研究や調べ物ばかりしている1年は長いようで早い。
5年終わりの夏休みも、ほぼ研究に費やした。リリーはヴォルちゃんに頼みまくったのでほぼ完成に至っているらしい。いやちょっと早過ぎない?
これはヴォルちゃんがすごいのか、それともリリーがすごいのか。迷う余地なくリリーがすごいに決定しました。ちなみにヴォルちゃんは一切私の研究を手伝ってくれない。
夏休みのハイライトといえばあれだね。『暑いッッッッ!』ってキレ散らかしたヴォルちゃんがポートキー作成して全員を日本の避暑地に連れて行ってバーベキューしたこと。別にアメリカも日本も気温は変わらないと思うんだ、私。ツラツラ理由を語っていたけど、ただ純粋に日本に行きたかったに1票。
最初はドン引きしてたジェームズも、ここが墓場かと顔を青くしているシリウスも最終的には『海水浴もありだけど森林浴って最高にイカしてるね!』って言いながらはしゃいでいた。
そんな楽しい夏休みを過ごした私達はホグワーツ特急から脱走しよう作戦をおっかないお姉さんに阻止されて大人しく連行され、遂に6学年へ進級となった。
さて、本題に入ろう。私の卒業制作予定の『ピーブズを使い魔にしよう大作戦』だけど、実はこれといって進展が無い。
去年はまぁ色々あったから過保護の働いたセブルスもしくはシリウスが常に一緒にいたって言うのもあるし。シリウスは心底いらないけどそんなシリウスが派手な背景になるくらいにはセブルスにメロリンしてたわ。
とにかく、魔法生物では無い存在を魔法生物の使い魔契約として契約する方法の情報が無さすぎるから今年の私は別の観点から攻めようと思う。
「こんにちは、レディ」
「あら、グリフィンドールのお転婆娘」
灰色のめちゃくちゃ美人のレディの手に触れてキスを送る。残念ながらレディは幽霊だから触れられないんだけどね!
彼女は灰色のレディと呼ばれるレイヴンクローのゴースト。本名はヘレナ・レイヴンクロー。1年の時つき回していたら名前を渋々教えてくれたとっても美人の……あヨダレが出てきた。ぐへへ、美人を見るだけで食パン一斤はいける。
「今日も綺麗だなあ……。流石世界の絶景36選」
「聞いた事ありませんけど?」
呆れたような表情でレディは息を吐くけどゴーストなのでレディの吐いた息を吸い込めないのが今世で1番の悔いかもしれない。
こう……ゴーストを実体化させて……呼吸を……ここは魔法の世界だからワンチャン、1ミリ位は可能性があるかもしれない。
うっ、レディそんな冷たい目で見ないで。物理的にも。
はわぁぁ昇天しちゃうぅ。ホグワーツに憑いてしまう。永遠にレディのストーカーする。永遠に。Always。
永遠と言えばこの前セブルスに『お前の変態は永遠だろうな』って言われた。変態……心当たりがないけどセブルスが言うんだったらそうだネ!!!
「貴様は性懲りも無くまたヘレナに近付いて……!」
ずいっ、と別のゴーストが恨めしくもレディとの間に挟まってきた。百合の間に挟まる男は極刑。
人間の刑罰では生ぬるい。ここは魔法界。この恨み……この恨み……!
「この恨み……末代まで祟り殺す……!」
「ゴーストよりゴーストっぽいことをしようとするな!」
血塗れの男は下品な喚き方をした。アッアッ、レディが後ろでどっちも迷惑みたいな顔している! か、可愛い!ドン引きした顔も素敵だね!扇で口元を隠すとか人間のツボが分かってるぅ!
