─矛盾─   作:恋音

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2章〜秘密の部屋〜
2-1.苦労の進級準備


 

 

「ドビー!食べ物を荒らさないの!」

「ドビーは悪い子ドビーは悪い子!ハリーポッターを行かせる訳には行きません!」

 

 ドタバタとコワルスキー家を駆け回るマルフォイ家の下僕屋敷妖精と格闘を繰り広げる。

 

「もー、そんなに暴れてたらまたパン屋に迷惑かかるでしょ?」

 

 

 夏休みに入ってすぐ、再会したリアム父さんとイオママに2つお願いをしたのだ。1泊だけイギリスに泊まることと、ハリーを家に連れて帰っていいかということ。

 

 リリーとジェームズの子供だと伝えると、リアム兄さんは頷いてくれた。

 

『こんにちは。突然失礼します。私は生前リリーやジェームズと友達だったものです。私の妹も魔法使いでしたが、私は魔法が使えず。魔法を使える子供を預かる大変さを身に染みていますので、ぜひお力になれたらと子供に相談をもちかけられました』

『まぁ、外ではなんですから家で……』

 

 ペチュニアというリリーの妹に案内され、室内に入るとみすぼらしい服装のハリーと体調悪くなりそうなおデブがいた。あれがダドリー、と思ったのも束の間、リアム兄さんとイオママがグイグイ話を進めてくれた。

 イオママはマリウスさん(イオママの父)がアメリカで実業家ということもあって、バーノン家と上手い具合に話を進めていて、その美貌も去ることながら口も上手いだなんて我が母親ながら女神では?と思ったよね。

 

『ミリ、どういうこと?』

『えっとねハリー…──一緒に帰ろうって事だよ』

 

 あとチュニー、ジェームズのことを頭がおかしいというのはすごくすごく賛成するからどんどん悪口言っちゃって。

 うんうん頷いていたらチュニーからの好感度が何故か上がった気がした。事実しか言ってない。

 

 

 

 

 

 そして現在。

 ハリーは私と一緒にアメリカで生活していた。ドビーが来るまでは割と平穏だったのだけどね。彼結構悪戯っ子だから一気に賑やかになっちゃった。

 

「ハリー、私宛にハーマイオニーとロンから返事が来たよ。読む?」

「いいなら読む!」

 

 国が違う現状、ハリーへの手紙が届かない事態になったら困るので、私の方からハーマイオニー達には手紙を届けておいた。アメリカに連れ去りました、と。

 そのお返事といってはなんだけど、ハーマイオニーに一緒に2年生の学品を買いに行こうという提案がされていた。生活環境を気にしていたけど、私が預かっているという時点でハリーの悪いことにはならないから安心したとも書いてあった。

 友人思いのいい子。ハーマイオニーもロンも。

 

「それにしても、ミリのお父さんって僕の両親と知り合いだったんだね」

「正確に言うと……僕の妹が君の両親と友達だったんだよ」

 

 リアム父さんが三時のおやつを持ってリビングに上がってきた。仕事は一区切りついたようで、ハリーに簡単な紅茶を入れてあげると、写真を取り出した。

 

「……!僕の両親だ……。ハグリッドにも似たような写真を貰ったよ」

「リリーとジェームズは妹が亡くなった時にもアメリカに来てくれてね。エミリーは君の両親のこと大好きだったから、いっぱい写真を遺してたんだ」

「エミリー?」

「そうさ。僕の可愛い妹の名前はエミリーって言ったんだ。ミリにもエミリーから名前を取ってるんだよ」

 

 嘘でも本当でもない説明だったが、ハリーはそれをすんなりと信じた。

 

「僕もエミリーって名前なんです」

「……、それは、そんな、まさか。ジェームズが」

「彼はハリー・エミリー・ポッターって言うの」

「ハリー、ありがとう。僕はジェームズに酷いことを、それこそ理不尽な怒りをぶつけたのに」

「僕は、当時の状況は分かりませんが。父さんはきっとリアムさんのこと大好きだったと思いますよ」

 

 ハリーは写真をペらりと捲った。

 そして一枚の写真を見て目を見開く。

 

「これ……母さんの隣に居るのって」

「それセブルス・スネイプって言うのよ」

「えぇ!?スネイプ!……先生?」

「セブルスの事も知ってるのか。彼もよく来てたよ。それこそ毎年の様に、ジェームズに連れられたりエミリーに連れられたりして」

「えぇ………………?」

 

