─矛盾─   作:恋音

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1-7.ゴーストと初代

 

 

 ダンブルドアの忘却術が私に通用しなかった。

 私も想定外でダンブルドアも想定外。

 

 私は握ってはならない秘密を抱えている状態。

すぐさま閉心術の訓練をダンブルドアと始めた。

 

「というか、逆に心の中でずっと天使を褒めたたえてたら諦めて開心術使わないんじゃないかな?」

「それじゃ!!!!」

 

 作業約3時間。心を閉じることを諦めました。えぇ。コワルスキー家は常にオープン。

 試しにダンブルドアが開心術を仕掛けたらわずか1分でギブアップ。なんでよ。もうちょっと粘ってよ。まだスネイプ先生の可愛いとこに思いを馳せ足りないんだけど。

 

「それでミリ、このこと、セブルスやミネルバには」

「まだ、言うか迷ってるの。エミリーが居なくなって、今ってすごく『今更』じゃない?それに」

「それに?」

「私は悪戯仕掛け人。ネタばらしは盛大にいきたいの」

 

 ダンブルドアはワクワクしたように目を輝かせた。

 

 

 

 

 

 

 

「ミリ!!!」

「ぐぁ!めちゃくちゃ可愛い天使が半泣きになりながら駆け寄ってきた!なにこれ死んだ?」

 

 晩御飯を求めて大広間に向かうと、ハリーが目に涙を溜めて駆け寄ってきた。

 

「だって君、5時間も帰ってこなかったんだよ!?グリフィンドールは今お通夜状態だよ!特にネビルなんて、『僕のせいだ』って考えすぎて大広間で地面にめり込むくらい落ち込んでたんだよ!?あのマルフォイやスリザリンでさえ『気を落とすなロングボトム』って慰めてて、上級生にギョッとされてたんだから!」

 

 何それめちゃくちゃ見たい。

 するとハリーの両肩に乗っかる赤毛の双子が現れた。

 

「よっ、ミリ」

「長時間校長室から出て来れなかったんだって?」

「えっと……ブレッドとジョーカー?」

「フレッドとジョージだよ」

「教えてくれてありがとうハリー」

「どういたしまして」

 

 ハリーが教えてくれたのでめちゃくちゃ名前は覚えた。次は任せろ。まぁ見分けはつかないけど。

 

「グリフィンドールの英雄姫は危険物を持ち込んで校長に5時間もお説教。みーんな噂してるぜ」

「そうそう。それと100年ぶりに現れた最年少シーカーの話もな!」

 

 お説教では無いんだけど、別にダンブルドアは可愛くないし間違えた情報を修正する必要は無いだろう。

 それより最少年シーカーが気になって聞き返した。

 

「こちらにおわすハリー・ポッターだよ」

「そうそう。なんと、グリフィンドールのシーカーに選ばれたんだ!」

 

 ジェームズも6年間シーカーとして活躍して、いつしかプロへの推薦が来た覚えがあるな。

 私の苦手なスポーツだ。するのも、見るのも。

 

 それよりハリーが嬉しそうにソワソワしている姿が可愛い。

 

「クィディッチは知ってるかい?」

「基本的なルールは。でも細かい技名とかは……ブラッジャー逆手うち位?」

 

 実況経験はあるけれど解説する位とまではいかない。すると双子はニンマリと自慢するように笑った。

 

「それ、俺たちの十八番」

「双子のコンビネーションで敵をギッタンギッタン」

「だからハリーは任せろ、守ってやるから」

「そんな心配そうな顔するんじゃないぞ〜」

「グリフィンドールが勝利する姿を見せてやる」

 

 私はハリーの両手をぎゅっと祈るように握りしめた。

 

「いいハリー」

「え、うん、何?」

「もし落下したりぶつかったりしそうになったら必ず体を丸める事。頭と足をくっつけてね」

「うん……」

「それとスニッチは常に手を伸ばすのではなく、掴む瞬間に手を伸ばしてなるべく体から手を露出させないこと。折れるよ」

「わ、わかった」

「それからそれから、地面に向かって勢いよく飛ばさないように……」

「分かったってば!お母さんじゃ無いんだからもういいって」

「(ブワッ!)」

 

 嫌がるハリーも可愛いよリリー……!

