─矛盾─   作:恋音

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17.満月の夜

 

 

 私とセブルスは魔法薬の研究により一層力を入れていた。何よりも早く脱狼薬を仕上げたかった。

 折角軌道に乗り始めた脱狼薬。Mr.ベルビィにも報告すれば絶賛されたのでトリカブトを使用した方法で進めていく事になった。

 

「ミリー、スネイプ、今夜いいか?」

「また抜け出すの? リーマスが居ないんだから大人しくしてた方がいいんじゃない?」

「なぁ、僕夜は課題で忙しいんだけど」

 

 本日の全ての日程が終了し、教室に残ってあーだこーだと理論を考えていたらジェームズが声をかけてきた。

 これから実験するけども、夜はお互い課題や世話で時間が潰れる。セブルスも難色を示していたが、友達の誘いともあって強く拒否は出来ない。

 

 まぁセブルスもジェームズもお互いが苦手な部類だから余計にだろうけど。

 

「銅像の裏から抜け出して来てよ、暴れ柳の傍で待ってるから」

「いいけど……今度は何をするつもりなの? ハロウィンは共闘無しだよ?」

「分かってるって! それとスネイプはついでだからな、仲間外れにするのもどうかと思って誘ってるだけだから!」

「はいはい」

 

 ハロウィンは1年2年と負け越しなので今年こそは素晴らしいイタズラを仕掛けたい。周囲に評価を聞くのが1番公平だろうけど、本当に2年間ははっきりと負けだと分かるので悔しくてたまらない。

 

 まぁ1年の耳生やしクッキーはジェームズとシリウスの最強コンビも負けとか言ってるので引き分けでいいかもしれないけど、セブルスが譲らないのでね。

 

「……素直になれないお年頃なのかな」

「かもなぁ」

 

 ずんずんと去っていったライバルを素直に誘えない男ジェームズの背中を見ながら2人で言葉を交わした。さて、脱狼薬の続きとしますか。

 移動が勿体ないのでスーツケースじゃなくてマートルのトイレで。

 

 

 

 ==========

 

 

 

 夜中はよく寮から抜け出すので扉の婦人に小言を漏らされながらも問題なく外へと向かう。同室のリリーに見つかってしまったので彼女も着いてきたけど、途中出会ったゴーストの方達に挨拶をして暴れ柳の元へと向かった。

 

「セブ」

「えっ、リリー? なんでいるの?」

「ごめんセブルス、見つかっちゃった」

 

 仲間外れ禁止、とばかりに腕を組んだリリーに私が勝てる可能性が1パーセントでもいいからあると思うかい?答えは考えるまでもなく無い、だ。

 

 その気持ちが伝わったのかセブルスは腕を組んで誇らしげに頷いている。心の声を代弁するなら『だって僕のリリーだからな!』という感じ。リリー大好き星人め、私のオープンな愛に感化されて段々オープンになってきたな。

 キミ達の幼少期の話は幸せな気持ちになるのでもっと積極的に話してくれていいんだよ。

 

 例えばワルツの真似っ子遊びしてて男女パートがどう考えても逆だったこととか。私はリリーに支えられながらわけも分からずキャッキャと楽しむセブルスの姿を妄想して吐血しそうになったよ。その話をしたリリー本人は腕を組んで誇らしげに頷いていたので幼馴染みって行動がリンクするんだなぁ、って思ったね。

 

「っはー! フィルチって透明マント効かないんじゃないの!?」

 

 ゼェゼェと息を切らして、ジェームズが文句を言いながら現れた。

 

「ピーター! 無事で良かった今日も世界は平和です!」

「その脈略のなさとかミリーにしか出来なくて偽物とか疑えないよ」

「シリウスー! 今間違いなく天使に褒められたよね!」

「……おう、そうだな」

 

「おおいそこのシリウス・ブラック、ツッコミを諦めないで欲しいかな! 僕が無視された所とか! 褒めてるのか微妙な所とか!」

 

 透明マントでボサボサになったピーターが可愛くてしんどくて軽率に死ねます。

 天然パーマのピーターとジェームズが髪の毛を一生懸命直している中、シリウスが私の頭でドリブルしながらリリーに話しかけた。

 

「エバンズがいるなんてな」

「あら、最近エミリーを取ってる悪戯仕掛け人の皆さん。御機嫌よう」

「はわ、はわわ……嫉妬リリー可愛い……顔がいい……美人度増してきた……」

「お前本当に可愛くねェよなぁ」

「え?美人だって?ありがとうシリウい゛っだァ!? こいつ躊躇なくレディのケツを蹴った!」

 

 手加減を全くしてない蹴りが私のお尻に……。

 うおぉ! とお尻を押さえて膝から崩れ落ちる。いやこれは痛いって。少なくとも英国紳士目指してる男が女に向かってする行動じゃないって。痛いヒリヒリする。大丈夫、私のお尻割れてない?

