─矛盾─   作:恋音

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19.やばい人

 

 これから寒くなっていく季節。そんな冷え込み出した朝からスリザリン席に現れたのは、『両親の都合でホグワーツを離れていた』リーマスだった。

 

「セブルスッッッ!」

 

 うっわ涙目可愛い。

 口元に手を当てて思わず悶えた。今日も私はハッピーです。

 

「ルーピ……」

「ごめんセブルスッ、僕、僕なんてことを……!」

「あぁその事か。気にしないでくれ」

「え、えっ、え、なんで、ああ違う、そうじゃなくてとにかく謝りたくて、事情、あの、説明、いやごめんっ! うう、ごめんセブルス……!」

 

 なんでもないような顔をしてセブルスが言うも、若干パニックを起こして顔が真っ青なリーマスはあわあわとしている。

 近くに座っていたレギュラスは不思議そうに様子を見ていた。

 

 

 私? 当然朝食はスリザリン席です。1年から不信そうな目を向けられるけど可愛い子以外からの視線は特に気にしてないので。

 

 

「怪我もほぼ完治している。心配しないでくれ。医務室生活で得るものが多くて、マダムに頼み込んで長期間の治療という名目で入り浸れないか交渉中だから」

「で、でもっ」

「そんなに責任感を抱かないでくれルーピン。アレは仕方の無い事だっただろう? ほら、早く席に戻らないと朝食を食べそびれるぞ」

 

 へにょりと眉を下げて困った様に笑う天使が泣きそうな顔をしている天使を説得する。世界はここで平和を迎えた。締結。

 

 

「……何があったんですか?」

 

 リーマスが去ったことを確認したレギュラスが朝食の乗ったトレーを手にして隣に座ると、私に声をかけた。セブルスが食べ始めたのと、私なら答えないことはないという確信からだろうね。可愛い。もちろん答える。シリウスに似なくて本当に良かったねレギュラス。

 

「自分が実家帰っている時にジェームズ達を止められなかったことへの責任感……かな。だって私が教えたからネ!」

「貴女思ったより酷い人間ですよね」

「いい子だよねェ、責任感強くて。可愛いオブ可愛い。可愛いの具現化。気にするリーマス可愛いよう」

 

 スリザリン生はリーマスに同情的になった。

 

 

 

 毎朝ながらザワザワとザワつく朝食の時間だが、今回の客人はリーマスだけではなかったらしい。

 

 私? 別に3年間朝はスリザリンで摂ってるからもう客人じゃないでしょ。

 

 

「……一目惚れです! 恋人や想い人が居なければ、俺と付き合ってください!」

 

 遂に、この時期がやって来たか……。

 

 そう、2年間は行動に移す人物が少なかったから捌くの楽だったし、シャイが多かった。大人数の視線という数の暴力を味方に付ける頭の回る子は現れなかった。周囲、野次馬の雰囲気的に断りにくくなるからね。アメリカでは如何に周囲を味方に出来るかで変わるから、特に苦労した。

 

 私は遠い目をして頭を冷静にさせた後、顔を真っ赤にした子を眺めた。純粋そうで素直そうで可愛い子だった。でもローブは緑だから間違いなくこの状況確信犯なんだろうなぁ!! くそう可愛い!

 

「こいつ揺らぎかけてるぞ」

「コワルスキー好みだやばいぞ」

「おいスネイプあれって」

「放っておいたらどうだ……?」

 

 ざわめきが一段と大きくなる。スリザリン席で動揺が走り、その内容を口を出しているのは主に同学年。特に長期休暇で魔法生物とのお泊まり会(強制)に参加する、私に対して微塵も遠慮のない面々だ。

 

 可愛い子は許すが、他はあとで強制魔法生物育成コースな。私のスーツケースに何が入っているか知ってるだろう同学年。

 

「あー、えっと、キミは誰かな?」

「スリザリン1年の、バーテミウス・クラウチ・ジュニアといいます!」

 

 パッと顔を輝かせてMr.クラウチが私を見る。目はキラキラと輝いていて、可愛いを掻き集めたような笑顔で……。

 

 私はそっと胸を押さえた。

 

「揺れてるな」

「あぁ揺れてる」

「1年2年の時は上級生方が多かったけどもう本性割れてるし今年から下級生が多くなるな」

 

 エイブリー、マルシベール、ノット。

 あんたらうるさい。

 

「父と同じ名前なので、ジュニアと呼ばれることが多いですが、どうかバーティと呼んでください」

「ん゛ッ、んん、OKバーティ。えっと、一目惚れだっけ」

「はい! Ms.コワルスキー。貴女の紅茶の様な美しい髪や、野を想起させる瞳、何よりいつも絶やさないその笑顔に惹かれています」

 

 じゅ、純粋さか私の心にグサグサと突き刺さるっ!

