はぁーー。
深いため息をひとつ。談話室で吐き出す。
すると人影が現れた。
「はぁい、コリン」
「えっと、確かミリ・コワルスキーさん」
「ミリって呼んでよ」
「う、うん。ありがとうミリ」
グリフィンドールの談話室でくつろいでいたら、話題の1年生に出会えた。
ゆっくり話す機会は無かったからこうして顔をつき合せるのは初めてかもしれない。
最近、ハリーの授業を把握しているからなのか一日に何回もハリーに声をかけている。ハリーに目をつけるとはお目が高い。
「わかるわ、可愛いもの。何度も撮りたくなるよ」
「なにが?」
ハリーはうんざりしていたけど、私的にはコリンと協力して是非ともこのホグワーツ中の可愛い子の写真を撮りたい。
特にクィディッチなんて、カメラで追うのも限界があるし私はカメラ技術は師匠の足元にも及ばないしね。
「ねぇコリン、クィディッチの写真を撮るのを協力してくれないかしら」
「クィディッチって?」
「そう、ゆくゆくはクィディッチだけじゃなくてイベントのありとあらゆる姿を写真に納めたい……!そのためにはコリン・クリービー、貴方の腕を見込んでいるの!ぜひ!是非とも!私のかわい子ちゃん達の写真をこの調子で沢山撮って欲しいわ!」
「やめなよミリ〜」
寝起きのネビルが欠伸をしながら私を止めた。
「同級生ですら慣れてないのに、初見の1年生にミリは酷だよ」
「酷。」
「それにコリン、君はどうしてそんなにハリーの写真を撮りたがるの?」
「そうよ!それは聞きたかった!世の中にはハリーと同じくらい天使がいるのに勿体ないわ!もちろんハリー1人で満足する気持ちはとっても分かるし不足なんて無いのだけどね」
「ごめんミリ……少し黙って……」
ネビルに口封じさせられた。
悲しい。
「えっと、簡単に言えば僕のパパに送ってあげたいんです。僕のパパは牛乳配達をしてて、魔法だってことも全然知らない。もちろん僕だってホグワーツから手紙が来るまで知らなかった!」
「その気持ち、なんだか分かるな。僕はコリンと比べて魔法の世界で育って、でも僕は魔法が使えなくって。だから信じたいんだよね、魔法の事」
「すごい、そうです……!未だに僕は信じられないんです、魔法の世界があるだなんて。僕は不思議なことができるけど、パパは知らないから信じられない」
「でもさ、コリン。ハリーを撮ったって、魔法のすごいとこってコリンのパパに証明できないと思うんだ」
ただの人だしね。とネビルが続けた。
そうよね、ハリーの可愛いところしか伝わらないもの。
「君のパパへの証明は、魔法薬学とか、クィディッチとか」
「あ、そうだ。クィディッチって?」
「スポーツだよ。ミリ、マグルに分かりやすい説明出来る?」
「えぇもちろん。言うなれば空中で行うフットボール……あぁいや、アメリカンフットボールかな」
「へぇすごい!」
「なんと言ってもハリーは百年間での最年少選手に選ばれるほど箒が上手なの!」
「ミリは?」
「…………百年間で最悪と言われるほど下手ね」
泣いてないわ。えぇ、ちっとも。
セブルスが箒を使えるようになっちゃったことに関しては泣いちゃったけど。
「でもねコリン。クィディッチよりもっと分かりやすい証明があるよ」
「え?」
ネビルは私を見た。
そのネビルにつられ、コリンも私を見た。
「──ネビル!ミリ!聞いてください。お父さんがホグワーツのこと信じてくれて!特に、弟子がいるなら安心だ、だなんて言ってくれたんです!それに関してはよく分からないけど」
後日。
その報告と共にコリンのハリーへの執着はピタリと止んだ。その代わりネビルに魔法薬学や薬草学を教えてもらっている時間が増えたのだけど、ネビル本人も頼られる事に喜びを抱いているみたいだ。
ほんと、フランク・ロングボトムや師匠と自然と好きな物が似てくるのね。
親子って不思議。
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ルーティーンにたまに組み込む運動がある。それはランニングだ。