「おい、おいコラ。貴様私の話を聞いてないだろ!」
なんかノイズ走ってるなって思ったら血塗れの男はまだ何かを喋っていた。はー、やれやれ、仕方ない。相手をしてあげようじゃない。
「レディを名前呼びするとか無礼じゃない?」
「はんっ、生前からの付き合いだ。貴様のような生者とは付き合いの長さが違うのだよ」
「ですってレディ。年季の入ったストーカーにまとわりつかれて大変ですね」
「(お前がそれを言うんかいって顔)」
ほーらレディ迷惑そうな顔してるじゃーん!
「……ところで今更だけどレディのストーカー血塗れは、誰?」
「きっさまぁ!!!!????その脳みそは欠陥しかない!!!!1回死んでやり直してこい!!!!」
転生しても変わらない気がする。
「血みどろ男爵だ。全く、貴様の頭の記憶力は3日しか持たないのか!?」
「レディに求婚したら現れる邪魔としか存在認識してないから……ごめんね血飛沫男爵」
「わかってなぁい!!!!」
死んでもエネルギッシュなのどうかと思うわ。
「ちなみにだけどグリフィンドールのお転婆娘」
「はい、我が女神」
「……。はぁ、その男、私の死因。被っている血は私の血よ」
「あっばばばあ!?」
へ!?なにそれ!?初耳なんだけど!?
というかレディの血液という聖水にも等しいそれを頭から被る男爵を羨むべきなのか、レディの死因になったという罪を憎むべきなのか。
「スコージファイで洗濯?それともアクシオで血液を集めるべき?」
「うっわぁ、きつ……」
「と言うかこの男が末代そのものなんだけど……。まあいいわ」
レディはゆらりと空中を一瞬漂ってずいっと顔を近付けた。
「で、グリフィンドール。私に用事があると思っていたのだけど?」
「レディの美しさの前には霞む話題だよぉ〜」
「おだまり」
デレデレと愛を囁いているとレディは呆れたようにため息を吐いた。私は是非ともそのため息になりたいわ。ゴーストが呼吸をしてないことがこんなにも悔しいだなんて……!
「私、死んだら絶対ゴーストになる……!」
「止めなさい」
スカッとレディが私の頬を叩いた。
ただしそれは触れ合うことも無く、私の顔を掠めて冷たい空気を漂わせる事しか出来ない。凍るような冷たさ。
「大馬鹿者。いい、ゴーストになるって言うのはね、生前の未練と後悔を抱え続けるって言うことよ。あの世に行くことを拒んだの。私たちは成長も変化も許されない脆弱な存在、過去のわだかまりをずっと抱え続けるのよ!」
ぼう、とレディは青い炎に変わった。
「未練があるのに未練を晴らせない。腐った食べ物でパーティーをしてグズグズと永遠と。恐怖を抱えたまま、批難を抱えたまま、後悔も、罪悪感も。そう、全て! 何日、何年、いいえ何世紀も。新たに生まれ変わることさえ許されない。いいえ許さなかった」
「レディ……」
「私、灰色でしょう。私の人生の続きはこういう色をしてるのよ……。貴女は色に溢れてる、その色を喪うのは醜くて見るに耐えないわ」
レディが一体どこの年代で生きてどんな人生を送ってきたのか、私は聞かない。レディが言わないから、調べない。
だけどひとつ言いたいことがある。
「──レディ、単一色でも麗しいとか最早人智を簡単に凌駕してる」
「………………生きてる人間に後でこの子の頭しばき倒して貰うように言っとくわ」
レディ自らご褒美を与えられないだなんてご勘弁!
あっ、でももしレディがセブルスとかに頼むなら『レディ+セブルス』からのご褒美になるのでしばき一発で二回分のご褒美が含まれている……!
「シリウス・ブラック辺りに」
「ノーッ!」
ご無体な!
悲しみで涙が溢れ出てくる。そう、私の心は砕け散ったよ……。
「貴女、生きてる人間にも死んでる人間にも節操が無いのね」
「これはお褒めの言葉!」
私、復活!
節操無しだなんて照れるわ。
「……全く褒めてないと思うのだが」
血飛沫男爵はちょっと黙ってもらっていいかしら?
