「だから、クィディッチの勉強をしようと思ってクィディッチ今昔って本を借りたらスネイプ先生が取ってったんだよ!」
「なんで私はその現場を見てなかったんだろう……」
「そりゃ君、マルフォイにストーカーして談話室に入ろうとして、血濡れ男爵に叱られてたからだろ」
「あのゴーストほんっと邪魔」
生まれる前からレディとの仲を邪魔してくるし私とスリザリン生が会話しようとするのをこれまた邪魔してくる。
「あー、ポッター」
「マルフォイ!」
ドラコが話しづらそうに声をかけてきた。ハリーは嬉しそうな表情をして、ハーマイオニーは少し苦手そうな顔をする。可愛い。この空間、可愛いがすぎる。思わず拝んだ。
「これ、貸してやる。スリザリンの蔵書……」
「……!クィデッチの本だ!」
「敵に塩を送る様だけど、その、スネイプ先生もソイツのせいでお疲れなんだ。許してあげて欲しい。それにキミがある程度その暴走ブラッジャー女を抑えてくれてるおかげでスリザリンは多少楽だから」
「ミリのおかげでクィディッチの本が手に入ったって思いたくないから別の理由を探してくれない?」
「(確かにって顔)……んー。んん?じゃあ、その、なんだ。お友達?だから?」
私はこの光景を永遠と忘れないだろう。天からキラキラと翼が舞い落ちて光が差し込むような幻想に襲われた。
どうしてだろう、目から涙が止まらない。まるで4年生の時のハロウィンの『友達になりたいんだ』宣言を徹夜で聞いてる時みたいな感動が押し寄せてくる。
あの時は眠たさも脱狼薬の経過観察もあってそれどころじゃなかったけれど、今は何も考える余地なく全ての脳みそを今この光景を覚えることにリソースを割ける。
え、冷静に考えてどえらい尊いやり取りかわされなかった?嘘です微塵も冷静では無い。
「私の心にアバダ…………………」
「何言ってんの?」
「向こう100年は生きられるアバダ」
「まじで何言ってんの?」
死ぬを通り越して生き返って永遠と生きられる。
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クィディッチの試合本番。
双子の紹介でリー・ジョーダンという2代目悪戯仕掛け人の1人と出会った。どうやらクィディッチの実況をしているようだ。
なんか、えっと弟ノットとかつてクィディッチの実況したな。ルシーのガッツポーズがあまりにも可愛すぎたことを昨日の事のようにフルカラーで思い出せる。
ちなみに今日は実況補助で呼ばれました。
特等席でハリーの活躍、見たかったんだもん……!
「やぁミリ・コワルスキー。双子が世話になってるな」
「こんにちはリー・ジョーダン。リーって呼んでも?」
「もちろんだよ。君も悪戯が好きなんだって?」
今年は全然悪戯してないし悪戯が好きと公言した覚えはないんだけど、リーは何故かそれを知っていた。首を傾げると、私の疑問が分かったのかリーがくすくすと笑った。
「ピーブズが言ってたんだよ」
「ピーブズが?」
「『友達が悪戯好きなんだよ、悪戯する時は誘ったら面白いぜ』って。ピーブズを御せるのはこのホグワーツでダンブルドアか男爵か、君だけだしね」
「御してるつもりは無いんだけど。でも友達なのは間違いないね」
「そりゃいい!ぜひ俺と組んであの双子をアッと言わせようぜ?」
「すごく心躍るお誘い!だけど……」
「だけど?」
私は己の相棒を実況場所からこっそり見て笑った。
「私の悪戯の相棒は、もう心に決めてるの」
「そいつは残念!」
「あぁでも安心して、胸は貸すわ」
リーはとっても面白そうな顔をした。ふふん、魔法薬学と魔法生物学と料理に特化した私の悪戯スキル、舐めないでよね。あっ、でも魔法道具はダメです。魔法道具作成は決まってセブルスが頑張ってた……。
「さ、クィディッチが始まるぜ。実況と行こう!」
『なんか、純血ばかり固めてるから期待してたんだけどガタイだけで美しさの欠片も無いわねスリザリンチーム』
『言い過ぎ!!!!!』
『もうちょっとさあ、シーカーを小柄で可愛い人にするとか、悪どい参謀役とか、もうちょっとポテンシャルあるでしょ』
『言い過ぎだって!ミリ聞いてる!?』