 リリーが死んだだなんて覚悟はしていたけど未だに信じられない。えへへ、リリー、一緒に育てようね。ジェームズなんか放置して、母2人一緒にしあわせな家庭を作ろうね。

 

「まあまあそんな泣くなって〜」

「あとは俺たち悪戯仕掛け人にお任せを」

 

 

「…………悪戯仕掛け人?」

 

 聞き覚えのある名前に目を見開き首を傾げると

双子は恭しく礼をした。

 

「俺たち悪戯仕掛け人」

「かつてホグワーツにいた悪戯仕掛け人に敬意を表し」

「誇りを持って悪戯仕掛け人を引き継いだのさ!」

「悪戯のスペシャリストとは俺達のこと」

「つまらない日常に彩りを!」

「高品質な驚きと喜びを提供するぜ!」

 

 どっちがどっちか分からないけれどもエンターテイナーの様に魔法を使った。

 

 そっか、悪戯仕掛け人の名前は引き継がれていたのか。

 

「…………それは、最高だね!」

 

 私たちの後輩だ。

 

 

 

 ==========

 

 

 

「お邪魔しま〜す」

 

 レイブンクロー寮から寄れる3階の女子トイレ。マートルが居座るため人が立ち寄らないトイレだ。

 入学して1ヶ月経てばマートルのトイレには近寄らない。

 

「……なぁに、今更。私ずっと、ずぅーーーっと待ってたのよ」

「やっほーマートル。今日も水浸しね」

 

 トイレの中からぶしゃ!と水が飛び出してきて私の体を水浸しにした。

 

「ふふん、びしょ濡れ。これでお揃いだわ」

「確かに」

「濡らされて嫌がらないのあんたくらいよ、エミリー」

 

 マートルが呆れたように笑った。

 

「あのねえ、あんたが死んでからピーブズがずーっとグズグズグズグズ。おちおち嘆いている暇すら無いのよ?」

「そのピーブズは?最初に会ったっきり出会えてないの」

「そりゃそうよ。だってここにいるもの」

 

 マートルの発言にトイレの個室がガタリと揺れた。

 

「あんたが死んでから男2人ずーーーっとここでグズグズグズグズ。鬱陶しくて仕方ないの」

「男、2人?」

「ピーブズと、セブルスよ。セーブールースー」

「セブルスが?」

 

 セブルスとの秘密の作業場所、マートルのトイレ。未だに来ているのだろう。水に紛れて薬の匂いが微かに漂っている。うーん、材料的に生ける屍の水薬。

 

「ピーブズ」

「っ、な、なんだよう」

「ごめんねピーブズ。びっくりさせちゃったね」

「びっくりなんて……」

 

 ピーブズが篭っているであろう扉の前で私はしゃがみ込んだ。

 

「私、ピーブズと契約を交わそうと思って行動したことに後悔してないよ」

「──でも死んだじゃんか!」

「でも生きてる」

 

 ピーブズの癇癪に合わせて言葉を重ねた。

 

「私がしたいようにして、やりたいようにやって、それで後悔してないよ。そりゃ、満足した死に様では無かったけど」

 

 出来ればそのまま皆と一緒にいて、大人になって、一緒に就職して、取引とか、卒業旅行とか、いっぱいしたかったことはあったよ。

 でも死って急に訪れるし、あれをしておけば良かったっていう後悔は無かった。あれをしなければっていう後悔も無かった。

 

「怖がらせてごめんね」

 

