─矛盾─   作:恋音

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1-6.偉業たる功績

 

 マダム・フーチがミリ・コワルスキーを急いで校長室へ駆り立てた。ミリはネビルに慌てて忘れ玉を投げ、取り損ねたネビルはすっ転ぶ。

 

「危な……!」

 

 慌ててハリーが箒に飛び乗り、跳ねた忘れ玉を掴み直した。腕力が常人のそれじゃないな、と思いながらネビルにきちんと手渡しで戻す。

 

 ミリは「そんなに急かさないでよ」と文句を言っていたけど、フーチはハリーの無断で箒に乗ったことに少し気にしていたようだが、それよりミリの連行を優先して駆り立てる様に背中を押した。

 

「部屋に戻ってトランクを持ってきなさい」

「スーツケース!」

 

 加点されたとは言えど『校長とお話』に加え『荷物入れを持っていく』だなんて。

 生徒たち、特に助けられたネビルは顔を青くした。

 

「ね、ねぇ。もしかして……ミリって退学になっちゃうんじゃ……ぼ、僕のせいで……!」

「そんな、まさか。フーチ先生はミリの行為を褒めて10点をくださったのよ。例えミリが危険物を持ち、持ち込んでいよう、と。うーん、どうかしら」

 

 流石にフォローができなくてハーマイオニーは苦い顔をした。

 

「珍しいね、マルフォイ」

「……なんだウィーズリー」

「いや、君のことなら『あれは絶対退学だ!』みたいな感じでバカにすると思って」

 

 そう、普通であれば。

 きっとドラコも今までの鬱憤を晴らすかのようにバカにしていただろう。

 しかしロンが不思議がっていた様にドラコは黙っているし、なぜか顔色が悪い。ふと周りを見回してみればパンジー・パーキソン、セオドール・ノット、ダフネ・グリーングラス、ラベンダー・ブラウン辺りが顔を青くしている。スリザリンだけでなくグリフィンドールも問わず。

 彼らの接点は純血、という点だ。

 

「ウィーズリー、お前本当に魔法界で育ったのか?」

「ば、馬鹿にしてるのか!?」

「あぁ、だが本物の馬鹿はあのマグル生まれのアメリカ人だ」

 

 ドラコは青い顔をして体を震わせた。

 

「……この場にはマグル生まれや魔法界に詳しくない半純血も多いから代わりに教えてやろう」

 

 ミリが去っていった方向を見て嫌そうな顔をすると続きを口に出した。

 

「あの時、ロングボトムを拘束した青緑の生物を見逃した者は居ないと思う。あれはとんでもなく危険な物だ」

「危険?」

「あれは魔法生物という魔法界特有の生物の事で、魔法生物はその危険性が5段階に別れている。詳しくは分からないが……あの青緑の生物の名前はスウーピング・イーブル。『空飛ぶ悪魔』と言われていて間違いなく危険度は高い」

「父上と叔父が良く話していたんだが……」

 

 ドラコの説明に継ぎ足す様にセオドールが首を突っ込んだ。

 

「叔父が魔法生物にやけに詳しくて。その空飛ぶ悪魔は人間の脳が好物で、普段は繭になって服の下に居るが人間の記憶に作用する様な猛毒を持っているそうだ。危険度は5段階中4。ただの魔法使いには対処出来なくて、専門知識のある魔法生物に特化した様な人物しか対処不可能だが、魔法分類の見直しがされていて5に引き上げられる可能性があるそうだ」

 

 セオドール・ノット(・・・)の変に詳しい説明だったが、聞きなれない言葉のため貴族以外にその危険性が伝わりにくく首を傾げた。だが、ネビルやロンは元々純血ということもあり顔をサァッと青くした。

 

「おかしいわ。専門知識が必要であれば、ミリが所有出来るわけがないじゃない。きっと似てる何かよ」

「そうだといいが、そう呑気に構えてられないんだMs.グレンジャー?君はもう少し賢いと思っていたんだがな」

「ムッ……」

「やめなさいハーマイオニー。私でもアレが危ないものだって言うのは分かるわ。私も実際に目にしたことは無いけど、お父様に『会ったらすぐ逃げろ』って教わった中の1種類だもの」

 

 同室のラベンダーが説得するのでハーマイオニーは渋々反論をやめた。どれだけ本を読んでも生まれてからずっと魔法界で育った人間の雑談には敵わない。

 

