─矛盾─   作:恋音

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14.それ以外の魔法使い

 

 2年というのはホグワーツ生活にも慣れ始めた年で、月日はあっという間に過ぎて行った。

 

 それでも変化というものは起こるようで。

 

 

 私はクィディッチが嫌いになった。友人があれだけボロボロになる姿を見て、嫌いにならないわけが無かった。それでも1年実況をした私は褒められていいと思う。余談だが実況中はそうでも無いのにその前後は倒れるくらい顔が青くなるらしいから、私はひょっとして演技の才能があるのかもしれない。

 

 ジェームズはシーカーとして寮対抗クィディッチ杯をグリフィンドール優勝という形で終わらせた。一躍有名人というわけだ。最近調子に乗っているのか、怪我をさせそうな程派手な悪戯や眉を顰める様な驕った態度が目立ち出した。

 

 シリウスは基本的にジェームズと連動している為活動が派手になっていく。ただし、『ブラック家次期当主』を目指しているのでレギュラスの前では大人しめだ。魔法界の頂点に君臨するブラック家のトップになれば、そこから魔法界を変えることができるから。

 

 リーマスは月に3日ほど居なくなる事を除けば特に変わりない。でも最近私の魔法生物達と交流する時間が増えている様な気がする。可愛いの極み。

 

 ピーターは魔法道具の魅力に取り憑かれているのでスリザリンのアルトリウスにぴょこぴょこついて行っていた。その姿に一個下であるアルトリウスの弟のアルトスが不思議そうな顔をしていたけどまぁ問題ないだろう。

 

 リリーはジェームズの求愛行動を無視しながら、1個下のダーク・クレスウェルという同じマグル生まれの子のお世話をしている。魔法薬学が苦手らしく、得意なリリーが奮闘している姿は女神と見間違えた。

 

 セブルスは意外とリリーの行動に嫉妬はなく、自分も集中出来ることを見つけているから私と一緒に魔法薬研究に励んでいる。魂の双子の悪戯に引っかかっているスリザリン生の味方をして怒鳴り散らしたりしているから、スリザリンで株が上がっているのと話だ。ちなみに魔法薬研究にはレイブンクローのMr.ベルビィの助力や助言が大変役に立っている。ありがたい。

 

 

 

 そして今年卒業する勢。

 

 

「うえっ、ふぐっ、ルシィーっ」

「……シシー、ちょっとこのハンカチ濡らしてくれないかな」

 

 私はルシーのローブを掴んでべそべそ泣き喚いていた。

 

「全く、この子は。いい加減になさい、ルシウスの迷惑ですわ」

「シシーのツンデレが今後気軽に味わえない辛い……」

 

 

 私が2年生の終わりに卒業するのはルシーの学年だ。

 そこそこ交流のある上級生というのは結構いるが、具体的に名前を上げるとしたら。

 

 ルシウス・マルフォイ

 ナルシッサ・ブラック

 アルトリウス・ウィーズリー

 ダモクレス・ベルビィ

 テディ・ノット

 

 と言った所だろう。

 この全てにおいて純血貴族という事実、我ながら凄いと思う。私となんだかんだ交流のある方々だ。

 

 Mr.ベルビィ以外皆スリザリンか。私がセブルスに会いたくてせっせと朝食の時スリザリン席に移動している成果だよ。

 

「ルジーとシシーどあえな゛いのづらい!げっごんしぎぃ、よんでよォ!」

「「それはちょっと」」

「レギュラスは当然だけど、シリウスとジェームズは招待されてるのになんで私はダメなんですがぁああ!」

 

 ホグワーツ特急に乗ってロンドンに行く道すがら、私は着いてくれるなとばかりに癇癪を起こして泣き叫ぶ。

 ジェームズ達が取ってくれたコンパートメントに入らず廊下で咽び泣いている。

 

 冷静に考えると通路で喚くのが迷惑なのは分かりきっているんだけど割り切れほど大人じゃないですぅ!

