─矛盾─   作:恋音

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2-4.日記の友達

 

 

 夜のルーティーンはある程度決まっている。夕食前に魔法生物の世話をし、夕食を食べたあとは皆で雑談したり、抜け出して禁じられた森の浅い所で野生の魔法生物達を観察したり、時間帯をズラしていた魔法生物の世話をしたり。

 

 しかしそのルーティーンも変わりつつあり、夕食時にギルデロイと遭遇することが多くなってしまった。そのため夕食後に会話することも少なくなりつつある。

 

『ねぇコリン。ハリーと私の写真を撮ってくれるって?』

『別に言ってないよ』

『──あぁ!ミリじゃないか!こんなところで出会うとは、もはや運命だね!』

『コリン話の続きは談話室でしましょう!』

 

 捕まってしまったら逃げ出せないので同情したハリーやロン、そして他のグリフィンドールの男子生徒(つまりギルデロイに心酔してない子)が助けてくれていた。

 

『いいかいミリ。あれが、去年の君の姿だよ』

『私、自分顔がいいのは知ってるわ』

『外見じゃない。ウザさだよ』

 

 失敬すぎる。

 

 とにかく、ギルデロイを避けたり出会うせいで1年生や他の寮の生徒とろくに喋れていないのだ。唯一談話室でのみ雑談出来るけど、スーツケースが出る頃には生徒は既に談話室から居なくなっていたり。

 

 私のこの感情をどこにぶつければいいのか分からないので、ルシーから貰った尊い日記に書くことにした。

 

 

 

 

──何より顔が可愛いのに私が避けているという事自体が不服で仕方ない!

 

──一体何があったんだい?

 

 

 日記に書いたら文字が消えて代わりに文字が浮かんできた。

 今年の夏に届いた推定ヴォルちゃんからの手紙式のやり方だけど、ルシーの筆跡じゃ無かったのでやり取りの相手は違う。誰だ貴様。

 

 

──あなたは誰?

 

──僕はトム・リドル。この日記だよ

 

 

 うん?トム・リドル?

 どこかで聞いたことあるような。

 

 少し記憶を探って、セブルスがトム・リドルの名前を出したことがあったのを思い出した。確か、スリザリンの首位を独占していた優秀な成績者で、おじい様の友人だったとか。

 

 

──トム・リドルって

 

──なんだい?

 

──Mr.プリンスの友達でスリザリンの首席だった人?

 

 

──なんて????

 

 

 少し間を置いて書かれた慌てたような筆跡にクスリと笑う。

 どうやら図星だったようだ。

 

 

──首席時代のトロフィーの年代が1940年代だったはずだから、Mr.アブラクサスやMr.オリオンと同年代かしら

 

──ちょっと待って

 

──もちろんよ

 

──君、アブラクサスやオリオンの知り合い?今の西暦はいくつ?

 

 

 おや、どうやら親しい関係だったみたい。

 ファーストネームを気軽に書いているところから見て、遠慮ない関係で間違いなさそうだ。

 

 

──1つ目の質問の答えはYESでもありNOでもあるわ。そして2つ目だけど、今の西暦は1992年ね。ちなみにまだ9月だわ。

 

──全く分からない

 

 

 セブルスのことしか覚えてないのだけど、トロフィーを眺めながら『1938年から1945年の七つ分全て首席をとってるみたいだ。すごいよな』って言ってたから。1文字違わず。

 私たちの学年は7年間もジェームズに首席を奪われていたものね。

 セブルスが尊敬していた事や、Mr.オリオンと近しい関係ってことはスリザリンだったのかな?

 

 Mr.オリオンの学生時代、気になりすぎるわ。

 

 

──で、Mr.オリオンってやっぱり学生時代から麗しかった?

