─矛盾─   作:恋音

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1-8.ハロウィンの探検

 

 今日は待ちに待ったハロウィン。フリットウィック先生の呪文学で浮かれている1年生は、ウィンガーディアムレビオーサの浮遊させる呪文を習っている。

 

「だから、貴方のはウィンガーディアム、レビオサー。私のはレビオーサよ」

「……ハーマイオニーの発音が綺麗すぎて声帯模写して永遠に繰り返したいしハーマイオニーの呪文で魔法を使いたい」

「ハーマイオニーごめんもう少し分かりやすく簡潔に説明して。どっかの悪夢みたいなやつが!邪魔してくるの!」

「もー。ミリは僕とやって。ハーマイオニーの邪魔しないの」

「うん♡」

 

 ハリーがグイッと私を引っ張った。

 

 そういえば、夜中にハリーとハーマイオニーとロンとネビルが息も絶え絶えに談話室に居たのはどうやら迷子になったネビルの捜索のためで、太った婦人が居なくなって寮に帰れなかったかららしい。フィルチに追われてめちゃくちゃ疲れていたそうだ。

 

 それになんとびっくり、ネビルの捜索にはドラコもお手伝いしていたみたい。寮の垣根が無いことはとても喜ばしき事ね。

 

「はぁ……」

「どうしたのハリー?ため息なんか吐いて」

「…………今日は10月31日か、って思ってね」

 

 独り言のように呟くハリーの頭をヨシヨシと撫で、そして私も一緒にため息を吐いた。

 

「ねぇハリー。お墓参り行く?」

「お墓参り……?」

「うん、スネイプ先生かダンブルドアに頼めば行けると思う。もしダメって言われたら一緒に抜け出そうね」

「ほんと……?」

 

 キラキラと目を輝かせるハリーが可愛すぎて世界征服だって出来てしまいそうだ。

 

 

 

 ==========

 

 

 

「良いぞ」

「ダメでしょうが校長!」

 

 授業終わり、ダンブルドアを誘き出して許可を取った。

 

 セブルスが横からやんややんや文句を言っているのがとんでもなく可愛い。染み込んだ薬草に紛れて露で湿った土の匂いや百合の花の匂いがする。

 

「わしが連れていこう。なぁにパーティーが終わる前に必ず帰ってくる。セブルスや、学校を頼むぞ」

「ですが、在学中の生徒がホグワーツを抜けるなど校長公認だとしても例外中の例外で……」

「はて?」

 

 ダンブルドアは悪い顔をした。

 

「セブルスや。お主の友人に『毎月親の調子が心配で3日ほど帰省する者』がおったと思うたんじゃがなぁ」

「……っ!だが、あやつは、いや」

 

 セブルスが反論しようとして萎んで行った。上手い反論が浮かばなくてギリギリと悔しそうに歯を噛んでいる。

 

 きっと『リーマスは実際ホグワーツの敷地内に居ただろうが』と言おうとして、優しいから言わなかったんだろう。

 

 セブルスはギロリと私を睨むようにした後額に手を当ててため息を吐いた。私は深呼吸してその息を全力で吸った。ダンブルドアに叩かれた。解せぬ。

 

 

「……ミリ、何が起こってるか分かる?」

「スネイプ先生が可愛いということしか分からないわ」

「君に聞いた僕が間違いだった」

 

 

 

──姿くらまし

 

 

 

 ゴドリックの谷だ。

 

 ハリーと私がダンブルドアに掴まって姿くらましした先は、ジェームズの実家がある場所。1度しか来たこと無かったけれど、微かに覚えている。

 

 あの場所でセブルスが頭をぶつけていたな。あの場所でピーターが珍しい動物を見つけていたな。あっちはリーマスが気に入ってたバタービールの店舗だ。あそこはリリーが疲れて座っていた所。

 

「ミリは置いてきても良かったんじゃがの」

「ダンブリィ?酷いこと言わないで」

 

 私だって友人の墓参りに行きたいのだけど。

 

「ハリーや。あそこが君の両親の墓じゃよ」

 

 古びた、しかし掃除がされている墓石。

 白い大理石には見たくなかった現実が書かれてあった。

 

