僕の尽力により、今夜は我らが若い友人をお迎えしたのだ」

 

 その視線は再びハリーに向いた。

 

「ハリー……お前の額にある傷、それは一体いつできた?何故俺様を退けたという話になっている?俺様はあの夜……ジェームズ・ポッターとリリー・エバンズと……ざっくり言えば相打ちという形で力と身体を失った」 

 

 相打ち。

 それはなんだか変だった。

 

 上手く言語化出来ないけれど、変だ。

 

「予想外だった、奴らに放った死の呪文は、跳ね返って我が身に当たった。あぁ、痛みを超えた痛み……忘れていない……だが何故だ?何故悲鳴を上げられた?何故跳ね返った?分からぬ、だがひとつ、俺様はこうしてお前の血で蘇った」

 

 まるで胃もたれしたかのように腹の奥でぐるぐると重たい違和感が巡っている。ハリーは頭が沸騰しそうだった。恐ろしい状況に恐ろしい敵、でも憎めないと分かってしまった。しかし両親の仇。

 

 助けて欲しい。

 生き残っただなんて言われているだけで、ただの普通の子供だ。

 

 誰かハリー・ポッターを助けてと、願った。

 

 

 

 

 

 

 バチンと大きな音がした。

 ハリーの目の前、その空間に大きな色が出てくる。黄色、赤、白、水色。そう、まるで四人の人間が急に現れたみたいに。

 

 見慣れた、土曜のお茶会に飲むミルクティーみたいな髪色が一番最初に目に入った。

 

 

「──ハリー?」

 

 あぁ、もう大丈夫。

 僕より僕を大事にしてくれる子が来たから、僕たちはもう大丈夫。

 

 

 ==========

 

 

 

 ハリーが涙を流している。ハリーが手から血を流している。ハリーが私の顔を見てホッとした。ハリーの口が私の名前を呼んだ。ハリーが縛られている。

 

「ハリー!あぁ愛しのハリー!良かった、嫌な予感がしてたの、ハリーが泣いてるだなんて」

「ミリ、ミリ!それより周り!周りみて!」

「私がハリーのこと以外を優先すると思う?」

「天使以外ならしないけど!」

 

 よく分かってるわ、流石私の可愛い子。そう、天使以外ならハリーを優先するの。天使に優劣はつけられないから……。

 

「ミリ、本当にそれどころじゃないみたい……」

「あぁ……!」

「固まって!」

 

 フラーの可愛い声が聞こえたから振り返ると、そこにはピーターとバーティが居た。きゃっ、今日もかわちい♡

 ピーターとバーティが優勝賞品ってこと?そんなのって最高ね。ちょっと待ってなんでピーターのお手手が金属で光り輝いてるの?

 

「何故……何故貴様がここに……っ!?」

 

 そして驚愕の色をメキメキと出しちゃう相変わらず変な顔の──。

 

「やっほー」

「何故必ず開幕の第一声が『やっほー』なのだ!!!!」

 

 ヴォルティー何とかかんとかのヴォルちゃんだ。たしか神様の名前だったからヴォルティーグだったかな?

 

「やだ、そんなにキレたら血管ちぎれるわよ?えっと、ハリーが1年の時だからだいたい3年ぶり?クィレルの頭の後ろに付いてた時は顔だけだったのに今は体が出来──…………」

 

 何かに気づき私はすん、と鼻を鳴らす。

 

「み、ミリ!危な…」

 

 私はヴォルちゃんに1歩1歩近付いて匂いを嗅いだ。

 

「──……なんでヴォルちゃんからハリーとピーターの匂いがすんの?」

「気持ちが悪い!!!!!」

 

 ヴォルちゃんの呪文で吹き飛ばされた私は華麗にハリーの所へ戻ってきた。

 

「ただいまハリー♡」

「おかえりミリ……」

 

「何故貴様がここにいるコワルスキー!!」

 

 バーティが怯えたような顔で杖を向けてくる。うふふ、そんな姿も愛しいだなんて、愛してるわ。

 

 で、何故貴様がここにいるかだって?

 

 

 

 ……私に分かるわけないじゃない。

 

 こちとら本気で優勝杯を狙いに行ったらポートキーで吹き飛ばされて気持ち悪いしで何がなにやらだけどハリーが怪我をしてるのを見て全部全部吹き飛んじゃったんだから、本当に分かるわけがない。

 なんでとか疑問符を浮かべるよりも先に怯えるバーティが可愛いことに視界が埋めつくされている。え〜、可愛いね、すっごく可愛い。バーティのしたり顔も可愛いと思うし猫かぶりも大変に可愛かったけど、バーティが1番可愛いのって怯えてる時なんじゃない?可愛いわ。

 

 ああ、そうだった、なんでか、だったっけ。

 

「──愛よ!!!!」

 