 いや結構可愛い子だから反応に困る。そばでボソボソと私の悪口を言うスリザリンは滅べばいいと思うけど、誰が一目惚れ詐欺師だ。口を慎め。

 

「バーティ、貴方のセンスはとてもいいと思うわ。なんと言っても私を選んだんだから」

「それじゃあ……!」

「でもごめんなさい、私は今やりたいことがあるの」

 

 心を痛め後ろ髪を引っ張られながらもお断りの言葉をハッキリ口に出す。可愛いんだ、可愛いからこそ今までに無いレベルで断りづらいの。

 私は誰か特定の人と付き合ったりとか結婚する気は無いんの本当に……! だってその状態で好みの可愛い子口説いたら浮気になっちゃう……! 全ては世の中に存在する可愛い天使を制覇する為に!!

 

「そんな」

 

 ガン、と頭を何かにぶつけた様な顔でショックを見せるバーティ。心が痛む。可愛いし燃え死ぬ。涙目可愛いよ。

 

「他にも素敵な人は沢山いるから周りに目を向けることをオススメするわ。例えば…──そこ行くパーキソンとか」

「なんであたしよっ! 心底あんたに関わりたく無いんだけど!」

 

 スリザリン7年監督生の女性、パーキソンが丁度通りかかったので話題に出してみる。

 クラウチ家もパーキソン家も聖28一族だから話合うと思う。うん。

 

 

 ちなみにこのパーキソン、去年クィディッチの試合の際、ジェームズの箒に錯乱呪文をかけていた張本人なのだがそれはさておきだ。

 

「何よ、ポンコツ。あんたまた詐欺してるの?やめときなさいクラウチ、こいつ頭おかしいから」

「えっへっへっ、パーキソンのポンコツ頂きました〜!」

「幸せそうに笑わないで吐き気がするわ」

 

 プンプンと怒りながらパーキソンはそっぽを向く。不器用な新手のツンデレだと思うと素晴らしく好みドンピシャったんだよねえ!

 

「可愛いなぁパーキソンとバーティの組み合わせ。というか聖28一族可愛い人多すぎるわ。ルシーが純血主義なの分かるー!私も純血主義に染るー!」

「「「やめろ!」」」

 

 至る所、しかも主に純血の方々から同時に止めの言葉が入った。

 

「クラウチ・ジュニア、同じ聖28一族として言わせてもらうけど、こいつは半純血だしそれ以前に頭がおかしいから止めといた方がいい」

「酷い風評被害だ」

「これ以上にないくらい正確な情報だろうが」

「えっ、え。ですがスリザリンに馴染んでるしブラック家の方々との交流も……」

 

 話しかけたエイブリーに対し、バーティはオロオロと視線を彷徨わせた。小動物みたいでよしよししたくなる。

 

「一周まわって円滑になった方が楽だと気付いたんだ……俺は……」

「そんな諦めているエイブリーに私という呪縛から解き放たれずクィディッチの試合実況を共にしたノットから一言」

「諦めたらそこで試合終了だ」

「ザブトン1枚!」

「……ザブトンってなんだよ」

 

 ノットの発言と私の発言に、エイブリーは頭を項垂れた。最近諦めが早すぎるぞエイブリー! 私と顔を合わせた瞬間にため息を吐いて視線を逸らすのは流石に傷付くんだが!

 

 戸惑った様子のバーティは私に助けを求めるような視線を向ける。んんっ、可愛い。美人というより可愛い子!