 ハリーは困惑したように聞いた。

 

「父さんとスネイプって仲良かったの?」

「「いやそれは全然(即答)」」

 

 仲良いというか、ライバルというか。信頼関係はあるけど信用関係は無いみたいな。憎み合うけど認め合う、複雑な関係だったね。

 

「エミリーは写真を撮るばかりで、ここには写って無いんだよね」

「そっ、かぁ」

 

 私たちの学生時代の思い出を1枚1枚大事に捲る。紅茶がぬるくなるほど大事に見直して、ハリーはそれらを返した。

 

「見せてくれてありがとうございます」

「いいのかい?ハリーが持っておくことも出来るんだよ」

「いえ、いいんです。これはエミリーの大事なものなんでしょ?それに僕が持ってなくてもいいよ」

 

 ハリーはリアム兄さんと私に向かって可愛い笑顔でひとつ確認した。

 

「また来年も、一緒に帰ってくれるんでしょ?」

「ん゛っうぅん!も゛ぢろ゛ん゛!」

 

 もう実質うちの子じゃん。

 あまりの尊さに兄妹揃って心臓を抑えてうずくまった。

 

 ちなみに、名前も何も書かれてない手紙に大きくデカデカとハテナマークが書いてあった手紙も届いた。気付いたらそのハテナマークは消えていたので、その紙で返信するかと思ってハートマークを書いたのだけど、はたまた文字が消えてしばらく経てば怒りマークが書かれていた。なにこれこわぁ。こんな高度な事やる相手は相場が決まっているので、引き出しの中に厳重にしまった。知らん知らん、可愛くない相手からの手紙なんて。

 

「あ、これ進学本リストだって」

 

 手紙を再度確認したらホグワーツから2年生で使われる教材とかのリストが書かれてあった。

 

 基本呪文集──ミランダ・ゴズホーク著

 

 泣き虫妖怪バンシーとナウな休日

 グールお化けとクールな散策

 鬼婆とのオツな休暇

 トロールとのとろい度

 バンパイアとバッチリ船旅

 狼男との大いなる山歩き

 雪男とゆっくり一年──ギルデロイ・ロックハート著

 

 わぁ、すごく名前に聞き覚えがあるなぁ。

 

 

 

 ==========

 

 

 

「ハリー!無事でよかった!」

「ハーマイオニー、多分君の想像以上に快適な生活だったよ。ダーズリー一家にいる時と比べたら天国みたいなものだったよ!」

 

 ダイアゴン横丁。

 ハリーとハーマイオニーが感動の挨拶を交わし、呆れたような目でロンが見守っていた。

 

「クイニー母さん、ありがと……」

「貴女本当にポートキー弱いわねぇ」

 

 体内がぐるぐると渦巻くこの感覚に慣れないけれど、可愛い私のハーマイオニーがせっかく一緒に買いに行こ♡って誘ってくれたんだから行かなきゃコワルスキーの名前が廃る。

 クイニー母さんが背中を摩ってくれたので少し楽になってきた。

 

「ハーマイオニー、この子がミリちゃん?」

「えぇそうよ、パパ、ママ」

「大丈夫かしら?」

「ハーマイオニーのご両親……?ハーマイオニーをこの世に産んでくれてありがとう……偉大なお2人に感謝を……!」

「「おぉ……聞いてた通り……」」

 

 うっ、気持ち悪い。

 ハーマイオニーの両親に挨拶したあとは顔を地面に向けてぐるぐると回る視界を鎮めた。

 

「ロン!ハリーたちは見つかったのかい?」

「あ、ママ。見つかったよ」

 

 ロンの母親らしき人の声が聞こえてきたので再び挨拶をしなきゃと顔を上げる。

 Theウィーズリーです、といった顔つきの父親と双子とパーシー。その隙間から探るようにチラッと顔を覗かせた……可愛い赤毛の女の子。

 

「か、か、可愛い……!可愛すぎる!えっ、眩い朱赤の髪色もとても素敵なのだけど、女子力高くて可愛いのが、可愛い……!」

 

 兄のお古が多い中で一生懸命頑張ってお洒落してるんだろうなっていう、可愛いを作ろうと頑張ってるところが可愛くて仕方ない。頑張ってリンパマッサージとか髪にオイル付けてといたのかな、つやつやした赤毛が美しい。恋する乙女みたい。こんなタイプも好み〜♡♡♡

 

 自然体の美ではなく、背伸びして頑張って作った可愛いが、本当に愛おしい。

 誰のために頑張ったのかな?可愛いね?もしかして私のためだったりする?