 そう、愛なのよ。

 私は腰に手を当てて言い放った。

 

「愛……」

「…愛か………?」

 

 愛ならほな仕方ないか、って空気がチラホラ出てくる。はい、愛です。これはなんと言おうと愛です。愛がないわけがない。マジカルな現象も愛です。

 

「ところで」

 

 私は周りの人間たちを見回した。

 

「──ハリー傷付けたの、誰?」

 

 途端に周囲の魔法族は杖を構え、そして一瞬チラリとピーターに視線を寄せた。え、寄せたのはバーティとヴォルちゃん。他は仮面を着けてて表情が分からないもの。

 

「ピーター・ペティグリュー」

「うっ……ご、ごめん、これにはわけが」

「いくら可愛い天使の戯れだろうと、ハリーを傷付けるのは話が違うわよね?」

「き、きずぐすり!傷薬もらって懐に入ってるから大丈夫だよ!ミリ!ミリ怒らないで!」

「こんな時にもピーターの心配をするのハリー?え、愛おしくて優しい子。子育て成功したわ」

「ありがとう褒めて貰えて光栄だよ」

 

 周りの人たちは皆私の一挙一動を警戒している。セドリックが静かにハリーの拘束を解いた。

 

「ん〜…………」

 

 私は少し考え込んで、1人の仮面に近付いた。フードと仮面で隠れて何も見えないけれど、体格と気配が私に色々なことを教えてくれる。

 

「……。」

 

 目の前にいる男はルシウス・マルフォイ。

 

「せっかくダンスの時の写真撮ったのに、残念ね、欲しくないの?」

「っ」

 

 貴方の好きそうな、好みそうな人々。そしてドラコの麗しい姿を写真に収めないわけが無いと言うのに。

 

 

 私は次の子の前に行く。

 

「……っ」

 

 彼はレギュラス・ブラック。

 

「あなたは体調があまり良くないのだから、大人しくすることよ?」

 

 

 他にも好みの子はいるけれど、今は割愛しましょう。

 

 

 

 

『そうだ、大罪なんだ。だからコワルスキー──お前はハリーポッターを守るために、どうか暴れてくれ。お前ってだけで、全ての理由が上手くいく』

 

 

 

 セブルスの言葉が鮮明に蘇る。記憶の中のセブルスも寸分変わらず可愛いね。吐息のひとつに至るまで忘れてないもの。

 

 

「エイブリー、何とか言いなさい」

「は……」

「私は、忘れてないわよ」

「お前……っ!」

「ノットは、兄の方?弟の方?まぁどっちでもいいわ、私を知ってるってことはどうなるかわかってるわけでしょ?」

「っ、こいつ!」

 

「さぁ問題よ。私は誰?」

 

 誰も彼も黙っている。

 私は暴れなきゃダメなの。私のペースに巻き込むわ。さぁ皆見て、私を見て。ハリー達じゃなくて、私を見て。

 

「ヴォルちゃん、正解は何かしら?」

 

 名指しをすると苦々しい顔をしたヴォルちゃんが舌打ちをした後、私の名前を呼んだ。

 

「エミリー・コワルスキーッ!」

 

 ザワザワと周りは動揺が走る。

 

「お前っ、お前お前お前!お前!なんっっっっでだよ!!!なんでいる!?なんで生きてる!?気持ち悪いな!」

「うるさいってばツッコミノット!」

「やめろ……考えるだけ無駄だ……コワルスキーだぞ……?」

「諦めるなエイブリー!」

「あとは任せた……」

 

 あぁコレコレ。エイブリーと程々に仲良いってことは我が同級生の弟の方かな。

 案外どこかに兄も居そうだけど、流石に全員可愛くないから分からないわ。

 

「ミリ……?」

 

 セドリックが不思議そうな顔をしてハリーを守るように立っている。その後ろを守るようにフラーが美しく立っていて、1歩だけ前方に出ているのはビクトール。

 

 

 さぁて、どう逃がそっかな……。

 ポートキーまだ使えそう?誰かがアクシオしてくれたらいいのだけど、そこまで指示したら阻止されるわよね。

 

 そしてルシー達は死喰人ってところかな?

 ヴォルちゃんもその一員で、バーティもピーターもその一員。

 

 ほんとにどうしよう……。一か八か使える気がしない姿くらましでもしてみる?以外と愛があればできる気がする。とにかく学生たちを逃がさないと危ないんじゃないかな。

 

「……。うん、考えるのやめた。私には向いてないもの」

 

 私は頷いてヴォルちゃんに近付いた。

 

「来るな……」

「さぁ再会のハグをしましょう!」

「来るなと言っているだろうこの大馬鹿者め!貴様が1番読めんのだ!誤算の具現化が近寄ってもろくな事にならんし存在がもうわからんはこのクソボケカス女!」

「酷い言い草、流石に傷付く……」

 

 クソボケカス女なんて暴言初めて食らったわ。傷付いちゃう!

