……はい。
こんちには、私はエミリー・コワルスキー。
アメリカ生まれアメリカ育ち、イギリス学生の魔女。
突然ですが。
7学年になりました。そうです最高学年です。
新入生の入学式を前にして、私達の目の前に。いや、ホグワーツ城どころか新聞にも乗る程の大衝撃が襲ってきたのだった。
「──初めまして、学生の皆さん。今年から闇の魔術に対する防衛術の教師として教卓に立ち、貴方達を導く事となりました。オリオン・ブラックです」
声を大にして言いたい。
「私のっっ! 時代がっっ! 来たっっっ!」
「来たのは闇の時代だろ」
それ魔法生物学が解禁された時にも言ってたとシリウスが叫ぶ。
ちなみに私たちの学年の退学率(怪我死亡含む)は37パーセントよ。
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「エミリー助けて!」
「喜んで」
リリーとシリウスというあんまり見ない組み合わせが私の元にやってきた。息が切れてるリリー可愛いね。走ったせいか汗ばむ肌が光で反射してキラキラ輝いてるし、色付いた肌がリリーの髪色と合わさってすごく素敵。ここに今、戦争を終結させる。なんの戦争って?世界中の戦争全てだよ。
「コワルスキー、ジェーの馬鹿がエラ昆布の効果が長引いて──おいこら話聞けこの馬鹿2号。あーもう、これでも聞かねぇのかよ、エバンズ、スネイプ!」
「エミリーシリウスの話聞いてあげて?」
「コワルスキー、駄犬が呼んでるぞ」
「なぁにシリウス」
「おう(慣れ)……んでジェーがエラ昆布を改造したはいいが効果が切れなくていま湖の中でスリザリンに喧嘩売りながらマーピープルとダンスしてるんだが解決方法あるか?」
「ジェームズは一体進級そうそう何をしてるの?」
「馬鹿なんだろ」
「多分私が無機物から生物を生み出す魔法を練習しているから、かしら……。水龍なら海藻や水草の方がいいのかな、って悩んで。その、ポッターの前で漏らしちゃったのよね」
「……あぁ(察し)」
「あぁ(察し)」
「リリーってほんと天使」
どうやら水龍の様なものを作り出してみたいらしい。流石に命を作るのは倫理的にも禁忌的にもアウトだからなんちゃってらしいけど。
今は百合の花から白い小魚を作り出したそうだ。本物と大差無いようで、たまたま通りかかったスラグホーン先生にあげたという。
くっ、どうしてそのタイミングで私通りかからなかったの……!
「そういえばセブ、背が伸びたわよね」
「あぁ。だいぶ遅かったがな。成長痛が痛すぎる」
「もとより背が高かったけど、リーマスの次に背が伸びたもんねぇ。成長率はセブルスが一番大きいんじゃない?」
「二人は小さいな」
ほのぼのとした雰囲気に癒されていく。セブルスの身長が私と並んだ時は目線が常にあってて心臓鷲掴みされて燃え死んでたけど、身長抜かされてからは鎖骨が目の前にあって聖域広がってたよね。
入学当時はダボダボだった服も今ではピッタリに着こなしているし、普段なら見えないんだけど私と一緒に薬草採取したり調合したり魔法生物の世話したりする時はようネクタイとかボタンを緩めるの思い出しただけでも色気がやばい。
リリーはなんだか最近雰囲気がガラッと変わってきて。1年のころはお上品に見せかけてカエルとか木登りとか好きななんちゃってお嬢様で、隠しきれない無邪気さがギャップですごく可愛かった。とても好き。でも最近は(私が出禁になってるから)社交界にパートナーとしてジェームズやシリウスに連れ出されているからなのか、気品が溢れてきた。ベリー好き。
肩の力が抜けたっていうのかな、特にセブルスがジェームズと和解して、減らず口を叩き合いながらも切磋琢磨してる姿をみて肩の荷が下りたっぽい。リリーはセブルスの幼なじみでは無く、リリー・エバンズとして自身を優先し始めた。だからかなぁ!美に磨き掛かってんの!!もう!ほんと!目が潰れる!激しく好き。
セブルスとジェームズの和解と言えばその要因及び起爆剤になったリーマスは入学当時から背が高かったんだけど相変わらず元気に伸びている。狼人間という特性上生傷耐えない生活を送っていたんだけど、脱狼薬の効果が効いてきたのか「傷ができなくてすごく嬉しい」ってぽわぽわ花飛ばしていた。傷、引き攣るもんね。一番背が高いのに可愛い属性に全振りしすぎて私は気付いたら医務室だった。あれれ?
