─矛盾─   作:恋音

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1-2.天使との邂逅

 

 

 キングクロス駅の隅っこで、ポンペーティナ・スキャマンダーはコワルスキー一家を慰めていた。

 

「ミリ……ミリィ……」

「ぐすっ、ぐすっ。あぁ、また行っちゃう。も、戻ってこなかったら、ど、どうし……」

「うおおぉおんおんおんおん」

「スキャマンダーさんごめんなさいね……」

 

 リアムもジェイコブもクイニーもギャン泣きである。辛くて見送れなかったが傍に居た。

 嫁であるイオがリアムの背中を擦りながらティナに謝ると、ティナは慣れた様子で首を横に振った。

 

「いいことを教えてあげるわ、イオ・コワルスキー。クイニーの娘のエミリーがホグワーツに通っていた頃は、毎年こうだったのよ」

 

 キョトンとした顔だったイオは状況が読み解けるとクスクスと笑い始めた。

 

「それは、荷が重いですねぇ」

 

 でも知っていて愛しい子。無事に帰ってきてくれなきゃ、私も心配でどうにかなってしまいそうだわ。

 

 

 

 ==========

 

 

 

 私服の新入生や既に制服に着替えた在校生の新学年特有のザワザワとした喧騒の声が溢れる中、変わり者に見られないようにお淑やかにしながら様子を全力で伺っていた。

 可愛い子、可愛い子、あの子も可愛い。うっ、眩い美しさ。綺麗、綺麗。儚い。美しい。可愛い。はぁ、流石は美形確率の高いスリザリン、グリフィンドールのイケメン率が高いけれど、相変わらず眼福すぎる。万歳。

 

 前回はグリフィンドールだったけど、スリザリンかハッフルパフに入ってみたいな。スリザリンはもちろん美形が多いし、伯父さんやアベルが着てたからハッフルパフは憧れがあって。

 

 遠く、過去を思い出す。

 随分離れちゃったな。

 

「よし、とりあえずコンパートメント割り込むか」

 

 ずっと立ちっぱなしで数時間も乗るだなんて流石の私も耐えられない。

 キョロキョロ空いた席を探していると、とある1年生が目に入った。

 

 メガネをかけていて天然なのか毛先がクリンと跳ねている、少し小柄な横顔。

 

「ジェ……ッ」

 

 ──ジェームズ。

 

 不安そうに顔を下げて手をいじっている少年はジェームズと比べて可愛い気配しかしないのに、何故か私の友人の姿が脳裏にチラついた。

 

 随分私は寂しがり屋になったみたいだと苦笑いして欲望のままにコンパートメントの扉をノックする。

 

「こんにちは、コンパートメントを探してるんだけど、一緒に使ってもいいかしら?」

 

 今更なのだけど2度目の入学となるにあたって私はひとつの目標を立てた。

 そう、それは余裕を持った大人のレディのような一目惚れ詐欺だなんて言わせない、7年連続恋人にしたいランキング一位を掻っ攫って草葉の陰からじジェームズとシリウスに自慢してやるんだって目標。

 

 だから決して発狂せずに、余裕を持った行動をする。

 

「キミも新入生?いいよ」

 

 私は普通に挨拶をしてコンパートメントの扉を閉じ、快く入れてくれた少年と目を合わせ……。

 

 

「──可愛すぎて目に入れても痛くない程の天使なんだが!!!!????(爆音)」

「えっ!?何!?」

 

 直視できない可愛さに膝から崩れ落ちた。

 

「なにあの瑞々しい草木が水面に反射しているかのような大きなクリックリのお目目。やばい、目を合わせたら深淵なんて比じゃないくらい飲み込まれる。やばい、胸の高鳴りが止まらない。きゅるんきゅるんの瞳で見上げられたらもう、どうにかなっちゃう!」

 

 想像を絶する可愛さ。

 ジェームズという先入観があったせいか瞳の威力が核爆弾レベルの大きさでやってきたわ。

 

「目に直接レモンをぶち掛けたみたいな甘酸っぱいというか痛苦しい思い出!そんな衝撃に目を当てられないとはまさにこのこと!愛おしさが口からとめどなくゲロの様に吐き出してしまってこんなにもクルーシオ!!!」

 

 ガタンゴトンとゆっくり特急が動き始めた。速度と反比例して心臓が落ち着きを取り戻し始めた。

 

