─矛盾─   作:恋音

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5章〜不死鳥の騎士団〜
5-1.ポッター


 

 

 ヴォルデモートは混乱の最中に居た。

 

「──何故!」

 

 薄暗い闇の中、復活したてのヴォルデモートは杖から感情に任せて魔法を放っていた。

 まるで八つ当たりのようだ。

 人に当たっていないだけまだマシだろつが、その剣幕に気の弱い死喰人は倒れてしまいそうになっていた。

 

 

「なぜジェームズ・ポッターとリリー・ポッターが生きている!」

 

 ヴォルデモートはあの二人を殺した。自らの手で、ハリーポッターを差し出せば見逃そうとは思っていたが、断られたため、殺そうと思った。

 

 そして実際、あの二人に死の呪文を放ち。

 

 ヴォルデモートはあの二人と相打ちになった。ヴォルデモートはジェームズとリリーを殺し、ヴォルデモートも消滅した。

 

「(否──)」

 

 

 ──()()()()()()()()

 

 今となってはそうとしか思えない。

 

「身を隠していた……!?いや、セブルスでさえリリーは死んだと心から思っていた…!なぜ生き延びていた!?なぜだ!?」

 

 そしてなによりヴォルデモートの頭を占める不可思議なもの。それはたった一人。

 

「なぜエミリー・コワルスキーはこうも神経を逆撫でするのだ!!!」

 

 あ、そこなんだ。

 でも気持ちは大変、もう、めちゃくちゃ分かります。死喰人の中でも若い魔法族は無言で、そして心の中で高速で頷いた。

 

「我が君、少し落ち着かれてはいかがですか?体も戻ったばかりですし、ミリーの言葉に頭沸騰させていたら多分これから身が持ちませんよ」

 

 よく言ったペティグリュー。

 何故言えるペティグリュー。

 

 ドン引きと恐怖と尊敬が混ざった視線をピーターは受けた。

 

「……我が友ピーター、そうは言ってるが、貴様も喜んでいるのでは無いか?」

「そうかもしれません。僕にとっては、貴方もジェームズもエミリー・コワルスキーも、変わらず友ですから」

「ピーター」

 

「……。あぁ、嬉しいなぁ。我が君、僕は本当に、嬉しく思ってしまうんです。浮かれてしまう僕の心をどうかお許しください。貴方なら分かってくださる」

「俺様への忠義に免じ、許そう」

「ありがとうございます。というか、今更ですけど僕っていい年したおじさんなのにまだ彼女の天使ジャンルに入るんですねぇ」

 

 ほんとにな。

 かつてのコワルスキーをよく知っている闇陣営は、ヴォルデモートを含み全て頷いた。

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

「お願いミリ!両親がいる状態なんて初めてでどうしたらいいかすこぶる分からないんだ!仲介に入って欲しい!大丈夫、君ならその持ち前の空気の読めなさで許されるから!」

「むしろこちらから土下座してでも居座らせて欲しい気持ちがあるので、喜んで!!!!(80db)」

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

 さて、世間ではヴォルデモートが復活したとか何とかかんとかやかましいけど、そんな不穏立ち込める俗世とはうって変わって、私は天国に来ていた。

 

 

 

「えっと……おはよう……?」

 

「おはようハリー、よく寝れた?」

「おはよう。朝ごはん出来てるよ。ほら、座って座って」

 

「うん、ありがとう。母さん……ミリ……」

 

「──普通そこは僕の役目じゃないかなあ!?」

 

 ハリーとリリーの愛の住処で私も生活を共にしていた。え、後ろで叫ぶ凡人?知らないですね。

 

 今は夏休み。

 そしてここはポッター家だ。

 

 ポッター家と言っても、ハリーが幼い頃に暮らしていたゴドリックの谷では無く、ポッター本家の方。ジェームズの両親の家なので、部屋も屋敷もそれはそれは大きい。

 ちなみに凍結状態だったようで、屋敷しもべも居ないみたい。

 

「ミリ……」

「なぁにハリー。寝癖付いてるけど」

「明日は一緒に寝て……ベッドも部屋も広くて全然落ち着かない……」

「僕は同衾は認めないからな!!!ミリー!!」

「僕じゃなくてミリの方なんだ、怒るの」

 

 リリーはエプロン姿も可愛いに決まっているけど、やっぱり朝から病み上がりの人間に働かせる訳には行かないから、私特製の朝ごはんだよ。

 

