育ちすぎたコウモリみたいな真っ黒な衣装ではなく、シャツとズボンといったロンドナーの服装をしてきたセブルス。
う、成人済セブルスの私服が可愛すぎるし美しすぎるし官能的すぎるわ。
「──大きな愛を貴方に」
「(無視)それでポッター、何が?」
「9と3/4線に乗ろうとした時、突然壁がすり抜けなくなって。ミリが言うことにはマグル避け?も無くなってるって言ってました」
「はぁ。流石は英雄殿、毎年毎年性懲りも無くトラブルを招きますな」
「僕のせいじゃないです!」
ハリーがプンプン頬を膨らませているのが可愛い。
「それに巻き込まれ体質はミリも大概ですよ!教科書を買いに行った時だって、ロックハートに絡まれたのはどっちかと言うとミリの方だったし」
「ロックハート……今年の闇の魔術に対する防衛術の教師だな。何をしたコワルスキー」
「何もしてないわ」
「先生、今回ばかりはミリが本当です。なんか、エミリーの元恋人だったとかでミリの事ロックハートの子供だと思っているみたいで」
「………………??」
「先生?」
「恋人……?あれに…………???」
セブルスは私をガン見してエミリーを思い出しているのか心底不思議そうな顔をして混乱していた。恋人にしたくないランキング2位だったものね、気持ちは分かるわ。
「少なくともミリの年齢とエミリーの享年が違うので絶対有り得ないって話してたんですけど」
「そうであろうな。絶対、有り得ん。あの傍若無人な傍迷惑浮気性の変態が唯一を作るわけが無い」
「わぁ、なんだかミリみたい」
怪訝な顔をするセブルスも可愛いし呆れた目をするハリーも可愛い。愛おしさ100倍。
「まぁ良い。姿くらましでホグワーツへ向かう」
「「はーい」」
するとセブルスはヒョイっと会計伝票を持ってレジに向かった。
「自分で払うのに!」
「どうやらコワルスキーの頭では己が子供だということがわかっていないようだ。それともなにか?貴様の目には我輩が子供に金を払わせるような甲斐性なしの様に見えるとでも?」
「う……。『子供は甘えてればいい』ってことね……!心臓がクルーシオ」
「違うが?」
「違うよね?」
するとセブルスはにやりと可愛く笑った。
「わざわざ勤務時間中に駆り出され、生徒の迎えに向かった。生徒も子供だけで過ごしても違和感のないようにカフェにて待機。──校長に請求しても何ら問題無かろう」
「──店員さん私スコーン持ち帰り!会計一緒で!あと、コーヒーと蜂蜜ひと瓶お願い出来る?」
「遠慮ないな貴様……」
コーヒーはセブルスの分で、蜂蜜はハリーと一緒にアフタヌンをする時用。スコーンと一緒に紅茶に入れて味わいましょ。
会計を済ませて人気の無い所まで徒歩移動する。ロンドンは人が多いので、魔法を使う場合は見られないよう建物の中に入るなり遠出するのが鉄則。
ハリーと手を繋いで早足ぎみのセブルスについて行った。
「そういえばスネイプ先生って、僕の両親と友達だったんですね」
「…………友だちだと?」
「あれ、でも仲良さそうな写真だったけど」
どういうことだと言いたげな視線が私に向けられる。へへへ、可愛いね。
「ハリーはこの夏、私の家に泊まっていたんです。見て、おかげで逃げない」
「ポッターは野生動物では無いが?」
「分かるわ、圧倒的に天使よね」
「……。」
「スネイプ先生、ツッコミを諦めないで」
セブルスは聞いて損した、みたいな顔をして眉間に皺を寄せた。ハリーが慰めている。可愛いand可愛いってクッキーアンドクリームみたいな幸福感よね。
クッキーアンドクリーム、よりも天使の方が大好きだけども。
「……我輩とリリーは幼なじみだ。だがポッター、貴様の父親だけはいけ好かん」
「母さんの!」
ハリーが嬉しそうに顔を綻ばせる。
「これから姿くらましを行う。ポッター、姿くらましとはなんだ?」
「えっと……瞬間移動?」
「本質的には似ている。だが、難易度は相当高く長距離の移動に向かないという難点が存在する。また、『バラけ』というものも存在する」
「ばらけ?」
「さよう。出発点に体の一部が置いていかれるというものだ。腕の1部、皮膚、パーツ。もちろんバラければ出血もし、バラけた範囲によっては一瞬で絶命する」
「ひ……っ!」
「無様にしがみついておくことだな」
楽しそうにハリーを揶揄うセブルスは、世界中探しても見つからないオアシスみたいなもの。むしろオアシス。生きててよかった。死んだけど。
「コワルスキー、貴様もだ」
「はーい」
ハリーとセブルスをまとめて抱きしめる。腕の中にこんな幸せを味わえるだなんて、トラブル万歳だわ。
バチン。
姿くらましをした先は別にホグワーツではなく、そこからかなり離れた森の中だった。ロンドンとの直線距離が近い場所。
どうやら城から箒で飛んできた様だった。
「こ、怖かった……」
「スネイプ先生、箒で飛んできたの?この距離を?」
「あぁ失敬、これは気遣いを忘れていた。Ms.コワルスキーは箒で飛べないのであったなぁ?」
箒下手芸人していたセブルスに煽られてしまった。自分が飛べるようになったからって自慢げに。
く、悔しい〜〜〜!