「ふぅ、ふぅ。落ち、落ち着いてきたわ」

「だ、大丈夫?」

「サングラスかけるから大丈夫。いやぁ、11年間身内の美貌しか浴びてなかったから供給に脳の処理に追いつかなくって」

「ごめん何言ってるか全然分からないよ」

「私アメリカ人なの。アメリカ訛りだからイギリス英語とちょっと違うのよね」

「そこじゃないね」

 

 愛しの可愛い天使が鈴を転がすような声で私に語りかけて心配してくれるだけでもうニッコニコしちゃう。

 アメリカ英語ってねっとりとした発音だけどイギリス英語ってスパッとした発音で綺麗なのよね。イギリスの綺麗な発音を聞き慣れてる人にとってアメリカ英語は聞き取りにくいみたい。もちろん逆も然り、私もイギリス英語の発音はすごく訛ってて聞き取りにくいの。でも天使の言葉は一文字足りとも聞き逃さないし忘れないわ。

 

「あの〜……」

 

 ニコニコ眺めているとコンコンとコンパートメントの扉を叩かれた。赤毛の髪に明らかにお下がりの服を着た新入生の男の子。

 

「コンパートメント、まだ余裕ある……?」

「あ、さっきの」

「もう他のとこ埋まっちゃっててさ、もしいいなら一緒してもいい?」

「もちろんだよ」

 

 いそいそと入ってきた赤毛の男の子のためにスペースを空けて、私はスーツケースを横に倒した。

 スーツケースの動物の所有許可は今回実は取ってなくて。前回はニュート伯父さんが取ってくれていたんだけど、今回は私がアメリカ魔法省でドラゴンブリーダーと魔法生物危険種取り扱い2級を取得してるからね。1級は流石に無理。今後の課題。

 

 まぁ要するに私が所有許可みたいなもの。魔法省に席は置いてないけど、魔法生物に対してなら変人ケトルバーン先生と同等の許可を得てるってわけよ。

 

「僕はロナルド・ウィーズリーって言うんだ。ロンって呼んでよ」

「ウィーズリー……って、アル何とかかんとかのあの、えっと、入学したら1人いるとは思えのウィーズリー?」

「僕の家どんな覚えられ方してるの!?」

 

 ロンは不服そうに『確かに兄弟多いけど』と文句をたれている。それを面白そうに笑った緑の目の天使は続けた。

 

「僕はハリー・ポッターって言うんだ。僕もハリーって呼んでよ」

「ポッター!!!???」

 

 ガタリと私が立ち上がる。

 いや、いやいやいやいやいや。まって、ちょっとだけ待って欲しい。

 

 ポッターってジェームズ・ポッター!?我らのパッドフット!?あ、いやパッドフットってシリウスか。ん?天使じゃないからどうでもいいと思って何となくで覚えていたけど、フロングス?フロングズ?

 

 うーん、天使じゃないから覚えてない。そんなことはどうでもいいのよ。それよりポッターって名前があまりにも馴染み深かすぎるしイギリスって分家のポッターって無いんじゃなかったかな。というか血筋を疑う余地もない天然パーマ。

 可哀想に、髪の毛はジェームズに似てしまったのね。

 

「わぉ、ハリー・ポッターってあの生き残った男の子?」

「そう、言われてるみたい」

 

 ハリーのそう言った綺麗な水面に映る森の様な瞳が、私に最悪の方程式を解けと言ってきた。

 

「は、はは、ハリー?その、貴方の麗しい母親の名前って、もしかして、その……」

「母さんの名前?」

「うううううん!」

「めっちゃどもってるけど」

「母さんの名前は……──リリー・ポッターって言うんだ」

 

 うわあああああああああああ!(絶望)

 

 リリーが、私の愛しのリリーがジェームズのクソ天パ野郎に奪われた!!どうしてリリー、セブルスでも良かったじゃない!百歩譲ってシリウスよりはジェームズの方が義実家関係がマシとは言え、どうしてジェームズなのよリリー!

 そんなことならせめて、私と結婚してよ!

 

 私は改めてハリーを見た。

 愛しい私たちの子。

 

 世界はリリー・エバンズという名前を失った代わりにリリー・ポッターとハリー・ポッターを生み出したことを誇っていい。悔しいけど、悔しいけども!

