ホグワーツは1〜5年を普通過程。6.7年を応用過程と言ったように授業内容が別れている。
3年から選択授業が始まり、5年の終わりに普通過程(O.W.L)試験の結果で、応用過程(N.E.W.T)で履修できる教科が決まる。そして最高学年の最後に行われる集大成、N.E.W.T試験を受け、その結果を就職先に提出するのだ。
まぁつまり、マグル社会で言うところの大学って部分が6.7年で行われると思っていいかな。
なぜ私がこんな話をしているのかと言うと。
「魔法史が特に分かんないよ〜〜〜〜〜!」
「うるっせぇよコワルスキー」
その7年末の試験、通称いもりと呼ばれるテストで優秀な成績を収めないと魔法生物のスペシャリストにはなれないという現実に直面しているってわけ。
「ドラゴン使いになる予定が無いのが幸いだけどっ、魔法生物のあらゆる資格を取得しようとしたら魔法史と闇の魔術に対する防衛術と変身術が足りないよ〜!」
「全部実技」
「本当にミリーってなんで実技出来ないの?」
我々イタズラ仕掛け人は非常に優秀なので、受ける科目にバラツキはあれど基本いもり対策に追われている。
そんな中、余裕があるのがこのクソ天パメガネ男と癖なしイケメン野郎の2人なのだった。
生粋の魔法界貴族、基本的に魔法史とかが当たり前の世界で生活していたからか何も引っかからない。
「魔法史が眠くなるのは分かるけど、今までどうやってフクロウ試験に合格してきたって言うの?」
「ふふん、可愛い子が教科書読んでくれたのを暗記して赤点回避したわ」
「ドヤる事じゃないから」
「聞いて驚けジェームズ。その時の試験のミス、ほぼほぼスペルミスだ」
「言語を学ぶところから始めなよ。君さ、もう7年もイギリスにいるんでしょ?アメリカ気分も大概にしてよ」
「メガネ割ってもいい?」
イギリスは確かにオシャレでなんだか知的な感じがするし美形の国だから麗しくて美しくて可愛い人が多いけど、やはり私はアメリカ国民としてアメリカの心を忘れてはならないと思うの。
そう、例えセブルスやリリーやピーターやリーマスが居ようと……。い、居ようと……。
「…………。イギリスに国籍移そうかな」
「あ、それはやめて。来ないで」
「コワルスキーが同じ国民になるのだけは心底嫌だな」
「俄然移したくなって来ちゃったかも(怒)」
そこは歓迎してよ。
なんで拒否するのよ。
「というかさ、シリウス。僕割とキミに文句言いたいんだけど」
「おっとジェー。俺と親父は別の存在だ。授業の文句ならダンブルドアとかに言ってくれよ」
「先手を打たないで」
Mr.オリオン、本当に麗しい授業をしてくれて私の性癖に優しい。
艶っぽい声から綴られる禁忌とも言われる呪文を学べるの本当に耳が幸せだし、魔法を使う時の光が顔に当たってコントラストが出来るあの瞬間も眼福。
「ここ最近だとクルーシオの授業はクレイジーだと思ったよ」
「実験動物だけじゃなくて人間にまでしようとするとは流石にビビったよ俺も」
「ミリーに救われたね」
「おう。まさか『私に、ぜひ私に!その拷問呪文をかけてください!ぜひ!』って圧掛けたから親父が考え直したから。コワルスキーってほんと、魔法界の脅威」
「褒められてる?」
「「いや褒めてない」」
禁じられた呪文三つの内、拷問でも使われるクルーシオ。苦痛を味合わせることができる魔法なのだけど、Mr.オリオンは『ふむ、それではこの禁忌を誰かに味わってもらいましょう。じっくり、ゆっくり、優しくして差し上げます。大丈夫、身を委ねてください、少し痛いかもしれませんが死にはしません。味わってこその防衛術ですから』と言っていた。
そんなの、私が味わいたいに決まってる……!
Mr.オリオンの手ずから拷問を受けられるだなんて、そんなのご褒美……!