「グリーングラスも確か父親が魔法生物に詳しかった……よな?」

「詳しいって言うか、父上は魔法生物嫌いよ。だから危険生物を口酸っぱく言っていた。さっきのスウーピングエヴィル……イーヴルか。何故か分からないが発音がエヴィルなの。さっきのコワルスキーと同じくね」

「たしかに。変な訛りが混ざってる言い方だ」

 

 頷く。

 かつて己の父親世代が初代コワルスキーの魔法生物交流会で苦労したからこそ、子供の彼らにも口を酸っぱく危険性を語っていたことが幸をなした。まぁ、まさか再来があるとは思わなかっただろう。

 

「とにかく、普通の生徒には持てないような、そもそも出会うことも珍しいような魔法生物を、親マグルのアメリカ人が持っていたんだ。それが明らかにおかしいことくらい、貴様らの足りない脳でもわかるだろう?」

「……確かに、悔しいけど言う通りだわ」

 

 親マグルであるハーマイオニーが、同じ立場故にその入手難易度は分かりやすかった。

 

 ハリーは不可思議な存在と言っても過言では無い同級生に思いを馳せて、やっぱ変な人、という結論を下したのだった。

 

 

 ==========

 

 

 

 校長室。

 

 西の塔にある合言葉を言わなければ入れない場所に私は愛用のスーツケースを持ってやってきていた。

 

「私はまだ授業がありますから、ここからは貴女1人で説明なさい」

「はぁい」

 

 それのことですよ、とフーチ先生がスーツケースを指さすのでギュッと抱きしめた。花がいくつもちりばめられている古びたキーホルダーが動きに合わせて音を鳴らす。

 

 そんなの分かってますよー、だ。

 

 フーチ先生は急ぎ足で校庭に戻っていく。その後ろ姿を見送って、私は合言葉を言った。

 

「レモンキャンディ」

 

 相変わらず酸味のあるお菓子が合言葉に選ばれる。いつか梅干しや酢昆布とかを差し入れしてあげようかしら。

 

 合言葉と共に階段が現れて私は登って行った。

 

「……。よく来たのぉ、ミリ・エミリー・コワルスキー」

「こんにちは、ダンブルドア校長先生」

「さて、フーチ先生が言うにはスウーピングイーヴルを所有していたと言っておったが。事実かの?」

「はい、事実です」

「ふむ。君のことは叔母さんのかつての生活から、そして米国魔法省から聞いておる。どうせ、というのは言い方が悪いが優秀なMs.コワルスキーのことじゃ。他の生物も飼っておるとみた。他にどんな生物を飼っておるんじゃ?」

 

 ダンブルドア先生の教えて、というお願い。

 

 私はスーツケースの扉を開けてダンブルドア先生に手を差し出した。

 

「実際に見た方が早い、でしょう?」

 

 

 

 

 

「ほう!これは、ものすごい環境魔法じゃ。む、オカミーか」

「デミガイズがお世話してくれてますよ、透明で見にくいかもしれませんが」

「ほー、透明のデミガイズを見つけるコツはあるのか?」

「足音ですね。あと匂い。視覚以外で見つける癖をつけています」

 

 

 

「ワンプスキャットか。噂は聞いていたが本当に……」

「マンティも近くにいるはずですけど、呼びましょうか?」

「いや結構……」

 

 

 

「ふむ。ヒッポグリフに……ユニコーンか。」

「この2匹は移動が大変な時によく手伝ってくれる、人懐っこい子ですよ」

 

 

 

「はい!?ヌンドゥじゃと!?」

「あ、気を付けてくださいね。エルンペントが反対側のエリアの縄張りにいるので」

「!?アフリカ産だからといってまとめちゃいかんだろう!?」

「仲介に入れば大人しくはなるので……」

「入るんじゃ無い!」

「あと意外にもフウーパーの鳴き声を聞かせ続けていると2匹とも大人しいんです」

「聞くんじゃない!」

 

 

 

「リーエムに…スナリーガスターじゃったかの?」

「両方メリーランド州で保護した個体です。アメリカの魔法省から預かりました。所有者を私で登録し直しているので、余程のことがない限り私が責任者です」

「アフリカゾーンを見たおかげかマシに見えるの……」

「あ、レシ見っけ」

「……生物学名を聞いても良いかの?」

「レシフォード」

 

