─矛盾─   作:恋音

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1-4.授業の難易度

 

「教師の方々、急いで集合してください」

 

 マクゴナガルの号令に新米の教師──クィレル以外の教師は大慌てで生徒が少なくなった大広間の片隅に集まった。

 新入生は既に寮へ案内されつつある。残った2年生以上の生徒はなんだなんだと異様な事態に不思議そうな顔をした。

 

「マクゴナガル先生……!じ、事実ですか。私は幻を見たのでは」

「フリットウィック先生、残念ながら事実です。幻ではなく、あの、コワルスキーの親戚がやって来ました」

「あの、ですか」

「ええ……。しかも話している内容を聞いた限り……」

「「「「「変態ですね」」」」」

 

 複数の先生が同時に呟くのを見てクィレルはちょっと混乱した。今ここで急に話し合いをするのであれば生き残った男の子、ハリー・ポッターのことだと思っていたのに。

 

「普通だったらどれほど良かったか、まさにエミリー・コワルスキーの再来。先程急いで同室の居ない部屋を作ってきました」

「流石マクゴナガル先生」

「いえ。どなたか彼女の荷物見ました?」

「ほほ!それでしたら私が!」

「ケトルバーン先生、いかがでした」

「…………すごく、嫌な気配はしましたな」

「あぁ……」

 

 魔法生物の教師がこう言うということは間違いなく彼女も魔法生物を生業とする、ということ。しかもエミリーと違いペットとしての許可申請等はされていない。一体何を飼っているのか、検討もつかないのである。願わくばエミリーと同じであってくれるなと祈るしかない。

 実際、同じではない。ちょっとグレードアップしている。それを知ればケトルバーンは魔法生物学の教師として杖を折るだろう。誰が教えられるか、と。

 

「嫌な予感はしておった。なぜなら米国魔法省からホグワーツに希望する将来有望な魔法生物学者がおる、と連絡があったからの」

「アメリカから直接、ですか?」

「…………とにかく、1年生を担当する先生方はどこまで似ているか危惧すべきでしょう」

 

 ダンブルドアの言葉に天文学のシニストラや薬草学のスプラウトが口を挟む。そして教師の殆どが視線を向けた。

 

「…………ゴホン」

 

 そう、セブルス・スネイプに、である。

 

「セブルス」

「Mr.スネイプ」

「スネイプ先生……」

 

 縋られるような視線にたじろぎする。

 

「断りますぞ。寮監はミネルバであろう」

「手に負えません」

「ほっほっほっ、懐かしい。Ms.コワルスキーが何かすればすぐMr.スネイプに助けを求めていたスリザリン生の気持ちがよく分かる。……いや本当にまじで」

「傷に触れるようなことをしてごめんなさいセブルス……。でも貴方以上の適任が見つからないのです。ポッター含め」

「より一層断りますな!」

 

 眉間のシワが深くなるスネイプに教師陣は視線を合わせた。

 

「ところで彼女の血筋は?」

「エミリー・コワルスキーの姪、ですね。Ms.コワルスキー、いえここでは分かりにくいのでエミリーと言いましょう。エミリーの兄……非魔法族がマグルと結婚し、出来た子供がミリ・コワルスキーのようで」

「かろうじて半純血だったコワルスキーが、親マグルだと……。風当たりは厳し、く、は無さそうですね?」

「彼女がコワルスキーとしての血を強く引いているのであれば、そこは一切気にしないでしょう」

 

 明日からの授業がどうなるかは分からない。けれど教師たちはまるでコワルスキーが帰ってきたかのような錯覚に陥り、懐かしさと後悔が混ざった感情をため息と共に吐き出す。

 

「──まるで生き写しのように、同じでしたな」

 

 

 チュウ。

 

 誰かの服の下で同意するように小さな動物の鳴き声が聞こえた。

 

 

 

 ==========

 

 

 

「おはようグリフィンドール!おはようホグワーツ!おはよう!おはよう一人部屋!!!悔しい!どうして天使と同室になれないどころか寂しく一人部屋なの!?」

「運が悪いんじゃないの?」

「おはようハーマイオニー、昨日もわかってたけど相変わらずすっごく可愛いのね。朝からきちんと身嗜みを整えたんだろうな、光が反射して髪の毛がキラキラ光ってるの天使の降臨って感じだわ」

「これのテンションを7年間も一緒って、慣れるかしら……」

 

