─矛盾─   作:恋音

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24.スパイラルホーン

 

「僕がグリフィンドールの監督生じゃないのおかしくない!?」

 

 ジェームズが騒ぎ始める1975年の9月。そう、私たちはついに5学年となり、それぞれの寮から監督生が選び出された。

 

 グリフィンドールの監督生に選ばれたとても素敵で可憐で美しくて可愛くて天使な2人。リーマス・ルーピンとリリー・エバンズが監督生の講習を受けて帰ってきたところ、机の上で無様に咽び泣いてるジェームズを見て苦笑いを浮かべた。ただし苦々しいのはリリーとリーマスのリーコンビだけで、私にとってはパン一斤丸々は秒でいける程の幸福感を与えてくれる合法的な甘い笑みだった。

 

「僕!これでもこの学年の学期末テスト4年連続1位なんだけど!」

「チッッッッ」

「スニベリー舌打ちが大きいよ!」

 

 年々表情の作り方がガラ悪くなってるセブルスもそれはそれで素敵だと思う。

 というかセブルスに素敵じゃない瞬間なんてあると思う?ないよ。

 

「寮を管理し、学生の質を高めるのが監督生の仕事。──貴方には無理よ」

「ぐすん……じゃあ監督生は諦めるからエバンズ付き合って……」

「嫌よ」

 

 速攻告白して速攻でフラれたジェームズ。

 これ今年度入ったばかりだけどもう5回目だということをここに記しておくわ。

 

「そういえばコワルスキー!」

「なーにー!そこのハッフルパフー!」

 

 クレスウェルだってば。なんて言いながらたまたま出会って挨拶するような気楽な態度で寄ってくる。

 

「やあこんにちはリリー」

「こんにちはダーク」

「それでコワルスキー、キミってオーグリーって飼ってる?君がオーグリーと一緒に居たの見たんだけど」

「オーグリーは居ないわ。恐らくあなたが見たのは去年丁度卒業したレイヴンクローのクレイ・アストロノフって可愛いそばかすの女性のペットね」

 

 ペットにオーグリーを選ぶとは趣味がいいな、ってことでナンパしたんだったっけ。

 オーグリーは雨の日の前にグッグッと唸るように鳴くの。別名天気予報鳥。私が今付けたんだけど。魔法省分類はXXだから結構飼いやすい種族ね。

 

「アストロノフっつーとブルガリアの純血か……ん?お前が前言ってたブルガリアの小父様って」

 

 クレイ・アストロノフ。

 綺麗というより可愛い人で、ずっと話しかけたいと思ってたんだ。彼女、控えめな性格してるから私からがっつくと心労かけちゃう。魔法生物が口実だったけど、私にしては穏やかな距離の詰め方してたわ。ふふ、計画通り……!

 

「それでオーグリーがどうしたの?」

「ペットにいいなって思ってさ。アドバイス貰おうと思ったけどキミが飼ってないならいいや」

「英断ね、知識でしかない私より飼ってる人に聞いた方が確実だわ」

 

 そう言ってハッフルパフ生は消えていった。彼、親マグル派だったっけ。4年生という年齢を考えるとペットを飼うにはかなり遅めだけどアレは確実にオーグリーにベタ惚れする流れね。エミリー知ってる。

 

 するとさっきまで項垂れていたジェームズが絡んで来た。

 

「キミ偏差値違うレイヴンクローと会話出来るの?」

「それはちょっと偏見が過ぎない?レイヴンクローは勉強熱心だけど頭がいい人特有の常識乖離は起こってないわ」

「あ、ごめん。偏見してるのはレイヴンクローじゃなくてキミ。感情直結型のホグワーツの誇る変態的なキミが、理論的で理性的なレイヴンクローとまともに会話出来るとでも思ってるの?」

「友情デリートも辞さない」

 

 はァ、とため息を吐き出す。こいつしばき倒してしまおうかしら。

 頬に手を当てて肘をついていると、この夏休みでげっそりと疲れ果ててしまったシリウスが私をマジマジと見ていた。

 

「顔がいいな」

「呼吸が出来るよね、と同然のことを言われても」

殴りたい(なぐりたい)

 

 今二重で声が聞こえた気がした。多分気のせいだけど。

 というか今更なんだろうか。この顔と付き合わせてもう4年以上の年月が経っているのだけど。おだてようったってそうはいかない。ごく当たり前の事を言われても私の心は揺れ動かな……。

 

「いや、俺さ。今度のクリスマス、実家でパーティが行われるんだけど。パートナーが居なくて」

「行く」

 

 震度5レベルで揺れた。

 

 パートナーの……お誘いだね……!