 

 

 

 

 ダンブルドア先生は全部を回る頃、息も絶え絶えで机に顔を突っ伏していた。

 

「お疲れ様ですダンブルドア先生。急ぎ足でしたが2時間で回り終わりましたね」

「Ms.コワルスキー、お主はほぼ小走りじゃったがの?」

「まぁ。でも臆病な生物達はダンブルドア先生の気配に驚いて隠れてましたよ。ムーンカーフとかクラップとか水中生物6匹とか」

「これらの魔法生物、ほとんど許可証が必要じゃったが」

「許可は貰ってますよ。資格証確認しますか?」

 

 スーツケースの小屋の中。

 私は書類をしまっておく為に作った鍵付きの棚の中からアメリカ魔法省で発行された資格をいくつか取り出した。

 

「こっちが生物単品への許可証で、こっちがブリーダー資格。危険物取扱者の資格……」

「もー、わかった。お主はニュートより破天荒で、エミリーよりイカれとる」

「そんな、褒められたって紅茶くらいしか出てきませんよ……!」

 

 イカれてるだなんて最高の褒め言葉だわ。

 いそいそダンブルドア先生に熱い紅茶を作って瞬間冷却薬を一滴垂らす。氷を入れたみたいに冷たくなった紅茶は疲れた体に染みることだろう。

 

「それにしても魔法なしの体力か?」

「えぇ。兄とジムに行ってずっと走ったり、登山チームを紹介してもらって保護者として一緒に登山させてもらったり。いやー、仲間が滑落しかけた時は火事場の馬鹿力で大人一人支えましたよ」

「意味がわからん」

 

 ダンブルドア先生はグイッと紅茶を煽った後、一息ついた。

 

「ミリ。お主は賢く、そして思いやりに溢れ、度胸もある。正直このトランクの中で生活できるものはお主とニュートくらいじゃろう」

「そうね、だって私とんでもなく優秀だもの。他の人の魔法生物に対する危機感を変えてしまうくらい」

 

 疲れたのであろうダンブルドア先生は紅茶のお代りを欲し、悩みを吐露する様に、懺悔する様に俯いた。

 

「ダンブルドア先生?」

「ミリ。お主の叔母は危険に対して積極的に首を突っ込むタイプであった。そして、己の命を無駄にしてでも他人を生かす為に尽力する様な、決して守られてはくれぬ子じゃった」

 

 ギュッとダンブルドア先生は拳を握りしめる。

 

「あの時、わしは近くにいた。エミリーが亡くなる瞬間、ホグワーツに居たのにも関わらず!わしは、道を踏み外して命を落としてしまう彼女を救えなかった。手を、伸ばせんかった」

「先生……」

「エミリーはわしにとって油断と傲慢が悪しき結果を招いた最もたる被害者じゃ。『アルバス・ダンブルドアが在中している限りホグワーツに攻撃してくる死喰い人は居ない』と誰もが思っておった。……すまない、エミリーの家族には、そしてミリには謝っても謝り足りぬ事をした」

 

 

「わしの責任なんじゃよ……」

 

 後悔が滲むダンブルドアの背中をバシンと叩くと、ダンブルドアは目をぱちぱち見開いた。アイスブルーの瞳が私を見たけれど、私は立ち上がって背を向け、いくつか物を取り出した。

 

「よいっしょっと」

「み、ミリ?」

 

 便や紙や封筒やビニール袋。色々なものが保管された物をダンブルドアの目の前に置いていく。

 

「この便は──燃やされたセブルスのトリカブト一覧の12ページ目」

「………ん?」

「こっちは暇をしてたリーマスが描いた落書き」

「………………んん?」

「これはリリーから貰ったハロウィンのお菓子が入っていた包装。あ、これはピーターに貰ったけど相性が悪くて一度も使えたことがない魔法具試作品」

「ミリ……?」

「こっちはジェームズから貰った招待状で、一緒に入ってるのはシリウスのサイン(換金用)で。これ、これはルシーのハンカチをシシーが濡らしてくれた状態の物に維持魔法かけてくれたやつ」

 

 困惑した様子のダンブルドア先生に私は吐き捨てた。

 

「──見くびらないで」

 

 手を伸ばせなかった?

 油断?

 傲慢?

 わしの責任??

