「──集合」
「うっす」
衝撃的に可愛いセブルスと爆裂可愛いリーマスと私は、まぁ可愛くないシリウスに呼び出された。
「ヴォルデモート云々置いておき、あの、本当にジェーとリリーが蘇ったのか?」
「医務室のベッドが幻でなければ……?」
「……なんで生きてるの?え?あれ本当に生きてる?ゴーストとかじゃなくて?」
「えぇ……?なんで生きてるんだ?死ん、なんで?」
皆んな目は真っ赤っかで顔は浮腫んでいる。その浮腫ごと愛してる。
「先生達は、三大魔法学校対抗試合の後始末とかなんかしなくていいの?」
「……免除された」
セブルスがポツリと呟く。
あっ、なるほど?
全員免除されたんだぁ。私もなんか聞かれるかなって思ったら予想外に置いてけぼり食らってるから驚いているんだよね。
他の代表選手は連れていかれ、闇祓い達はヴォルデモートの復活とかって言葉を聞いてすぐに姿くらましで飛んで行った。
イギリス魔法界が全て注目しているイベントで起こった、出来事。誰も彼も混乱の最中ではあるだろう。
「……ちょっと整理してもいいか?」
シリウスは頭を抱えたまま手を出した。
「まず、ジェームズとリリーって、ヴォルデモートに殺されたよ、な?」
「あぁ……」
「どういう流れだったのか分からないが……」
「少なくとも、リリーの死に一番最初に駆けつけたのは僕だ」
セブルスが険しい顔で言う。
「あの人の動きを一番把握していたから。リリーとポッターが並んで息絶え、床でハリー・ポッターが泣いていた」
「で、ヴォルデモートが消滅した、ってわけか。ハリー1人だけを残して」
するとセブルスが眉間のシワをそのままに、組んでた手を顎に当てた。その仕草だけで三食スープだけでも満足出来るわ。
「…………今考えれば、リリーは呼吸が止まっていただけで、ベールを潜っては居なかったのでは無いかと」
「普通は呼吸が止まってたら死ぬって言うんだけどね」
「魔法族基準でもその状態で生き返れるのはおかしいが……。心臓が微かにでも動いていたのなら生き返らなくもないか」
三人がうんうん唸っている。
「だが、墓はある。ダンブルドアが葬儀も執り行った。だから世間的には確実に亡くなっていた」
葬儀に参加したというセブルスとリーマスが頷いたのを見て、シリウスが頭を抱えた。
「嬉しいけど!めっちゃ嬉しいけど!死んだと思ってて死んでねぇのはコワルスキーで腹いっぱいなんだよ!!!!!」
「失礼だわ」
「うるせぇよ死人!お前をの姿を新聞で見た瞬間どれだけ俺がおかしくなったか分からねぇだろ!」
「元々だろう」
「元々だね」
「セブルスとリーマスが言ってるのだから、おかしいのは元々なのよ?」
天使の言うことは正しいって世界のルール的に決まってるのよ。
「言うけど、僕はミリーが亡くなってからジェームズとリリーとピーターの訃報が一気に舞い込んできて、シリウスがアズカバンに入れられたって聞いて、もう僕にはセブルスしか残ってないんだって絶望してた矢先に去年ぽこぽこぽこぽこ生存報告がやってきた矢先だよ?僕の情緒のことも少しは考えて欲しいな?」
「ごめんなさい……」
「ごめんねリーマス」
た、たしかに、リーマス視点は7人中2人しか残って居なかったのよね。
5人も亡くなった(アズカバンも死亡に含む)状態だったリーマスにはすごく悪いことをしたなぁ……。去年は情報量が多すぎたよね。
セブルスはハリーが1年のタイミングで私の存在は分かってたみたいだし。
「ブラック、お前はリリーとポッターの生存は知ってなかったんだよな?」
「あぁ……スネイプは?」
「僕もだ。リーマスも知らなかったんだろう?」
「うん」
「僕が思うに、二人はゴーストになった訳でも、転生したのでも、生き返ったのでは無く──『実は生きていた』というのが正しいと思う」
真剣な顔のセブルスえっちだな。(真剣)
鼻先から抜けていく声の余韻がこの静かな空間に響いて耳が蕩け出しそう。こんな場面に立ち会えるのって、はっきり言って幸運過ぎない?
「……。ダンブルドアはリリーとポッターが生きていることを知っていたのだろう」
「そうだな。ダンブルドアが死んでもおかしくない状態でジェー達が呪いに蝕まれていた、と仰ってた」
──しかし!彼らは死んでなかった!今、この時まで、死の呪いに蝕まれ、深く深くいつ死んでもおかしくない状態で眠り続けておった!