 

「──ダメですよクラウチ・ジュニア」

 

 後ろから脳を揺さぶるような甘ったるい声が耳を支配した。思わず硬直すると背後から肩を撫でるようにするりと細い手が伸びて私を抱きしめる。耳元で破壊力抜群の美声の持ち主が呟いた。

 

「この人は、僕に虜なんです。ねェコワルスキー、そんなにこの男が気に入りましたか? 本当に貴女は幸せそうに笑いますよね、まるで泥の中にいる豚のようだ」

 

 レギュラス・ブラックは「おや」と不思議そうに首を傾げた。

 

「もしかしてアメリカ人にはこんな言葉も伝わりませんか? ふふ、仕方ない子ですねぇ。噛み砕いて教えてあげますよ。──貴女、下品で未熟で、それでいて醜い世間知らずなお馬鹿さんですね」

 

「ヴァーーーーー!!!!」

 

 私は言葉のキャパオーバーに思わず奇声を発して涙を流した。興奮も、周りの引いた視線も気にせずレギュラスの手を取る。

 

「貢がせてください!」

「クッキーを所望します。僕の家に来た時に持って来たアレです」

「神よ、私は今、天に向かいそうです」

 

 誰かが神様もお前は要らないって、と言った気がした。

 

「えう、えぐっ、ルシーですらしなかった私に対してのえげつない口攻撃、ゾクゾクするしご馳走様だしでももっと欲しいし欲望を叶えてくれるレギュラスが優しすぎるしはぁーーーきゅんきゅんする。セブルスに足りないのはこれだと思う。好意的な優しさ塗れの手酷い言葉の数々! 厳しいようもっとこうガッツリどぎつい言葉で罵ってくれようセブルス」

「お前それすごく矛盾してるの分かってるのか?」

 

 ひえぇええ、幸せ、私ったらすっごい幸せ者! こんな可愛い子に囲まれてこんなに恵まれてていいの大丈夫私あと何年生きられる!? 死なない!? というか、燃え死ぬよね!

 

 天使は悪霊の火の形をしている。今日の成果だ。

 

「で。──目は覚めましたか、クラウチ・ジュニア」

 

 レギュラスの一声にハッと覚醒してバーティを見る。すると彼は真っ青な顔をして、更に涙目という私の性癖をグサグサついてくる姿で首を横に振っていた。

 

「ごめんなさい、ごめんなさい、夢見てました。近付かないで」

 

 可哀想に、夢に見るぞ、もちろん悪夢。

 黒歴史になるぞあれ。哀れだ。

 

 そんなの声がボソボソと私の耳に入った。

 

「そこお!優しい私がとっても素敵な夢を見れる睡眠薬をぶっかけてやるから可愛くない奴だけかかってこい!」

「貴女それ自作じゃないでしょうね」

「安心してレギュラス、自信作!」

 

 レギュラスはふっかいため息を吐いた。そんなレギュラスも可愛くって罪深い。

 

 

 ==========

 

 

 

 そんな朝の出来事を思い返す放課後の孤独。

 リリーは近々あるだろう薬草学の収穫に合わせて同級生(特にマグルっ子を中心)に指導。セブルスは医務室で治療。魔法生物の傷特化の塗り薬はマダムに許可貰ってプレゼントしたから早く塞がってくれるといいけど。……マダムにはなんの魔法生物が原因だったのかバレてるよねぇ。

 

 

 何故私がこんなにも天使に思いを馳せているのか。

 

「ねェミリー、僕の話ちゃんと聞いてるのかい?」

 

 行く手を阻むジェームズ・ポッターとシリウス・ブラックがいるからだ。

 

「……なんでピーターとリーマスが居ないのよ。呼び出し名はピーター・ペティグリューだったんだけど」

 

 ホグワーツ城の裏にある、人通りの無い抜け道の一つ。悪戯仕掛け人が全員声を揃えて安全な抜け道、と言う場所だ。それ即ち悪戯仕掛け人以外誰も知らないであろう場所。

 

「話題が話題なだけに、リーマスを巻き込めるわけないでしょ? それとミリーはピーターが居ると話聞かない」

「そうだけど!」

 

 ピーターはジェームズの協力者。リーマスは恐らくピーターと一緒に引き止められている。セブルスは医務室に軟禁。

 

 つまり助けは来ないということ。

 

 一類の望みをかけてシリウスを見上げるが奴は腕を組んだまま抜け道の前を陣取って無慈悲にも鼻で笑った。誰がざまぁみろだてめえ。心の中で言ったって分かるからな多分!

