ハロウィンから色々変わったことがある。
「うわっ、ジンロー」
「よォオオカミくん」
もきゅもきゅとお肉を頬張り食事を取っていたリーマスが、グリフィンドール生の言葉にスンと表情を消した。
脱狼薬の1件。実は人狼なんじゃね疑惑が根付いていたホグワーツに確信として情報が広まってしまった。3徹目の頭は思っていた以上に働かないことがよくわかったね。
「……やめてよ」
リーマスが声を震わせてか細い声を上げる。
「──ミリーが興奮するからやめてよ!」
「いやほんとドンマイだよオオカミくん」
「ご愁傷さま……」
リーマスが愛称で呼んでくれるという行為だけで私は死の間際なんだけど。
困ったことに無自覚天使のリーマスは己の尊い姿に気付いてないみたいなので私は素直に両手を握りしめて祈った。一挙一動が散弾銃のそれ。
リーマスは合法的な宗教。いやでも可愛さで言うと犯罪級。罪のエレクトリカルパレードなんだよね。
「ただでさえ可愛い可愛いと言われてるのになぁ……」
「エミリー・コワルスキー、魔法生物だいっすきだしな。それもケトルバーンがドン引きするほど」
「あのケトルバーンをドン引きさせるのはこの世でこいつしか居ないだろ」
可愛い天使×魔法生物のリーマスは最高。私は脱狼薬、出来れば完全に魔法生物要素抜きたくないって思っているのよ。
魔法生物の天使………いい……。
「スーツケースで肌身離さず……いい……」
「ルーピン、友人付き合いは少し考えた方がいいと思う。なぁに簡単だ。ほんの少し考えるだけで答えが出るからな!」
「今更僕が距離を離したところでどうにかなると思う?とりあえず君達も人狼してみる?」
「「勘弁してくれ!」」
がお、と言いながら歯を見せたリーマス控えめに言えないくらい可愛いがすぎる!終身刑です!私の腕という名の監獄に閉じ込めておきたい……。
「それお前の腕の中がアズカバンだって言ってるようなもんだぞ」
ボスリと私の頭に教科書が置かれた。しかもこれ頭ガジガジ噛んでるからモンスターブックオブモンスターだ。わざわざベルト外す辺り性格の悪さが滲み出ているわ。
「あらごきげんようシリウス」
「機嫌よく見えるならそいつァ節穴だな」
「……正直天使以外の他人の機嫌とかどうでもいい」
「そういうやつだよお前は」
去っていった同級生の背中を眺めながら私は顎に手を置き、疑問を口に出した。
「これ、どういうこと?」
私は今回の人狼バレ、多少なりとも反発があるとは思っていたんだけれど、蓋を開ければあらびっくり。嫌悪どころか同情の視線。
彼らの言っている通り私は盛大に大興奮してるし隠す必要性も無くなったから思う存分愛を叫べているから助かるのだけど。私の愛と比例する毎に世界はリーマスに優しくなっている。
もしかして私の愛が優しい世界を産んだ……?ゴッドマザーとお呼び。
「ジェームズが」
「バレちゃったもんは仕方ない!ミリーに押し付けちゃおう!」
「…──だってよ。というか来てたのかジェームズ」
「僕の可愛い泣き虫ちゃんで遊んでたら面白い話が聞こえたからさ!」
机の下からひょっこり顔を出したジェームズが汚ねぇウインクを飛ばした。核爆弾やめろ。
「ミリーの求愛行動は慣れればジャズの入ったただのBGM。ならばそれを逆手に取ればいい。君がギルガメッシュになるのさ!」
「うん、言い分はわかった。──セブルス!貴方の愛しのジェームズが折檻をお待ちよ!」
「ジェームズ・ポッターッッ!絶対その口を閉じなければエヴィルの餌にするぞッッッ!」
「勝手に引き合いに出される私のエヴィル。ええ、私はセブルスの味方ですとも」
ご勘弁ーーーーーーー!と言いながら笑顔で逃げ去るジェームズ。
そんな姿を見てセブルスは小さな可愛い舌打ちをした。
「よォスニベルス」
「ブラック……お前までポッター病に……」
頭が痛いと言いたげに眉間を揉みながらため息を吐くセブルス。その疲れ果てた姿をシリウスはケラケラと笑っていた。
「スニベルスって?」
リーマスが唇に指を添えながら不思議そうな顔をして意味を聞いた。すすり泣くを少し変えた言葉だとは思ったけど。
「コイツよく泣くからってジェームズがつけた愛称」
「それを愛称というなら僕はハニーパイレベルの愛を込めてコワルスキーを馬鹿と呼ぶ」
「きゃあ!罵って!」
「誰が罵るか。愛情故にだ馬鹿」
「絶対込めてないだろ……」
地の果てまでセブルスを愛するとここに誓う。
ひょえーーー!ラブアンドピースやー!