「あー……コワルスキー家のご飯久しぶりに食べたわ。落ち着く味。ありがとう、お疲れ様」

「いいのよリリー。リリーの為だもの、いくらでも作っちゃうわ」

 

 リリーの体の成分を私が自ら作り替えていくこの罪であり幸福を抱えて一生を生きていきたい。

 

「ジェームズ、貴方の分もあるんだから、怒ってないで早く食べたら?」

「食べるよリリー」

 

 渋々と言った様子で私に吠えるのを止め席に座って王道のイングリッシュブレックファストをもしゃった。

 トーストに目玉焼き、ベーコンにビーンズ。味付けはコワルスキーオリジナルだけどね。

 

「…………腹立つ」

「朝からパン焼いたの」

「美味しくて腹立つんだってもー!ジェイコブさん直伝のパンの味がする!」

 

 酵母からこだわったパンだもん。

 

 

「ところでハリーはいつも夏休みはどうやって過ごしてたんだい?」

「いっつもミリと一緒だったよ」

「……まさか二人きりとか言わないよね?」

「二人きりだったよ。クィレル先生も時々居たけど」

 

「エミリー・コワルスキー!僕の息子はやらないからな!」

「ジェームズ・ポッター、ハリーはリリーと私の息子よ」

 

「違うね」

「違うわね」

「それだけは違う」

 

 違うくないやい。

 

「ハリー、隣で食べましょ?」

「うん」

 

 リリーの隣にジェームズが座ったので、ハリーと私は隣合って座ることにする。リリーの目の前に私はいるので、ニコニコが止まらない。右のハリー、正面のリリー。愛おしさが爆発しそう。

 

「ジェームズ、貴方は今日も家の事?」

「そうさ僕の愛しのリリー。ポッター家の資産がこの眠っていた14年で凍結状態になってたからね、そこを通常状態まで戻さなきゃ」

「そう……なら私も色々と世間の情報を集めなきゃ。どうせこの子に聞いたって偏見と偏愛の偏った情報でしょうし。……セブに聞くのが一番かしら」

「まぁスニベルスなら問題無いんじゃないかな?性格以外」

 

 リリーがジェームズと仲良いのショックだ。

 私が一番なのに……。

 

「ジェームズ・ポッター……」

「えっ、急にヘイト向けてくるのよしてよ。今度は何?」

「リリーと結婚……この……世界一の幸せ者め……許せない……」

「あぁなんだ、君のくだらない嫉妬が発動しただけだ。残念だったねぇ?」

 

 本当に許せなさすぎて朝食を回収して私の胃袋に収納することにした。

 

「あ゛っ!!!僕の朝食!!!」

「ミリ、僕の父さん虐めないで、ね?」

「ハリー誤解よ、私の方が虐められてるの!あぁ……リリー……どうしてこんな男と結婚したの…幸せになって……」

「呪うのか祝うのかどっちかにして欲しいところだけど」

「今のミリ、シリウスにすっごい似てる」

「げぇ……」

 

 それはめっちゃ嫌だな。

 そんなことを考えて顔を顰めると、私の顔を見てハリーがクスクスと笑い始めた。か、可愛い!

 

「可愛いねハリー、愛おしい、びっぐらぶ」

「あはは、はぁ、なんだかずっと夢を見てる気分だ」

 

 笑うハリーのなんとも可愛いことか。愛おしすぎて心臓がどこどことタップダンスを踊っている。爆発しそう。

 

「私もよ、ハリー。私もジェームズも、夢を見てるような気持ち。……奇跡だわ」

「あまりにも僕らに都合が良すぎて、作為を感じる程には夢だ。可愛い息子と、愛おしい妻と、誰1人欠けていない友人。僕にとって何ものにも変え難いものが今僕の目の前にある、ハリー、夢じゃないんだ。でも、気持ちはすごくよく分かるよ」

 

 ジェームズがハリーの手を握りながらも私をちらりと見た。

 

「……良かった」

 

 私は小さく安堵を吐いた。

 

 

 みぞの鏡が私に教えてくれた私の本当の望み。

 

 

 ──鏡には、リリーとジェームズが私の横に写って居た。

 セブルスと、リーマスと、ピーターと、シリウス。皆が居て、私は……。

 

「……私の姿もあったけど大人だったか子供だったか忘れちゃったな」

「どうしたの?」

「あ、ううん、なんでもないのよハリー」

 

