クィレルの後頭部にヴォルちゃん事件。
1年生が私を食い止めて、そのすきにクィレルは慌てて逃げ出した。丁度そのタイミングでセブルスとダンブルドアが来ると、ダンブルドアは大混乱だったのだ。
『賢者の石が盗まれておらん……?というか誰もわしの防衛最高傑作のみぞの鏡に触れとらん……?』
『それどころじゃないでしょう校長!説明しろコワルスキー!貴様、何をしてそんなにマルフォイらに雁字搦めにされておる!?』
『いや。ちょっと喧嘩の売買してたら止められて』
『はぁ…………………。アレより酷い』
『怪我はあるまいな?ミリ、お主はちょっと来なさい。セブルスは他の子を一応医務室に』
『マルフォイ、グリフィンドール、ついてこい』
『えっ、私もこんなシワだらけのジジイより私もセッスネイプ先生の方が……!』
『着いてこないで』
『着いてくるな』
『来ないでね』
『大人しく校長に怒られてて!』
『──コワルスキー、シレンシオ』
『……はい』
そうして私はダンブルドアに拉致されて説明を求められたのだった。
くそー!私だってセブルスと一緒に罠抜けしたかったー!可愛い子達と一緒に医務室でキャッキャしたかったのに。というか唯一の怪我人なのに。
ダンブルドアは私を子供扱いしないので淡々と説明を要求してくるので本当に不服。可愛くない
「──ってわけで、ヴォルちゃんにユニコーンの血の呪いを解毒する為の薬を飲ませました」
一連の流れを説明すればダンブルドアは深く深く、そりゃもう深いため息を吐いた。
「敵じゃぞ」
「ダンブルドアにとっては、ね」
私にとってはヴォルちゃんは恩人だもん。
今しれっと開心術使われたので勇敢なハリーたちの可愛い姿を思い返す。怯えて視線がキョロキョロしていたのに私を見る時は決まって決意を固めた表情をしていたところ。震える手を誤魔化すように何度も握り返していたところ。猫のように逆毛を立てて無闇矢鱈に警戒心を強めていたところ。可愛くって可愛くって。
「……はぁ。で、随分気安い呼び方じゃな?」
「エミリーがお世話したしお世話になりました」
「どうせそんなこったろうと思っておったわ」
「別に誰とでも仲良くなれるわけじゃないのよ?ただまぁ意見が一致したって言うか、食の好みが一致したって言うか……。あっ、言うなって約束だったっけ?まぁいいや、時効時効」
ダンブルドアはジト目で私を見た。
「昔から、エミリーのしでかした事はわしの把握の範疇外にある。ミリもどうせそうじゃろう」
「それ、なんでも把握したいダンブリィにとって邪魔ってことじゃない?」
「そうとも言う。じゃがなミリ、お主の生き方でお主の世界の捉え方。それがわしにとって間違っていようと、その価値観を正しく決めるのはミリじゃよ」
「闇の陣営に寝返ってもいいと?」
「寝返るも何もわしの陣営ですら無いじゃろ」
「うん」
「あと言っておくが、絶対闇陣営も願い下げ」
うーん、背負い投げ。
そんな人を不良物件みたいに言わないで欲しい。
両陣営から欲しがられない私って何。結構有能だと思うんだけど。まるで中身が無能みたいに……。
「ミリは自由に生きなさい。誰にも囚われず、自由に動いて自由に世界を動かしなさい」
「言われなくても割とフリーダム」
「否定出来んのぉ……」
ダンブルドアは困ったように笑って立ち上がった。不死鳥のフォークスの元に行き、1本羽を抜き取ると私に手渡してきた。
「フォークスがの、お主にこれをあげたいと」
「そんな貴重なもの……良いの?」
「同じような存在のミリを仲間だと思っとるじゃろう。受け取ってあげなさい」
不死鳥、フォークスが最後の個体なんじゃ無いかって説が濃厚だからとっても貴重。
「ありがとうフォークス。ダンブルドアじゃなくてうちの子になってもいいのよ」
「誘わんでくれ」
ダンブルドアは笑顔を浮かべている。
「賢者の石はな、破壊しようと思っとる」
「え、ダメだよ」