 

 シリウスは最近言葉じゃなくて行動で何かしらを訴えてきだしたから察するこちらは大変だよ全くこいつは困るんだからー。普通に言葉で伝えてよ。このまま行くと私はシリウスの視線で言葉を探らなきゃならなくなるじゃん。目と目が合うその時心は揺れ動き想いを伝える。

 

 口 で 言 え 。

 

「人が来るぞ、少しは静かにしろよ」

「セブルス誘拐されない? 大丈夫?」

「そうやって脊髄で発言するから頭おかしいって言われるんだぞ」

 

 腕を組む姿が可愛すぎてちょっとどうすればいいのかわからない。魔法生物は私じゃなくてセブルスの様な天使を守る方が世のため人の為、そして平和の為になると思うんだ。

 人は世界に平和をもたらした天使に祈りと感謝を捧げ天使は慈愛の笑みを浮かべる。ただ生きているだけで世界は循環する。

 ということは天使に魔法生物というボディーガードを纏わせることは世界で1番名誉ある役職なのでは……? 畜生! 魔法生物に生まれたかった!

 いやまて、根本的なところを見失っている。まずセブルスという天使に手を出すという馬鹿がこの世に何人存在する?神に逆らう事が不可能の様に天使に手を出そうとするか?

 

 ……。

 …………。

 

 私なら出すな。そのおみ足を撫で回したい。涙目で睨まれたいし蔑まれたいし罵られたい。

 

 魔法生物ボディーガード必要だな。誰に頼むのが1番有効的だろうか。それともブリーダーとして未熟な私が世界の要の守り手についてもいいものか。

 天使はこの場に3人もいるんだ。これは重要な役割になってくるぞ。

 

「コワルスキー?」

「バジリスク辺りがセブルスにはお似合いだと思う」

「なんでそうなった?」

「ジェームズ、時間かけてるからミリーが壊れたよ。なんか魔法生物とお見合いさせられる気がする」

「ミリー、僕だとどんな魔法生物が似合う?」

「肥溜め」

「こえだめ」

 

 ジェームズなら肥溜めに浸かってたりするだけで誰も手を出さなくなると思う。私は天才だからね、こんな考え造作もない。

 

「……まぁいいや。2年かけてようやく見つけた成果を共有しないと」

 

 不服そうな顔でジェームズが呟くと暴れ柳に向かって行く。

 

「あっ、ポッター! 暴れ柳は貴重な材料だから絶対に傷付けない様にしてくれ!」

「魔法薬学オタクめ! 分かってるよ!」

 

 セブルスの忠告を素直に聞き入れたジェームズはドヤ顔をして魔法を暴れ柳のコブへとぶつけた。それだけで近付こうとした者を寄せ付けない暴れ柳はただの柳へと変わっていった。

 

 え、素直に凄い。暴れ柳を手懐けた。

 

「ふふん、凄いだろう」

「ハイハイそうね」

 

 でかしたジェームズ!素晴らしいオブ最高!

 暴れ柳の材料がこれで手に入る!素晴らしい!

 

「こっちだ、滑りやすいし暗いから気を付けてね」

 

 ジェームズが示すのは暴れ柳の根元にある穴。よく目をこらすと木の根で自然な階段状になっている。

 隠し通路だったわけね。これでホグワーツから脱走する通路が1つ増えたというわけか。

 

 今で合計5つ目だから恐らくまだまだあるな。

 

「でも凄いよジェームズ。どうやって見つけたの?」

「あー、見つけたのは僕じゃないんだ。リーマスとピーター、って言った方が正しいかな」

「流石私の天使。略して天使」

 

 微妙な笑顔を浮かべているピーター。リーマスが今居ないから1人で喜ぶのはなんだか違う気がするんだろう。

 