 

「ハリー。産まれてきてくれてありがとう」

 

 緑の目で私をじっと見て、照れくさそうに慣れてない様に笑った。可愛い。えっ、可愛すぎる。

 

「……もしかしてハリーの事私が産んだのでは」

「何言ってんだよこの人」

 

 ロンが私に冷ややかな目を向ける。ふふ、落ち着く顔。

 

「今すっごい失礼なことを思われた気がする」

「ところで君の名前は?」

「私?ミリ・コワルスキー!アメリカ生まれアメリカ育ち、よろしくね」

「ミリって呼んでも?」

「あまりにも光栄すぎるわ」

 

 ハリー、あまりにも可愛すぎるわ。

 目が潰れてしまいそう。

 

「君、さ、ほんとうにあるの?ほら……」

 

 ロンは私よりも当然ながらハリーが気になるようで額を指さした。

 

 なんのことだろう?

 私が首を傾げると、ハリーは心得たといわんばかりに前髪を持ち上げて額を見せた。

 

 するとイナズマの形をした古傷が顕になった。

 

「それじゃあこれが例の?」

「うん。でもなにも覚えてないんだ」

「何も?」

「緑色の光がいっぱいだったのは覚えてるけど、それだけ。それにハグリットが教えてくれるまで、自分が魔法使いだってこと全然知らなかったし……両親のことも……ヴォルデモートのことも……」

「ん!?」

 

 男の子二人が仲良さげに話している内容に私は聞き捨てならなくて天使の話を割り込む。

 稲妻の軌道を辿る魔法、唯一の緑色の魔法。そしてハリーのあまりにも魔法に無知なところ。

 

「なん、なんで魔法使いの事知らないって…?」

「へ?あぁ、僕マグル?いとこの家で暮らしていたから。ふくろうを買う余裕もなかったし、ダドリーのお古を着せられて誕生日にプレゼントを貰ったことなくて」

「任せてこれからは私が毎年嫌ってくらいプレゼントをあげるわ!いやそれじゃなくて、え、どうしてそんな、え、うそ、うそうそうそうそ。待ってひとつ決定的な事を聞かせて」

 

 嫌な方程式が止まらない。

 2問目だよこんなの。

 

 私は心臓を押さえてもっと分かりやすく聞いた。

 

「ハリーの、その、両親は…。今、どこに?」

「君はハリー・ポッターの事知らないのか?」

 

 どうやらハリーはその可愛さだけで有名なのではないらしい。ロンが不思議そうな顔をして首を傾げた。

 ハリーはなんてこと無い、当たり前の顔をしてぼかしながら答えを言い放った。

 

「僕が1歳くらいの時にね」

 

 ガツンと頭が殴られた感覚。

 あまりの衝撃に真っ白になった。

 

「うるさくなったり静かになったり忙しいやつだな」

 

 リリーとジェームズが、亡くなっている……?

 

 血の気がサァッと引いて、思わず首を振る。

 もしかしてニュート伯父さんが言ってたことって……?

 

 私の沈黙を遮るように通路でガチャガチャと大きな音がして、えくぼの似合う鬼バ……車内販売のお姉さんがニコニコと戸を開けた。

 

「車内販売よ。なにか要りませんか?」

「……ふ、2人とも食事は?」

「ペコペコだよ」

「僕は、あるからいいや」

 

 私は車内販売の鬼ババお姉さんに普通のチョコとお野菜たっぷりのサンドイッチを注文する。そしてコワルスキー家特性のパイとクッキーを取り出した。

 

「普通のチョコじゃん。カエルチョコくらい買いなよ」

「嫌よ。逃げたら厄介だもの」

 

 ハリーは魔法界のことを知らないせいかキョトンとした顔をして首を傾げた。くぅ、かわいい。

 

 そう、今はハリーの口から亡くなっただなんて決定的な言葉を聞いてない。ひとまず目の前の天使を愛でる事にしよう。

 大丈夫、大丈夫だ。きっと悪戯仕掛け人は私以外欠けることなく仲良く過ごしている、はず。

 

 イギリスにずっと来たかった。でも、責められるのが怖くて、反対されてるってことにあぐらをかいて逃げてきた。

 

「チョコを食べるのは元気が欲しい時」

 

 リーマスは落ち着きたい時に食べていたけど、私はそんなリーマスを思い出して元気が出ちゃうというか大興奮してしまうのだ。

 甘いものを頬張るリーマス、すごく可愛くてその姿をチョコに彫刻にして飾っておきたいくらい。

 

「2人も遠慮せずに食べてね。大丈夫、あの鬼ババア何回か来るから足りなくなったら買い足せばい──」

 

──スコン!

