「お邪魔するよ」
「なーんでお前は既にいるんだよ……」
「ポッター、課題」
「ルーピン先生!シリウス!スネイプ先生!あ、課題は終わらせました」
ポッター家に続々と友達が集まってきた。
リーマスはソワソワとした雰囲気で、セブルスは浮き足立つ気持ちを無理矢理抑えて。シリウスはまぁシリウス。
「いらっしゃいリーマス、セブルス。私とハリーとリリーの愛の巣へようこそ!」
「違うじゃん!!!!」
執務室から否定しながら現れたジェームズは床を滑って転がった。
「ちょっとジェームズ、マッチ棒じゃあるまいし自分の家で暴れないでよ」
「リーマス、3年の時に廊下で滑って顔を火傷したポッターの話はやめてやりたまえ」
「その時僕ら大喧嘩中だったよね!?なんでグリフィンドールで起こった出来事知ってるのスニベリー!」
リーマスの言葉にセブルスが上機嫌にからかいを口にするその表情が2人揃って愛おしい。話のタネになったジェームズに今だけは感謝したいかも。
「絶対ミリーじゃん言ってたの……犯人一人しか居ないって…」
ジェームズが項垂れて冤罪を押し付けようとしてきた。失礼な。
「私じゃないよ?」
「ミリじゃないから自認エミリーやめてね」
ハリーが私の肩を叩いて首を横に振った。自認エミリーです。
「私よジェームズ」
「り、リリー!?」
美しい女神が階段から降りてきて世界に幸福を無料でばら蒔いている中、ジェームズが驚きの声のノイズを撒き散らす。
「だって面白かったんだもの。ハラハラ舞う髪の毛と皮膚の焦げた匂いとジェームズの悲鳴」
「育毛剤を作った家系で良かったなジェームズ・ポッター」
「育毛剤じゃなくてスリークイージーの直毛薬!スネイプ、魔法薬の先生ならそこんとこ間違えないで欲しいかな!?」
「フッ……」
「笑うなよ!!」
鼻で笑うセブルスの可愛さに心を打たれていると、眼前にシリウスがやってきた。天使を見させないつもりだ。
「……コワルスキー、お前いつからいたんだよ」
「1週間くらい。夏休み入ってすぐだから」
「ほぼどころか1から10まで一緒にいるのかよ……!?お前久しぶりに再会したハリーに両親との時間をやれよ、いつもの気遣いはどうした?」
「幸せだったよ……お前が来るまでは……」
朝からハリーとリリーとずぅっと一緒。幸せ以外の言葉が出てこないって話だからね。
シリウスはこの幸せな一週間を知らないから文句言っているのであって、私からすれば子犬がキャンキャン喚いているようにしか聞こえないから、文句も今は心地いい。嫉妬、ありがとう。
「僕がミリに来て欲しいって頼んだんだ、シリウス」
「ハリーが、か?コワルスキーが無理矢理頼み込んだんじゃなくて?」
「そう!だからミリは悪くないんだ。僕邪魔と思ってなかったし」
「お願いされなかったらコワルスキーから頼み込んだだけだろ、絶対」
そうとも言う。
「……まぁそれなら仕方ねえか。とは言えウザかっただろハリー。コワルスキーの相手をするのは」
「そんなことは……はは……」
乾いた笑いの才能まであるだなんて可愛すぎる。
するとリーマスがハリーと私の所へやってきた。
「こんにちはハリー。あれから体調の変化は?」
「すっかり大丈夫です」
「良かった。……ピーターの事、怒ってない?」
「傷薬をくれましたし感謝こそすれ怒るなんてとんでもないですよ」
リーマスはその言葉に『友達が友達の息子に恨まれなくてよかった』と心中で思いながら笑った。言いそうな顔ではなく、心の中で確実に思っているからね、ここのとこ要注意ね。テストに出るから。天使総合科目試験ってテストで。
「ミリ、君が大丈夫なことはさておき。スーツケースはどうだった?」
「ちゃんと戻ってきたから安心して。クィレルが地図に被るギリギリのところで待機してくれていたから、ダンブルドアが回収してくれたの。スーツケースは壊れると……あの、多分国が滅ぶ……」
いい子達が多いから比較的安全だとは思うんだけど、流石に統率というか、私の管理下から外れてスーツケースの外に放出しちゃったら、その地域の在来種は淘汰されちゃうでしょうね。自然と。
ドラゴンもやばいけど、何がやばいってハグリッドが広げたアクロマンチュラのコロニーを半分しまい込んでるからね。アクロマンチュラが放出されるのが1番まずいわ。
本当は10分の1でも手に余るのだけど、バジリスクがいるから。大多数を殺処分というのも、素材の値崩れを引き起こしそうだし。
私が5割、ハグリッドが1割、素材に1割、残りの3割は30分割くらいにして魔法生物管理局が世界中にばらまいたの。コロニーにならないように。
「本当に無事でよかった。スーツケースが」
「本当よね」
「決してミリが無事でなくても良かったわけじゃなくて、君が死んでも世界は荒れるけど、魔法生物が自由になる方が全体的に荒れるから」
対処の仕様が無いものね。
わかる、という意味を込めて大きく頷いておいた。天使のリーマスの考え方に賛同しないわけが無い。
「あの、先生たちは父さんと母さんの家に来たの?」
「あぁハリー!ここは君の家でもあるんだからね!?父さん達だけの家じゃなくて、僕らの──」
「ハリーとリリーと私の家だから」
「〝シレンシオ〟」
「ん゛ーーーーーッッッ!」
ジェームズ・ポッター、問答無用の口塞呪文やめなさいよ!