『対するグリフィンドール、女性以外と多いね。アリシア・ビネットにアンジェリーナ・ジョンソンにケイティ・ベル?男女混合とは言え吹き飛ばされないように気を付けてね。あとケイティ・ベル、お前はこれ以上モテてどうするんだくたばれ』
『それモテに対する僻み???ミリ・コワルスキー自寮でさえ口悪いの???』
『それにしても100年に1度の天使と名高いハリーったら可愛くって可愛くって。その鍛え抜かれたスピードは、育った家が虐待もどき繰り返してろくな食事を与えられたことがないせい、ってことを除けば完璧だわ』
『えっ……?ぎゃく、え?英雄が?虐待……?』
『あら?ご存知ないのリー。ハリーはホグワーツに来るまでろくにお腹いっぱいご飯食べたこと無いんですって。温かい部屋も新品の服も味わったことがなかったそうよ。その劣悪な環境を気にしなかったどこぞの校長と、それに気付かなかった己の能天気さに嫌気がさすわね』
『同い年じゃん…………???』
リーはボウトラックルみたいな顔をした。
『さてリー。来年のスリザリンのメンツにドラコが選ばれそうな件について話し合いましょうか』
『今の!!試合の!!実況!!!して!!!』
『だってシーカーって小柄であればあるほど有利なんでしょ?となると新入生や2年生が選ばれやすいけど、今年度の新入生のスリザリンで1番箒が上手いのって忖度なくドラコだったもの。嘘、やっぱり忖度はしてた……可愛い……産まれてくれてありがとう……』
『ついていけないどうしよう』
『あ、ハリーに向かうブラッジャーが双子のどっちかによって防がれたわ。流石。双子、お前らはボロボロになってもいいけどハリーに傷1つでも負わせたらスウーピングエヴィルで脳みそ吸うから覚悟なさい』
「コワルスキー…………」
あ、マクゴナガル先生の呆れたような声が聞こえた。マクゴナガル先生、クィディッチ大好きだから毎回実況席居るのよね。
ハリーに特に注視してリーの実況について行く。
『あのなミリ。ハリーの動向を細かく実況しすぎてスリザリン側にヒント与えてる感じになってるんだ……。いや細すぎるあまりいつもの妨害を躊躇ってるんだけどな』
『あ、ハリーの箒が錯乱し始めた』
『ねーー!!!マクゴナガル先生助けて!!!』
父親に続きハリーまで箒に振り回されなくったっていいじゃん!!
もはや可愛いからハリーの方がオリジナルだよ。ハリーの真似をするなよジェームズのクソ野郎!
ジェームズの箒の動き方と同じで、ハリーの箒も錯乱呪文を掛けられた時と一緒の動きをしていた。魔法道具の問題じゃないのは確か。
── 呪い、そうだ錯乱呪文を掛ければいい。僕らの歳で高度な闇の魔術を使えるだなんて思わないだろ?
脳裏にセブルスの台詞が1文字違わず蘇ってきた。アクセントの付け方さえも。
「……いや、流石に」
でも脳裏に浮かぶ1年生のセブルス可愛すぎるな。愛してるよセブルス。地獄に行こうが天国に行こうが追いかけて延々と愛を囁き続けるからね。
セブルスの方を見ると目をかっぴらいて口元細かく動かしていた。
あ〜呪文の詠唱〜〜〜〜。
セブルスは『リリーとジェームズの子』に呪いはかけないと思うしむしろ助けると思うけど『ハリー』には呪いをかける。断言出来る。
セブルスの苦手なタイプって、ハリーそのものだよ。自分の家庭の境遇を無理矢理思い出させ、生意気で考えが足りず向こう見ずで、未来を全部信じてる綺麗事の人間。自分がそうなれなかったから、反転アンチみたいなもんだよね。分かるよ、セブルスの考えてること。
とは言え、セブルスが闇陣営?の指令以外でそんなバレやすい事をするはず無いし、合理的なセブルスがリスクを背負うわけが無い。
「……どこかな」
セブルスが反対呪文を掛けているだろうと想定して、セブルス以外で犯人を探す。
ジェームズの事を考えるとスリザリンのパンジー・パーキソン(可愛い)かと思っていたけど、まぁ1年生がかけられるわけが無い。
思わず可愛い子に目がいってしまうため、探し出すのに苦労したが──みーつけた。
「エヴィル、教員席まで連れてって」
階段降りて自分の足で行くより、エヴィルに引っ掴んで飛び降りた方が早いよね!