 憂うハーマイオニーも可愛くって素敵。

 猫みたいで心がキュンキュンしちゃう。

 

「ミリ一人部屋だったの?」

「ハリーおはよう!昨日と比べて血色はいいけど目の下に隈があるから寝れなかったのかな?可愛いね。寝る前にちゃんと歯は磨いたの?昨日の様子じゃそのまま寝てしまいそうな勢いだったけど」

「怖いね……なんで分かるんだろ……」

 

 ドン引きしたハリーも愛おしくて仕方ない。

 

「いいなぁ、僕は家でも兄弟も多いし寮でも5人部屋!一人部屋が欲しいよ」

「おはようロン。私も小さい時は兄と同じ部屋だったから気持ちはわかるわ」

 

 寝癖をつけたロンは欠伸をしながらローブに袖を通していた。

 

「今日から授業ね。ホグワーツってテロに備えてるのか分からないけどとても複雑な道を行くじゃない?慣れるまでは集団行動した方がいいと思うの、皆はどう思う?」

「私は賛成ね。授業に遅刻するなんて考えただけで死ぬより絶望的だわ」

「まぁ嫌って言っても無理やり天使にはくっついて行くんだけどね。えへへ!──逃げられると思うなよ」

「新手のホラーやめて」

 

 最初は割と浮かれた新入生が階段のフェイクに騙されて授業に遅刻することが多い。初授業はデモンストレーションみたいに点数を引かれることがあるから、グリフィンドールと天使が標的にならないように注意しておかなきゃね。

 もちろん、これはセブルスの相棒だから言うんだけど、絶対セブルスはグリフィンドールの粗を見つけたらガンガン点数下げていくタイプ。そういうところも遠慮なくて可愛い。ぜひ私から点数を取り上げて欲しい。

 あとついでにアーガス・フィルチ。クソほど厄介でやりづらい。どれだけ捕まったことか……ジェームズが。

 

 

 ==========

 

 

「変身術はホグワーツで学ぶ魔法の中で最も危険なものの一つです。いい加減な態度で私の授業を受ける生徒には出ていってもらいます」

 

 マクゴナガル先生の警告に1年生は緊張したようでゴクリと息を飲んだ。

 

 

 

 週に一回、天文台で夜中に行われる天文学。週に三回、城の裏で行われる薬草学。ここら辺は慣れたもので、イモリの試験を受けた私にとっては余裕の内容だった。同じく退屈な魔法史も内容自体は覚えていたため、私は暇を持て余していた。

 2回目のホグワーツ、楽しみだと思っていたけど授業内容が復習に等しいから思っていたより退屈かもしれない。

 

 週の初めは座学ばかりの内容で、退屈がどうしても溜まっていく。

 

 妖精の呪文学は最初の方は杖を振らずに座学だけとはいえ可愛げのない先生を見ていたって面白いものじゃない。うんともすんとも言わない呪文学や防衛術、変身術なんて、実技劣等生の私にとっては苦痛になって仕方ない。

 

 

 

「聞いていますかミリ・コワルスキー!」

「はいもちろんですマクゴナガル先生、それはそれとして先生結婚されてるんですね。エンゲージリングが着いてます。おめでとうございます!」

「あら、ありがとうMs.コワルスキー。……では無く、先程の内容を聞いていましたか?」

「あー、はい。さっきまでとっていたノートを元にしてこのマッチ棒を銀の針に変えろ、って事ですよね?」

 

 質量を変化させて物質の性質も計算し変化させる。計算式が変化する科学的な学問。もちろん感覚じゃなくて理論的な科目を得意とする私にとって変身術は学びやすい科目だった。

 ……この科目が、実技ありきでなければ。

 

「呪文や言葉では無く、杖の振る正確な速度と角度、そして己の体重や重心も加味しなければならないと」

「よろしい、ではやってみなさい」

「うぇ〜……」

 

 うんともすんとも言わないんだって。

 やらなくても分かることを再認識したいはずもなく、私は杖を構えた。

 

「……!Ms.コワルスキー、その杖は」

「叔母の物です。お下がりとして引き継ぎました」

「そうですか……。失礼、邪魔をしてしまいましたね。続きをどうぞ」

 

 教科書や消耗品以外、エミリー時代の物とほとんど変わらない物ばかりだ。

 傷一つ、落書き一つ。それら全てが私の大事な思い出。

 