「馬鹿らしくなってきたわ」
ため息を吐く姿でさえ優美。だから私はそのため息になりたいと何度願えばいいのか。人間の概念は軽率に超越しておこう。
そういえば去年辺りにアニメーガスみたいに動物に変身出来る魔法があるんだからため息に変身する魔法があるんじゃないかってマクゴナガル先生に聞きに行ったんだけど『……勉強熱心なのは結構、ですが、実技が0点だって言うことを忘れた記憶力に高望みはしない方がいいですよ』って言われちゃった。つまりあるってことでいいですね???
「あっ、それでねレディ。聞きたいことなんだけど」
おっと危ない。本題を忘れていた。
「実は、ピーブズを使い魔にしたいの」
「…………正気じゃないわ」
「正気も正気よ」
「言い直すわ。あなたはとんだ馬鹿で、無鉄砲で、能天気で、善し悪しの区別がつかないアメリカ人って事が、よーく分かったわ」
爆速で褒め言葉って事よね。
私は腕を組んで満足気に頷いた。レディは何故かドン引きしていた。
「……ピーブズは、混沌よ。人もゴーストも、彼の内側に入るなんて考えられない。あれに関わった生物は知性があればあるだけ、発狂する」
「つまり理性も知性もかき消した私は……!」
「………………(ガチ悩み中)」
あの、レディ? 冗談なんだけど。
なんでそんな真剣な表情で『あれ、なんかこいつならワンチャンイケるかもしれない』みたいな感じの雰囲気醸し出してるの? それはそれとしてレディが期待するなら私はワンチャンでもノーチャンでも頑張る。
「……とにかく、やめておきなさい。あなたは生きているのだから、生者は生者に関わる事ね。死者も、不生不死も、生者が関わるものでは無いわ」
そう言ってレディは私に対する興味を失ったのかそれとも呆れ返ったのか、優雅にフンと鼻を鳴らして掻き消えるように姿を消して行った。
あぁ、あの美貌をもう少し拝みたかった……!
「ところで男爵ってピーブズに相性有利属性動いてたよね?」
「貴様は私のことを覚えているのか覚えてないのかはっきりさせてから出直せ!」
「なんで?」
「…………なん……だと?」
怒りで身につけた鎖をガタガタ揺らしていた男爵はその窮屈そうな顔面を呆然と形容するに相応しい表情に変えた。
「分からない?」
「分かるわけがないだろう! 貴様を含めそこらの雑踏にわざわざ頭を回す必要が無い!」
再び怒り散らかす。
ゴーストの特徴。それは変わらないこと。そして考えないことだ。
なぜ彼らが死でもなくゴーストへの道を選んだのか、それは私には分からない。その時の感情の赴くままに彼らは死んでも生き続ける道を選んだのだ。
だから、彼らにあるのは最期の感情と記憶。それに縛られ続けるということ。
灰色のレディは『嘆き』と『呆れ』
血だらけ男爵は『怒り』と『後悔』
ピーブズとゴーストの違う点って、喜怒哀楽なんだよね。ピーブズはゴーストよりも人間臭い。だと言うのに、ピーブズの過程に『人間』という言葉は無い。
「おい、貴様、無視をするな、おい! おいエミリー・コワルスキー! ハロウィンのパーティーに招待されたくないのか!」
「おお、我が主よ!」
「都合のいい耳引っこ抜くぞ貴様」
とりあえず考えても仕方ないことだからピーブズに直接言いに行こう。
「えー、ピーブズを使い魔にぃ?」
そういう日に限ってピーブズは中々校内におらず、今では庭とかした禁じられた森に居た。
ピーブズってホグワーツ城だけじゃなくてホグワーツの敷地内にも行けるんだね。
禁じられた森、薄暗くとても大きい森。高レア魔法生物の宝庫で、実は中々手に負えない魔法生物もいたりする。広大な土地を占めており、全ての範囲を探索したことが無いのが悔しい。
学校の敷地内になんつー危険なものを存在させているんだ、って思ったんだけど。魔法生物が闊歩してるだけって知ったあの日から禁じられた森は私のテーマパーク。
流石にキメラが出た時はキメラの周囲をぐるっと回って写真撮影をしたあと戦略的撤退をしたけど。
……そういえばあの時のシリウスの顔はビビるとかそんなの通り越してドン引きしてたね。
うんうん、キメラレベルの強者が出てきたらびっくりするよね。
「そう、使い魔! どう?」
「えー面白そう! あ、でもピーブズの行動が制限されるのはいただけないなぁ!」
「そこはご安心。待遇は今までと変わりなく! 唯一変わるとしたら人権! なんとあのフィルチに『ピーブズ使い魔だから追い出すのは迫害だよばーーーーか』と言えます(真顔)」
「めちゃくちゃ面白いじゃん(真顔)」
どうやらピーブズは乗り気のようだ。
そう来なくっちゃ! さすがはピーブズ、我らがトリックスター!