 

「だって貴女、純血じゃないでは無いですか」

「うぇええぇぇんっ!」

「この2年、貴女がホグワーツに入ってきてから大変迷惑してたんですよね。純血でもない貴女が私の周りを蜜蜂の様にブンブンと」

「ヴボァッ!」

 

 ルシーの言葉に胸を押さえ蹲る。

 最高オブ最高かよ。その蛆虫を見る様な視線が堪りません。

 

「マ、マルフォイお前……!こいつらに優しくしているから見直してたのに!」

 

 4年生のグリフィンドール生、確か半純血の人が恨めしそうにルシーを睨む。

 

「おや、私は純血主義のマルフォイですよ?何を勘違いされているのやら」

「ぅわぁ」

 

 相変わらずドン引く美しさである。

 可愛い子には分け隔てなく愛でる(行動にはなかなか移さない)同志だということに、私の崇拝対象だと言う所でルシーの価値はズドンと重い。はぁ、純血主義バージョンのルシーとか私得。

 

 

 そう言えば、ルシーが純血主義だと言われているのには理由がある。

 

 

 ブラック家は顔がいい。

 ブラック家は純血主義である。

 ブラック家の親戚は純血である。

 

 純血は顔がいい。

 

 

 ……分かるな。贔屓する顔のいい人達が純血だから純血主義だって言われているんだよ。

 

 でも純血を尊ぶ姿勢を否定しないどころか、こうやって純血主義だと振る舞う理由は分からないな。尊ぶは純血ではなく可愛い子なのに。

 

「……あ、俺分かったわ。マルフォイ」

 

 お目付け役として私について来ていたシリウスがポツリと呟く。ルシーはニッコリ笑っていた。

 

「帰るぞコワルスキー」

「いやぁああぁあ!シシーのドレス姿見たいいいい!でも卒業しないでえぇぇ!」

 

 はっ、と思い出した。

 私はシシーのウエディングドレス姿を見たいんだ!

 

「離してシリウスううう!」

「オーよしよし、大丈夫だって。マルフォイは別にお前のこと嫌っちゃいねェよ」

「そんなのはどうでもいいんだよ!私の顔が変わらない限り嫌われることは無いって確信してんだよ!私、欲望に忠実!ルシーの態度はむしろ興奮材料です!」

「……お前」

 

 抵抗も虚しく引き摺られた。女の子にこの扱いはどうかと思うんだけど、英国紳士。

 

 

 

 ==========

 

 

 

 ホグワーツ特急でロンドンに着いた後、私はパブ漏れ鍋からダイアゴン横丁に入り込んだ。シシーに濡らしてもらったルシーの紋章付きハンカチをどうしようと思いながらフラフラしていたんだ。

 これで目元冷やせってことなんだと思うけどこんな聖遺物を私が使えるわけないじゃないか!

 

 状態保存の魔法みたいなの無いのかな。同級生組も上級生も断ってきたから大人に頼る他ないのかな。

 

 ウロウロしながら暇そうな人に声をかけていく。

 

「ただの状態保存ならともかくその水分を上書きすることなく保存出来るわけが無いだろ」

「コワルスキーの嬢ちゃんだな。息子に関わるのを控えろと言われているんだ」

「あー、君が例の……。おっと娘の迎えがー」

 

 

 悪評が辛い!

 声をかけてもかけても私を基本知ってる保護者にしかぶつからない!そりゃそうだよね!だってこの時間帯はお子さん達がホグワーツから帰ってきた時間帯なんだから!

 

 

 苦肉の策だ、デメリットが大きいがメリットも大きい!

 私は人があまり通らない様な埃っぽい道を通って『裏側』へと足を踏み入れた。

 

 

 裏側というのも、ダイアゴン横丁の裏の顔というべきものだろうか。裏側に住む住民が売買する場所。

 夜の闇横丁、ノクターン横丁だ。

 

 基本空気の悪いこの環境、魔法生物にとって大変好ましくない、が、腰にいるスウーピングエヴィルとかは大好きなのだ。繭になっているエヴィルがぴょこぴょこ微振動を発生させていた。

 

 ……可愛いな。うん。

 

「はぁ……」

 

 現実逃避しても仕方ないと思い周りを見渡すが、頭の狂ったやつしかいなくて思わずため息を吐く。

 薬の乱用者と同じような反応しかない。

 