「いやー、ドン引きだったな」
「流石のMrも『えっこれ正常?誰か錯乱かけた?』みたいな顔して周囲見渡してたもん」
「非常に残念ながらデフォルト」
キョトンって顔をしたMr.オリオンは美しさの中に芽生えた可愛さがとんでもない威力を放っていた気がするわ。瞼を閉じると鮮明に思い出せる。ビンズ先生の魔法史のリソースが全て上書きされた気がするわ。
まだ呪文学の方が好き、使えないけど。ビンズ先生の魔法史は本当に拷問よ。魔法生物が古来から伝わる物だから、魔法史が少し必要になってくるのが本当に痛いわね。
アメリカだともう少し実技寄りなのだろうけど、イギリスで卒業する以上イギリスの文化に合わせて試験を取らなきゃ。
「あぁ……留年しようかしら」
「やめてあげて。僕らみたいなストッパーが居ない年下にミリーは荷が重い」
「コワルスキー、スネイプ達と一緒に卒業したくないのか?」
「したいに決まってるじゃない!!!!!(大声)」
一緒に卒業旅行とか!就職活動とか!してみたい!
へへ、両手に天使を抱えて旅行……くふふ。
この双子さえ居なければもはやエデンと言っても差し支えない旅。
あぁ、どこに行こうかしら。日本?フランス?インドもありね。いっそ魔法使いという利点を活かして近隣諸国諸々を移動する旅も素敵だと思う。
イギリスっていうかスコットランドは森の中とか秘境とか魔法生物の生息地だけで街並み自体の観光はしたことないから、皆に国を案内してもらうのもいいかもしれない。
特にリリーとセブルスはマグル出身だから地理にも詳しそうだし。
「うるさいですよあなた方」
「レギュラス♡♡」
「あなた、本当に誰にでもしっぽ振るんですね」
高学年になり可愛さが鳴りを潜め美しさと儚さが健在した未亡人的美男子レギュラス・ブラックが下々にも優しく語りかけてくれた。
えっへっへっへっ。綺麗、可愛い、美しい、溶ける。
「コワルスキー?」
「んふふっ、なぁにレギュラス、今日も世界平和に貢献してて偉いね、いちご食べる?」
「その世界きっと次元が違いますね。食べません」
思春期かな、それとも大人かな、小さい頃は分かりやすかった照れ隠しが分かりにくくなりほんの少し冷たくなってきている。最高です。もっと、もっと冷たい目で罵って欲しい。あわよくば私をビンタして欲しい。でもそれでレギュラスが痛い思いをしたら申し訳ないので私は自分で自分の頬を叩いた。
「やめろ奇行!」
「うるさいシリウス、派手な背景はお呼びじゃないのよ!今私は愛しのレギュラスにぶたれたような感覚を疑似体験しているところなの、邪魔しないで」
「そこは兄として邪魔させろ弟を変態に巻き込むな」
「変態だなんてっ!照れるわ」
「褒めてねぇよ馬鹿!!!」
ふと、私のノートを見たレギュラスが不思議そうな声で問う。
「──なんでMs.コワルスキーは勉強じゃなくてカレンダーを作っているんですか?」
「「は!?」」
「流石レギュラス、目ざとい」
実は私、魔法史を覚えるのがしんどすぎて本業をしていた。
「えー、何これ。9月1日『おぉ、ママと全く同じ反応……』……9月13日『そういうところ、僕はいいと思うよ。扱いやすくて』……。なにこれ?」
「え、何って、見ればわかるでしょ?」
「分からないから聞いてるんだけど?」
「セブルスの名言日カレンダー」
「なんて????」
「セブルスの名言カレンダーがこの世に存在しないのは理に反するかなと思って作ってる」
「理に反する」
3人が揃って不思議そうな顔をした。なんというか、虚無を見ているというか。
その中でも一際輝かしいのがレギュラスだ。素晴らしいよね。本当に。
「これが1年の時、これが2年の時、これが3年の時……」