 

「初めまして!ミリ・コワルスキーです。可愛い貴女の名前を聞いてもいいかな?」

「……。ジネブラ・ウィーズリー」

「素敵!アーサー王の王妃の名前をもじったのかな?それともレオナルド・ダ・ヴィンチのジネブラ・デ・ベンチの肖像から取ったのかな?どちらにせよ、美は得を飾る名前にピッタリね」

 

 キュッと眉間に皺を寄せていた表情が可愛くて。

 

「双子!バリア!」

 

 ロンの指令で双子が私の両腕をかじりと掴んで

 

「了解ロン。はいミリ・コワルスキー、俺たちと手を繋いでおこうな〜?」

「うちの可愛いプリンセスを毒牙にかけるのやめて貰ってもいいかな〜?かけるならせめてパーシーだけにして」

「嫌なこと言っていい?チャーリーも毒牙にかけられてるよ」

「「それは最悪」」

 

 チャーリーったら、最近私に手紙を出して魔法生物のアドバイス求めるようになったのよね。可愛くないから後回しにしてるけど、同じ魔法生物オタクとして答えない訳には行かないから色々書いてる。

 

「こらフレッド!ジョージ!ミリに酷い真似をするんじゃない!……大丈夫かいミリ?」

「ありがとうパーシー。優秀な貴方なら弟にレディに対する扱いを教えてあげられると思うの」

「ミリ、貴女言い方がイギリスじみて来たわね」

 

 クイニー母さんの言葉に喜べばいいのか悲しめばいいのか分からなかった。

 

「貴女がミリね。あたしはモーリー・ウィーズリー。息子たちから話は聞いてるわ」

「初めまして、ミセス・ウィーズリー。ニットありがとうございました。寒がりなので制服と一緒に着たり部屋着に着たりして愛用してます。ハリーやハーマイオニーともおそろいって所が最高でした」

「あらありがとう!モーリーおばさんでいいのよ。次は何色がいいかしら?」

「そうね、緑とかどうかしら?私の好きな色なの」

 

 にっこり笑えばモーリーさんは『そうするわ』と言ってくれた。私、思わずニッコリである。

 

「初めましてミリ。私はアーサー。こいつらの父親だよ。アメリカからわざわざ来てくれたんだってね。両親はマグルと聞いたが、アメリカとイギリスだとマグルの生活に違いとかはあるんだろうか?」

 

 アーサー・ウィーズリー。この人の名前には聞き覚えがある。ウィーズリー家の当主で長男で駆け落ちしたとかルシーが言ってた様な。

 

「イギリスで生活したことが無いから分からないけど、ハーマイオニーが私の家で生活したら分かるかも」

「嫌よ」

「嫌だそうです!可愛い……」

 

「グレンジャーご夫婦。ウィーズリーご夫婦。それに子供たち。ミリに皆さんが仲良くしてくれているみたいで。アメリカイルヴァーモーニー出身のクイニー・コワルスキーです、今後ともよろしくね」

「ミリのお婆さんなんだよ。綺麗だよね」

「お婆さん!?てっきり、お母さんかと思った……」

「年齢的にはひいばあちゃんでもおかしく無いんだけど、クイニー母さん全く歳取らない気がするのよね。美魔女って言葉の語源と言っても過言ではないわ」

「過言よ?」

 

 ハリーの紹介に照れた顔をするクイニー母さんが美しい。血筋的にはグランドマザーなんだけど、マザーって言っても違和感がないのをハリーが納得してくれたからいままで通り母さんって呼んでるの。

 

「それにしてもモーリーさん素敵なお召し物されてるのね」

「えぇそうなの!実は本屋に、ギルデロイ・ロックハートさんが来てるのよ!」

 

 モーリーさんのお洒落な服のポケットからとある新聞の切り抜きがあった。

 それを覗いて思わず眉をしかめる。

 

 ギルデロイ・ロックハート

 『私はマジックだ』

 サイン会

 

「ハリー、着いていかないって選択肢は無いのだけど、姿が見えなくなっても心配しないでね……」

 

 

 

 本屋さんに移動した。

 ハリーと一緒にリストの確認をしていたらジニーに可愛く見られていた。えっ嫉妬?可愛いね。私の事そんなに好きなのかな?