「ところで行き詰まってるんだけど、ピーブズってどうやったら使い魔にできると思う?」
「ピーブズ興味ないから全然分かんないよ」
「だよねー」
2人して首を傾げる。
私はふよふよ浮かぶピーブズを見上げて呟く。
「魔力のない動物は魔法使い側が魔法を使い使役する、魔力のある魔法生物は魔力回路を向こうから繋いでくれる。どう?しっくりくる?」
「ぜーんぜん」
「まぁ、ピーブズは魔法生物というよりゴーストに近い存在だろうから、ゴーストと契約するって思えばいいんだけど……うーん」
ゴーストの使い魔契約って、前例が無いんだよね。いっそ吸魂鬼レベルを契約してしまえばやり方がわかるんだろうか。
でもゴーストって、死んでしまった瞬間の感情に縛られるから……意思がしっかりしすぎていて、死んだ状況から使い魔になるという変化を求められない。
変革に感情は必要不可欠だから。
「頭パンクしそう」
とりあえず、契約には何かしらの繋がりが必要不可欠なんだよね。
「ピーブズって、魔法使えるよね」
「え、と言ってもポルターガイストだぜ? ピーブズってほら、イタズラのために存在してイタズラのために生きてるから」
「魔法使い同士の契約みたいに、ファンタジーに繋げる?」
「あのな、エミリー・コワルスキー。ピーブズなら分かると思って説明を省いて話するの友達無くすからやめた方がいいと思うぜ?」
「私実技苦手だからピーブズ主体になるけど」
「好みじゃないからってピーブズの抗議無視して話を続ける度胸褒めてやるよばーか」
魔法使いの契約、なんだっけ。授業でやってたような気がするんだけど。
血で約束事して、絶対に破らせねぇぞってやつ。
あれ魔法生物との契約に代用出来ないかなって思って。
魔力の持たない動物、知能レベルもしくは意思疎通レベルの低い動物を使役するには魔法使いから一方的に何らかの魔法が必要不可欠なんだったら、魔法実技レベルが無に等しい私に対して魔法を使えるピーブズが契約魔法を持ち掛ければいいんじゃないかって思って。
え?それだと契約者はピーブズにならないかって?私が使役される側なんじゃないかって?
わかる。どうしようかな。
「で、いつ決行予定なの?」
ピーブズがイタズラ顔で聞いてきた。
「卒業式!」
内輪の卒業発表なんだもん、最高のタイミングで驚かせたいじゃない!
ちなみに今年のハロウィン対決は口の中で味が変わる巨大ケーキを作った我々の勝利だった。どうも、私たちに対抗して食べ物対決に持ち込んだジェシリさん。食べ物で私に敵うと思わないでよね。
ピーブズって本当に何者なの……(読み返し調べ返しながら分からなくなる作者の図)
お久しぶりです、ハリポタの二次創作ってハリポタの世界観を自己解釈した上で書かなくちゃならないから難しいですよね。まぁ、そんな考えねぇんですが。なんてったって主人公がコレだし。