 

 ……嘘ついたわ。全然ノーダメージ。

 

「バーティ、私の事クソボケカス女って言ってくれない?」

 

 出来れば全力で。

 

「やめとけバーテミウス!喜ぶぞ!学生時代の黒歴史を忘れるな!」

「やめろ!蒸し返すな!!」

 

 バーティが可愛くキレ気味で言い返す。ノットは後で校舎裏ね。まるで私への初恋が罪みたいな言い方はやめて。

 

「とりあえず誰か私とハリーとフラーをホグワーツまで連れて帰ってくれない?ビクトールとセドリックは余力があったらお願い」

「好みの差で態度を変えるな!!情緒に激しい!!!やめてやれ!!!」

「ノットに非難されるだなんて心外……」

「コワルスキーッッッッッ!!!!」

 

 マルシベールじゃあるまいに、そんなにキレ散らかさないでよ。

 

「ヴォルちゃん、クィディッチ競技場までよろしく」

「不敬!!!!!!!!!!!!」

 

 素性がバレたからってノットに全部ツッコミ任せてるんじゃない?大丈夫?過労死しない?

 大変ね、貴方も。私みたいなの相手にしなきゃいけなくって。ごめんねノット……貴方とっても私のことが好きみたいだけど、私は好みじゃないの。

 

「貴方の気持ちには応えられないわ」

「ーーーーーーっっっっ!!!お目付け役はどこだ!!!」

「あ、僕です」

「ハリー・ポッター!この穢れた血を黙らせろ!!!!!」

「穢れた血とか久しぶりに言われたわ……くすん、私みたいな綺麗な血液サラサラの健康な血になんてことを……聖マンゴ宛に献血したらすっごく褒められるのに……」

「あ゛ーーーっ!ペティグリュー!!!!」

 

 私の愛しのピーターはヘルプサインに対してかわゆくにっこり微笑んだ。もっと笑って!気遣いもできてみんなに頼られて美しくって可愛くって最高だね!

 ノットはギブアップだったらしい。根性ないわね、生まれ変わってきなさい。

 

「ミリー?」

「なぁに♡」

「迷惑かけちゃダメだよ」

「いい子にします♡♡♡」

「よし、いい子」

 

 可愛くってメロメロになっちゃう……っ!

 私は大人しくハリーたちの所へ戻った。

 

「えへへ、可愛い子にいい子って言われちゃった」

「あのおじさんが可愛いだっ……ごめんカワイイネー」

「ありがとうセドリック、セドリックならそう言ってくれると思ったの」

 

 そうなの、ピーターってば本当に可愛いの。

 その可愛さは天まで轟く程で、死んだと言われてもおかしくないくらい天国にその名を広めているに違いないわ。

 

 ……でも俄然ピンチなのには変わりない。

 私の同級生達は混乱もしてるし気を削げるけど、私という存在が理解できていないおじい様達?彼らはいつでもこっちを殺そうと思えば殺せる。

 私は死んでもこの子達を守るけど、死んだあとどうなるかなんて、それこそ生まれ直さないと分からないしリスキーだわ。

 

「……セドリック、ビクトール、死ぬギリギリ前まで私が頑張って引きつけるから、フラーとハリーを頑張って逃がしてちょうだい。信用してもいいのが誰かはハリーが知ってる」

 

 小声で告げると勇ましくて度胸もあるハリーは小さく頷き、可憐で優しいフラーは絶望した顔を私に向けた。そしてビクトールは眉間に皺を寄せ、セドリックは泣きそうな顔。

 

「愛してるよミリ」

「私も愛してるわハリー」

 

 そんな死ぬわけじゃあるまいし、皆絶望しすぎよ。

 

 

「ところで、演技が上手だったからあまり動揺が伝わってこないのだけど、マルシベールもいる?代表して質問してもいいことにするわ。貴方可愛くないけど私とは長い付き合いだもの」

「…………チィッ!」

「見っけた。ふふっ、ノットとエイブリーの近くにいると思ったわ。お父様は元気?」

「なんでお前が質問してくるんだ」

「いいじゃない。一緒に眠った仲でしょ」

「言い方に語弊があるんだよこのクソ変態魔法生物オタクがよぉ……っ!」

 

 ハリー達はこっそり円の大きい空白に向けて足を進めようとしている。

 頼りにしてるわよ最高学年。魔法ならそんじょそこらの大人にも対抗出来るって思ってるから。

 

「何故、お前が生きてる…?」

「失礼だわ、まるで生きてはいけないみたいに、泣いちゃいそう」

「出来れば死んでて欲しい」

 

 ドストレート失礼。

 

「本当にエミリー・コワルスキーなのか?」

 

 マルシベールが私に問いかける。

 本当の本当よ。記憶覗く?私、自慢だけど記憶力は良い方なの。マルシベールのファーストネームは全然出てこないのだけど。

 

「むしろこんなに同じな私を見て違うというほうが難しいんじゃない?ねぇヴォルちゃん、私見た目違う?」

「……。」

「やめろ!!!」

 

 ヴォルちゃんは押し黙ってしまっている。

 せっかくの再会を喜びたいけど、もしかして私達と夏休みを一緒に過ごしていたことこの人達にばらさない方がいい?