 

 鼻先スレスレにバターナイフが投げられ、コンパートメントの壁に突き刺さる。

 

「……ゆ、有能で素敵な車内販売のお姉様の料理って本当に最高みたい」

 

 ハリーとロンはまるでリリーを前にしたジェームズとシリウスのように何度も頷いた。

 

 姿見えないのにどこから飛んできたのよあの鬼ババア……!

 

 

 

 

 

「ねぇ、ヒキガエル見なかった?」

 

 雑談混じりに遅めのお昼ご飯を食べて2人の今までの生活などを聞いていると、突如コンパートメントに1人の女子が現れた。茶色の髪に茶色の瞳。笑顔がすごく似合いそうな頬にちょっとだけ緊張した声色。

 

「貢がせてください」

「ミリ、落ち着いて」

 

 もぐもぐと私の持ってきた食事を楽しそうに食べていたハリーが慌てて私の肩をがしりと掴んだ。

 

「!?肩洗えない!」

「そこは洗ってよ」

 

 落ち着くのよエミリー・コワルスキー。貴女はミリになってから大人なレディになるって決めたじゃない。

 そう、例え目の前にすっごく素敵で心惹かれる天使が居ても……。

 

「結婚してください」

「初対面!なぁハリー、こいつほんとに話聞かないぜ!?」

 

 ハリーじゃ埒が明かないと考えたのかロンがグイッと無理矢理引っ張って私を座らせた。

 

「いいかハリー、僕も初対面だけど分かる、こいつはこうしなきゃダメだ」

「分かった、頑張るよ」

「ハリー?今ハリーって言った?」

 

 女の子はハリーの名前に反応して目を見開くとコンパートメントに入ってきた。

 

「貴方もしかしてハリー・ポッター?私、貴方の事よく知ってるわ。本で見たの」

「聞き捨てならない!ハリーの本が出てるの!?そんなの書かれてある本全て買わなければならないじゃない。ねぇ猫みたいな可愛い麗しのレディ、名前を聞いてもいい?」

「私?ハーマイオニー・グレンジャーって言うのよ」

「ハーマイオニー!なんて綺麗な名前なの!ハーマイオニーと言えばあのシェイクスピアが執筆した冬物語に登場する美しい王妃様ね!きっと両親が誤解されても貴女の優しくて綺麗で美しく清廉潔白な真実が大事な人に伝わりそして愛されるように名付けたのね。名は体を表すとはハーマイオニーのためにある言葉だわ!」

「あ、ありがとう……」

 

 ドン引きした表情も素敵!

 ハーマイオニーはハリーとロンにちらりと視線を向けた。

 

「えっとハーマイオニー?僕らも彼女と初対面なんだけどね、いつも通りだと思うよ。なぁハリー」

「うん、そう思う」

「あぁ……そう……。あまり人に詰め寄らないようにしなきゃね……」

「ところでハーマイオニー、ヒキガエルってどうしたの?」

 

 私の質問にハーマイオニーは思い出したというような顔をした。可愛い。天使。

 

「ネビルって子のペットが逃げちゃったの。拳サイズくらいの……見てないかしら」

「見てないなぁ……。ハリーは?」

「おっきいカエルだよね、僕も全然」

「ペットと言えば、僕のスキャバーズもどっか行っちゃったんだよ。多分双子かパーシーのところだろうけど」

「スキャバーズ?」

「ネズミだよ。お下がりなんだ、上に5人もいるからいっつもお下がり。うんざりしちゃうよ」

「まぁいいわ。無いならいいの。他のところ探しに行くから。また会いましょう」

 

 そんなこんなで会話して、ハーマイオニーは他のコンパートメントにヒキガエルを探しに行った。

 

 手伝おうかと言ったけど食い気味で結構って断られちゃった。照れ屋なのね。

 流石優秀なこの私にボーナスをくださった神様だわ。まさか電車でこんなに可愛い天使と出会わせてくれるだなんて。

 

 流石にこれ以上畳み掛けられたら心臓がもたないからとりあえずロンの顔を見て落ち着こう。

 

「なっ、なんだよ」

「ウィーズリーって落ち着く顔……」

「喧嘩売ってる!?」

 

 そういえばウィーズリーも純血貴族だしブラックの血筋が入ってるのかな。

 まだユニコーンの角みたいに蘇ってから、ロン以外の純血貴族と会ったことが無いから……。

 

 

 ガラリと扉が開けられた。

 大きな体躯の子供を2人傍に立たせて、ツンとした顔で「ハリー・ポッターがいるって聞いたんだけど、君が?」と青白い顔でそう言うので、私は膝から崩れ落ちた。

 