 己のことはどうでもいいので、鏡越しのリリーは私の想像の範疇でしか無かったということしか分からないわ。私のちんけな脳みそでは今のリリーの姿の魅力を100分の1も表現出来ていなかったわ。

 もちろん鏡の中のリリーもすごくすごく愛おしくて、リリーを模した物はこの世の宝に選ばれるべき。

 

「リリー、愛してる」

「ハリーもリリーも君に渡さないからな!?」

 

 リリーは『知ってる』と言わんばかりに微笑んだ。懐かしい物を見るような、くすぐったい笑顔が愛おしい。その横でギャンギャン噛み付いてくる何とかかんとかさんがうるさいこと。

 

「マイペースの方がありがたいと思ったけど、ミリがマイペースなのも考えものだな……」

 

 ハリーの小さな囁きを私の耳と前頭葉は逃すことなくキャッチした。かんわいい。

 

「ジェームズ、私喉が乾いたわ」

「僕が入れてくるよ!冷たいのでいい?」

「えぇ、そうしてくれると嬉しい」

 

 リリーに顎で使われるという名誉で光栄なことをしているジェームズがキッチンに向かい、この空間は邪魔ひとつない愛おしい空間へと生まれ変わった。

 

「…………父さんってミリに似てるね?」

「分かるわ、なんというか、系統が同じなのよね。過剰な愛情表現の」

「大変に業腹だけど愛しの天使達がそういうならきっと似てるんだと思う。でもこれだけは必ず覚えて欲しいのだけど、私が天才、あいつが馬鹿」

 

「──!!」

 

「今キッチンから『うるっさいよド変態馬鹿』って言う父さんの声が聞こえたんだけど……」

「ハリーは耳が良くて周りにも沢山目を配れるのね、すごいことだわ。私には何も聞こえなかったし」

「聞こうとしないの間違いじゃない?」

 

 ハリーってすっごく賢くって叡智の塊って感じがして最高。ハリーの才能と努力と愛おしさと優しさと素直さの賜物ね。

 

「はいこれ、紅茶」

 

 トン、とグラスに入れたアイスティーが机の上に置かれる。瞬間冷却薬を使っているのか、氷が入っていないにも関わらず冷たくなっている。

 

「ありがとうジェームズ」

「どういたしまして」

 

 リリーがジェームズの頬っぺたにちゅーした!!!!最悪!!!リリーのKISSは私のモノではないけどジェームズのものにだけはしてはいけないと思う!!世界の!損失!

 

「あっ、ありがとう、父さん……?」

 

 顔を真っ赤にして視線を逸らしたハリーの可愛さに免じて今だけは命を助けてやるわジェームズ。

 でも困った、ハリーの可愛さなんて未来永劫変わりなんてないから命がずっと助かり続ける予感しかしない。程々のタイミングでジェームズの立場を乗っ取ってやる。

 

「……ミリが居て本当に良かった、僕一人じゃいたたまれない」(小声)

「ずっと眠ってたってことだし、リリーとアレの自覚はハリーが産まれたての新婚くらいなんじゃないかな?」(釣られて小声)

「かもしれない。ダメージが強い」

「私も心に来る……愛しのリリーがジェームズに取られた……」

 

 世界はリリー・エバンズを失った代わりにリリー・ポッターとハリー・ポッターという世界的な資産を手に入れたわけだけど、それはそれとして心に来るのよ。

 

「……まあリリーが幸せそうだし、ジェームズならリリーのことずっと好きだろうし、不服だけど認めざるを得ないというか」

「父さんより母さんのこと好きな人っているの?あ、ミリは除外するとして」

「除外されたので暫定二位の私は置いておき、やっぱセブルスじゃない?当たり前だけど今もまだリリーのこと大好きだし」

 

「えっ!!!!???」(大声)

 

 ハリーの大声で私の鼓膜が死んだって心の耳で聞きとるし破れた鼓膜でさえもハリーの生きた証として残し続ける。

 

「どうしたの、ハリー?」

「ううん、なんでもない!!」

 

 ハリーは慌てて首を横に振って私の耳元に小声で話しかけた。存在がエスキピー。

 

「……スネイプ先生って母さんの幼なじみだって言うのは聞いたけど、もしかして恋愛的な意味で好きだった?」

「おそらく現在進行形かな。まだ吹っ切れてないと思う」

「うわぁ…………やっぱ第三の課題で母さんに抱き着いてたスネイプ先生って……えぇ……?」

 

「私もしかして殺される可能性ある?」

「うん」

 