「そんな即答されるとは思ってもみなかったの。ニコラスのことが心配か?」
「それは微塵も。『永遠』と『発展』は対極にいるし、発展が無ければ魔法界は滅びる。だから長生きしすぎたジジイはさっさと退散すべきよ。ダンブルドアみたいにのさばってたらダメよ。次世代が育たない」
「酷い言われよう。遠回しにわしに死ねと言っとらんか?ミリ?」
「マグルの発展に追いつけなくなってきている魔法界に未来は無い。いつか、それこそ100年後には滅びてるかもね。賢者の石は人間には過ぎたるもの、それそこ神に等しい素材なのは分かるわ」
「わしと会話しとらんの?」
でも破壊されては困る理由がひとつある。
「──ピーターが賢者の石作ろうとしてたんだもん!貴重な生きた参考資料!」
「俄然破壊すべきじゃな?圧倒的に私的な理由」
「あとこれはピーターが考えそうな事なんだけど、怪我とか、病とか、そっち系に効きそうじゃない」
「……それは」
私は圧倒的に壊すべきだと思う。
ただまぁ私レベルじゃ分からないような、頭のいい魔法族なら人を助けるための使い方も同時にできると思ってる。ダンブルドアはそれが出来るんじゃないかなとも。
「それにしてもダンブルドア」
「うん?」
「1年生でも突破できる罠は罠と言わないわよ」
「わしにも考えが……」
「私は正直策を練るとか苦手だから貴方の考えてることなんてちっっっとも分かんないし、可愛いハリー達が傷付かなくて良かったけど、怪我してたらどうなるか分からないの、私が」
「私が。」
当たり前じゃない。
今では同い年だけど、リリーとジェームズの子。ルシーとシシーの子。私の子世代とも言うべき存在。
「……あのねダンブルドア。命懸けで助け合う友情も、危険に立ち向かう勇敢さも、死んで英雄と言われるようになるのも、あの子たちには必要ないわ」
「ミリ、お主……」
「私達親が頑張ればいいの。あの子たちは突拍子も無い命懸けの冒険より、普通に学校に通って普通に仲良くなって、頑張って、落ち込んで、たまに喧嘩して仲良くして。依存してないような、そんな普通に育って欲しいの」
本人や実親がどう思うかは分からないけれど、大人の汚いところとか争いとか戦争とか、子供達が見る必要ないし関わる必要なんて無い。
私達の関係性は歪ではあるけれど、それが悪いとは思わない。でもハリー達はこうであって欲しくない。かけがえのない友情は命の危機に瀕してまで得て欲しくない。
「危険なことは、私やシリウスや、たいっへんに不服だけどセブルスやリーマスがすればいい。あの子達を巻き込んだらダンブルドアでも容赦しない。忘れないでね」
バイバイ、と手を振って私は校長室を後にした。
さーて、念の為医務室で泊まり込みしてる可愛い子達の様子でも見に行こうかな。
あと巻き込まれたネビルは本当にごめんね。
学年末。
寮杯はスリザリンが1位だったのだけど、今回の大冒険が重なりグリフィンドールとスリザリンは同点1位に輝いた。ハリー達は先輩方に揉みくちゃにされて、ドラコもスリザリン席で褒め讃えられていた。
ホグワーツ特急の揺れるガタガタとした振動に身を委ね、騒ぐ皆の声を聞きながら私はゆっくり過ごした。
遠く、家族の声が聞こえる。
「ただいま、私の大事な人たち」
「おかえりミリ。よく、無事で帰ってきてくれた」
あのね兄さん、話したいことがいっぱいあるの。それと相談したいこともあるの。
きっと兄さんは……──リアム父さんは頷いてくれるだろうけど。
翌日。
プリペット通り四番地──
「来ちゃった♡」
「来ちゃったぁ!?」
朝一番のハリーが可愛くてたまらないです。
君のお父さんに受けた恩を返すならこれしかないと思ってるの。
2025.3。一旦、本編第1章〜賢者の石〜終了です。
次回の更新は月末辺りを予定してます。更新スケジュールをツイッター(現X)に固定してあるので確認してください。
次回はお待ちかね、チャーミグスマイル賞