 実家ってことはブラック家の美形(シリウス除く)の綺麗に着飾った姿が隅から隅まで見えるってことだよね!最高じゃない!

 リリーはセブルスとあとついでにジェームズがお熱だから誘うのはばかられるしね!愛してるわシリウス、今だけ!

 

「いやでも肝心の学生は上も下もコワルスキーの奇行を知ってるしな……。女避けにはなんねぇんだよな……」

「愛すの辞める」

 

 今日はグリフィンドール席で戯れていたが、セブルスもいるということでスリザリン生は時々挨拶みたいに寄ってくる。

 そんな中美しくて可愛くて天使なスリザリン生のレギュラスがやってきた。

 

「よ、レギュ」

「……はァ。兄さん。一応忘れてそうなのでいっておきますけど、コワルスキーはブラック家出禁ですよ」

「あ、そういやそうだったな」

 

 お前何やったの、ってそこら中からツッコミが飛んで来る。

 

 むしろ私自身が知らなかったんだけどブラック家出禁になってるの?え、突撃してもいい?シリウスくーん遊びましょー!ってクリスマスに仕掛けに行っていい?だって私悪戯仕掛け人だもんね!

 

「うん、仕方ないよね」

「なァお前何を考えた?ホントに諦めたか?????」

 

 仕方ない、まともな悪戯を仕掛けなければ、悪戯仕掛け人の名が泣くもの。ウンウン仕方ない。悪戯仕掛け人の実行犯と名高いシリウス・ブラックに負けない様にしなければ。そのついでにレギュラスのパーティ服とか、Mr.オリオンの着飾った姿とかMrs.ヴァルブルガのドレスとか見ちゃっても仕方ないと思うんだ。

 そういえばマルフォイ家のルシウス・マルフォイ、ルシーに嫁いだシシーことナルシッサ・マルフォイ。彼女も麗しのブラック家出身。ブラック家、分家であろうとレベル高ぇ……。シシーには姉が2人いるって聞いてるし1度会ってみたいものだ。パーティに来ないかな。

 

 ブラック家は本家も分家もほぼほぼ艶やかで潤いが朝露を想起させる黒髪に不死鳥が永遠と次なる生を望む力強い灰の様な瞳を持っている。シリウス除く。

 一見すると冬を思い出す色合いだけど、心のうちは『流石古きより王者として君臨するブラック家よ!』って讃えたくなるほど燃え盛っている。シリウス除く。

 はァ、この魅力で魔法界を牛耳ってきたのね。シリウスは次のブラック家の当主候補らしいけど、絶対レギュラスの方が向いてると思う。

 

 ほら、今だってレギュラスは姿勢をピンと張り顎を引いて冷静に物事を見ているじゃない。美しい。宗教画かな?

 うん、麗しの王子様って感じ。好き。愛してる。らぶゆー。

 

「俺の声聞いてねぇなコイツ……。スネイプ、呼んでくれ」

「後で羊皮紙奢れ。──エミリー」

「くぁwせdrftgyふじこlp(なぁにセブルス)」

「なんて?????」

 

 今セブルスなんて言った!?エミリーって呼んだよね!質問しなくてもわかるし永遠と覚えておけるしセブルスの声を吹き込んだ目覚まし時計が欲しい。鳴る前に起きてフルで聞いたあと永眠出来る。

 目覚まし時計の意味がないって?お間抜けさん、意味がなくても存在するだけで意味になるのよ……!

 

「シリウス・ブラック殿がお呼びだぞ」

「…………テメェかよ(なぁにシリウス)」

「お前天文台からもう1回ダイブしたいのか?」

 

 遠回しの殺害(アバダ)予告。遠回しにしすぎてたどり着く頃には緑から拳に変わっているだろう。淑女に躊躇なくグーパンするお前が英国紳士であってたまるか。

 こいつが恋人にしたいランキング4年連続2位なのは全く納得いかない。

 

「……お前さ、母親の旧姓ゴールドスタインだったよな」

「うん」

「レギュ、どう思う」

「彼女が無口でいる限りどうとでもなります」

「無理か」

「無理ですね」

 

 始まる前に終わった気がする。

 

「まあ、コワルスキーは純血以前の問題だからな………」

「兄さん、諦めてください。母さんがカンカンに喚き散らしますから」

「ああ……。父さんならまだしも母さんへの印象悪くするのはな……」

 

 Mrs.ヴァルブルガの印象をシリウスが気にしてる?