 

──え、そこなの?どうして日記、とか

 

──いや別に

 

 

 好みの人がどうだったかとかはこの世で1番注目していると言っても過言じゃ無いけど、それ以外は別に便利だなぁって思うくらいよ。

 なんなら自分の美醜や性別もどうでもいい。

 

 

──Mr.オリオンの事って大概の人は知ってると思うんだけどもうほんとに危ないくらい麗しくって。全ての所作が煌めいて見えるの本当魔法だと思う。多分闇の帝王が私に呪いをかけているんだと思うわ。なんかの凄い魔法

 

──酷い冤罪だね

 

 

 多分冤罪じゃないと思う。

 そういえばヴォルちゃんともこんな会話していたなぁ。懐かしい。

 

 ヴォルは別に好みじゃないからあんまり覚えてないけど。

 

 

──Mr.アブラクサスには会ったこと無いんだけどね、Mr.オリオンのあの声も視線も魔法もどれを取っても流れ星のように儚く美しく魅入られてしまうのよね。貴方もそう思うでしょ?

 

──オリオンの事はどうでもいいから、君のこと教えてくれない?

 

──どうでもいいですって!?

 

 

 あのMr.美形と話題の(※私調べ)Mr.オリオンの事をどうでもいいですって?

 Mr.オリオンと在学期間が被るという超幸運に恵まれておきながらなんて罪深い考えなの?

 朝おはようからおやすみまで共に生活出来るのに?

 

 

──あぁ、哀れだわ

 

──君に哀れまれると勢い余って殺したくなるんだけど?

 

「失礼極まりないわねこの日記」

 

 

 文字が浮かんで消えていく。

 そういえば、この夏休みで誰かからほぼ白紙の手紙が来届いたのを思い出した。

 

 疑問符を浮かべていただけのシンプルな手紙だったけれど、読んだ瞬間文字が消え、私が書いた文字もどうやら相手に送られたようだった。

 明らか高度な魔法を使われている事は間違いないし、そんなことするの1人しか知らないから……。

 

 

──私の友人が手紙を介した即時メッセージのやり取りの魔法を使っていたのだけど、貴方も似たような物?

 

──一方的なメッセージなら変幻自在術だけど、相互的なら両面鏡に似た魔法なのかな?

──ひとまず、僕はどちらでも無いね。僕は日記に込められた記憶。トム・リドルではあるけれど、僕の知識は5年生で止まっているんだ。まぁ7学年までの学習は終えているも同然だから、授業で分からないところがあったら聞いてよ

 

──へー

 

──返事が軽すぎない?

 

──いや、でも私も一応7学年までの学習は終えてるから別に。あぁ、でも実技は慣れないわね

 

 

 これでも応用過程(N.E.W.T)はきちんと合格しているから大丈夫よ。

 暗記科目は……可愛い子の音読部分なら思い出せるのだけどそれ以外は少し不安ね。

 

 魔法生物学と、魔法薬学、薬草学辺りは自信しかない。けれど、魔法史と闇の魔術に対する防衛術と呪文学と変身術が苦手。要するに実技ってこと。

 魔法史がその中に入っているのはちょっと許して欲しいわ。スペルが難しいのよ本当に。記憶はしているのだけど、書いたり認識したりすると途端に眠たくなるのよね。不思議な魔法。

 

 

──君はマグル生まれなの?

 

──うん、そうね。両親は。貴方は?

 

 

──親は魔女だったけど、早くに亡くなって。マグルとして育てられていたよ

 

 

 少し躊躇いがち書かれた言葉にハリーと同じような状況だっただろうことが分かる。

 大変だったろうなぁ。

 

 

──それにしても一人部屋だから話し相手欲しかったのよね。流石に魔法生物相手に話しても細かい会話できないし

 

──何、君友達居ないの?というか一人部屋って存在するの?

 

──友達なら沢山いるわ。いつも罵倒されてるけど

 

──それほんとに友達?

 

──一人部屋って珍しいわよね

 

──聞いてる?

 

 

 日記の相手は少しイラついた様な筆記体で問いかけた。聞いてる聞いてる。というか見てるよ。

 

 

──ねぇトム

 

──何?

 

──教師の大好きアタックってどうやって避ければいいと思う?

 

──何したの?