 可愛い。世界よありがとう。

 

「行こうか」

 

 ジェームズが先頭で、指名されたのでその次が私。セブルス、リリーと続いて殿がシリウス。

 先生とか他人に見つかった瞬間逃げやすい上に天使を守れる位置だ。私は遠慮なくジェームズを囮にするけど。

 

「これ、どこに繋がってるんだ?」

「1週間くらい前にこっそり調べたけど、無人の屋敷に繋がったよ」

「この方角で屋敷と言うとっ、まさか叫びの館!?」

「あれー?スネイプ、もしかして幽霊とか怖いのー?」

 

 私を挟んでセブルスとジェームズが口喧嘩をし始める。

 幽霊怖いセブルスとか誰得だよ私だよ。

 

「ミリーって幽霊怖がったりしないよね。血塗れの男爵とか首なしニックとかさ、あと灰色のレディ」

「有り無しは生死じゃなくて好みで決めるから……。正直そこにいる好みの人間が生きてようが死んでようが関係ない……」

「うっわぁ」

 

 ジェームズにすっごいいい笑顔でドン引きされた。

 

「むしろ美人の幽霊に憑かれたいし祟り殺されてもお礼しか言えない」

「僕生まれて初めて幽霊に同情したよ」

 

 灰色のレディに出会う度に求婚してたら男爵がセコムについた。酷い扱いだとは思わないかな。

 

『ヴ……ァヴヴヴヴヴヴヴ……!』

 

 獣の呻き声の様な音が私たちの耳に入った。それほど距離は歩いて無い気がしたが、いつの間にか人工物の扉が見えていた。

 

「ねェ、無人詐欺」

「無人の屋敷とは言ったけど今無人だとは言ってないね」

 

 ナウだよナウ。とジェームズが笑顔で言ってきたので思わず殴り掛かる。足跡は人の足跡しか無いから魔法生物では無さそうだけど、私をわざわざ呼んだって事は魔法生物な気がする。

 

 無人じゃないと想定していたみたいだから、最近になって怪我した野生の魔法生物を保護したとかそんな感じかな。

 

「わざわざ夜に来なくてもいいのに」

「いいや、夜じゃないと確信が出来なかった。僕もここから先には進んだことないから念の為ミリーを連れてきたんだけどね」

 

 え……?

 

 どういうことが脳みそが理解を拒んだ。その一瞬でジェームズは唸り声のする部屋への扉を開こうとしていた。

 

「ピーターの魔法具様々だよね。位置を把握出来る装飾品を作っちゃうんだから」

「待ってジェームズ! 中に何が居るの……!?」

 

 扉の先に。

 傷だらけの狼が居た。

 

 普通の狼では無い、毛の薄いガリガリにやせ細った手足の長い。初めてみた特徴だ。だけど、私はよく知ってる。

 

 

「ウィアウルフ! ダメ! 下がって!」

「ミリー大丈夫、僕らなら大丈夫だって、彼は狼人間じゃなくて……」

「ッ、ふざけないでジェームズ! 彼? 彼って言った!? 知ってたんならなんで言わないの! 調べたんでしょ! 魔法省分類くらい授業で習ったでしょ!」

 

「──ポッター!」

 

 

 

 緑色のローブと真っ赤な鮮血が視界に入った。

 

 涎を垂らした狼人間は長い前足を使ってジェームズに降り掛かって、それを、セブルスが。

 

「スネイプ!」

「セブルス!」

 

 くたりと力なく倒れ込むセブルスをジェームズが支える。後ろから赤い閃光が爆ぜ、ウィアウルフへとぶつかったのを呆然と見ていた。

 

「クソ、魔法は効きが悪いのかッ! ジェームズ、スネイプ連れて早いとこ下がれ! ピーター、エバンズ! お前らも早く外に戻れ!」

 

 殿から一気に前へ躍り出たシリウスが私を支えて杖を構える。

 

「ちょっと待ってよシリウス、危ないって!」

「1番危ないのはスネイプだ! 1番足の早いピーターが医務室に駆け込んでマダムぶち起こして来い! ジェームズはスネイプ運べ!」

 

 ダラダラと赤い血が流れ落ちる。

 セブルスが、セブルスが死んでしまう、セブルスが。

 