でもそれ以上にドヤ顔のセブルスが可愛くてしかたないわ。笑顔だけで世界征服出来る。闇の帝王なんか比じゃないくらいの威力。
「せ、スネイプ先生。ここって既に魔法界ではあるのよね?」
「ん?」
「──ドラゴン通学するやつがあるか!」
新学期始まってないのに減点された。まさかのマイナススタート。
低空飛行だったんだからいいじゃない!ねっ、ノーベルタ!
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「セブルスや、お主、領収書までちゃっかり持ってきたのか」
「いくらロンドンとはいえ、12歳に外で待てという方が無理な話でしょう。今回はコワルスキーの機転で怪しまれずにすみましたが、補導されてもおかしくない年頃ですぞ?」
「確かに」
「それともうひとつ報告が。今年の闇の魔術に対する防衛術の教師について」
「ふむ?」
「自称エミリーの恋人です」
「………………エミ、恋、ん?はて?そんなものおったか?」
「
「まぁ、よくはないがそれはさておきじゃ。それよりミリのドラゴンについて新聞に載る前に根回ししておかねばならんの」
「そうですな。あと、アメリカ経由でイギリス魔法省に伝えた様ですので、何かあった時ようにイギリス直通の連絡手段をあやつに持たせるべきです」
「マクーザか。資格をアメリカで取った形だからだとは思うんじゃがのぉ。ちょっとびっくり」
「ちょっと…?」
「すまぬ、かなり驚いた。ほっほっほっ、セブルスの学生の頃から変わらんな、コワルスキーとポッターというのは」
「やめてください」
「しかしセブルス。ロンドンのいくつもあるカフェの中から、よく2人を見つけ出したのう。……マグルの物価は上がっておるのか?なんだか高いような……?」
領収書を睨みつけながらダンブルドアはブツブツ文句を言ったのを見て、スネイプは見つからない様にこっそり笑顔を浮かべた。
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なんだか悪戯を仕掛けたい気分だ。
そんな思いに浸りながら迎えた本学年最初の授業はスプラウト先生の薬草学。
あれからハリーと私はドラゴン使い年手の名前を大きく広めた。
通学にドラゴンを使ったのはやりすぎたかなって思ったのよ。せめて同じ空を飛ぶ種類ならヒッポグリフにすべきだって。でもノーベルタ(ハグリッドから譲り受けた子)も空を飛びたかっただろうし、何より魔法使いなら誰しも一度は憧れるあのドラゴンに乗れるとわかった時のハリーの興奮具合や、仏頂面していたけど目だけはキラキラさせていたツンデレセブルスとか。
それに勝てる人間からの文句なら受け付けるけど、どうせ全人類無理なのだから諦めて飲んで欲しいわ。
とにかく、特別な罰則もなく賛美を受け取れるだけでも特に問題は無かったのだけど。
学生生活に至って大問題があった。
「ミリ!君と話したかった!──スプラウト先生、彼女が10分遅れてもお気になさいませんね?」
「ぎゃ!?」
ギルデロイだった。
マンドレイクの飼育の材料を両手いっぱいに抱えていたので手伝って運んでいたら回避できず。ぎゅうぎゅうに抱きしめられながらギルデロイはそう言った。
スプラウト先生は『お気になさる』顔をしていたけど、少し悩んだ素振りを見せたあと私の手から材料を奪う。えっ。
「まぁ、Ms.コワルスキーなので……」
「スプラウト先生ぇ!??!!」
まさかの見捨てられた。
どうして、比較的成績優秀生徒なのに、どうしてなのスプラウト先生。
ピシャッと閉められたドア。逃げ場がない……。
「ミリ、ミリ、ミリ。あぁ、エミリーと似て可愛い子。私、あの話を聞いて、自分を責めましたよ」
か、顔が可愛い……!