「僕らは不死鳥の騎士団として来たんだ。他のメンバーは後で来るけど、旧友ってことで僕らだけ先にね。他のメンバーが気遣ってくれて」
リーマスの頬をかきながら話す姿は道徳の教科書の表紙にしたらいいと思うの。世界平和に一気に貢献できるよ。リーマスが表紙ってだけで購買者は三倍に、効果は無限大に。だってリーマスが表紙だよ?そんなの絶対全部覚える。
「不死鳥の騎士団……?」
ハリーが首をこてんと可愛らしく傾げる。
「コワルスキー、説明」
シレンシオを解かれたので喋っても問題なくなったのだけど……。
シリウスのその発言に私は答えた。
「申し訳ないけど、私も全く知らないわ。不死鳥の羽根ならこの前羽根ペンに加工したから持ってるけど」
「はぁ!?勿体ねぇな!!」
魔力の変換効率がいいから色々と使っているんだもん。仕方ないじゃない。時々ノートが燃えるけど。
「でも貴女なら不死鳥の騎士団くらい知ってると思ってたわ」
「リリーの言葉だから肯定したいけど、流石に知ったかぶりは出来ないのよね」
愛しのリリーの言葉に私は答えると、彼女はセブルスに視線を向けた。
「セブ、説明」
「僕か……」
「ブラックはアズカバンに入ってたって聞いたし、ルーピンはしばらく関わらなかったと聞いたわ。そこら辺の話も細かく聞きたいけど、ダンブルドア先生に1番近い場所に居たのは貴方だもの」
セブルスはやれやれと肩を竦め、しかし口元に笑みを浮かべたあとハリーと私の方を向いた。
「不死鳥の騎士団とは、アルバス・ダンブルドアが率いて設立したヴォルデモート卿や死喰人に対抗するための組織である……。最初の設立は1978年、ポッター貴様の両親がホグワーツを卒業した年である」
「つまりスネイプ先生もルーピン先生もシリウスも同じタイミングで卒業したんですよね?」
「左様……」
おや珍しい。
普段ならセブルスはきっと『余計な口を開くなグリフィンドール2点減点』って言いかねないのに。やっぱリリーがいて上機嫌だからね。
「1981年、リリーやポッターが亡くなると同時にヴォルデモートが失踪したことによって不死鳥の騎士団は活動を休止していた。ここまではお分かりかね?」
「はい、大丈夫です」
「では次、活動内容について。犯罪者の逮捕権限に関しては魔法省の闇祓いや魔法警察部隊にしか存在しない。あくまでも民間団体であるため……──金も出ん」
「えっ!!!???」
「我輩や貴族共は生活の基盤が整っていたが、リーマスなどと言ったら、各騎士団の家に転がり込むなどそれはそれは哀れな生活を送って──」
「セブルス!!僕の話はいいんじゃないかなぁ!?」
「失敬、ポッターが聞きたそうにしていた為、我輩の親切心が留まるところを知らなかった。物を知らぬ子供に懇切丁寧に教えることは……教師の本懐であろう?」
本心からそんなこと思ってないのはまるっとお見通しだけど、ハリーを経由してリーマスをからかっているこの状況可愛すぎない?