 

 

 お、そこで原因が私にあると思っている言い方。仲良くなった人みんな言うんだもの。今回に関しては私何も悪くないと思うのに。

 

 私が何をしたか。

 うーん、原因の心当たりと言えば……。

 

 

──私の悪い点はひとつ、私があまりにも美しすぎたせいね

 

──君さてはイギリス人じゃ無いね

 

──よくわかったわね、アメリカ人よ

 

──一応読める範囲だけどスペルも違和感あったし、何よりそんな自意識過剰な自尊心の塊なんてアメリカ人以外無いよね

 

──そんな褒めないでよ

 

──おめでたい頭だ。それで、君の悩みは教師からの接触を避けたいってことでいいかな?

 

──それもあるけど……。何より好みの顔してるギルデロイ相手に『嫌だな、避けたいな』って思っている私がすっごく嫌だわ。どうしたらいいかしら

 

──それは苦手意識って言うんだよ。何をされたの?

 

──食べられちゃいそうになったことがあるの

 

──…………詳しく聞かせて??

 

 

 多分それが原因だとは思うのだけど、好みの子に迫られて嫌だなんてプライドが許さない。

 でも、誰かに聞いて欲しかったので折角だし書くことに。

 

 

──詳しくと言っても、そこまで細かいエピソードはないのよ?

 

──それでも

 

──単に、ストーカーされてたみたいで。ギルデロイの父親に騙されて2人きりにされて

 

 

 そのまま迫られたけど間一髪で友人が助けてくれた所まで説明するとトムがぐちゃぐちゃと言葉にならない落書きを書いてしばらくした後、もう一度質問事項を書いた。

 

 

──君の話には矛盾が生じてると思うんだ。君の口ぶりは学生の、しかも低学年なんだよね?

 

──えぇそうね

 

──でも、件の『ギルデロイ』とやらは教師。でも、エピソードとしては学生時代。おかしいと思わないかい?

 

──そりゃ生まれ変わってるからそうよね

 

 

 

──?

 

 

 トムは疑問符だけ書いたあと処理能力の限界が来たのか止まってしまった。

 

 

──不死鳥って知ってるでしょ。私あんな感じなのよ。1977年に死んで、1980年に生まれ直したの

 

──意味が、分からない

 

──まぁそんなことはどうでもいいのよ

 

──全くどうでもよくないけど!?君は馬鹿なのか!?それはかなりの重要項目だと思うんだけど!

 

 

「えぇ……?そんなに重要かな?」

 

 トムの圧に首を傾げる。

 うーん、私のことはやはりどうでも良くって。それよりMr.オリオン達のことが気になってきたわ。

 

 

──ギルデロイはひとまず置いておきましょう

 

──置くほど軽い話題だったかなぁ!?

 

──これ以上は陰口になりそうだったもの。少し節度を持って欲しいなー、って思う程度だからひとまずいいのよ

 

──本人である君が言うなら別にいいんだけど。

 

──Mr.アブラクサスってどんな顔だった?

 

──あ、すごい、オリオンから話題が全然変わってない

 

 

 アブラクサス・マルフォイに会ったことないんだよ!だって、あのドラコやルシーの血筋だよ!?ぜっっっったい美しいに決まってるじゃない。

 

 ある一定期間からルシーに会えなくなったし、ルシーの家にお邪魔したことはなかったからご両親には会えたこと無いのよね。

 もちろん同じような理由でシシーの家にも行ったことは無い。ガードが堅いよ。

 シシーにはどうやら他にも姉妹がいるようなので是非とも会ってみたいの。絶対どっちも美しいだろうし、ヨダレもんだと思ってる。

 

 

──ところで君の名前は?

 

── ミリ・コワルスキー!ホグワーツ2年生!魔法生物のスペシャリスト候補よ!

 

 

 あ、日付が変わる。

 そろそろ眠らなければならないので、トムにその旨を伝えた。

 

 まさか新しい友人が自室で出来るとは思ってもみなかったけれど、寂しい自室がほんの少しだけ明るくなった気がする。

 

 

──おやすみトム。良い夢を

 

──おやすみミリ。また明日

 

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