 杖の底が少し欠けているのは魔法生物の衝突を防いだ時につけたものだし、杖先に1本傷があるのは武装解除呪文の実験体になった時に出来たもの。どれもこれも大事な思い出。

 

 思い出の杖を使って、私は理論通りに杖を振るった。

 

「え…………」

 

 ポンと小さな煙をあげてマッチ棒だった物は少し歪な銀の裁縫用の針に変わった。

 

「す、素晴らしい!皆さん見ましたか、Ms.コワルスキーがやりました!グリフィンドールに5点差し上げます!」

「で、きた。出来た……。うそっ、私って魔女だったんだ!!!????」

「魔女じゃなかったらなんなんだよ」

「やりましたねMs.コワルスキー、上出来です。素晴らしい。貴女の叔母はとことん実技科目と相性が悪かった。貴女もそうであったらと心配していましたが……本当に良かった……」

 

 私は呆然と手元にある杖を見た。

 

 

 お前、もう少し前から本気出せよ!!!!

 

 

 

 

 

「このクラスでは、魔法薬調剤の微妙な科学と厳密な芸術を学ぶ」

 

 通い慣れたスラグホーン先生の魔法薬学室で、見慣れない真っ黒でボタンを沢山くっ付けたセブルスのねっとりとした耳にまとわりつくような声が聞こえた。

 

 まるで配管から反射してくぐもったかの様なミルクチョコレートボイスが堪らない。

 

 大丈夫?この声で7年間も授業を教えられたら、脳みそがスウーピングエヴィルに吸われた事象と同等の結果を招いちゃうんじゃ……?

 

「このクラスでは杖を振り回すような馬鹿げたことはやらん。これでも魔法かと思う諸君が多いかもしれん。我輩が教えるのは、名声を瓶詰めにし、栄光を醸造し、死にさえふたをし、そして過去も今も未来も全てを狂わせる方法である──ただし、我輩がこれまでに教えてきたウスノロたちより諸君がまだマシであればの話だが」

 

 セブルスの理想の教師像が現実になって私は涙が止まらない。

 うっうっ、立派になって。一文字たりとも違わずに覚えた……。嫌味ったらしく遠回しにセブルスが生徒に伝えた『予想と違うと思うけどガッカリしないでね、頑張ったら名声を得られるし死なないように回復したり自分を守ったりすることができる立派な授業だからね』って言葉がたまらなく好きぃ。

 心臓が痛くてハッハッと浅い息を吐きこぼす。ダメだ、しっかり呼吸をしないと。

 セブルスのいる空間の空気を吸わないなんてあまりにも勿体なくない?この空間宝物庫みたいなもんだよ?

 

 いっぱい吸い込んだ。うわぁ、角ナメクジの匂いがする。今日はおできを治す薬かな。

 

「ポッター!」

 

 セブルスは急にハリーの名前を呼んだ。

 両方可愛い。死んじゃう。

 

「アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを加えると何になるか?」

「わ、分かりま──……生ける?屍の水薬です……?」

 

「……。では、べアゾール石を見つけて来いと言われたら、どこを探すかね?」

「分かりま──……山羊の胃?で、です」

 

「………………。では次、モンクスフードとウルブスベーンの違いは──」

「えっと、両方とも同じです」

「──同じだが、その種類はいくつある?」

「……、え、そんなにあるの?55種類、です」

 

 

「コワルスキー!ポッターに答えを差し出すのをやめたまえ!」

 

 メモに答えを書いてハリーに見せていたらセブルスに叱られてしまった。これも一種のご褒美なのでは無いだろうか。

 

 困ってるハリーも可愛いし阻害されてムカッとしてるセブルスも可愛い。可愛いが飽和してる。

 

 というかどれもこれも生徒が生き延びるために必要な知識だわ。

 特にべアゾール石なんて『こんな緊急時に必要な知識が最高学年でしか学ばないだなんて非効率すぎるだろ!』って怒ってたセブルスの事だし、毎年恒例行事としてメモを取らせてるのね。可愛い。

 生徒想いの不器用なスネイプ先生、可愛すぎるわ。

 

「お言葉ですがセ、スネイプ先生。ハーマイオニーがすっごく可愛く元気に手を上げてますよ。見えました?この可愛い姿。困惑して助けを求める目をしたハリーもとんでもなく可愛いですよね。そんなの……可愛い……世界平和……。あとハリーが当てられて鼻を鳴らしたドラコもすごく可愛い……好き……」

「Ms.コワルスキー?どうやら聞かれてないことを喋るのが趣味のようだが、崇高な時間にそのコワルスキー節を出すのをやめていただきたい」

「コワルスキー節だなんて、照れるわ!」

「褒めてないが?」

 

 嫌味どころかズバッと罵倒を加えてくる。くぅ、性癖に優しくて私は、もう本当に、死んでもいい。

 

「Ms.コワルスキー、その破天荒っぷりは余程色濃い血筋の様だ。むしろより酷い」

「褒め……」

「褒めてないが?」

 

 褒め言葉キャンセル、だと?