 私は気遣いが出来る友人だから黙っといてあげようかな?

 でも内なるアメリカ人がしゃらくせぇって言ってくる……。

 

 一旦話を変えましょう。

 もう一人くらいお喋りしたい所だわ。いるかどうか分からないけど。

 

「ちなみに『僕の蛇ちゃん』は元気?兄のノット」

「もうほんとに勘弁してくれ………………」

 

 別のところから悲痛な叫びが聞こえた。やっぱりいた。

 奥さんへの告白、僕の蛇ちゃんだったものね。

 

「ちなみにセオドール・ノットってどっちの息子なの?貴方達に似ずいい子に育っているからどちらでもどうでもいいんだけど……でも親愛なる弟ノットはモテなさそう……」

「余計なお世話だよ!」

 

 弟ノットがツッコミを入れた。なるほど、兄ノットの方だったのね。いけ好かないし好みでは無いけど、素直で可愛げはあるから父親に似なくて良かったわね。セオドール・ノットのプロポーズが今から楽しみだわ。

 

「──ハリー・ポッターが逃げるぞ!」

 

 ハリーに気付いてしまったのか、知らない人が大声を出す。

 くっ、やはりハリーの可愛さはみんなにバレてしまうのね……っ!

 

「クルーシオ!」

「やだ、もっと私と遊んでくれなきゃ困るわ」

 

 ハリーたちの盾になる位置に走り、呪文を手で叩いた。

 

「……え?」

「呪文が弾かれた?」

「…………なぜだ?どうして?」

 

 私はハリー達の背中を庇う。

 

「それはもうやったのよ……!」

「気をつけてください、Ms.コワルスキーは体の至る所に魔法生物を隠し持っています!下手に手を出せば全滅も有り得ます!それにMs.コワルスキーは、我が君の不滅のための貴重な研究材料だ!」

 

 ルシーの愛おしい声が響いた。え、好き、大好きだわルシー。

 わざわざ私が殺されないように言ってくれたの?最高。

 

 それに私魔法生物は2匹しか身につけてないわ……。エヴィルとウトラしかいないもの。

 

──バァン!

 

 銃声が響いた。

 後ろを振り返ればセドリックが私の銃を手に持っていて、硝煙が銃口から出ている。

 

「おっと、外しちゃった……」

 

 空砲だというのにセドリックは秘密兵器でも出したかのような顔をしていた。

 

「ごめんミリ、君を置いては逃げられない。ビクトールとフラーに託すことにした」

「悪い人。貴方多分闇堕ち向いてるから別にあっちに加わって来てもいいのよ」

「勘弁願いたいね。ブラック先生が『君があの人に狙われる!』って発狂してた意味が分かったよ。君、どえらい人気じゃない?」

「そうなの」

 

 本当に人気で困っちゃう。こんな一挙一動を観察されるなんて、可愛い子の視線が混ざっているからヨダレものだわ。

 

「……嫌味じゃなくて本心でそう思ってる?」

「もちろん!」

 

 嫌味とか頭使うから苦手。

 セブルスがすごいわ、嫌味をあんなにポンポン出せるなんて。

 

 でもルシーが命の保証をくんえてくれたけど、セドリックにはそれが効かない。

 なんとしてでもセドリックを守らないと

 

「エミリー・コワルスキー……!」

 

 

 

「──エクスペリアームス!」

 

 武装解除呪文が私の背後、ハリー側から放たれた。

 

 ヴォルちゃんが目の前で目をカッと見開いていて、口が開いている。

 他の死喰人もザワザワと新しい動揺が走っている。

 

「何故……」

 

 ルシーの口からもその疑問が飛び出している。

 

 

 

 

「うちの息子と、友達に杖を向けるなんて。随分舐めてるな君たち」

 

 私は振り返った。

 

「ところで、なんで生きてるか後でゆっくり聞かせてもらっていいかな?スパイラルホーン?」

 

 

 

 そこにはハシバミ色が鮮明に目に入った。

 肌は綺麗な色で灰色になっていない。

 

 真後ろを振り返れば、そこには綺麗な赤髪と緑色の大好きな瞳があった。

 

「……っ、ジェームズ・ポッター?」

「なんだいエミリー・コワルスキー」

 

「──リリーと結婚するのは私だったのに!!!」

「今!!!????」

 

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