 

ジェームズ・ポッター

1960年3月27日生、1981年10月31日没

 

リリー・ポッター

1960年1月30日生、1981年10月31日没

 

最後の敵なる死もまた亡ぼされん

 

 

 

「──父さん、母さん」

 

 墓石の前にはいくつか花束が飾られてある。その白い百合の花達はまだ花粉の匂いを漂わせていた。

 

「10年前に何が起こったのかまだ分からないけど、僕グリフィンドールに入ってシーカーになったんだ。ハーマイオニーが父さんの名前が入ったトロフィーを見つけてくれてね」

 

 ハリーが墓石に語りかけているのので、2列くらい下がって見守っていた。

 

「……ミリは良いのか」

「ハリーの前でする会話なんて、ジェームズを煽ることくらいしか出来ないし」

「タチが悪いのぉ」

「それにダンブルドアこそいいんですか?」

「うん?」

「ダンブルドアの名前ありましたよ。アリアナ・ダンブルドア?って。奥さんじゃないんですか?」

 

 私が立っている場所の本当に近くにダンブルドアの家族らしき名前があった。リリー達の墓より明らかに古くなっている。

 

「……妹じゃよ」

「妹さん。ダンブルドアってご兄妹がいたんですね」

「グリンデルバルドとの戦いで、巻き込まれて亡くなってしまったんじゃ。このゴドリックの谷で。……だから闇の帝王に殺されたエミリーの様に、またわしの目の前に現れてくれぬかと。無意味に期待してしまった」

 

 ダンブルドアの妹さんって可愛いのかな?美人なのかな?それとも好みじゃなかったりして。

 それよりぐりん?何とかかんとかってニュート伯父さん達世代がなんやかんやしたって聞いた事あるけど生きてるのかしら。もし生きてたらクイニー母さんとジェイコブ父さんを悲しませた復讐として腹に1発決めたい所なんだけど。

 

「ンブッ!」

 

 ダンブルドアは私のほっぺをつついた。

 

「ミリ?お主わしのこと割とどうでもいいな?」

「だってダンブルドア別に可愛くない……」

「たまたま!そう、たまたまわしの幼い頃の写真を見つけたんじゃが見るか?」

 

 ダンブルドアが懐から取り出したのはホグワーツ下級生くらいの男の子が2人並んでる写真。

 私は思わずカッ!と目を見開いた。

 

「はわ!!!?????」

「ふふんどうじゃ?わし可愛かろ?お主の好みの範疇に入れば、お主はわしの言うことも割と聞いてくれ……」

「──横の幸薄そうな美人誰!!??ダンブルドアじゃないことは確かなんだけど!!」

「そっちかー……いや分かるが……」

 

 真っ黒な服をきた小顔の流し目が得意そうなエッチな美人さん!

 ド好みなんですけどどなた?

 

「わ、わしは?」

「あぁ、確かにダンブルドアも素敵よ。ただまぁ……ちょっとイケメンなのが腹立つわね。それより横の美人の名前を教えなさい」

「…………。教えぬ」

「なんでぇ!?」

 

 ダンブルドアの服を握りしめてがくがくと揺さぶる。少し不満そうなダンブルドアは視線を逸らしていた。

 

「……ミリとダンブルドア先生って仲良いんだね」

「どこが!?」

「よしてくれハリー」

 

 祈り終わったハリーが呟いた。天使の言葉を否定するのは心が痛むけど、名誉のために否定させてもらうわ。

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

「あれ?」

 

 パチン。ダンブルドアの姿くらましでホグワーツに戻ったら人の気配が全然無かった。

 ハロウィンのパーティーはまだ終わらないはず、だと言うのにこの静けさは一体何が起こったのだろう。

 

「初代大変だ!トロールが出たんだよ!」

「……なんですって!?」

 

 飛び出してきたピーブズが私をすり抜けた。

 ダンブルドアはギョッと目を見張りハリーと私を見た。

 

「ケトルバーン先生は?」

「上の方からトロールが侵入した経路を確認しに行ったよ!」

「地上生物の入り口が上なわけないでしょ……!」

 

 ケトルバーンの行動、本当に魔法生物学者なわけ!?