 高度な技に思わず戦慄する。そんな魅力まで手に入れて、私を一体どうするつもりなの……!?

 

「ところでスネイプ先生ってとんでもなく可愛いのね。小さい頃からすっごく可愛かったんだろうなぁ。あ、もちろんスネイプ先生は可愛いだけじゃなくてとても美しい要素も入ってますよね。影のある表情から、繊細なものを扱うもの特有のスラリと伸びた高解像度の手。爪の欠片も薬に入らせない様に整えた深爪が巻き爪になって爪の横がカチカチに固まったあのささくれさえ丸ごと愛して」

「──シレンシオ!!!!!!」

 

 セブルスは杖を思いっきりふり、乱雑に魔法を掛けた。え、ご褒美?

 

「諸君、覚えておくように。人を黙らせる呪文を『シレンシオ』という。4年の中盤に呪文学で習うようですが、どうやら早めて習得した方が良いとフリットウィック先生に進言する必要がありそうですな。グリフィンドール、10点減点」

「スネイプ先生、減点がちょっと甘いと思います……」

 

 呪文をかけられ点数を減らされハリーに罵倒され、踏んだり蹴ったり喜んだりである。ご褒美に次ぐご褒美で笑顔が止まらない。魔法薬学、最高!

 

 

 

 

 

 

「ミリ、さっきは魔法薬の作成手伝ってくれてありがとう」

 

 ネビルがオドオドとしながら授業終わり話しかけてくれた。魔法薬学は最大の得意科目と言っても過言では無いため、特に自信がなさそうなネビルとペアを組んだのだ。

 

「喋れなかったから口頭で注意出来なくてごめんね」

「急に素材を殴り落とされた時はびっくりしたよ」

「大鍋を火から下ろさずに針鼠の素材を入れると、害のある成分が出ちゃうから……。緊急事態とは言え、乱暴な手段だったわ」

 

 あとから筆談で説明したけど、アメリカ英語で書きなれていたからネビルには解読に苦労させたことだろう。イギリス英語とアメリカ英語が混ざっちゃってるのよね。

 心はアメリカ人なのだけど、学生時代という多感な時期にイギリス人に囲まれて生活していたから。イギリスは第2の故郷だもの。

 

 

「そういえばマクゴナガル先生も言ってたけど、ミリってマグル生まれなのにホグワーツの事に詳しいのって親戚が通ってたからなんだ」

 

 ふと、ロンが思い出した様に言う。

 

「確かに詳しいわよね。さっきの授業でも詳しかったし、貴女が迷子になるとこ見た事ないどころか、瞬間移動するみたいに遠くから移動してくるじゃない?」

「褒めてくれてありがとうハーマイオニー。流石に瞬間移動は無理よ?」

「知ってるわ。それくらいホグワーツを知り尽くしてるって事」

「えっと、叔母?と伯父さんがホグワーツ生で。グリフィンドールとハッフルパフだったの」

「へぇ、そうなんだ」

 

 ハーマイオニーとハリーがキラキラしたような顔で私を見上げる。くっ、可愛い。

 地下へ向かう道を歩きながら私たちは会話した。

 

「とにかく虎の巻?みたいなのが記憶に残っているおかげ。魔法を使うのは生まれて初めてよ。本当に、言っちゃえば生まれる前から使ったことないもの」

「そりゃあの反応は初めてだよ。みーんな大爆笑だったぜ、君の『私って魔女だったんだ!?』って発言。レイブンクローの人たちもすっごい笑ってた」

「うーん、天使が笑ってくれるならもうそれでいい……」

「気持ち悪いね」

「覚えてなさいシェーマス。とりあえずレイブンクローは後でアンソニーを代表で締め上げておくわ」

 