「危ねぇッ、コワルスキー、しっかりしろ、テメェがここ1番の要だ!」

 

 セブルスが死んで、怪我を、セブルスが。

 

「──エミリー・コワルスキー!」

 

 鼓膜が破れそうな程の大声で意識がハッとする。

 眼前にはウィアウルフとシリウスが力比べをしていた。人間には圧倒的に敵わない勝負だ。

 

「エヴィル!」

 

 腰からトゲトゲした繭を取り出すとその繭はスウーピングエヴィルの成体へと変化し、尾の所にある針の様な噴射口から強力な液体を噴射した。液体は粘つく上に固まり、拘束に丁度いい。

 

「ッ、は、助かった」

「怪我は、噛まれてない?」

「大丈夫だ。明日は筋肉痛に違いねェけど」

 

 ウゴウゴ動いてるウィアウルフの体格を担いで部屋の中へと押し入れる。仲間を呼び寄せてはいけないので口まで拘束しているエヴィルの判断が天才。

 

 心臓がバクバクとうるさい。

 

 セブルス、お願いだから死なないで。キミが死ぬと私は友人を2人も失うことになる。

 

「行こうコワルスキー、アイツらが心配だ」

「……うん」

 

 唸り続けるウィアウルフの殺気を受け止めながら、私は彼に抱き着いた。

 

「ごめんね、大丈夫、絶対助けるから」

 

 エヴィルにここに残るように指示をして私とシリウスは屋敷の外へと出た。二人揃って大きくため息を吐く。

 

「説明して、でもセブルスが心配」

「ならさっさとここから離れるぞ。医務室に行こう、説明はジェームズがした方がいい」

「事と次第によっちゃ私は軽蔑するからね」

「……分かってるよンなこと」

 

 震える足で立ち上がる。

 シリウスは汗を拭って私を見ると担ぎ上げた。

 

「……明日筋肉痛なんじゃないの」

「震えた女を歩かせる程クズに成り下がったつもりはねェよ、この状況を引き起こしたのは、俺らだけどよ」

 

 私より背も体格も大きいシリウスは軽々しく抱えるからなんだか無性に悔しくて鳩尾に1発くれてやった。落とされた。

 

「酔っても文句言うなよ」

「超特急でお願い」

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

「あなた方は一体何をしたのか分かっているのですか!!!」

 

 カンカンに怒り狂ったマクゴナガル先生を目の前に私たちは並んで立っている。セブルスは傷の手当をしている最中に目を覚ましたのでベッドの上だ。

 時間外の医務室で緊急説教タイム。先生、眠たいです。

 

 普段なら医務室での騒ぎは絶対禁止のマダムですら黙認している辺り、彼女もかなり怒っているに違いない。

 

「夜中に部屋の外に出るどころかホグワーツの外に出て!挙句Mr.スネイプは怪我を負っている!何をしたのですか!説明をなさい!」

「だから、僕が悪かっただけなんだってマクゴナガル先生〜っ!」

「そんな抽象的な説明は不要です!エバンズ、貴女なら答えてくれますね!」

「えっと、良く、状況が分からなくて……」

 

 マクゴナガル先生がリリーに視線を向けた瞬間セブルスは痛がってマダムの視線を集め、悪戯仕掛け人は首を横に振る。

 アピールは『何も言わないでくれ』だ。

 

 私とシリウスが来る前からこんなやり取りが続いていたらしい。

 

「はぁ、マダム、スネイプの傷は」

「魔法生物によるものです。大分深いですよ。ただの傷なら完治しますが、これだと傷が残るでしょうね」

「ッ、誰にも、言わないでください。その事は、ここにいる人間と先生方の間でのみの話にしてください!」

「……魔法生物、ですか。エミリー・コワルスキー。貴女であればこの状況を適切に説明出来ますね」

 

 すう、と目を細めたマクゴナガル先生が静かに私に視線を寄越す。

 必死に訴えるセブルスめちゃくちゃ可愛いとか思ってる暇なかったわ。

 

「もちろん、魔法生物による傷です。リリーが説明出来なかったのはその魔法生物が『何か』知らなかったから。前から私の魔法生物が運動不足で困っているとジェームズに話しているのが事の始まりでした」

「待ってミリー! キミが責任を負う必要は無い! 全部僕が悪くて!」

「黙ってジェームズ」

「……。いいでしょう、続けなさい」

 