「ハリーよく聞くんだ、たしかに僕は転々としてたけど、それは持病のせいだからね?」
「活動資金は余裕のある家から出していたからね、僕らとかシリウスとか。というかリーマス、ハリーに狼人間のこと伝えていたんだ?」
「そりゃね」
魔法生物と天使のハイブリットキュートリーマス・ルーピンを世界は崇め奉るべき。
「具体的な活動内容は死喰人側の情報収集、捕縛、闇陣営に回らぬように各所の説得。こちらが主な内容である。まぁ苦労も知らない世間知らずのボンボンが説得に回ったところでろくな成果も上げられず」
「スーネーイープー!」
「ポッター貴様の父親のことである」
「よぉしわかった我が友よ、久しぶりの再会で殺り合いたいんだね、僕としたことが遠慮してしまったようだ。表出ろや貧弱泣き虫陰険スリザリン!」
「では次、所属の団員についての説明だ(無視)」
「ーーーーッッッ!!!」
煽りに煽った癖にセブルスが無視をした。しかもそれがハリーに説明をするという目的があるせいで、行き場の無くなった怒りにジェームズは身悶えていた。ざまぁないね。
「ポッター貴様の知っている人間の中で言うのであればここにいる人間、それからウィーズリーの両親」
「アーサーおじさんとモリーおばさん?」
「ハグリッドやミネルバもそうだ」
「うわっ、マクゴナガル先生のことファーストネームで呼んでるの?きっっも」
「──ステューピファイ」
「ノールックステューピファイやめてくれるかな!!???」
「あと過去にはロングボトムの両親も所属していた。今期からはロングボトムの祖母、それからウィリアム・ウィーズリーとチャールズ・ウィーズリーもだな」
聞き覚えのある名前が出てきて思わず口を挟んでしまった。
「麗しのビルとチャーリーも?まだ子供じゃない」
「……。コワルスキー、シレンシオ」
「わん」
魔法を使ってないのに効果が出る魔法使いってすごいと思うのよ。その一挙一動の言うことを素直に聞いてしまう魅力が最高に愛おしくて頭がハッピーになっちゃう。
「さて、ここまでで大雑把な内容は説明したが、理解出来たかね?」
「はい、大丈夫です。ありがとうございました」
「よろしい」
ハリーはちらりとジェームズの方を見た。
そして少し可愛い仕草で考え込んだ後、セブルスを見上げる。
「スネイプ先生、
「……。ほう?よかろう、
そしてセブルスはワシワシとハリーの頭を撫で回した。
「!!!!???? 僕の息子だけど!!??」
「我輩の生徒である」
「スニベリーの馬鹿ーーー!!!それは父親である僕の役目だし僕を差し置いてハリーと仲良くするの禁止だからな!触るな触るな!スリザリン菌が着く!!」
「先生、またお家に泊まらせてくださいね。僕先生の作ったスープまた食べたいな」
「ーーーーーッッッ!!!!!!」
発狂したジェームズは窓からバリーン!と逃げ出してしまった。
「ハリー、セブルス」
「……お前らえげつねぇ」
すんといつもの調子に戻った二人に、元闇の魔術に対する防衛術の教師二人はドン引きの表情を浮かべていた。
「………………愛」
私は一人、この尊い景色に涙を流していた。
えーん、ジェームズで遊ぶためにそんなに仲良くないセブルスとハリーが手を組んでナカヨピするの控えめに言ってこの世の始まり。
「──これ、どんな状況?」
「ピーター♡♡♡♡」
暖炉の中から現れたピーターがポッター家の惨状に首を傾げていた。
「やぁピーター。久しぶり」
「リーマス、会いたかったよ」
ピーターとリーマスが再会で抱き合う。
そっか、シリウスをおびき寄せる時にはバタバタしててろくに喋れなかったんだよね。
天使と天使の抱擁、ラブ。
するとセブルスが近づいてピーターに話しかけた。
「首尾は」
「上々」
「そうか」
短く交わしたやり取りに絆を感じてso good.