「そういえばコワルスキー」
「なに?」
「次の夏休みだけど、俺たち全員でアメリカ行ってもいいか?」
ピシャーン。
例えるなら雷が落ちてきた衝撃。シリウスの提案にわなわなと体が震える。
「…………つまり朝から晩まで天使たちに囲まれたハーレム状態?」
「え、なにそれ僕聞いてない」
「僕は次の夏も研究三昧だと思ったから行く気満々なんだが」
私はガッと立ち上がってシリウスの手を掴んだ。
「今初めてシリウスを愛しいと感じた」
「ははは。グーチョキパー、好きなの選ばせてやるよ」
発想が天才的すぎて世界はきっとシリウスにひれ伏すだろう。よっ、イギリス王朝!あんたが世界一!犬っころ!
……迷わずチョキが来た。
「目がああああああああぁぁ!」
「少ない労力で確実にダメージを与えるチョキを躊躇なく攻撃させる才能はピカイチだなコワルスキー」
「──ちょっと待ちなさい貴方達」
涙で前が見えないけど、この鈴を転がした様な可憐で凛々しさという芯が感じられる声はリリー!あと気配的にピーターもいるね(確信)
「また。まー!たー!……私を仲間はずれにするんじゃないでしょうね」
うわ可愛い。
プンスコ拗ねた感じの声色。世界中がリリーを愛する。百合の花は平和の象徴だよ。この世に生まれてよかったと思わせる。幸福度が上がるぅ。うへへへ、滾ってくる!
リリー・エバンズという存在は合法で健康的で元気になるお薬。
「ズルいわ。皆どんどん私を置いて仲良くなっちゃうんだから!」
疎外感を感じて寂しくなっちゃって拗ねてるリリー。
なんて私の瞳は今チョキで死んでるの?この瞬間を目に焼き付けないでどうするって言うの。1瞬1秒とて目を離せないこの貴重な場面をよりにもよって天使以下に邪魔されるだなんて……!
「──シリウス・ブラック許すまじ……」
「なんでそうなるんだよ!」
「コワルスキーの思考回路は直列かと思えば幾重にも別れる並列だから困る」
セブルスの褒め言葉辞典でも作ろうかな!
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「俺様が来たぞエミリー・コワルス……」
「「「「いらっしゃーい!」」」」
「…………………………何故増えてる」
ヴォルちゃんがギギギギとブリキの様な動きで私を見て、天使たちを指さした。
「私の学友よ」
「そんなに見ても僕にコワルスキーが止められると思わないでください」
しれっと答えた可愛いセブルスの言葉を皮切りにグリフィンドール生はワッとヴォルちゃんに駆け寄った。
「あなたがミリーとセブルスの協力者ですよね!?あの脱狼薬はくっっっそ不味くて死んだかと思いましたけどお陰で人狼でも学校に馴染めました!」
「優秀な魔法の研究者って聞きました!あの、僕畑違いかもしれませんが魔法道具の試作を見てもらいたくて……!」
「進路相談に乗ってくれません?私マグル生まれだから魔法界の職業に詳しくなくて。先生方は極一般的な職種しか教えて下さらないの!」
「うちのミリーとスニベリーが世話になったね!あのミリーが懐いてる様子を見るに中々癖のある人物とお見受けするよ!」
「なァ、お前もしかして……!」
「ええい黙れ!エミリー・コワルスキー!この野生動物達の面倒は見ないか!」
可愛い子達の戯れてる姿は最高に可愛い。可愛すぎて馬になっちゃうわ。
真ん中のヴォルちゃんとジェシリは要らないけど。
ヴォルちゃんの決死の叱咤で大人しくなった悪戯仕掛け人。何故か私とセブルスまでジャパニーズ自殺スタイルで座らされている。まあセブルスは薬草の選別をしながら、私は催眠豆を切り刻んでいる。