 苦い顔で口を噤んだジェームズと話の続きを催促したマクゴナガル先生にホッと安堵の息を吐いて私は続きを話し始めた。

 

「日中は流石に人の目があるので、不特定多数の人物相手に魔法生物を出す訳にはいきませんでした。それで、ジェームズは夜を提案してくれました。それで今日、寮を抜け出したのです」

「抜け出す前に何故相談に来ないのです……。貴女が魔法生物の扱いに慣れている上に他の生徒と違う生物をペット申請しているのはこちらも把握しているのですよ」

「それは、ごめんなさい。それとリリーは私が部屋を抜け出す前に注意してくれたんですけど、リリーも私の子には慣れているので人手が欲しくて引っ張り出しました」

「エミリー、私を庇わないで。外に出たのは私の意思よ。それに対して庇われる謂れは無いし、破った校則に対してお咎めを受けるのも私の意思よ」

 

 リリーがあんまりにイケメンな発言をするからキュンとした。ジェームズにも被弾してる。ということはセブルスにも被弾しているはずだ。

 

「……では、外で何があったのですか」

「禁じられた森からキメラが現れました」

 

 マクゴナガル先生は息を飲んだ。

 しかしそう簡単に流されてはくれないのがマダム・ポンフリー。

 

 厳しい目付きで私を見ながら傷の説明をし始めた。

 

「キメラは胴体がヤギです。足は蹄、しかしMr.スネイプの傷跡は鉤爪でした。これについてはどう説明するのですか」

「キメラに応戦したのはワンプスキャット、鉤爪です」

 

 ちゃんと言い訳くらい考えている。禁じられた森でキメラを見たのは本当だ。

 ウィアウルフを理由として正直に話すと、悪者が出来てしまう。

 

「……なるほど、それでポッターは貴女を庇おうと」

「待って先生! ミリーは悪くないんだ! 本当に、僕の軽率な判断が悪くて!」

「おいポッター。いい加減黙ってろ、うるさい」

「ッ、スネイプ! お前だって分かってるだろ!」

「分かってるさ! 分かってるからコワルスキーの覚悟を受け止めてるんだろ! いつまで子供のつもりだ!」

「この、野郎……!」

 

 一発触発の雰囲気をマクゴナガル先生は咳払い1つで収めた。

 

 頭に血が上ったセブルスとジェームズは顔を背けて眉間にシワを寄せ、小さく舌打ちをした。そっくりか。

 

「罰則は追々伝えます。ただ、夜中に出歩いた事に関して1人50点減点をさせていただきますからね」

 

 グリフィンドール生はこの場に5人居るので250点も引かれる事になる。年間悪戯仕掛け人が引かれた点数の総数と同じになった。今年はペースが早いなぁ、とか現実逃避してみる。

 

「Ms.コワルスキー、貴女は明日にでも校長と話をしていただきます」

「はい」

「なんでミリーがッ!ぐ、う……待ってすごく痛い鳩尾やめて」

 

 言うと思っていたので私が肘鉄をジェームズの鳩尾に入れて物理的に黙らせた。

 

 ジェームズにも後で話を聞かないとダメだけど、今は黙っていて欲しい。拗れる上に追求されたらこれ以上言い訳なんて思い浮かばないから。矛盾点を生まないでほしい。

 マクゴナガル先生もイギリス人だからさ、色々と怖いんだよ。

 

「Mr.スネイプはしばらくこちらに寝泊まりしてもらいますからね」

「……分かりました。コワルスキー、しばらく出来そうに無い」

「ううん、リハビリ頑張って。護れなくてごめん」

「僕は護られる気なんて無いけどな。とにかく、皆死んでないんだ。死んだら祟り殺す」

「ご褒美だね……」

 

 へにゃりと笑ったセブルスが可愛くて燃え死ぬ。

 尊さの塊。

 世界は救われた。

 

 

 ……胸が痛い。




激おこプンプン丸な先生達。そしてついに校長と話す事になった主人公、この作品の校長はボケ老人かたぬき爺か。

次回「主人公死す」 デュエルスタンバイ!

ところで推しを傷付けたくなるこの性癖は一体何なのだろうか。まぁ必要事項ですけどね!親世代の学生時代はただのフラグでしかないのだ……!

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