 

「私は、自分が生きたい様に生きて、死にたい時に死んだの。私の選択が誰かのせいじゃなくて、私の責任で選びとったのよ!私の後悔も、私の責任も、全部勝手に持っていかないで頂戴!」

 

 私は腕を組んでダンブルドアにそう啖呵を切ると、アイスブルーの瞳は探るように私を開心術った。

 

 ねー、兄さん母さんもなんだけど、開心術れるの卑怯過ぎない?

 こっちは実技劣等生で防ぐすべも無いんだけど。目を合わせないくらいしか方法ないんだけど。

 そういえば開心術と言えば悪戯仕掛け人も卒業時には私の嘘なんてすぐ分かるくらい心を読んでた気がするけど、あれ、もしかして私が忘れやすいだけ?うーん。心の中のリーマスが苦笑いしてる。きゃわいいね。

 

「本当に……エミリーなのか……」

「ミリよ。でも、エミリーでもあるの。細かい定義はこの際考えないものとするけどね!」

 

 悪戯を企んだみたいにウインクすると、ダンブルドアはそのアイスブルーから氷が溶けるみたいに涙を流した。えっ、ちょ、困る。私が泣かせたみたいじゃん!

 

「こんな奇跡のようなこと、こんなにも喜ばしい事はあるまい……!エミリー、お主、良かった」

 

 ダンブルドアは深く深く安堵したかのような息を、震えるような声を吐き出した。

 

「……喜ぶのはまだ早いんじゃないダンブルドア?」

 

 私はスっと出口を防いだ。

 

「なぜ私が校長室じゃなくて私のホームグラウンドまで貴方を案内したか分かる?」

「…………え、エミリー?」

「──私の愛しの友人達に何が起こったのか。貴方なら全て、お話出来るわよねぇ?」

「お主……これを企んでおったのか!?」

「まぁほぼ偶然だけど、純粋な1年生だと思って油断した方が悪いのよ!」

 

 最悪武力行使で真実薬を口の中にぶち込むわ。ただしエミリー時代に作ったものだから使用期限はどうか分からないけどね。そして魔法は強いけどあくまでもダンブルドア先生はご老体。反射神経も力も持久力もあるし、たまたま疲れ果てている状態。

 きっといい勝負になると思うの。これだけ近距離だったら尚更ね。

 

 魔法の知識はあるのでダンブルドアが繰り広げるであろう魔法がどれで来ようと対処出来るように脳内シュミレーションを重ねる。

 

 

 するとダンブルドアはそれを読んだのか青い顔をして降参したように両手を上げた。

 

「お主最強では?」

「お褒めに預かり光栄ね」

「嫌味じゃ」

 

 褒めてくれたっていいのに。

 

「あー、では話すが。ショックを受ける内容かもしれん、心して聞いて欲しい」

「えぇ。あ、要望なのだけど、まどろっこしい言い方じゃなくてアメリカ人みたいにはっきり言ってくれる方がありがたいわ」

「……。そうじゃな」

 

 ダンブルドアは杖を一振して2杯目の紅茶を入れてくれた。

 

「事の始まりはエミリー、お主が死んだ頃に遡る」

「そこから?」

「お主の死後、お主の友人たちはバラバラの進路を歩むことになる。リリーとジェームズは婚約、結婚、ハリーを出産。シリウスは後見人じゃった」

「げぇ、改めてだけど聞きたくなかった」

「不確定なことは言わず、事実のみ伝えていくが良いか?」

「えぇ」

 

 私が頷くとダンブルドアはため息を吐き出した。

 

「セブルスは闇の帝王ヴォルデモートの傘下に下る。フリをしてスパイをやってくれておった。そしてお主も知ってる通り、今は残党の死喰い人の目を誤魔化すために教師をしておる」

「スパイ。」

 

 ちょっと待って欲しい。初っ端からどえらい情報やってきたんだけど。

 

 そんな大事なこと言っても大丈夫だったの?