この催眠豆切りにくい。ニンニク刻んでるみたい。
「それでエミリー・コワルスキー。最初の契約と違うようだが」
「へ?契約なんてしてたっけ?」
「お前の記憶力はガバなのか!?」
ヴォルちゃんそんなに叫んだら喉怪我するよ。
思い返して見るけど、私ヴォルちゃんと何かしらの契約したっけ……?一緒に美味しいもの食べた記憶しかないわ。
ガシッと胸ぐらを掴まれた。ゴツンと額同士がぶつかる。頭突き痛い。私にも痛覚はあるわ。それとドアップのヴォルちゃんの顔面見ても別に嬉しくもなんともないのだけどを
「(夏休み期間だけ匿う、と!)」
あァなんかそんなこと言ってたな。
「………。え、あれ!?今ヴォルちゃん口に出した!?」
「馬鹿者俺様が脳内に直接伝えたに決まっておるだろう!」
「決まらないですぅ!」
「あと俺様の顔を間近で見れることを光栄と思わんかこの馬鹿!」
すっごいナチュラルに心読まれた。
手に持ってたナイフでぶちゅっと催眠豆を潰してしまう。
「セブルス大発見!催眠豆ってニンニクみたいに面で潰した方が汁が出るわ!」
「……は?あ、ほんとだ」
「エミリー・コワルスキー!俺様と話しをしている最中に余所見を………………なるほど、これは確かに早いな。材料も無駄にならん」
潰れた催眠豆を3人で覗く。
Mr.プリンスがはぁとため息を吐いた気がした。私はセブルスの吐息に集中するので忙しいんです。息を吐くな。
「我が君」
「……そうだったな」
ヴォルちゃんが顔に真剣さを取り戻して腕を組んだ。
「エミリー・コワルスキーと愉快な仲間よ。今年の夏の方針を発表せよ」
「代表のジェームズ・ポッターです!今年は脱狼薬の完成度の向上、それと卒業制作に向けての立案、それと同時にスニミリーのコンビと僕とシリウスのコンビのハロウィン対決の準備です!今年は負けない!」
「なんだその愉快な対決は……。それにしても貴様ら、ポッターとブラックか……。ブラックの倅がグリフィンドールに行ったとは聞いていたがまさかほんとに……」
頭が痛いと言いたげに額を抑えるそばでグリフィンドールのかわい子ちゃん3人はハロウィン準備の最中自分たちは何をするかをニコニコ笑顔で話し合っていた。あそこだけ空気感が違う。
「ところでセブルス」
「え、はい」
Mr.プリンスが口を開いた。
「貴様の母親の名前はアイリーンではないか」
「そうだよ!」
「何故お前が答えるコワルスキー……」
「アイリーンさんめちゃくちゃ綺麗だったから……!艶やかな色気があるってああいう人を言うんだろうな……。草臥れた感じが似合う人って中々居ないと思うの。ぷっくり膨れた唇から溢れ出るため息は」
「自分の母親を目の前で褒められる息子の気持ちを考えろ馬鹿」
「ほんとそれな」
褒め称える言葉はセブルスの可愛い鳴き声で止められた。横から割り込むシリウスが分かってるぜみたいな顔で頷いている。
「アイリーン・プリンス。私の娘だ」
時が止まった。
そう、全ての。
ヴォルちゃんだけは知っていたようで驚く私たちを見ている。プリンス。え、じゃあこの人はアイリーンさんの父親でセブルスの……。
私はゆっくりと立ち上がり、わなわな震える手で指さした。
「──Mr.プリンスは美形じゃないのになんでッ!?」
ヴォルちゃんの渾身の飛び蹴りは多分私くらいしか喰らわないんじゃないかと思いました。
原作でどうやってプリンス性だと分かったのか分からなかったので直接触れ合って分かった感じに仕立てあげました。
ここから時間軸はサクッと飛んで行ったりするかもしれないので読み返しながら待っててね。