「Ms.コワルスキー!?」
人でいっぱいな場所で着地が上手くいくはずがなく、クィレル先生に飛び蹴りする形で教員席に舞い降りた。
「ひっ、ヒィ!?」
「うおあ!?」
「きゃ!」
どこからかハーマイオニーの可愛い悲鳴が聞こえた気がするけど、クィレル先生がクッションになってくれたおかげで無傷でセブルスの前に来た。
「な、何を……」
「スネイプ先生……、驚いた顔も天使すぎる!結婚しましょう!」
「──グリフィンドール20点減点」
「ほ、他の科目で点数稼いでるからプラマイ若干プラスだからいいもん……」
ちょっと20点はデカすぎるから手加減して欲しいかも……。
==========
ハリーの手柄でグリフィンドールが170対60で勝利した。その張本人は真っ青な顔をしたミリに医務室へ担ぎ込まれ、怪我の確認をした後、ロンとハーマイオニー、そしてドラコと一緒にハグリッドの小屋で濃い紅茶を淹れてもらっていたのだった。
「コワルスキーはいないんだな」
「うん、誘ったのだけど、フラフラして気分悪そうにしてたから断られちゃったのよ」
ドラコが警戒するようにキョロキョロと見回すのを、ハーマイオニーは少し可愛げがあるなと思いながら説明を加えた。
「それよりなんでマルフォイが居るの?」
「本を返してもらいに来たんだ。ポッターに貸したことが原因でスリザリンが敗北したから、クィディッチチームから目の敵だよ」
「え……。ごめん、大丈夫なの?」
「フン、僕を舐めるなよポッター。たかが純血の先輩が、マルフォイに勝てると思うな。父上に相談しますね、と言えば黙ったさ」
ドヤ顔をするドラコにロンは呆れたように肩を竦めた。
「それに、来年僕がシーカーになってお前の鼻を明かせば証明出来るだろ。『スリザリンが負けたのは単に弱いだけだ』『ドラコ・マルフォイの足元にも及ばない』ってね」
「マルフォイ……君って最高にカッコイイね」
ハリーが感動したように言う。
彼らの仲は割と良い。1年生の中で最も害虫被害に遭っており、仲間意識が芽生えているからだ。害虫?語らずとも分かるだろう。
「それより、ハリーの箒のことよ」
「スネイプだったんだ。君の箒にブツブツ呪いをかけてたし、ずっと君から目を離さなかったんだ。ミリじゃあるまいし」
「バカな」
ハグリッドはそれを即座に否定した。
「なんでスネイプのやつがハリーにそんなことする必要があるんだ」
「でもミリも気付いて阻止してた!……はず」
ワンチャン己の欲望に従った可能性も無きにしも非ず。ロンはちょっと考えて、渋い顔をした。どうしよう気のせいだったかもしれない。
「スネイプみてぇな友達想いのやつがジェームズの息子にそんなことするはずが」
「父さん?父さんがなんだって?」
「あぁいや、なんでもない。忘れてくれ」
ハグリッドはモゴモゴと誤魔化し押し黙った。
「それに僕見たんだよ。ハリーとミリがどっかいってる時、ハロウィンの日。あの三頭犬がいる方向に向かっていったの!」
ロンとハーマイオニーはそれを目撃していた。ハリーは城を離れていたため知らなかったが、怪しい動きをしていたのは確かだ。
「なんでフラッフィーを知ってるんだ?」
「フラッフィー?」
「そう、あいつの名前だ。去年パブで出会ったギリシャのやつから買ったんだ。ダンブルドアにかしてんだ。あれを守るため……」
「あれ?」
ハリーが身を乗り出して問う。余計なことを言いすぎたと言わんばかりにハグリッドはぶっきらぼうに『もう聞かんでくれ』と言った。
ハリー達は、ハグリッドが何か大事なものをグリンゴッツ金庫から取り出しているのを知っている。
グリンゴッツ金庫という厳重な場所に盗みに入られ、何も盗まれなかった。というか事前に取り出されていた、という新聞を見ていた。
その金庫の番号も、日付も、ハリーが初めて魔法界に来てハグリッドと共に来ていたからだ。
「でもスネイプ先生がポッターを殺そうとした理由にはならないんじゃないか?」
「でもマルフォイ、私呪いをかけているかどうか一目で分かるわ」
ドラコの疑問にハーマイオニーが答える。瞬きをしないこと、目を逸らさないこと。それらが当てはまったからだと。
「スネイプがそんな事をするはずが無い、断言する!」
ハグリッドはガンとして譲らなかった。
それは学生時代、セブルスがハリーの両親といがみ合いながらも仲が良かったのを知っているからだ。
『ハグリッド!今日はスネイプのやつに魔法薬学で勝ったんだよ!僕って天才じゃない!?』
『違うわジェームズ!セブルスは、あ、え、て!貴方が負け越しなのを哀れんだのよ。優しいセブルスに感謝しなさい!』
『持ち上げるなコワルスキー。次は譲らないぞポッター』
『ハッ、負け惜しみじゃねえか。なあジェームズ』
『シリウスも煽らないでよお』
『はぁ。こんなのが学年1位だなんて。未だに信じられないわ』
『まぁまぁリリー。じゃれ合ってるだけだから僕らはゆっくり紅茶でも飲んでおこう?』
かつての景色が鮮明に思い出せる。特にハリーとミリはジェームズとエミリーにそっくりだから。
ハグリッドは目頭を擦り誤魔化すように言葉を続けた。
「俺はハリーの箒があんな動きをしたかは分からん。だが、スネイプがお前さんを殺そうとしたりは……せん。四人ともよく聞け、お前さんたちは関係ないことに首を突っ込んでおる。忘れるんだ。フラッフィーのこともフラッフィーが守ってる物も。あれはダンブルドア先生とニコラス・フラメルの……」
「へぇ」
ドラコが声を出し、ハリーと目を見合せる。
「ニコラス・フラメルって人が関係してる、と。ポッター、調べ物が進展しそうだぞ」
父上にも聞いといてやろう、とドラコは手助けをする。ハグリッドは口が滑った自分に猛烈に腹を立てていた。
「真実はさておき、スネイプ先生はあの化け物に好かれてて可哀想だ」
「それは、うん、まぁ」
「否定出来ないわね」
「僕から言わせて見りゃ、君ら全員同じ獲物だからね?」
ロンは棚上げして現実逃避してるなぁ、なんて思っていた。お前らも十分被害者だよ。