 

「何、お主がセブルスの不利益になるような事はせんじゃろう」

「そう、だけど。開心術とか……?」

「それについては考えがある」

「さっすがダンブルドア!」

 

 我ながら開心術され慣れてるから反対呪文とかできる気がしなかったのよね。

 

「セブルスが闇の帝王に取り入れたのはお主の死が影響するとだけ言っておこう。闇の帝王の命を狙ったジェームズを止めた功績から『忠義の者』としてその地位を確立させておる」

「私の死後にそんなことが…」

「そしてハリーが生まれて1年後。ハロウィンの日。己の死を予言された闇の帝王は予言の子であるハリーを狙った。そしてそこで……リリーとジェームズは死に、ハリーは生き残った。そしてハリーはリリーの妹に預けられた。ここまでは良いか?」

「…………そう、亡くなって」

「大丈夫かの?」

「えぇ。だけど、決定的に不思議なことが一つ。ハリーの後見人はシリウスだったんでしょう?もし預けられるならシリウスの所じゃないの?リリーの家族はマグルのはずだし」

 

 ダンブルドアは言いにくそうな顔をして一度息を吐いた。

 

「……。そのハロウィンの日、裏でシリウスはピーターを殺してアズカバンに送られたんじゃ」

「ぴっっ!?!?えぇ!?!?!」

 

 ちょっとピーターが亡くなっているとかっていう情報は初めて聞いたんだけど。

 

「し、シリウスが……?嘘でしょう?」

「目撃者のマグル12人とピーターを殺した事により今もアズカバンに居る。新聞を漁れば当時の情報は出てくるはずじゃ」

 

 信じられない。あのシリウスが、ピーターを殺すはずがない。

 

「真実は教えられん。それは確定しておらぬからであり、情報の流出を防ぐためでもある。事実、シリウスの件は何故それが起こってしまったのか判明出来ておらんのじゃ」

「……。そう、ね。無理に推測を話されるより世間的な『事実』を教わる方が、考えやすいわ」

 

 思わず席を立ってしまっていたので座る。

 ダンブルドアは私が落ち着くのをまって、続きを話した。

 

「ハリーの件もありリーマスは各地を転々としておるんじゃ。今はイギリスに居るかも、分からん」

「そんな…………」

 

 ダンブルドアは隣にきて、私の背中をさすった。

 

「10年前のハロウィンの事件から世界は一変した。ヴォルデモート、闇の帝王も消え去り、世間は脅威が去ったと思われておる。お主の知り合いだと、ルシウスは『闇の帝王に魔法で操られていた』と証言し、アズカバンに入れられることなく生活しておる」

「ルシー操られてたの!?許せない……!美形を操るだなんて」

「おや、真実かどうかは分からぬぞ?」

「えっ?美人が言ってるならそれが真実でしょ?」

「えっ?」

「えぇ……?」

 

 困惑している。美形の言うことは9割正しいことでできてるじゃない……?

 

「さて、とりあえずこれが現状の事実じゃ。お主が聞いた情報と差異は無いかの?」

「うん、まぁ、腑に落ちない点は何個かあるけど一旦……」

 

 よかろう。

 そう言ったダンブルドアは私の脳みそに向けて杖を突き出した。

 

「だ、ダンブルドア?あの、これは『余計なことを知りすぎたようじゃな、死ね!』のパターン?」

「いやいや殺すなんて物騒な。これは『余計なことを知りすぎたようじゃな、忘れてくれ』のパターンじゃよ」

「ダンブルドア!?」

 

 開心術対策ってこう言うこと!?

 忘れてしまえば探られて痛む腹も無いよね、ってことだよね!?

 

 あっはっはっ、イギリスジョークが過ぎるよアルバス・ダンブルドア。ねぇ、冗談だよね?え、目がガチガチにガチなんだけど。

 

「──オブリビエイト」

「うわぁあああ!!!」

 

 

 

 

 ダンブルドアは間違いなく魔法がかかったことに頷き、私の目を見た。

 

「ミリ、お主はセブルスについて何を知っておる?」

「えっと、闇の帝王とかってやつに取り入らされてスパイやって教師やってること」

「………………うん?」

 

 あの……たぶん、何も忘れてないと思う。

 

「ダンブルドア、私も誤算の内の一つなんだけどね」

「う、うむ」

「死んでも忘れなかった天使の記憶を、今更どうこうしたって忘れないと思うの」

 

 

 

 

 

 ダンブルドアはにっっがい顔をして言った。

 

「──お主、本っっ当にキモいのう」

 

 偉大なる魔法使いのこんな罵倒は多分私しか言われないんじゃないかと思いました。




アルバス・ダンブルドアにこのセリフをずっと言わせたくて温めてた。
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