 私が求めるのは理性も保った魔法の腕が一流で小娘に見返り求めるくらいなら鼻で笑う様な裕福な人間。そう!悪役的なポジション!例えるならルシーとか純粋ピュアな方のノットとか!それの大人バージョン!……ルシー達も十分大人なんだけどね、こう、ニュアンス的な意味で。

 

「お?」

 

 ふと、行き止まりの小道に視線が行った。何も違和感なんてない筈なのに私の心がそこにいると訴えかけてくる。

 

 1歩1歩進んで私はその違和感の前に立った。

 

「お兄さんこのハンカチを術者のかけた魔法を維持したまま上書きせずに保存できる魔法とか知らないかな!?報酬は私が匿うって事で!」

 

 怪しいだとかそんなこと言ってられる暇が無いくらいに私はハンカチを保存したかったのだ。察しろ。

 

「……なぜ、俺様がここにいると分かった」

 

 何も無い空間から聞こえて来た大人の声に私は思わずニヤリと笑った。

 

「フッフッフッ、初歩的な事だよホームズ君」

「初歩的な事で間違えているがそこはワトソンだろう。後、そんなセリフ存在しない」

「あれ?」

 

 帰って来た言葉におかしいな、と思いながらも理性的な言葉で一安心する。

 

「ともかく答えよう!正解はその透明マントを見なれているからさっ!いや、本物は流石に一部の条件下を除いて無理なんだけど、流石に製作者側の生産者としたらわかるよォー!」

 

 ハロウィンで本物の透明マントを見ることが出来て本当に良かったよ。この夏休みは透明マントを作ってみようと思っていた所だからね!後水中生物の対処も学べるらしい!くぅー!たのしみ!

 

 1人ニマニマしていると透明マントを被って見えない状態のお兄さんは怪しげに笑い始めた。

 

 

「答えてくれた代わりに俺様も答えよう。先程提案した維持魔法は、出来る」

「うわぁーーいっ!やったァ!」

「ただでする程善人でも無い、匿うことが条件だ」

「是非も無いよね!」

 

 いそいそとスーツケースを広げる。小屋の中に何も居ないことを確認したら私は透明なお兄さんに向かって指示を出した。

 

「さっこーい!」

「…………は?」

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

 スーツケースの中に入っても姿が見えない。

 ピリピリと警戒した魔法生物の様な気配が背筋を撫でる。あぁ、私がスーツケースの中に降りた時、背後を取れる場所に隠れていたのか。

 

「貴様は…──」

「とりあえずこのハンカチ!」

 

 ビニールで汚れが着かない様に保護したハンカチを差し出した。

 

「あっ、ひょっとしなくても警戒してるよね!どうしようとりあえず私の杖預かって!」

 

 杖はあってもなくても無駄に変わらないのでハンカチと一緒に差し出すと、透明マントから手が伸びてきてふたつを奪った。マントの微かな光から魔法を使ったのかと確信する。そしてホイ、と雑に投げ捨てられたハンカチは死ぬ気で地面に着く前に守った。

 

「何するの!?宝物なんですけど!?」

「知るか」

 

 はぁー、と深い溜め息が聞こえてくる。

 

「ここはトランクの中を拡張魔法で広げた場所か。ふむ、扉の先に魔法生物の反応があるのは見た。なるほど、では、トランクはどこに置いた?」

「わぁ!お兄さんさてはかなり把握能力高いな!多分知ってると思うけど、ボージン・アンド・バークスの一室。こういう緊急時にはスーツケースを置くスペースとして借りてるんだよね」

「無用心な。目くらましの術くらいかけぬか」

 

 透明なお兄さんはスーツケースに魔法をかけた。そして透明マントを脱いだ。

 

「なぜ俺様を匿う、という思考に至った」

「えっ、だって目くらましじゃなくて透明マント使ってたから」

 

 杖を向けられているが気にせず棚を漁る。

 おっ、あったあったちょっといいとこの紅茶。冷やしても美味しいから夏場は重宝している。去年ジェームズに貰ったやつ。

 

「お兄さんとりあえず座れば?ピリピリしてても疲れるだけだよ?」

「なぜ警戒しない」

「別に私の天使に牙を向いたわけじゃないし。それにハンカチに維持魔法付けてくれた恩人だからね」

 