「──その顔面は卑怯でしょ!!」

 

 ド好みの性癖プラチナブロンド天使が舞い降りちゃった。

 

「おい。赤毛のそばかす、ウィーズリーだな。こいつなんだよ」

「僕が分かるわけないだろ!」

「はじめまして!私ミリ・コワルスキーって言うのよ。あんまりにも美しくて夜空を煌めく星が舞い降りてきたのかと思っちゃった。貴方本当に人間?天使の生まれ変わりなんじゃない?」

「なっ、なんなんだよ急に……」

「あぁ声まで雲のように軽やかでまるで雲間から覗く星空みたい……。イギリスはハリーとハーマイオニーと貴方みたいな天使がいることを世界中に誇るべきね。ふふ、ふふふ、その褒められて少しほっぺたが赤くなってるところとか思考回路が追いつかなくて涙目になりかけてるところとかとぉっても可愛い。食べちゃいたいくらい」

「ウィーズリー!ウィーズリー!助けてくれ!」

「すげぇや、あのマルフォイが僕に助けを求めるだなんて……」

 

 ロンは私の目の前に無理矢理割り込んでバリアした。

 

「ところで……聞き捨てならない言葉が聞こえたんだけど」

「な、なんだよ」

「マルフォイ……?」

 

 プラチナブロンドの天使は少し躊躇ったあと警戒したように頷いた。

 

「(ブワッ!)」

「急な号泣」

「うぇえええんんんん。純血万歳!!!推しが!結婚してた!!!!」

 

 ルシーとシシーの子供だあああ!!!

 天使と天使、いやもはや女神と女神から生まれた子供がそりゃ天使じゃないわけが無い。

 

 こんな、こんなに私、こんなにも。

 

「もう死んでもいい……!」

「ポッター、そのうち君は付き合っていく家柄のいい魔法族とそうでないのが分かってくるよ。間違ったのとは付き合わないことだね。僕が教えてあげるよ」

「教えて」

「教えてよ」

「少なくともこんな冠婚葬祭女とは付き合わないことだね」

 

 ハリーとロンが食い気味にその手を握りしめる。まるで何かに追われているかのような形相だ。かぁいいねぇ。

 ファーストネームが知りたくてたまらない。きっと天文学に関する言葉なんだろうなぁ。

 

「星の名前かな、星座の名前かな♡」

「ねぇなんか最悪な名前当てクイズしようとしてない!?マルフォイ逃げた方がいいよ!」

「そうする(涙目)」

 

 えっ可愛すぎて最早誘拐したい。

 いや無断で誘拐するのは流石にダメだよね。うん、両親の許可は取らなきゃ……。

 

「大丈夫、マルフォイ家には出禁になってないから」

「僕ミリの好みじゃなくってほんっっとうに心から良かったと思ってるよ!」

 

 ロンがスパーンッ、と頭を叩いた。

 

「──あと5分でホグワーツに到着します、荷物は学校に届けますので、車内に置いていってください」

 

 いつの間にかホグワーツに近付いていた。車内アナウンスが聞こえてきて、私たちは慌てて制服に着替え始める。私は既に制服を着た状態だからローブを着るだけで済むから、2人の着替えを待つだけ。

 

「うわ、ハリーガリガリじゃない。いっぱいご飯食べようね」

 

 もちろんハリーには締め出されたけど。ぴえん。

 

 

 

 

 列車は完全に停車し、押し寄せる人混みの中小さなプラットホームに出る。

 おっ、あの子可愛い。あっちも可愛い。

 夜の寒さなどなんて事ない、上がりっぱなしのテンションに私は身震いしていた。

 

 やがてゆらゆらとランプが近づいてきて懐かしい声が聞こえた。

 

 

「イッチ年生!イッチ年生はこっちだ!」

 

 

 船でホグワーツに入るなんて入学式以来。

 懐かしい記憶を思い出していると、ハグリッドの目が私とかち合った。

 

「──エミリー!」

「「なに?」」

 

「「…………ん?」」

 

 何故か私と同時に返事をした人物が居た。

 それはとってもとっても可愛くって、愛しい私のハリー。

 

「なんで……?」

「どうして?」

 

 お互い首を傾げたあと、お互い自分を指さして緑の目を付き合わせた。

 

 

「僕、ハリー・エミリー・ポッターって言うんだ……」

「私も、ミリ・エミリー・コワルスキーって言うの……」

 

 

「「えぇ?」」

 

 ハリーに女の子の名前付けたのはどこのジェームズ・ポッター?

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