彼も1年の時とは比べ物にならないくらい明るくなった。私たちとはもちろんの事、MM以外だと顕著だ。ひょんなことから全生徒に狼人間だってことバラしちゃったから今ではリーマスの秘密は皆の秘密。髪とはストレスと直結する。健康的な生活に隠し事のない生活。ライトブラウンの髪は最近その艶を余すことなく放っている。いつかお嫁さんが出来るといいな、というのは彼の言葉。泣いちゃったよね。うおぉん。
泣いちゃったと言えばピーター。ピーターは超優秀なのにジェームズやシリウスといった比較対象がある分、どうしても周囲にMMの腰巾着とか悪口言われてたんだけど、ついにこの前やりました。あの双子が馬鹿やらかしてる最中にピーターの実験道具を破壊してしまうという事件が発生してね、ムキーッて泣きながら怒ってた。双子も流石に悪いことしてた自覚があるのか反論せずに大人しくしてたよ。まぁ背後でスウーピングエヴィルでボール遊びしてたからってのもあるかもしれないけど。
涙すら可愛いとか可愛いの擬人化と言っても過言では無いよね。あまりにも可愛すぎて終わったあと静かに倒れたよ。予想してたエヴィルが支えてくれた。最近叫ぶ暇もなく可愛さで殺してくるから静かに絶命する他あるまい……。
「エミリー聞いて……るわよね」
「うん、聞いてる、一文字一句違わずに覚えてるよ」
「変態だな」
リリーを挟んで階段を降りる。どこだろー?と迷子になってる可愛い1年生を眺めながら今日も平和(退学率37%)な一日が始まるのだった。
……シリウス?あぁ、あの派手な背景。よく分からないけど居なくなったよ。
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「──杖を置いて。教科書も閉じて。さて、それでは改めまして。あなた方の闇の魔術に対する防衛術を教えることになりました、オリオン・ブラックです」
「……何が闇の魔術に対する防衛術だ。闇の魔術そのものじゃねぇか」
「シレンシオシリウス」
「もがっ!んぐ、んくぐ!」
丁度隣に座っていたシリウスのうるさい声を防ぐ。黙らっしゃい!Mr.オリオンの甘くて蕩けるような、それでいてスっと体から抜けていき余韻に浸れず次を求めたくなる様な素晴らしい声が聞こえないでしょ!
「(なんでお前が黙らせるんだって顔)……皆さんは闇の魔術についてどれほどご存知でしょうか。えぇもちろん、最高学年たるあなた方がホグワーツ城で最も優れている。あなた方が最もご存知だ」
Mr.オリオンの影のある笑顔に全員が姿勢を正す。ブラック家。それはイギリス魔法界に置いて王族とも言える方、らしい。私アメリカ人だからイギリスの歴史詳しくなくって……。ただあの美貌ならイギリスを掌握することも容易くなくてよ。
昔はあまりの尊さから下の名前なんて呼べなかったんだけど、レギュラスとシリウス筆頭に『紛らわしいし変な気持ちになるからやめろ』と言われちゃったから……。本人の前では流石に言わないけど許して欲しい。あと割とポピュラーな苗字なのかイギリスはもとよりアメリカにも普通にいる。近所のノーマジでありリアム兄さんといい感じのイオ嬢一家とか、ミドルスクールの時の先生とか。
「さて、根本的なことを質問しましょう。……そうだね、Ms.エバンズ」
「っ、は、はい!」
「闇の魔術のことについて偏見も含めてていいから答えてなさい」
美!!!!!!……っくりした。まさか純血主義とも言われるブラック家の当主(美)がマグル生まれのリリー(美)を名指しで当てるとは思わなかった。
戸惑うリリーも可愛いね。天にも登りそう。
「……闇の魔術とは、主に対象に害をなすために使われる魔法の総称で、許されざる呪文から有毒な魔法薬の醸造、闇の生物の飼育が含まれてます」
「うん、よく勉強しているね」
Ms.オリオンはリリーを立たせたまま次の質問に移った。
「では、許されざる呪文についてご存知かな?」
「許されざる呪文は三つ。磔の呪い、服従の呪い、そして、死の呪いです。これらの呪いは1711年に法律化されました」
リリーと通路を挟んで隣に座ったセブルスと、隣に座ったジェームズが今にも飛びかかりそうな勢いでMr.オリオンを見ている。
天使と小バエを欠片も見ずにリリーを見続けるMr.オリオン。うーん。美。
「さて、では今日は服従の呪文についてのお話をしよう。服従の呪文は対象者をトランス状態にし、術者の思うように動かすことができます。対象者は快楽や幸福感に満たされ、この状態になると術者の命令に無条件で従うことになるのです」
Mr.オリオンは庭小人が入った籠から一匹取り出して呪いをかけた。
──インペリオ
その艶やかな唇から紡がれた美声に庭小人は幸福そうな顔をした。
そして。
「きゃあああああああ!!!!」
庭小人はそのまま自分の耳を引きちぎったのだった。
「──そのため、他の者が忌避するような事柄まで疑いなく実行するのです」
狂気と思われてもおかしくない笑顔はそりゃもう人を狂わせるほどに美しく、Mr.オリオンを中心に風が吹いたように整えられた美しい髪がなびいたような気がした。
「この呪いは一切抵抗が出来ません。特にマグル生まれであれば、あるほど」
立たされたままのリリーに再びMr.オリオンの視線が降り注ぐ。
「んぐぅぅ」
「……お前は何に悶えてるんだ?」
「絵面が美しすぎるのと授業とインパクトと庭小人が傷付けたオタクの感情と私もMr.オリオ……ブラックに服従の呪いを掛けられたいから庭小人そこ変われって感情と……いっぱい」
「(聞いて損したって顔)」
ブラック家は感情を何も言わずに顔だけで表現する才能に優れてると思うよ。
「闇の魔術はとても危険です」
ふい、とリリーへの視線が外れた。教室全体を見渡したMr.オリオン。一人一人の素質を精査する様に、見定める様に。
でも決して、けっっっして、私とは目が合わなかった。悔しいとは思ってないです。そういう王様気質なところも興奮燃え死にポイントです。スリザリンに100億点!!