 言わない方が良かったかもしれないけど、セブルスに殺されるのもそれはそれで本望。私は死なないけどね。

 きっとセブルスは私を自らの意思で『殺そ!』って殺っちゃっても、きっとその行動を死ぬまでずっと引きずっちゃうだろうから。

 セブルスの記憶の中にずっと居たいけど、健やかに幸せに生きて欲しいし、記憶の中にいる私はつねに笑顔で居たいわけ。

 

「完全に気付いていたって程じゃないけど、察してたから、セーフってことにしておこう?」

「ありがとうハリー……切腹だけしておくね……」

「なんなのセップク」

「腹を刃物でかっ捌いて覚悟を見せる行為」

「やめな?」

 

 ハリーは呆れた顔で私に言った。

 

「エミリーが死んだ傷が癒えてない人達が沢山いるんだから、そっくりな君が死のうとしたりすればどうなるか分かんないよ?僕先生たちを犯罪者にしたくないから、大人しくいい子にしててね?」

「します」

「君は多分自分がエミリーと言われようがミリと言われようがそれが天使であればどうでも良いのかもしれないけど、先生達ってほんと歪でいつ壊れるか分からない場所にいるんだから」

「私エミリーだから大丈夫」

「奇遇だね、僕もエミリー」

 

 ハリーが頬を膨らまして怒っている姿って法が追いついてないから困る。なんの法かって、世界中に広めなければならない法や独占禁止法。世界に見せびらかさなければ気が済まないわ。

 

「ハリー」

 

 名前を呼ばれたハリーは顔を上げる。呼んだ人間はジェームズです。

 

「君のミドルネームの話なんだけど、エミリー・コワルスキーについてどこまで知っているのかな?」

「ミリの叔母さんで、父さんたちの同い年の人達ろ特にスネイプ先生達と仲良くて、変態で」

「うん」

 

 変態で、のところで食い気味に返事するのやめてもらえる?

 

「卒業する前にスネイプ先生の目の前で殺された人。馬鹿で優しくて、素直で、真っ直ぐで大事な親友だってシリウスも言ってたよ」

「概ね合ってる……」

「殺されたと聞かされているのね」

「うん」

 

 リリー達はハリーの回答に悩ましげな表情を浮かべたけれど。チラリと私を見たあと、互いに目を合わせていた。

 無言の時間に手持ち無沙汰になったのかアイスティーを飲むハリーの一挙で文明が出来てもおかしくない。

 

「…………ミリの紅茶に似てる」

「ほんと?」

「うん。味の違いまでは全然分からないけど、おばさん家ではアイスティーなんて無かったよ」

「イギリスって全体的に涼しいからアイスにする必要ないもの。アメリカあるあるじゃない?」

「でも父さんイギリス人」

「そういえばハリーの先祖にアメリカ人が居るのって知ってた?」

「知らない!」

 

 じゃあ今度アメリカに帰った時は何とかポッターさんの石碑見に行こう。可愛くない人だから覚えてないのよ、名前。

 

 うーん、名前なんだっけ。

 すると、ジェームズと何かを確認しあったリリーは一生懸命思い返している私を横目にハリーに声をかけた。

 

「ハリー、よく覚えておいて欲しいことがあるの。知らなければいいことがこの世には割とあって、知ると頭おかしくなっちゃうものもあるの」

「うん?」

「知りたいと思うなら教えるけれど、知らないということは免罪符にもなるから上手く利用なさい」

「……よく分からないけど、とりあえず分かったよ」

 

 リリーとハリーの組み合わせってどれだけ幸福な気持ちにさせてくれるんだろう。こんな幸せを知ってしまったら、流れ星って幸福がささいなことになってしまう。

 幸福の敷居がとんでもなく高くなってしまう!

 

「流れ星が霞んで見える……」

 

「ミリーの妄言は置いておき、ハリーは今日は何をする?家のことが一区切り着くまで、父さんはバタバタしちゃうけど、時間が無いわけではないから遠慮なく言って欲しいな」

「あー、えぇと、うん、大丈夫……」

「そう……?」

 

 遠慮気味にハリーは笑顔を浮かべた。

 

「え、ジェームズせっかくなら魔法教えてよ」

「え!?」

「プロテゴが使えれば便利なんだけど、全然使えないのよね」

「諦めて」

「見捨てないで(恋人にしたくないランキング)万年一位!」

「たしかに首席だったけど……七年間もどうにもならなかった君が使えるわけなくない?」

「エクパトならプロ級ってセブルスのお墨付き」

「エクスペクトパトローナム使えるの!?ミリーが!?」

 

 こいつは世界の終わりだと言いたげな表情でジェームズが私を見ていた。

 

「まぁでもほら、ミリ・コワルスキー、今は君未成年だから、匂いが──」

「スーツケース」

 

 私のスーツケース。ヴォルちゃんが改造してくれているから匂いが漏れないの知ってるよね?