「カレンダーの中に空白があるのってまさかとは思うけど……、え、スネイプと会ってない日……?も、え、もしかして適当に当てはめてるんじゃなくて──その日にあった会話の内容を書き出してるの?」
「そうだけど?」
「そうだけど!!!!????」
ジェームズが顔を青くしながら正解を導き出す。
そりゃそうじゃん。この7年間って何日あると思ってるの?365日程度のカレンダーで終わるわけがないじゃない。
これは未来を示すカレンダーじゃなくて、過去を示すカレンダー。要するに日記にも近しい努力の結晶よ。
「全部、覚えてんのか……?」
「まさか!流石に──」
「だ、だよな、お前の変態もそこまで行き過ぎて……」
「──可愛い子との会話しか覚えてないわ」
「このカオスと有能と無能を掛け合わせた奴を誰かどうにかしろ!」
シリウスとジェームズの会話はぶっちゃけ言うとあんまり覚えてない。名前と好みを覚えているだけまだマシだと思うわ。
「リーマスやピーターが名前を言ったり好みを言ってるから覚えただけなんだけど」
「お、それ俺らのことだな?喧嘩なら買うぜ。お前中庭な」
「売った訳ではないけど喧嘩なら別に、私魔法生物と銃もってるけど」
「ずっと仲良くしようなエミリー・コワルスキー」
ずっとは願い下げって感じかな。
「いつかミリーは好みの子が亡くなった時に剥製なりなんなりに加工して飾りそうだから怖いん……その手があったかみたいな顔やめて」
「その手があったか……!」
「ミリー、約束して。血の誓いを交わそう。せめて人間の死体は必ず火葬するって」
「魔法生物は諦めたか」
「素材ごとアウトになっちゃうでしょ」
ジェームズが大焦りして私の手を掴んだ。
さすがに、倫理観が許されないとは思うけど心から惹かれた。うーん、永遠と綺麗な人を飾りたい気持ちはすごくある。ただそれを認めてしまえばなんかこう『お前は最も美しい時期!最上に美しい状態で殺して飾る!』みたいなことが出来ちゃうことになる。
……それもいいな。
いや宜しくはないよ!?絶対天使たちが悲しむし、刺し違えてでもこの友人は私を止めるだろう。
そもそも、移ろいゆくのが綺麗なのだ。背が伸びて、声が低くなって、化粧を覚えて、シワが増えて、白髪が増えて。それでも胸をりんと張って自信いっぱいで人生を謳歌する天使たちが、私は好きだ。
老衰まで看取っちゃうもんね!
死ぬなら私が最後だ。
「血の誓いって、なんだっけ?」
「去年か一昨年に防衛術でやってたろ」
私が覚えているとでもお思いで?
そんな視線を込めるとシリウスはため息を吐き出した。
「魔法使いにとって最も拘束力がある契約魔法の一種だ。昔はその呪いとも言えるほどの強力さに闇の魔法の一種としても数えられていた」
「へぇ」
「杖で手を切ってお互いの手を合わせて約束を交わすんだ。例えば『お互いを攻撃しない』とか『一蓮托生』とか『秘密を漏らさない』とか。すると、消して壊れないペンダントが形成される。まぁこれが血の誓いの大雑把な概要だな」
それって魔法生物と行う一方的な契約とは違うってことだよね?
魔法使い同士が相互的に契約をすると言う。意思疎通と魔法行使が必要で…………。
「あ」
そうだ。
「なになに怖い怖い怖い!ミリーの『あ』程怖いものないよ!?」
「何を企んでる吐け!」
「兄さんがここまで動揺するのってMs.コワルスキー相手だけなので傍から見てるとすごく面白いですよ」
「レギュ!」
レギュラスの脳天に響くような声を心地よく聞いた後、私は思い付いた内容をざっとメモに書いて図書館へ駆け出した。
「おいコワルスキー!?」
遠のくシリウスの言葉を聞き流して、私は心臓がドキドキと舞い上がる。
見つけた、手がかり。
ピーブズを使い魔にする方法の取っ掛りは、血の誓いだ。
あと2話くらいで親世代の学生時代終わります!