「リリー、あれから大丈夫?」
「体力落ちていたから、最近はスーツケースの中で体力作りしてるわ、それ以外は大丈夫。ありがとうぺティグリュー」
その傍らで、ハリーは混乱していた。
首を捻っている可愛いフクロウちゃんに私が声をかけた。
「大丈夫?」
「あ、いや、これ僕が見たら駄目な気がして。ピーターさんって多分スパイでしょ?ここで騎士団の人達と話しているのって、ヴォルデモート側に知られたらまずいんじゃ……?」
それはまずいと思う。でもハリーが見たら駄目ってわけじゃないと思うけど、ハリーは私にしか聞こえないくらいの音量で『練習頑張ろ』と呟いた。頑張り屋さんのハリーが尊くて可愛くて最高。
「まぁ……大丈夫であろう…」
その疑問に最初に答えたのはセブルスだった。
「あの人なら僕がここに行くって分かってるだろうから、大丈夫大丈夫。なんかスパイ活動してました、とか。旧友と再会してました、とか。適当に御託並べても誤魔化しきくから」
「そんな軽い調子でいいんですか……??」
「まぁあの人だし」
「であろうな」
「あとミリが居るから平気平気。『全部コワルスキーがやりました!』って言えば、彼女の叔母さんを知ってる人が多いから納得してくれるよ」
「あぁ……すっごい説得力あるかも……」
私が飛び回る台風の目みたいな言い方されているけど天使が私の噂をしてくれているので嬉しい。
その話題の先の『納得する闇陣営』に存在するであろうノット達は全然許さないけど。
「ただいま〜!」
「おかえりジェームズ、ぺティグリューが来てるわよ」
「ピーター!いらっしゃい、僕とリリーとハリーの愛の巣へ!ようこそ!家主の僕が歓迎するよ!」
「はーい、お邪魔してますジェームズ」
玄関からジェームズが戻ってきた。
「……17年ぶり、か」
小さく小さく、セブルスが呟いた。
そうか、そっか。
私が死んでから、揃うはずもないいたずら仕掛け人が全員揃ったんだ。
「……っ」
視線を感じたのか私の方を振り返るセブルス。目が聞いてた?って言ってる。聞いてたよ。
「で、そこのワンちゃんはなんで小さくなってるの?」
ピーターが視線を向けた先にはシリウスがいた。バツが悪そうにチラチラとピーターを見ている。
「ピーター、あー、その、悪い。いや申し訳なかった。なんと言ったらいいか、お前のこと信じずに殺そうとして……」
「怖かったよ、親しい友に殺意を向けられて、あぁ僕らの友情はこの程度だったんだって……」
「ご、ごめん!本当にごめん……。俺を許せないだろうけど、ヴォルデモートも殺すまでは見逃して欲しい」
「許すよ」
ピーターは聖人君子のように微笑んだ。
「ぴ、ピーター……!あぁ我が友ワームテール……!」
「でも──僕が許してもミリーが許すかな!」
「──へっへっへっ!愛しのピーターを傷付けるだなんて何たる狼藉!デスオアダーイ!」
──スパパーン!
これはセブルスがピーターと私の頭を叩いた音。
「乗らせるなピーター、乗るなコワルスキー」
「「ごめんなさい」」
ずっと思ってたけど、先生をしているセブルスって頭を叩く才能に目覚めたよね?
痛みを少なく、しかし音を大きくして圧倒させるというか。
「まぁシリウス、それはさておき。僕実は君を利用して雲隠れしただけだから気にしないで」
「は……?」
「君がアズカバンに行く羽目になるとは想像していなかったけど。君は僕に嵌められただけだから。殺されるつもりというか、殺されたフリをする準備をして行ったんだ、気にしないでよ」
「はぁ!!???」
ピーターはそこまで言ってハリーの方を向いた。
「ハリー、君はこれからも大変だろうけど。君が両親と再会できたことを僕はすごく嬉しいよ。ここまで頑張ってくれてありがとう。大人達が君の人生を振り回してごめんね」
「えっと……まだよく分かってない事は多いですけど、僕は誰も恨んでませんし、不幸だと思ったことは……まぁ入学前までは思ってましたが。この4年間一回も思ったことないです。だから気にしないでください」
「ピーター、俺を嵌めたってどういうことだ!?」
「知らなーい」
ポンッとピーターはネズミに化けて私の服に飛び付いたため、私は大事に抱えて引き寄せる。
「てめっ、コワルスキーのところはズルいだろ!」
「ポケット?いいよ。ふかふかの綿があるから。ウトラいるけど問題無さそう?了解」
ポケットを指さして来たので私は彼をポケットに入れる。いいだろシリウス。
「ピーター!!」
「ねぇセブルス、もしかして僕らの中で一番かわいそうな人って僕じゃなくてシリウスの可能性ある?」
「自業自得であろう、気にするな」