 ようやく魅力に気付いたの?分かる、親子であろうと最高に膝まづいて靴先にキスしたいよね。

 随分遅い気付きです事。何年かかってるの?もうすぐ16ね──スパンッッッッ!痛ったぁ!?

 

「あ、わり、手加減しちまったかも」

「普通叩いたこと謝らない!?シリウスの遠慮ってどこにあるの!?」

「そこにねェならねェな」

 

 ならないね──!

 バレー選手もびっくりのスパイクを頭に打ち込まれて思わず頭を抱える。これ以上馬鹿になったらどうしてくれるのよ!

 

「お、れ、は!純血一族を統べるブラック本家の当主になるんだよ!純血主義のヤツらのトップに!」

「頑張ってね」

「おう頑張るわ。──ってそうじゃねぇよ俺の求めてる返事は。俺が純血主義なんて最高に素晴らしい思想と思ってんのは知ってるだろ」

「最高よね」

「……オイこのクソアメリカ人。文面をそのままの意味で捉えるんじゃねェよ」

 

 私、ルシーと同じく純血主義だけど。

 純血って最高よね。古くからある近親結婚で顔のいい人ばかりが遺伝で生まれる純血。

 もちろんマグル出身に顔がいい族が生まれるのと同じように、シリウスやジェームズやノットやエイブリーやマルシベールみたいな例外はあるけどそれを差し引いても純血主義になる理由がある。純血最高!

 

 どうして純血なのに顔が微妙な純血が生まれてくるんだろうか。リアム兄さんみたいなスクイブポジションなのだろうか。それとも世界の均等を図るため?

 うんうん、綺麗ばかりじゃ疲れるものね。

 高級フレンチばかりじゃなくてジャンクフードも時々食べたいものだわ。

 

「──力がなけりゃ声は魔法界に伝わらねぇ。俺は純血のブラック家として純血主義なんて時代錯誤なふざけた思想をぶち壊すんだよ」

「ふぅん」

「興味を無くすな」

 

 2年の時くらいから知ってるけどな、私。

 1年の終わりにどうにかしてくれと頼み込んだのはシリウスだよ。

 

「ところでエミリー、例のストーカーどうなったの」

「「ストーカー!?」」

 

 ギョッとした顔でグリフィンドール男子から見られた。もくもくと魔道具工作をしながらサンドウィッチ(カロリー補給)を食べていた可愛い可愛い幼女……ごほん、ピーターでさえもその手が止まっている。

 もっちもちのほっぺたつつく為には一体幾ら払えばいいんだろう。お金で解決しようとしない、ピーターはお金如きで買えるほど安くないわ。はい。

 

「ホグワーツに生徒と教師以外が入り込んでるのかい…?」

「すぐそういう発想になるの良くないと思うわ5年連続目指してるの?」

「僕は1人にモテたいだけだからね!(負け惜しみ)」

「ハイハイガーゴイルの背え比べ」

「「黙れロージー・ベルに負けた男が!」」

「ここまで綺麗なブーメラン初めて見たわ」

 

 シリウスが勝ち誇った顔で鼻を鳴らす。むきー!腹立つ!お前なんか顔面と家柄だけの男の癖に!

 

「そ、それでミリーがストーカーって!?」

「最近部屋に居るとエミリー宛に小包が届くのよ」

「あぁ、何故か僕のところにも何度か届いたな」

 

 リリーの言葉にセブルスが反応をしめす。

 

 中身が……。と2人は声を揃えた。

 

「ハートに削られた小石」

「ハートが割れた小石」

「「ん?」」

 

 リリーの内容とセブルスの内容が違った。

 私は苦笑いしか浮かべることができない。ジェームズとシリウスなんてめちゃくちゃ引き攣り笑いを浮かべている。

 

「セブルス・スネイプ」

「な、なんだ」

「……お前そのストーカー野郎に恋敵として見られてるぞ」

 

 シリウスがズバッと言い放った。

 意味のわからないと言いたげな顔をしたセブルスがいるだけで今日も世界は回っている。

 

「僕はコワルスキーと付き合ってないが?え、というかこの暴虐の限りを尽くす傍迷惑浮気性のとんでも馬鹿と誰が付き合うと言うんだ」

 

 そんな心底不思議みたいな顔しなくても……。ちょっと心が傷付いた。ときめくけど。

 

「今年はO.W.L試験試験があるから早めに解決しろよ」

「O.W.L試験?」

「Ordinary Wizarding Levels(普通魔法レベル試験)の頭文字を取ってO.W.L。通称ふくろう。コワルスキー、お前が魔法生物メインでやるならふくろうで魔法生物学で『(E)』以上は取っとかなきゃ7学年のいもりに影響するぞ」

「それ、いつ」

「今年の学期末に2週間」

「じっ、実技は」

「あるに決まってんだろ馬鹿」

 

 あっっかーーーーーーん!