 

 でもそれはそれとしてロックハート。ギルデロイのサイン会に行く気満々のハーマイオニーやモーリーさんに連れられて行かざるを得なかったのだけど個人的に気が重い。

 あの可愛い面がどこまで可愛く育っているのか遠くから眺めてみたい。遠くからでいいよ、遠くからで。なんなら紙越しでもいい。顔は好き。

 

 なんだか今日の私、喜びと脱力感の間で反復横跳びをしている気分だわ。

 

「ロン、ロンの分も出すからさ、私の代わりに教科書買ってきてくれない?」

「え、何、急に。何企んでるの?」

「私遠くにいるからお願い〜〜」

「なんかミリに頼られるとまるで普通に見えるからやめて欲しいかも」

 

 酷いこと言われた。

 仕方ない、気配を消してパーシーや双子の背中に隠れながら行こう。

 

 そう意気込んでいたのはいいけれど、ギルデロイの居るであろう場所はファンや新聞社の人混みに隠れて姿は見えなかった。そのことにハーマイオニーはガッカリして、私はホッとして、そのまま三人に引っ付く形で同じ教科書を引っ掴んだ。

 

「パ、パーシー!お願い、今回ばかりは代わりに買ってきてくれないかな?私どうしても……」

 

 リスト上の必要な本を困惑したパーシーに手渡した途端、場が急にざわついた。

 

「ハリーが見つかったようだね」

 

 パーシーの発言に振り返ると、ハリーにギルデロイが肩を寄せて写真を撮っていた。

 ギルデロイは意気揚々と『闇の魔術に対する防衛術の教師に選ばれました!』と新聞にアピールしていた。

 

 えっ、ギルデロイホグワーツの教師になるの?

 それにしても面がいい。スマイルがチャーミングすぎて世界を虜にしたっておかしくないよ。

 

 すると急に目が合った。

 ギルデロイは零れそうな程開かれた目からポロリと涙を流した。

 うっ、涙すら可愛い。その姿に困惑したハリーも可愛い。

 

 

「エミリー……?」

「人違いです!!!」

「あぁなんということだ!エミリーと瓜二つ……私とエミリーの子供だとでも言うのかい!?」

「いや違いますけど!?」

「あぁ、愛しい我が子よ!まさかこんな所で運命の再会が出来るとは……!」

 

 私の父はリアム兄さんだし母はイオママなんだけど……!

 ギルデロイはハリーを押しのけて私を抱き締めた。うーん、顔が良くて逃げ遅れたわ。

 

「有名人のハリー・ポッター。ちょっと書店に行くのでさえ一面大見出し記事かい?」

「マルフォイ?」

「なんだ、君か」

 

 私がギルデロイにぎゅうぎゅう抱き締められている隙に、逃げ出したハリーに声をかけたのは可愛いドラコだった。

 ロンは靴紐が解けた靴を見るような顔でドラコを見た。

 

「ハリーが居るのにびっくりしたのかよ」

「ウィーズリー、君がいる事にもっと驚いたよ。そんなに買い込んで大丈夫なのか?君の両親、これから1ヶ月飲まず食わずなんて言わないだろうな?」

「っ!」

「心配してくれてありがとうマルフォイ。君が思ってる程貧乏じゃないから安心しろよ」

「ロン!侮辱されて怒らないの!?」

「ジニー、分かりにくいけどマルフォイのやつ普通に心配してるだけだから」

「えっ?」

 

 ドラコに馬鹿にされたと思ってプンプン怒ってるジニーが可愛すぎる。そうなのよ、ドラコったら素直に心配できない年頃なの。この可愛さ、世界中に知らしめたい。伝記を書くべきだわ。

 困惑した様子のジニーもとっても可愛いったらありゃしない。私の両手が空いてたら間違いなくカメラを手にしていた。

 

「そうか?ならいいんだけど。それよりもっと驚いてる事について言ってもいいか?」

「やめてマルフォイ。私達もこんな死んだ目をしたミリを初めて見るの」

 

 ハーマイオニーがドラコを嗜める。それ、実質言ってるようなもんだよ……。

 

「愛しい子、名前はなんて言うんだい?」

「ははは…………」

 

 素直に助けて欲しいです。

 超ド級の好意を向けられてこんなに涙が出てくる。私の周りには素直じゃない人が多すぎるわ。

 

 なんでかな、可愛くて好みなのに背筋がゾワゾワするというか。

 