なんのことを言っているのか分からなかったけれど、ギルデロイのその後の説明では『ドラゴンでも通学するだなんて目立ちたがりなのは父親の私が教えてしまった』だなんて言っている。
「あの、先生。違います──」
父親じゃないんだよギルデロイ。
そう否定しようとしたら何度も名前を呼ばれた。可愛い。う、逃げられない。
「わかりますとも。最初のひとくちで、もっと食べたくなる。私が十二歳の時には君と同じくらい無名でした」
「確かに」
同意しちゃった。
「わかっています、わかっていますとも。週刊魔女のチャーミング・スマイル賞に5回続けて私が選ばれたのに比べれば君のはたいしたことないでしょう。──それでも初めはそれくらいでいい、ミリ、初めはね」
ギルデロイは私の頬にキスをするとジィッと私の顔を見た。
スマイルがチャーミングなのは全くもって否定できないわ。白い歯、綺麗に上がった口角。長いまつ毛にくりくりした髪。ただちょっとだけ、瞳に下心が浮かんでいなければ手放しで讃えていただろう。
うえ〜〜ん!シリウス助けて!!!!
私をこの空間に取り残さないでスプラウト先生!
可愛いのに!めちゃくちゃ天使なのに!体が拒否反応を起こすの!
「そ、そういえばギ、ロックハート先生は次の授業に向かわないのですか!?」
「あぁそうでした。また会いましょう。愛しのミリ」
スタスタと歩いていく後ろ姿に背を向けて温室に逃げ込むように慌てて入った。
「す、っ、スプラウトせんせぇ……!?」
「ごめんなさいMs.コワルスキー。日頃の行いです」
「それを言われると何も言えない……」
ハリー達はハッフルパフのマグル生まれのジャスティンと組んでいたので、余っているハッフルパフ生と組むことになった。
「あ、余り発見。ザカリアスじゃない……」
「気軽にファーストネームを呼ぶのをやめないか?なんでこっちに来るんだ」
「いいじゃない。私とザカリアスの仲でしょ?」
「グイグイ来る。ところで愛の伝道師ともあろうお方があのロックハートに抱きしめられるだなんて。こりゃ明日には彼のファンに刺されて死んでるな」
「可愛い子に刺されるなら本望よ!!」
「余程頭が足りてないらしいよ」
ザカリアスの嫌味で人を小馬鹿にした言い方の感じ、セブルスの学生時代にも似てて扱いやすいのよね。
「お前の好みはどうなっているんだ?」
「美しく、そして可愛ければ性別年齢生死問わず」
「生死も問わないのか」
「ザカリアス、残念だけど貴方は私の好みじゃないの。こんなに嫌味で遊んでくれているのにごめんね」
「死んでしまえ」
湾曲した物言いじゃなくてストレートな罵倒が来た。腹たったので机の下で足を踏んずけたわ。
「あのスネイプでさえ好みなお前には、ロックハートに抱きつかれるだなんて天国みたいなものだろ?そのまま消滅してくれたら見物なのだがな」
「…………そうねぇ。ロックハート先生も好みよ」
「良かったな。…………うん?顔色が悪いがついに死ぬのか?」
「えぇ、死ぬわね」
ギルデロイのことは可愛くて可愛くて最高なのだけど、私はこれから彼から逃げさせてもらうわね。
「そうだった……!授業があるんだったわ……!」
「何頭抱えているの?」
闇の魔術に対する防衛術の授業という、学生にとっては避けても避けられない時間があったのだった。
食事の時間や出歩く時間をズラして大広間では会わない様に避けたり。授業に向かう道のりを遠回りになっても教師が余り通らないルートを通ったり。
どうせ出会ってもメロッちゃって否定も拒否も出来ずに終わるのだから避けた。ハリーたちと一緒に行動出来ないのは寂しいし心苦しいけど。
一部避けられなかった時もあった。コリン・クリービーというマグル生まれのグリフィンドールの男の子がハリーに写真とサインを強請っていた時もギルデロイがやってきたけれど、たまたま通りかかってくれたドラコがハリーと私を『呼び出されてるから』と機転を利かせてくれ、天才的に救ってくれたり。
これは勝てる。1年の辛抱だし!