「闇の魔術は危険、だが、とても魅力的で美しく、そして非常に残酷です。生来人は闇に惹かれ、手を伸ばす。そこに存在しようとしなかろうと、幻想の影を追い求めて。……。だからあなた方は闇の魔術を知ってください。その魅力と、抗えない人の愚かさを」
ぞわりと肌が毛羽立つような、闇そのものの様な笑顔。笑顔なのに何故か脅しの様な怒りの様な感情でさえ感じられる。
「人は何故、罪を犯すのか。罪とは果たしてどちらなのか。あなた方の中で一体誰が、闇に飲まれるのか……予想でもしながら、ね」
しん。と痛いほどの沈黙が流れる。
私はツン、と心臓が激しく痛かった。
ぐう、視線一つ一つ、動作一つ一つがMr.オリオンの素晴らしい演説能力をはねあげさせて私の心臓もはねあげさせる。馬鹿みたいな音量が心臓から流れそう。
「……Mr.ブラック。私の意見を言ってもよろしいでしょうか」
「何か、Ms.エバンズ」
リリーは小さく震えた唇をグッと噛み締めて力を抜くと、その本来の力強い緑の瞳をMr.オリオンに向けた。
「闇の魔術は人を傷付ける物が多く、とても危険です。抗えない欲望と似たような形をしています」
リリーは手を握りしめてはっきりと言った。
「でも、全てがそうじゃない」
「例えば先程のインペリオ。錯乱状態の人を落ち着かせたり犯罪や自殺を止めることだってできるでしょう。私はマグル生まれだから魔法の怖さも魔女狩りの恐ろしさも両方理解できます。闇の魔術に該当しなくても、怖い魔法は沢山ある。闇の魔術は人が決めたもの、ならば使う人によっては闇の魔術が人を守るものにだってなりうるんじゃないかって」
「人、ねぇ。それは確かにそうでしょう。だが人により、だ。例えば今の戦争で闇の陣営の長である例の──」
「──ヴォルデモート卿も人。そして私は人であるなら、どんだけ悪い魔法使いと呼ばれようと誰かを慈しむ事も愛する事も出来る」
リリーはとても素敵な笑顔を浮かべた。
「闇の魔法使いと言われて闇の魔法を使おうと、美味しいご飯を研究して食べて、この味じゃないって悩んで、夜更かしして怒られて、夏になれば避暑地に旅行に行って、怒って、笑って、馬鹿にして」
指折り数えて何かを思い出すように。
慈愛に満ちた顔って私はリリーの事だと信じて疑わない。
「闇の魔術も、闇の魔法使いも。全てがそうじゃない、誰もがそうじゃない。考え方や視点によって、この世にとって素晴らしい物になる。……そう考えています。これが私の偏見です」
Mr.オリオンは浮かべた笑顔を一切崩さず、リリーを席につかせた。
「闇もいえば、ヴォルちゃんもヴォルデモートとかいう闇の魔法使いの仲間だったりするのかな?」
「おま……!っ、このアメリカ人!!!」
「なんだとこのイギリス人!!!」
本当はオリオンの心情とかも入れたいところなんだけど基本今はコワルスキー視点でしか動かないのでコワルスキーへのドン引き感情しか出ません。うーん、久しぶりに動かしたけどコワルスキー心の声うるさい。