 熱い紅茶にこの前作り出した魔法薬を1滴垂らすと紅茶は冷たくなる。ガラスのコップに注いで完成だ。

 

「よいしょ、イギリス式じゃなくてごめんね」

 

 備え付けの机に冷蔵庫から取り出したサンドイッチと先程作った紅茶を置く。氷入りの紅茶は慣れないだろうから普通に冷たくしただけにしたんだけど受け付けられるかな。

 

 お兄さんは仰天しました、という顔をして私を眺めている。

 

「お互いを知ることから始めよう!どうせお腹空いてるんじゃないの?」

「まぁ、そうだが」

「毒殺とか警戒する?一応私も同じ食事を摂ろうと思って大皿出しで手掴みのサンドイッチと同じ形のコップで同じように作った紅茶なんだけど」

「……ふ、はは、なるほど面白い。俺様の姿を見て怯える所かもてなすとはな。貴様純血の出か?」

「いや全く。純血のお友達は結構いるけど……あれ?友達だよね?えっ、もしかしてスリザリンの人とかお友達って思ってない?信じてるよ?新学期始まったら問い詰めよう、うん」

 

 私はお兄さんに手を出した。

 中々ファンシーな出で立ちをしているがとりあえずルシーとシシー合作の宝物を守ってくれてありがとう。

 

「エミリー・コワルスキー!ホグワーツ2年生!ご覧の通り魔法生物のスペシャリスト候補です!」

「……はー、マグル生まれか。それにしては中々な施設を持っているな」

「いやいや、親戚の伯父さんが殆ど作ってくれた。えーっと、多分知ってるだろうけどニュート・スキャマンダーって人」

 

「言葉の節々から察するに、貴様は半純血でアメリカ出身でスキャマンダーの姪、そしてポッターと親しい仲でスリザリン以外の寮生でマルフォイと付き合いがあるということか」

 

 私の手をガン無視したお兄さんは顎に手を置いて少し考えた後、そう発言してドヤ顔した。

 びっくりして目を見開く。

 

 

「……凄すぎて冷静になった」

「なんだそれは」

 

 訝しげな表情でお兄さんは席についた。

 

「俺様の名はヴォル……」

「ん?」

 

 名前を言いかけて口を噤んだヴォルなんとか。しばらく考えてまぁいいかと思ったのだろう。仕方ないという表情で続きを口に出した。

 

「ヴォルティーグだ」

「おぉ、羽毛の生えた蛇様に擬態する神様と同じ名前だ。名前呼ぶ度に心のどこかが削れそう。うん、ヴォルちゃんでいいよね!」

 

 無言は肯定!無言は肯定!

 蛇神イグ様の子と同じ名前を呼べるわけが無いよね!

 

 ……嘘ですヴォルで止まったから名前のイメージが強過ぎるだけです。

 

「それでヴォルちゃん。私が匿うって思った理由だっけ?」

「いや、大体分かった。あのニュート・スキャマンダーの親戚だと言うなら予想は出来る」

「……マジかよ」

 

 名前に関してはガン無視か。そう思いながら発言する。あれか?名前に執着無いタイプ?

 

 席について紅茶で喉を潤す。

 はー、冷たい紅茶って夏に向いてるよね。

 

「目くらましは移動事に魔力を食う。魔法生物を扱う者なら知っていて当然だ」

「使えた事は全くないけどね」

「その代用として透明マントを使った。しかも旅行マントに目くらましをかける物ではなくデミガイズを使用したタイプの物。長期間の目くらましに向いている、というわけだ」

 

 長期間目くらましが必要という事は何者から隠れている可能性が高いということ。

 ヴォルちゃんは面白そうに笑っている。

 

「よくぞそこまで観察してみせた。一瞬の判断力が優れている」

「OK、ヴォルちゃん。キミがまだ小屋の外を見ていない事は分かった。チラッと覗いただけだね?」

 

 咄嗟の判断だとか、状況の観察だとか、魔法生物を相手に過ごすんだったら心から大事になってくると思っている。普段と違う様子、体調、状況から判断するし、その判断だって迷っていたら手遅れになる可能性がある。

 

 それが魔法省分類レベル3以上だ。

 