 ハリーはパッと何かを思い出したかのように私を見上げた。

 

「えっかわいい」

「この後ハグリッドに呼ばれてるんだ。ミリも来ない?」

「行く!」

 

 時刻は三時過ぎ、1年にもう授業は無いのである。放課後の素敵なデートのお誘いに躊躇うことなく頷いた。

 はー、幸せ。

 

「じゃあ俺は寮に帰るから」

「バイバイミリ、ハーマイオニーに迷惑かけないでね」

「ミリ、また今度の魔法薬もペアを組んでね」

 

 予定が決まったグリフィンドール生は私たちと別行動を始めた。

 

「ハグリッドはなんて?」

「金曜日の午後お茶会をしようって。1週間経ったし、僕の生活が気になるみたい」

「へぇ!」

 

 ハグリッドって人を気遣えるんだ……。

 予想外のことにびっくりしたけど、まぁハリーなら仕方ないよね。だってこんなにも可愛いんだもの。世界中を魅了したっておかしくない。

 

「私、ミリが勉強出来るのが不思議でならないわ」

「あぁ、私基本的に記憶力も悪いんだけど…。好みの人が言った言葉なら雑談でも覚えてるの」

「記憶力のリソースおかしくない?」

「そもそもミリの好みって何?」

「可愛い人と美しい人!特にスリザリンみたいな影がある感じの美形がすっごい好みよ!」

「へぇ」

「聞いたなら途中で興味を無くさないでよロン。殴るわよ」

「魔女なのに物理に走るのかよ!」

 

 そんな私たちの目の前をミセス・ノリスが横切り、早くもアーガス・フィルチに痛い目に合わされたことがあるハリーとロンはゲェと言いたげな顔をした。

 

「……そういえば猫ってゴーストすら居ない様な場所をじっと見てるよね」

 

 ハリーが可愛い疑問符を浮かべる。私はすぐさま答えを出せる内容だったので嬉々として答えた。

 

「それはフェレンゲルシュターゲン現象って言うのよ」

「そうなんだ?僕、初めて知った」

「私もよ。語源はどこから?」

「30年か40年前くらいにドイツのシュターゲンさんって人が付けたらしいの。愛猫の名前はフェレンゲル」

「へぇ、自分の名前が発見したものに付けられるのって、すごく面白いじゃん。まあ覚える方はたまったもんじゃ無いけど」

 

 感心したようにハーマイオニーとハリーがうなずく。可愛い。ロンもなんか言ってたけど2人の可愛さの前に霞んでしまったわ。

 

 

──スパーーーンッ!

 

 急に唐突に前触れもなく頭を引っぱたかれた。

 

「……。はぁ、はぁ。っ、グリフィンドール、5点減点」

「う、スネイプ先生……。あの、さっきの授業はミリが完全に悪いですが、流石に理由もなく減点するのはどうかと思います」

「ほう…選ばれたと勘違いし傲慢になった貴様の目にはどうやら廊下の大部分を占領する赤いローブの存在が見えぬらしい……。己が正義だと疑わずに一方的な意見を仰るなど、どうやらさぞかし優秀な頭脳をしているようだ」

 

 セブルス・スネイプだ。……セブルス・スネイプだ!??!!?

 

 どうやら私はセブルスに頭を叩かれた様だ。

 嘘、そんな、待って。

 

「スネイプ先生に……痛めつけられた……?今日を祝日にしましょう……!」

「もしかしなくても喜んでる?センスと頭が悪いよ」

「きゃ!ハリーに罵倒されちゃった!嬉しい!」

 

 歓喜に頬を染めると一緒に歩いていた殆どのグリフィンドール生はドン引きの表情を浮かべた。

 

「あの、スネイプ先生。廊下はすみません。でもミリを制御は出来ないので先に謝らせてください」

「……っ、そんな事、とっくの昔に」

 

 後ろから早足で歩いて追いついてきたのだろうセブルスは少し息が荒れている。その息を集めた瓶詰めを作るのってどの授業なのかな。魔法薬学?呪文学?

 

 セブルスは私を憎むように、恨むように。嫌悪と困惑と渇望している何かをぐちゃぐちゃに混ぜた視線で私をギロリと睨みつけた後、一言言い放った。

 

 

 

「──おめでとうコワルスキー、貴様が今期1番初めの罰則だ」

「なんで!?」

 

 急なご褒美は心臓が持たないのでやめてください!

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