確かこんな感じのことを言ってた。リリーの状態に関することだから覚えていたまでであって、ダンブルドアの言葉は覚えようとしていないから詳細は違うかもしれない。
にしても、小難しいこと考えるのね。
「まぁ、今生きてるのだから経緯はどうであれ喜ばしいんじゃない?」
「……正直めちゃくちゃ嬉しい」
「本当に嬉しいから感情の行き場に困っている」
「もうミリーが生きてたことに混乱して終わった後だったから、もう1回同じことを味わうと思ってなくてね……」
情緒が大変そう。
唸っている三人のために私は勝手にシリウスの荷物を漁って紅茶を探し出す。
私のカバン、部屋に置いてきてるからまだ部屋に戻れてないのよね。それにいつ誰が来るか分からないから外に出てなきゃ駄目よね。
あった、茶葉とティーセット。
うーん高そう。まぁいいや。
「シリウス、ポットにお湯出してちょうだい」
「おう……」
シリウスが杖をひとふりすると茶葉を入れたポットにお湯が満たされた。魔法って便利。
紅茶をティーカップに注ぎ、私は彼らに持って行った。
「はい、リーマス、セブルス、紅茶でも飲んだほうがいいわ。声が乾いて来てるもの」
「ありがとうミリー」
「助かる」
「シリウスもついでにどうぞ」
「俺のだろ」
「ありがとう使わせてもらってるわ」
「へいへい」
茶葉が高級な物であることは確かだろう。雑に作ってるのにめちゃくちゃ美味しい。
ふぅと一息ついたのか、それぞれと目が合った。リーマスの視線が全身を舐め回すように移動する。端的に言って最高ね。
「ミリー、なんで生きてるの?」
「えっ……気付いたら?目が覚めたらリアム兄さんの腕に抱かれて、羊水の味のキスをしたわ。私のファーストキスは兄さん」
「あの人の愛情表現は相変わらずだね」
「死んだと言っても、死んだ後の世界とかも何も知らないわよ?ただ、日向ぼっこをするように眠りについただけ。きっとあれね、リーマスに会いにきたのね」
絶対にそうだわ。
泣いてる友達の所へ行かないわけが無いもの。
「君なら天使のためにって死さえ超越してそうだけど」
「実際してるな」
「確かに。セブルスも驚いたんじゃない?」
「あぁ。こいつとハリー・ポッターが入ってきた時は、流石に目眩がした」
「くっ、俺がアズカバンに入らなけりゃ、後見人としてハリーの小さい頃から見守っていたのに」
冷ややかな目でシリウスを見下すセブルスの存在が丸ごと愛おしい。まるで『お前が育てていたらとんでもない成長の仕方をしただろうな』と言わんばかりだ。育ての親がチュニーで良かったわ。私もシリウスに育てられていたら不安だもの。
「……。ポッターは見た目が似ているだけで仕草や表情は違った。代わりにコワルスキーは見た目だけでなく全てが同じだったため、異質感が拭えなかった。まるで亡霊だと」
「あぁ……めっちゃわかる……。ジェーに似てるんだけど、ハリーは中身が違うんだよな。コワルスキーはコワルスキーすぎる。コワルスキーが居なければ俺はハリーをジェームズと混同していたかもしれない」
「僕はミリと出会ったのがディメンターに襲われている時だったから、ちょっと複雑な状態だったけど……。それでも似てるなんて言葉じゃ片付けられなかったね」
「ズッ友って事ね!」
大親友だもんね。
うんうんと頷いていれば、答えは何も返ってこなくて心配になってきた。
えっ、親友よね?
もしかして友達でもないとか言うつもり?
……違うよね?私たち友達だよね?
「友達だけど。素直に友達と言うには複雑すぎる感情が心に占めてる」
「リーマスの心に茶渋の如くこびり付いた私がこの世で10番目に最高すぎる。一番目は天使」
「誰か僕にスコージファイ」
「どっちかというと必要なのはオブリビエイトじゃね?」
削ぎ落そうとしないで、茶渋を。
「所で、聞きたいのだがコワルスキー」
「セブルスの聞くことならなんでも答えちゃう!」
「リリーとポッターが生きている事にさほど驚いていないように思うが──ダンブルドアの協力者なのでは無いか?」
セブルスの考察。私が、ダンブルドアの協力者?
「──絶対、嫌ね!」
「……そうだとかそうじゃないとかじゃなくて拒絶から入るのか」
「だってダンブリィぜーーーんぜん可愛くないもの!」
「基準がブレねぇんだよなコワルスキーって」
ダンブルドアの幼い頃の写真も見たけど、可愛くない!どちらかと言うとかっこいい寄り?