 

「ちなみにセブルスも上に向かってった!」

「天才!何か考えがあるのね。思慮深いセ…スネイプ先生が的はずれなことをするわけないもの」

 

 私はダンブルドアに視線を合わせた後、ハリーにひとつお願い事をした。

 

「ハリー、ダンブルドア先生をグリフィンドール寮に連れて行って」

「えっ、どういうこと!?」

「いい?ハリー。貴方は、ダンブルドアを守るの。ダンブルドアはグリフィンドールの合言葉を知らないから……そうでしょ?」

 

 ダンブルドアはすごく苦い顔をして、私の意図が分かったためかハリーを説得した。

 

「ハリー、寮は生徒のためのもの。寮監以外の先生は入れん様になっておる。だから、ハリーが案内してくれ。わしの睨みなら、グリフィンドール寮からなら見渡せるはずじゃ」

「わ、分かりました……」

 

 ハリーは混乱したようだったが、勇ましい顔をしてダンブルドアの手を引いた。

 

「ミリは!?」

「ふふ、知らないのハリー?実は私、魔法生物のスペシャリストなのよ!」

「ダメだよ!危ないでしょ!?」

「待ってろよトロールちゃん……!山かな、川かな、それとも森かな?森だろうなぁ!早く会いたいわ!」

「聞いてない!!」

 

 聞いてるよ。

 私はハリーに背を向けて走り出した。

 

 

 ハリーみたいにプライドが高くてなんでも首突っ込みたくなるようなグリフィンドール生には、誰かを守るという使命があれば必ず実行してくれる。

 

 ダンブルドアに『ハリーを守って』とお願いすれば、ハリーはきっといい気はしないだろう。だからハリーがダンブルドアを守る、という名目でダンブルドアにお願いしたのだ。

 

 ハリーに守られるフリをしながらグリフィンドール寮まで安全に送り届けろよ???

 

 と。

 

 

 

 

 

 

 

 

「素直に守らせてくれないんだもんなぁ」

 

 私の愛すべき友人達みたいに、頑固で意地っ張りで、守りたがりのグリフィンドール生を御するやり方は。……生まれる前から知っている。

 

「初代ってやっぱりグリフィンドールだよ」

 

 ピーブズの呆れた様な褒め言葉に私は足を早めた。

 

 

 

「──わー!!!山トロールちゃんだ!!」

 

 灰色の肌に4メートルくらいの巨大。人間に近しい見た目をしているけどこの近辺には生息してないトロール種の中で最も凶暴な種類。

 

「あー?目が飛んでるね。それに……ふむ、しばらくご飯食べれてなかったのかな?足の傷が多いことから森の中を延々と歩いていたり潜伏していた可能性あり。言語もちょっとまばらだなぁ。少し眠たいのか、人為的に眠くさせられてるのか。魔法は詳しくないから解決策無し!ヨシ!」

「何がヨシなんだよぉ」

「とりあえず写真に収めて記録だけ…………。あーいいよこっち向いて。お、棍棒振り上げれるの?天才!いいねいいね、元気さは失われてないね」

「このあんぽんたん!どう考えても攻撃されてるだろ馬鹿!!」

 

 ピーブズがポルターガイストで山トロールちゃんの攻撃を防ごうとしている。

 

「ピーブズ防がないで。体動かして薬抜くから。ほーらトロールちゃんこっちおいで〜。一緒にかけっこしようか。校庭とか訓練場あたりまで一緒に走る?」

「初代ーー!!サクッとどうにかしろ!!」

「えぇ……じゃあスーツケースに入れるかぁ」

 

 他の魔法生物に悪影響が無いか分からないから極力外で済ませたかったんだけど。

 廊下の地面が棍棒で割れ始めているか修理のことも考えてスーツケースの鍵を開けた。

 

「ヴヴヴヴ……ゥヴ」

「っ!?きゅ、急に唸るなよ!」

「あ、ごめんこれトロールの求愛の声なんだ。魔法生物の生態を把握するには求愛を研究するに限るよね!」

 

 私の唸り声に反応した山トロールはスーツケース目掛けて飛び込んだ。

 