と、余裕ぶっこいていたらこれなのよ。
「さて、皆さんが私の本をどれだけ読んでいるのか確認としましょう!」
そして授業前にテストを行うことになった。
好きな色。
大望。
一番の業績。
誕生日など。
ギルデロイの本に書かれている内容。好みの人の書いた本だから覚えていたけど、闇の魔術に対する防衛術には似つかわしくない内容もチラホラ。
「──全問正解はハーマイオニー・グレンジャーとミリ・コワルスキーだ!」
「だってわざと間違えるだなんて私のプライドが許さなかったんだもの!!!!」
思わず100点を叩き出して顔を覆った。
うっ、私の美形&可愛い子に対する記憶力と実力を隠すことが出来ないアメリカ気質がマリアージュした結果、自らの首を絞めている気がする。
「ミリ。流石だ。やはり私のことはなんでも知っているみたいだね」
「ひゅぎゅうえあ」
「なぁハリー、コワルスキーの悲鳴って喜んでる?顔だけはいい先生だけど」
「喜んで……るとは思うんだけど、普通に悲鳴に近いような」
「そうなのか?」
ハリーはシェーマスの疑問に答えている。
可愛い。愛おしい私のハリー。
ちょっとだけ、あの、助けてくれると嬉しい。背筋がゾワゾワと、敵対した魔法生物相手しているみたいな感じが。
「あぁ本当に君は美しいね、私の愛しのミリ」
「じゅ、授業!私、あの、先生の授業聞きたいかなー」
「もちろんだとも!あぁそうだ、2人合わせて20点グリフィンドールに差し上げます!では授業ですが」
ギルデロイはスタスタと歩き机の後ろに行くと大きなカゴを持ち上げ机の上に置いた。
カゴの中にはピクシーが数匹、ぎゅうぎゅう詰めで環境の悪い状態で入っていた。
コーンウォール地方のピクシー小妖精だ。
「さあ気をつけて!魔法界の中で最も──穢れた生物と戦う術を授けるのが私の役目なのです!」
けが、れた。
生物。
キィキィと甲高い音を立てて鳴いていたピクシーはギルデロイの手によって籠から解放されたかと思うと、すぐに部屋中を飛び回り自由にイタズラをして楽しんでいた。
「わぁ、楽しそう」
「言ってる場合!?」
ネビルが落とされたシャンデリアに潰されそうになるのを引っ張って避け、『次は黒板を引っ掻いてやろう』『耳を掴んで上にあげよう』と鬱憤を晴らす様に鳴いていた。
逃げ惑う生徒を尻目に、杖を奪われたギルデロイは焦りながら『このピクシーをみんなで捕まえるように!では!』と去っていってしまった。
「──ミリ!どうにかしてー!」
愛しのハリーの救援に私は甲高い声を上げた。
「キィ!ギーッ!」
「ついにコワルスキーが壊れちゃったぞおい」
ディーンがそう呟く。失敬な、呼びかけただけよ。
「よーしよしよし。いい子。おいでおいでー。悪戯をしたいのなら、いい場所を紹介するわ。ほら、撫でてあげるからこっちにおいで」
ピクシーの鳴き真似で呼び掛ければ私に集まってきたので、猫の首元を撫でるようにピクシーの首筋を捕まえてポイポイとスーツケースの中にしまっていった。
よし、全員捕獲。
あんな狭いところよりスーツケースの中の方が広いからいっぱい飛び回って遊ぶんだよ。小屋の外なら遊んでもいいから。
「あなた、ピクシー語を喋れるの?」
「そうなのラベンダー!驚く貴女も可愛いね」
「か、可愛い。えへへ。そうじゃなくて、魔法生物と話せる人間なんて初めて見たわ」
「簡単な言葉しか無理よ?あぁ、でも一生懸命聞き取っても分からない動物もいてね」
「そうなの?」
「爬虫類……本当に言語が分からないの……」
トカゲとか蛇とか、ピット器官を使ったり音波を使ったり。人間の耳や喉じゃ再現するのが難しい生物は。
「あぁ、爬虫類系の魔法生物と話せたらルーンスプールをスカウトしたいのに……」
サラザールスリザリンが蛇と話せたって文献が残っているから不可能では無いのだけど難しすぎる。
「ねぇ、もし蛇と喋れる人がいたらどうするの?」
「そんなの決まってるわハリー」
わたしは強く拳を握りしめた。
「四六時中付きまとって教えを乞う。それ以外無いわね」
「うわぁ……………」
ドン引きしているロンはおしりペンペンの刑に処すわね。