 ピーブズの血と交わった時に叫び出したい程の不快感と全てを壊したい衝動感情に襲われたのをはっきり覚えている。

 いきなり正気だった人間が自分がトリガーで発狂するなんて、ピーブズは随分怖い思いをしただろう。

 

「でもねピーブズ、戻ってきたよ」

「……エミリーは、ピーブズを恨んでないの?」

「まさか!私のわがままに付き合ってくれて、感謝こそすれ恨むのはお門違いだよ」

 

 そろり、とピーブズは壁をすり抜けて私とちらりと視線を合わせた。

 

「私たち、友達でしょ?」

「エミリー私は?」

「もちろんマートルも。私知ってるもの、マートルが私たちのためにわざとこのトイレを水浸しにして、他の生徒が近寄らないようにしてること。いつもありがと」

「べ、別にエミリーのためじゃなくてセブルスのためだし……」

「むしろそっちの方が喜ぶと思わない?」

「そりゃそうだわ」

 

 クスクスとマートルが笑うのを見て、ピーブズはおずおずと顔を上げた。

 

「ピーブズ、知らなかったんだ。ピーブズがエミリーの事、苦しめた」

「新しい体験だったわ。きっと歴史上初ね!」

「変なの」

 

 ピーブズは踏ん張って思いっきり手を伸ばして、私に触れられないことを確かめた。ホッと安心したように息を吐く。

 

「おかえり、エミリー・コワルスキー。ピーブズのお気に入りで、ピーブズの友達」

「ただいまピーブズ。……あ、それはそれとして使い魔計画諦めてないからよろしく」

「学べこの大馬鹿!!!!!」

 

 ピーブズがポルターガイストで私を水浸しした。風邪ひくって。

 

 

 

「そういえば、ゴーストって私の事分かるんだね」

「まぁ、魂の存在みたいなもんだからね」

 

 薄着になって服を絞りある程度の水気を取る。今更だけど魔法生物と格闘したりするので私は制服の下に運動できる服を着込む派。ショートパンツとインナーになってスカートもローブも丸ごと絞っている。

 

「セブルスには言わないの?」

「うん、今のところまだ」

「ふーん。まぁどうでもいいけど、困ったことあればピーブズに言いなよ。ポルターガイストで良ければ助けてあげるから」

「やった、頼りにしてる」

 

 トリックスターを味方に出来ればホグワーツで怖いものなんかないね。アーガス・フィルチとか、マクゴナガル先生とか。

 

「なぁ初代」

「……初代って、何?」

「んー?セブルスにもバラしてないんだったら『エミリー』って呼ぶのはダメだろ?ほとんど首なしニックもお前ら初代悪戯仕掛け人の事は間違えないように初代って区別してるし」

「あー?そういえばニックにそんなこと言われた事あるような……無いような……」

「初代のその好みじゃない人間に対する無頓着さとかいい加減な所とかピーブズどうかと思う」

 

 真顔で頷かれても困る。

 好みかそうでないかは私にとって人生に関わる最も重大な判断材料なのに……。

 

「とにかく、初代さ。ピーブズと大きいことを成し遂げてよ。でも、絶対死なないで」

「約束はできないけど、極力努力はする」

「エミリーのその馬鹿みたいに正直な所、ピーブズ好きだよ」

「えへへ」

「褒めてないから」

 

 ピーブズは悪戯を企んだ笑顔で言った。

 

「なぁ初代、2代目にどんな悪戯を仕掛けてやる?」

「そうだねぇ。バラムツしこたま食べさせて永遠に尻から油が出るようにしてやろうかな?」

「エミリーが作ると美味しそうに見えるから困る!いつ作る!?」

「冗談なのに……」

 

 

 

 

 

 ちなみにホグワーツに戻ると夜間で歩いていたハリーとハーマイオニーとロンとネビルが息も粗く談話室で転がり込んでいた。

 

「…………何してるの?」

「こっちの!セリフ!!!!」

 

 外から悠々と戻ってきた私に怒りをぶつけてくる天使も可愛いね。

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