 

「ねェ、2人は何を企んでいるんだい? アニメーガスより、リーマスより大事な研究なの?」

「……」

 

 傍観に徹すると、ダンブルドア先生に誓った。

 それを知っているシリウスはため息を吐くと私に質問をした。

 

 

「時折お前らの会話に出てくる狼殺しの薬草、トリカブト。まさかと思うがリーマスに使う気じゃねェよな?」

「……」

「お前……! それすら答えねぇって事は……ッ!」

 

 頭良いな。

 頭は良い、けど、一直線だから誤解は誤解のままなんだろう。

 

 私がリーマスを傷付けるわけが無い。けど、実際脱狼薬という未知の薬を使う時、狼の成分を殺す時、傷付けてしまう可能性がある。

 だから私は何も答えない。

 何も答えられない。

 

 そもそも主体はセブルスだし。天使の為に頑張る天使を私は全力バックアップ&サポートさせていただきます。

 

 そうそう、バックアップと言えば。去年卒業したレイブンクローの魔法薬学オタクのダモクレス・ベルビィが気軽に連絡を取れない、フクロウじゃ時間がかかりすぎると手紙で文句を言っていた。共同研究という形だけど、セブルスと私がまだ学生だから寮にいるってのが逆に不便なんだろうね。

 電話とか持ち込めないのが痛いところだよねホグワーツって。

 

 今度ヴォルちゃんに相談してみようかな。私の協力者であるヴォルティーグことヴォルちゃん。

 セブルスとMr.ベルビィと私。それとヴォルちゃん。

 

 うーん、ヴォルちゃんは正規協力者じゃないから頭数に換算しないとして、いや換算してたとしても人手が足りないよね。

 

 なるべく早く作成したいのは山々だけどミスが出来ないから慎重にならざるを得ない。今医務室に軟禁状態の可愛い可愛いセブルスのことを考えると私がMr.ベルビィと連絡取ることになるけど。

 打診してみようかな。いい感じの伝手が無いかって。

 

 ヴォルちゃんにも言ってみよう。本人曰く魔法研究者である彼なら魔法薬学研究者の知り合いが居てもおかしくない。

 

 

 

 あ、資金面に関しては魔法生物学者候補の私がいるから問題ない。特に育成をしている魔法生物学者はね、リターンが無いと思われがちなんだ。

 

 魔法生物の餌に、設備とかの維持費用。それがもうかさむかさむ。

 挙句、魔法生物の寿命は人間より長い種族の方が多いので、亡くなった魔法生物達を素材にしにくい。

 

 

 でもね、魔法生物学者にしか知られてない金稼ぎの方法があるんだよこれがまた。このジャンルの学者の絶対数が少ないからこそ、魔法界としても認めている裏技とも言えない物だけど。

 

 

 

「ミリーお願いだから、会話をしてくれないかな……」

 

 心の中で独り言を呟いているとジェームズが根気負けしたのかガックリと肩を落とした。

 

 なんだ、根性がないなぁ、仕方ない。

 

「で、何が不満?」

「全部が不満」

 

 堂々とそう告げた。

 私は心理に詳しいわけじゃないからなぁ。せいぜい愚痴を聞く事や認識の押し付けしか出来ない。

 

「ジェームズ、貴方はセブルスとどうなりたいの」

 

 私は1年の時に言ったことのあるセリフを口にする。ジェームズは聞き覚えがあったのか目を丸くした。

 

「競い合う、相手で居たい」

「それはシリウスじゃなくて?」

「シリウスとは、背中を合わせて居たい」

 

 それは初めて聞いたのか、シリウスは驚きの感情を表情に出していた。

 ジェームズの顔は真剣そのもの。茶化すのも悪い気がして来る。

 

「……セブルスの事を、どう思ってるの」

「凄いやつ」

 

「具体的に何が不満?」

 

 するとムスッとし初めたジェームズ。

 おうおうなんだよ兄ちゃん、なんか文句あんのか?