「まぁいいや、とりあえず食べよう」

「……そうだな」

 

 父さんのパンに私が作ったおかずを挟んだ物だ。強請られたので作ったホグワーツ特急での残りだけど。

 適当に取って食べる。うん、いつもと変わらない味。

 

「……美味いな」

「美味いでしょ。皆絶賛してくれる」

「うん、美味いが、少し足りないな。なんの味だ……。そうか、深みだ」

 

 初めてだ。

 初めて、私の料理を褒めるだけで終わらせなかった人。

 

「ヴォルちゃんって凄いんだねェ」

「フハハハ!称えるがいい!」

「ねェヴォルちゃん、私いつまで匿えばいい?夏休み?」

 

 大笑いし始めたヴォルちゃんに私は首を傾げて聞いた。

 何を言っているんだコイツ的な視線が私に突き刺さってくる。え、何、おかしい事言った?短かった?

 

「何を企んでいる」

「魔法生物のお世話と料理の味見♡」

 

 優秀な魔法技術と的確な舌を持っているのなら使わない手は無い!匿うので手伝ってください!それに魔法薬の研究の手助けになってくれるかも!私には先を生きた大人の知恵と知識と発想が地味に必要です!

 

「貴様……」

 

 はぁーーー、と深すぎるため息を吐くヴォルちゃん。

 

「夏休み中。夏休みだけでいい」

「やったァ!私の料理スキルが上がっていく!」

「俺様好みの味付けになるだけでは無いのか……?貴様本当に魔女か?俺様を追う奴らが……」

「まぁまぁまぁまぁ!」

 

 助手という立場でいいのでは無いかな!うんうん!

 それに腕のいい魔法使いみたいだから、私のド下手実技をなんとか出来るかもしれない!

 

「俺様が怖くないのか」

「ヴォルちゃんの事よく知らないし、私は会話出来る者の区切りって大体『好みの人』と『それ以外』だからなぁ」

 

 ここで初めてヴォルちゃんの頬が引き攣った。

 

「好みか、関係ないな」

「あ、そうだルシウス・マルフォイって知ってる!?大概の立場の人間は知ってると思うんだけどもうほんとに美しくてさ!全ての所作が輝いて見えるの本当魔法だと思う!多分闇の帝王が私に呪いをかけているんだと思うよ!なんかの凄い魔法!」

「酷い冤罪だ」

 

 引き気味の表情でこちらを見てくる。

 じゃあ多分闇の帝王の仕業じゃないならゲラート・グリンデルバルドだよ。そうだそうだ。

 

「ならば、それ以外はどう思っているのだ?」

 

 私は少し考えた。それ以外。よく知らないそれ以外だと、例えば目の前にいるヴォルちゃんだと……。

 

「……生きてるなぁ」

「大概の人間を大雑把に見すぎていないか貴様」

 

 私はにーーっこり笑った。

 

「今はキミに全く興味の無い私だけど、たまたま出会ったお兄さんを招く事は出来るから安心してよ」

「……『知らなかった』というわけか」

「そうそう!私は興味無いからキミの事は全く知らないの。例え闇の魔法使いだろうと凶悪犯罪者だろうと、知らないの。誰に居場所を教えればいいのだとか、そんなのも全く興味無いから知らない」

 

 捕まろうが死のうが興味無いけど、そもそもそうなるに至らないのがこのスーツケースの中に居ることだ。

 だから安心していいよ、と伝えるとヴォルちゃんは大笑いし始めた。

 

「フハハハハ!俺様に対してこうも口を聞けるとは笑わせてくれる!」

「遠回しな言い方苦手なんだけど楽しめたのなら良かったよ」

「だが1つ勘違いしていることがある」

 

 ヴォルちゃんはずい、と顔を近付けた。赤い瞳が私と緑の瞳を凝視する。

 

「イギリス人が好むのは遠回しな言い方ではなく皮肉めいた言い方だ、アメリカ人よ」

「マジで?」

 

 2年目にして認識を誤解していたみたいだ。セブルスが皮肉ばっかり言うのはそういうコミュニケーションだったんだねぇ。

 

 ……ジェームズ・ポッターのアメリカ人ッ!

 




赤い目をした例のあの人。ゲットだぜ!

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