 ダメだダメだダメだ。

 

 先生達に『私ってスクイブなんですか!?』って聞き回っても優しい瞳で肩を叩かれるくらいには壊滅的なのに……!

 

「──決めた!」

 

 突然項垂れていたジェームズが勢いよく顔をあげた。

 

「何を?」

 

 リーマスがジェームズの視線に合わせて腰を屈めるなんて必殺的な可愛さを持つ行為に、ジェームズは気付かず指をシリウスに向けた。

 

「シリウス、キミはパッドフッド」

「ん?」

「ピーターはワームテールで、リーマスがムーニー!」

「ジェームズの思考回路ってどうなってんの?」

「ミリー、キミのその発言そっくりそのままふくろう便で返したいよ」

 

 ジェームズはとんでもなくウザイ顔でチッチッチッと指を左右に振る。ぶちおるよ。

 

「渾名だよ。我ら悪戯仕掛け人のね!」

「へぇ」

 

 苦笑いのリーマス可愛いなぁ。

 

「てか、『足の肉球』に『ミミズのしっぽ』に『月』?」

 

「……ふぅん、じゃあジェームズはプロングズだな」

「いいねぇパッドフッド。『枝分かれ』か」

「ピッタリだろプロングズ」

「エバンズは『アイ』にしよう!『瞳』だよ。ピッタリだと思うんだ!」

 

 ジェームズとシリウスがそう続けるが、リーマスなら兎も角ピーターのあだ名の由来が分からない。

 

「どういうこと?」

「キミには内緒」

「私卒業したら本を書くの。ジェームズ・ポッターに学ぶ一生独身貴族を貫く方法って本」

「暖を取るのに丁度良さそう」

「ありがとう」

 

 ジェームズ本人からのお褒めの言葉に私はカテーシーで光栄だと言わんばかりのポーズを取った。

 

「ええい腹立つな!ピーター!ミリーの守護霊調べちゃってよ!」

「任せてね、てれれってってってー!守護霊の鏡〜!」

 

 手鏡を持って掲げるようにニコニコ笑顔のピーター。

 可愛くって可愛くって、食べちゃいたい!食べたら無くなっちゃうので食べないけど。

 

 ……え?可愛すぎて大丈夫?(ガチトーン)

 

「ミリー、この鏡覗いて見て!」

「え〜可愛い〜〜」

 

 笑顔のピーターって世界を救えるんじゃないだろうか。

 

 言われた通り覗いて見ると鏡には美人の私が映っていて、その後ろに何故かユニが居た。

 

「!?!??!???」

 

 バッと後ろを振り向いて見てもユニは居ない。

 

「え!?な、え、ユニは!?」

 

 思わず足元に置いていたスーツケースを見ても蓋は開いてない。

 

 鏡の世界にしか居ないユニコーン。

 幻獣種とは言えど、幻は見なくていいと思うんだ。

 

 混乱してる最中の私にピーターはへぇと声を上げた。

 

「ミリーはやっぱり魔法生物だったんだね」

「……?」

 

 可愛い。

 間に可愛いを挟まないと気が済まないくらい可愛いピーターにそう言われて、理解不能状態に陥る。

 

「守護霊の呪文ってあるでしょ?」

「うん、今年習うってリリーが言ってたね」

「その守護霊がなんなのか分かる鏡だよ。僕の魔導具!」

 

 ひぇ……。天才なの……?

 普通そういうの簡単に分かるものじゃないと思うんだ私。

 

「じゃあスパイラルホーン!ミリー、キミは『螺旋の角』だよ」

「つまり何度でも蘇るってことか……」

「どういうこと???」

 

 いっけない、魔法生物学界隈のマル秘。

 『ユニコーンの角は生え変わり』を漏らす所だった!

 




守護霊

コワルスキー…馬
ジェームズ……鹿

つまりそういうこと。
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