「ロン!何をしてるんだ?ここは酷いもんだ、早く外に出よう」

 

 人混みを掻き分けてアーサーさんが呼びかけた。

 

「これはこれは──アーサー・ウィーズリー」

 

 脳天から響く甘美な声。

 手足が痺れるような感覚は雷に打たれたりサラマンダーの炎で燃やされたり、とにかく体の全てが染め上げられていく様な感じだ。

 

 ドラコが一人で出歩くわけが無い。それは分かっていた。冷静に考えれば当たり前の事だ。

 

「ルシウス」

 

 私の麗しのルシーがドラコそっくりの顔で薄ら笑いを浮かべて立っていた。

 その笑顔たるや、歳をとっても、いやむしろ歳をとったからこそある深みのある美しさはマリアナ海溝より深いわ。間違いない。

 

「お役所はお忙しいらしいですな。あれだけ何回も抜き打ち検査を……。残業代は当然払ってもらっているのでしょうな?」

「喧嘩を売ってるのか、ルシウス」

「おや、どうもそうではないらしい。使い古されたお古の教科書。ふむ、なんと役所が満足に給料も支払わないのであれば、わざわざ魔法使いの面汚しになる甲斐がないですねぇ?」

 

 そんな美しい罵倒聞いたことない!

 要は『新品買う余裕がないくらい残業代貰ってないのか?大丈夫か?わざわざ魔法使いが嫌うような仕事を請け負ってくれているのに?』って言ってるんでしょう!?

 美しい人は語彙力ですら美しい……。

 

「……!」

 

 ルシーが私の姿を捕捉する。

 その美しい瞳に私の姿が反射した。めっちゃ離れてるけど、私には間違いなく見えるわ。なんてったって天使についてだもの。

 

「もしや……君はエミリーの娘ではなく私に会うために蘇ったエミリーなのでは……?あぁ、どこまで彼女は私のことを愛してくれていたんだ。皆さん、私の最愛の人は亡くなってしまいましたが、こうして運命の再会を……!」

 

 記者に意識が向いたギルデロイの手を振りほどいて駆け出す。

 

「ミリ!」

 

 そして……──ルシーのマントの下に潜り込んだ。

 

「コワルスキーやめろ、父上から離れるんだ!」

「ミリ!やめなさい、そんな男の所から出てくるんだ!」

「ミリ!?何してんだ!」

 

 ルシーの腰の肉付きめっちゃえっちだな。

 そう思いながら私はルシーにしがみつく。マントに隠れて周りが一切見えなくなった。

 外からドラコやウィーズリーが焦った声を出す。

 

「……ミリ?コワルスキー?」

「ち、父上違うんです。そいつは確かに穢れた血ではありますが決して父上を害するような人間じゃなくて……!」

 

 ドラコの可愛い必死な弁明。愛おしさが爆発しちゃう。ルシーが純血主義だと思っているから友人である私を害さないか心配してくれてるのだと思う。

 

 可愛い……ベリーキュート……。

 

 可愛さを噛み締めているとギルデロイが人混みをかき分ける為に声をかけている音も聞こえてきた。

 

「失礼、Mr。貴方のマントに潜り込んだやんちゃな子を返していただけますかな?どうやら照れ屋の様でしてね」

「…………。ふむ、断ります」

「なんと、これはこれは。私が誰かご存じないようですね。私はギルデロイ・ロックハートと申します。その子にとっての父親であり恋人でもある様な特別な魔法使いです」

 

「お前こそ、私が誰か分かっていないようだ」

 

 トン。スッ……。

 杖が地面を叩き、杖から仕込杖が出てきたような音がする。

 

純血(・・)の、ルシウス・マルフォイと言う。まさか、この魔法界で私の名前を知らないとは言わないでしょう?」

 

 ルシウス・マルフォイ〜〜!!!!

 大好きーー!!!健康に長生きして美しく生涯をまっとうして〜!!!

 

 心の中でペンライトをブンブン振り回すと、ギルデロイの『きょ、今日は用事があったのでした』という震えた声が聞こえて来た。

 その可愛い気配が無くなるまで私はルシーのマントの下でルシーに抱きついていた。うへ、うへへ、幸運中の幸運でヨダレが止まんねぇな……!

 

「…………。もう出てきても大丈夫ですよ」

 

 優しい声色が私の脳にびっちゃびちゃに響いた。私、死ぬかもしれない。燃え死んで生き返っちゃう。

 

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