 

 セブルスぶったこと私が許すと思うか。

 

「分かったら苦労はしてないよ! どうして嫌なのかも分かんないよ! こんな、感情ぐっちゃぐちゃで、冷静装えもしない! でも嫌だ、スネイプの奴は嫌なんだ! 秘密主義な所も、スカした顔も、リリーの幼馴染でリリーの事好きな所も! なんで嫌いなのか分からない!」

 

 頭をぐしゃぐしゃと掻きむしりながら天パを増殖させている。

 感情が昂るままに言い募るジェームズ。

 

 私は腕を組んで1つ頷くと、踵を返した。

 

「いやまてまてまてまてエミリー・コワルスキー。普通そこで帰ろうとするか!?」

 

 シリウスに止められた。

 

 チッ、逃亡失敗か。

 

「はァ。だってさァシリウス君、自分で言うのもなんだけど絶対人選間違ってるよ? 私別に相談に向いてるわけでも無いよね?」

「まぁそうだけど……。いや確かにそうだな」

「ダンブルドアに言いなよ、彼は確かに良い先生だわ。人を導くのが得意そう」

 

 ウンウンと頷いて面倒そうなことをダンブルドアに押し付ける。

 その回答じゃ納得いかなかったのかジェームズは私の肩を掴んで叫んだ。

 

「ッ、じゃあエミリーはスネイプがすっごいえぐい闇の魔術とか使いまくったらどう思うんだよ!」

「闇の魔術になりたいなぁ、って」

「えっ、あ、そうじゃなくて」

 

 セブルスのためになるセブルスが生み出した魔法とか私にとってご褒美でしかないよね?

 

 ジェームズは引いてた。シリウスも引いてた。

 

「まぁなんやかんや勝手に言わせてもらったけどさ、私は最近のセブルス、やばいと思うんだ」

「……やば、い? それってまさか闇の魔術に傾倒したりとか」

 

 ゴクリと喉をならしたジェームズは真剣な顔付きで肩を掴んだままだった。

 私はここ最近、特に3年に上がってからの日々の『やばさ』というのを思い返す。

 

 ふとした時の表情。目が合った時。何より実験している時はあまり気にしないのにそれが終わった瞬間。

 特に隣に並んでいて、顔を向き合わせる時を。

 

「最近成長期なのか私より低かったセブルスの背は今や変わらない位に伸びてよく目が合うんだ……」

 

 恐ろしいとばかりに私は喉を震わせながら心の底からの本音を言った。

 

「前髪に隠れたあの甘い瞳に映されると破壊力に正気とか色々飛ぶ。──本気でやばい」

「ヤバイのはテメェの頭だッッ!」

 

 ド畜生! 真剣に聞いて損した!

 そう叫びながらシリウスが膝から崩れ落ち、地面に向かって思いっきり叫ぶ。

 

 いや冗談じゃなくて本気でやばいんだけど。

 

 元から可愛いのに今まで以上に私と目が合うんだよ?美人になってきてんだよ????やばくない????可愛いと美人の狭間とか私の得過ぎない??

 

 でも、ほんとに辛い。

 可愛すぎてさ、あれはもう息が出来ない。新手の兵器だし凶器。闇の帝王と名高いヴォルデモートもビックリだよ絶対。

 あの世界的大犯罪な目はさ、魔法だよ魔法。

 

 

 そう言えばヴォルちゃんってヴォルデモートリスペクトしてるのかな。自分は人の上に立つのが当たり前ですって位えっっらそうな態度だし。闇の魔法大好きだし。名前も似てるし。多分犯罪者だろうし。

 ぶっちゃけ教師向いてると思ったんだけどビジュアルで不採用になったのかな……。不憫過ぎる。あの姿に産んだ親と、あえてそれを強調するかの様な服装と仕草のヴォルちゃんが悪い。それって本当頭どうかしてると思う。やばいよ。

 

 

「ねェ、帰っていい?今部屋にイヴァナ1人だからさ、何か爆発させないか心ぱ──」

 

 ドォン、と壁が吹き飛ぶ。

 穴の空いた塔の中からモクモクと黒煙が立ち上る姿を見て私は何事だと場所を確認しようとした。

 

「手遅れ、か……」

 

 同室のイヴァナ・ドイル。

 なんでも爆発させるので1人にさせてはいけない。

 

 私たち3人はグリフィンドールの常識を思い出して同時にため息を吐いた。




コワルスキーの呼吸、壱の型。面食い

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