「よーし。いっちょ上がり。寮に戻ってご飯でもあげようかな」

 

 パンっ、とスーツケースを閉じれば、慌てた様子の教師陣がトロールの痕跡を追ってやってきた。

 

「……………………Ms.コワルスキー(何かを察した顔)」

「あ、マクゴナガル先生こんばんは。ダンブルドア先生ならハリーをグリフィンドールまで送っていますよ」

 

 一足遅れてセブルスとケトルバーン先生もやってきた。

 

「い、一応聞いてもよろしいかなMs.コワルスキー?」

「はい、なんでしょう?」

「トロールは、今どこに……?」

 

 ケトルバーン先生のほほがぴくぴくと痙攣しているので、私は分かりやすく簡潔に述べた。

 

「この中です」

「…………そうですか。マクゴナガル先生、すみません、辞めます」

「辞めないでくださいシルバヌス!!」

「いやです!わずか11歳の子供が興奮状態のトロールを怪我なく捕獲できた時点で私はもう魔法生物をこの子に教えたくありません!エミリー・コワルスキーの再来どころかパワーアップじゃないですか!」

 

 ケトルバーン先生が喚いている。

 するとゼェゼェと息を切らしながら闇の魔術に対する防衛術の教師のクィレル先生はやってきて、のんびりした私たちの様子を見て首を傾げていた。

 

「と、トロールは……」

 

 話を聞く限り最初にトロールが来たことを通達したのはクィレル先生らしい。気絶していたため出遅れたようだった。

 マクゴナガル先生が簡潔に説明をしてくださっている中、私はセブルスにしか視線が行かなかった。

 

「……。」

「……。」

「…………何かねコワルスキー」

「怪我、してますよね?」

 

 すぃーっと視線が外側に行く。

 この私が、セブルスの現れた瞬間から視界に入れないわけが無いし足を庇う走り方をしているのを見逃さないわけが無いよね。

 

 スンと嗅げば、セブルスから血の匂いと獣の匂いがする。ふぅーん。なるほどなるほど。

 魔法生物かなぁ?

 

 となると傷の自然治癒や魔法治癒は期待出来ないのでマダム・ポンフリーのところに行く必要がある。が、恐らくセブルスの隠したがり病の事だ、マダムの所に行くのは最終手段で自作の薬で何とかしそうな気がする。

 

「スネイプせーんせ♡」

「………………(無視)」

 

 無視は1番心に来るけど、今の無視は自分の都合の悪いことを隠してる可愛いセブルスの足掻きなので私は遠慮なくセブルスを────お姫様抱っこした。

 

「!!!???!???」

「よっと。マクゴナガル先生、寮に戻るの少し遅れます」

「あぁ……。セブルス可哀想に……」

 

 マクゴナガル先生は嘆いた。

 

「お、おい!やめろ!」

「足を怪我した人は文句言わないでください。いいじゃない、生徒居ないんだから」

「Mr.スネイプは細いとはいえ身長もある成人男性なのに……Ms.コワルスキーはなんで持ち上げられちゃうんでしょうね……」

「およしなさいシルバヌス。深く考えると混乱するだけですよ」

「マクゴナガル先生、ケトルバーン先生、後でトロールの状況報告は上げておきますね!ちょっと不自然だったので」

「コワルスキー!聞け!」

 

 バタバタ暴れられるとただでさえ嵩張るから落としてしまいそう。まぁ意地でも落とさないんだけどね。

 

「セブルス、大人しくしとけよ。ピーブズが証言してやるぜ、1年生の女の子に担がれましたって」

「だから嫌なんだ!というかピーブズ、貴様コワルスキーと結託をするな!」

「ピーブズスーツケースお願いしていい?」

「もちろんまっかせろ!」

 

 

 

「なんだか、目頭が熱くなってしまう光景ですね」

 

 マクゴナガル先生がそうぽつりと呟くのを背中に受け、私はさっさと医務室に向かった。

 

 マダムー!私の可愛いセブルスに傷が残らないように治癒してー!!!!

 

 

 

 

「…………えぇ?」

 

 混乱したクィレルが1人頭を抱えていた。

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