でも隣にいた美人さんは本当に幸薄の美人さんだった……、早く紹介して欲しい。
顔が全然似ていないという点から兄弟でも無いと思うのよ。顔を見ないとなんとも言えないけど、グリンデルバルドじゃないかってホグズミードにいるダンブルドアの弟であるアバーフォースさんが言ってたから今のところグリンデルバルド説が大きいわ。
エミリー時代に存在は知ってたけど、もっと早く話してみるんだったわ。今世からの付き合いなの。
「とにかく、リリーが死んでないんだろうなって予感はしてたの」
「は?」
「私、ハリーが1年と2年の時リリーとジェームズのお墓参りに着いて行ってたのよ」
1回目はダンブルドアと行って、2回目はマクゴナガル先生と。
1回目の時は特に墓前で語ることはないなって直感的に思ってたの。で、2回目の時に『ダンブルドアは遺体を利用させてはならないと全て灰にしたからここには骨はなく、灰と杖しか無い』って言われて、分かったの。ここにはリリーが居ないって。
何か手がかりはないかと探そうとしてハリーの実家に行こうと思ったんだけど……。まぁ探す暇が無くなったので『生きてるだろうな』って予感だけ残しててね。
「だから、ジェームズは分からなかったけど……」
「けど?」
「リリーの成分がこの世から減ってないなって」
「お前気持ち悪いな本当に」
英国の空気にリリーという天使の空白がない気がしてたの。
「……じゃあコワルスキーの変態センサーに引っかかったって事は、本当にあの二人生きてるんだな」
じわじわと実感が湧いているのだろう。シリウスの口角が上がっている。
「なんか、夢を見てるみたいだ。全員、本当に全員いる……?なんだか、起きてみたら全部幻でしたって言われた方が納得出来るよ。こんなの、奇跡だ」
祈るように手を握り目を閉じるリーマスの姿のなんと幻想的なことか。
愛おしくて私は思わず写真を撮りたくなってしまった。
「……。ヴォルデモート卿は、リリーとポッターを殺したと言っていた。それは嘘ではない」
「スネイプ……なんでそんなこと知って……」
「だから問題は、きちんと死の呪いを食らったのにも関わらず防いだという状態を解明することだ。そしてヴォルデモート卿が消滅した謎も」
その、ヴォルデモート側?って言うの?
闇の帝王の一味側の視点が無いから今考えてもサッパリ理解が出来ないのよ。
そもそも私が生き返ったこと自体もサッパリ分からないし。
「ま、一旦ピーターやルシーやレギュラスの報告を待ってもいいんじゃない?彼らなら教えてくれるでしょ」
「なんでその三人……?」
「え、あの場に居たから。仮面を被っていたけど、私の目にはお見通し。ヘヘヘ、可愛い顔してたんだろうなぁ。──ただピーターの左手が無かったんだけど、あれに関して私は世界的に大きな損失をしているの思うの」
置いておける話題じゃない。ピーターの左手が金ピカに輝いていたの。アレ、篭手とか手袋ならまだいいけどピーターの血の匂いがしたから手首からザクッと無くなってるので間違いないと思う。
私の天使の体積がこの世から無くなるだなんて耐えられない!
「ピーター……そういえば、賢者の石が出来たって言ってたけど……」
「っ!」
するとセブルスが顔を上げた。
「秘密の守り人は、ピーターだったよな?」
「あぁ……、だから俺はピーターを殺しに向かったんだけど……」
「このからくりについてはダンブルドアよりもピーター・ぺティグリューに聞く方が確実だな」
何が何だか分からないけど賢いセブルス本当に天才!きゃー!こっち向いて!
「ピーターも何を考えているだか、コワルスキーは何か知らねぇか?」
ぎゃー!あっち向いて!
「私が知ってるのは全世界がピーターの魅力に虜になっても仕方がないくらい可愛いということくらいかな……。あとはまぁダンブルドアなら知ってるでしょ、なにか」
「だなぁ」
「今ジェームズとリリーって?」
「コワルスキーを見て頭が沸騰したのか病み上がりだったのか分からないが倒れて医務室だ」
「わかる」
「すっごい気持ちは分かる」
「同じ道を歩むんだろうな」
まるで私が引き起こしたみたいに言うじゃん。セブルスが言うなら間違いないかも。
ふぅ、と皆でため息を吐く。
「少なからず、だ。俺たちが今後どうしていくべきか。ヴォルデモートに関しても、考えることは多いが。一旦この再会を盛大に喜ぶとしよう」
「そうだね……。気になることは未だに多いし、確認しなきゃ行けないことも多いけど、喜ばしい気持ちの方が大きい」
「………………………。」
「セブルス?どうしたの?」
急に落ち込んだ青い顔のセブルスを見て、私は慌てて背中を摩る。セブルスは可愛い唇をぐっと噛み締めたあと、消え入りそうな声で言った。
「………………………………全校生徒の前でリリーにしがみつきながら泣いてしまった」
「「あぁ……」」
「セブルス、スネイプ先生の時は威厳たっぷりだもんね。本当は泣き虫なのに」
「やかましい!誰のせいだ誰の!」
「ジェームズのせいかな」
「お前もだからなエミリー・コワルスキー!」
この親友たちが私は愛おしくて仕方ないの。
あぁ、本当に幸せで仕方ないわ。
リリー、ついでにジェームズ。
早く起きてきてちょうだい。
私、2人に会いたくて仕方なかったの。ハリーに会わせたくて仕方なかったの。泣きたくなるくらいにね。