 それを知ってて夏休みのお泊まりではよく決闘してたんだから。ジェームズとセブルスが。

 

「……わかったよ、じゃあ午後からね。時間作るから。あくまでも、ハリーのついでだから」

「よっし」

 

 目指せ赤点回避!目標は三年生の魔法を使えるようになること!

 

「目くらましの呪文が使えると便利なんだけど」

「それは高望みしすぎ」

 

「リリー、午前中は魔法薬学の課題を見てもらってもいい?」

「いいわよ」

「でもミリ課題配られた直後にすごい勢いでやってなかったっけ?魔法薬学だけ」

「ハリーはまだ手を付けてないでしょ。夏休み前半で頑張って終わらせちゃいましょ」

 

 リリーは魔法薬学を教えることに関してはセブより上手いから。マグル生まれの入門口として後輩から凄く頼られてた。時々負担に思うこともなくは無かったみたいだけど、頑張ってたものね。

 

 魔法薬学にちょっと苦手意識持ってるハリーに教えるのに向いてると思う!私は、あの、けっこう感覚と勘で進めることが多いから。

 

「とりあえずどこまで進んでいるのか教科書だけ確認してくるわ」

「父さんもやることすぐに終わらせてくるから、ゆっくり過ごしてて」

 

 リリーとジェームズはハリーの額にキスをしてお互い別の場所に向かっていった。リリーは方向的に自分のものを置いてある部屋で、ジェームズは多分執務室だろう。

 

「じゃあハリー、一緒に洗い物しよっか」

「うん!」

 

 ハリーは上機嫌に食器を持ってキッチンへ向かった。チュニーに仕込まれてるだけあって、ハリーの家事技術ってジェームズより頼りになるのよ。

 はぁ、愛。

 

 カチャカチャと洗剤と水と食器の重なる音が数分続いた後、ハリーは私に向かって言った。

 

「ミリ、あの、なんて言うか。ありがとう。本当に君がいてくれて良かったかも」

「こちらこそ、ハリーと一緒にいさせてくれてありがとう!」

 

 私ハリーにお礼言われるようなことって何かしたっけ?

 分からないけどお礼を言ってくれる幸せを噛み締めましょう。

 

 

「……。あの人のことなんだけど」

「あの人?」

「ほら、ピーターさんや一緒に居た。あの墓場での出来事」

 

 あぁ、ヴォルちゃんがハリーの血とピーターのおてて♡とフュージョンしちゃった出来事か。

 あれは裁かれるべき大罪だよね。

 

 

「皆が信じてくれなかったらどうしよう」

「私はハリーが言ってることなんでも信じるけど」

「君はたとえ嘘でも信じ続けそうだからなあ」

 

 それで信じ続けて『……本当に、馬鹿だなぁ』ってセブルスに言われたことがある私だからちょっと何も否定できない否定するつもりもないけど。ええ、全く。

 

「まぁでもそっか、君が信じてくれるって知ってるから、いいや。たとえ世界が僕の敵に回っても、君なら絶対僕を助けてくるし」

「もちろん……?」

「ははっ、今ミリが考えていること当ててあげようかな。『なんで当たり前のことを言っているんだろう?』でしょ」

「天才?でも残念、『なんで当たり前のことをこの可愛くて最高に愛おしいハリーは言っているんだろう?』でした」

「変わらないじゃん」

 

 その日は約束通り午前中にリリーと一緒にお勉強をして、午後はジェームズと実技の練習をした。

 ハリーはエクスペクトパトローナムを使えるようになり、親の私的には鼻高々だ。

 

 私?うんともすんとも。ほんとやになっちゃうよね。まぁ教えるのが上手いヴォルちゃんでもダメだったんだから、ジェームズ程度じゃ私の魔法が改善するわけないよね。

 

 

 

 

 そして約一週間後──

 ポッター家に複数人のお客さんがやってきた。

 

「──なんでいるんだよ!!!!俺でさえ我慢したのに!!!」

 

 不死鳥の騎士団一行だ。

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