魔法生物学者にとって体力は必須。
生まれ直して体力が全てゼロに戻ってしまったからこそ、今世はエミリー時代より鍛えてパワーアップするつもりなの。
早朝の魔法生物のお世話を終わらせて軽く1時間ほどグラウンドで走っていると、ハリーやオリバーなどグリフィンドールのクィディッチチームがやってきた。
「おはよう、今日も天使のように可愛いねハリー。いいえむしろハリーが可愛すぎるがあまり天使という言葉が生まれたと言ってもおかしくないわね」
「……朝っぱらからミリは重いよ。おはよう」
「ミリ・コワルスキー!」
「おはよう、朝食は食べたのかい?」
「おはよう双子、軽くはね。ちなみに朝食はこの後キッチンに行って食べるつもりなの」
「ミリ、ロックハートに見つかると動けなくなるもんね。最近大広間で姿見ないと思ったらそういうことだったんだ」
ハリーが同情した様に視線を向けた。
ハリーからの視線ならどんな視線でもご褒美です。
「そういえば、最近コリンに絡まれないんだけどミリ何かした?」
「彼の視界を広げたのはネビルのおかげ。私は何もしてないわ。エヴィルと私とコリンで並んで写真を撮った位よ?」
「そっか、ならネビルにお礼を言っておくよ」
ハリーは自分が関わってないことにもお礼を言える良い子ね。ママ嬉しいわ。リリーみて、私たちの子すごく可愛い。頭を撫でてあげましょう。
「オリバー。貴方に一言物申したいのだけど」
「な、なんだコワルスキー」
「成長期の子の食事を取らせない、またはエネルギーが足りてない状態で運動をさせるのは筋肉に悪いわ。せめてタンパク質と炭水化物は摂取してからすべきよ」
私だって鶏胸肉食べてから運動してるんだもの。
タイミング良くハリーがぐうっとお腹を鳴らしたのでオリバーを睨んだ。
「うっ、ぐぬぬ」
「ぐぬぬ、じゃないでしょう?スポーツマンとしての基礎知識も足りてないんじゃない?」
「す、すまない。次から気をつける……」
「よろしい!」
落ち込んだオリバーにケイティがくすくす笑って小突く。
「ミリのやつ時々親みたいだよな」
「分かるよ兄弟。モリー母さんみたいな雰囲気ある」
「そうか……?親と言うよりは、数代前のキャプテンを彷彿とさせるから苦手だ……」
「「先輩ってこと?」」
「そうだな、それに近いかも」
双子の歓談に対してオリバーが感想を述べていた。
すると可愛い気配がしたので入口の方を見れば、グリーンのローブを着込んで箒を手に数人が競技場に入ってくるところだった。
「スリザリンじゃない」
「そんなはずない!」
オリバーはここを予約しているのだと顔を上げ、スリザリンのキャプテンの名前を呼んだ。
スリザリンのフリントはニヤニヤとずるそうな顔をして笑みを浮かべていた。
「ここは僕が予約した!」
「へん!こっちにはスネイプ先生が特別にサインをしてくれたメモがある」
「フリントそれ見せてあわよくばちょうだい」
セブルスの特別な直筆サインだって?
聞き捨てならない言葉にフリントのメモを奪うようにして見る。
──私、スネイプ教授は本日クィディッチ競技場において、新人シーカーを教育する必要があるため、スリザリン・チームが練習することを許可する
セブルスの文字だぁ……!
セブルスの文字は、nに癖が出るのよね。nで終わる単語は特に、大きめに書きがち。そして伸ばしがち。可愛い。本人に言うと嫌がるけど割と丸文字寄りだと思うの。あとTの文字の横線が大きかったり文字の始めは大きかったり。
見やすくって好き。
多分アメリカ人の私でも読みやすいようにしっかり書く癖がついちゃったんだろう。セブルスの習慣に影響を与えている私天才的に罪では。
「スネイプ先生も可愛いことするのね。ムキになっちゃってまぁ」
「これが可愛い真似かコワルスキー?」
「可愛いじゃない。どうやら去年スリザリンが負けたのがお気に召さなかったらしいわ。スネイプ先生はスリザリンであることに誇りを持っているもの」
肩を竦めながらそっとさりげなくお宝を懐に入れた。
うん、バレてないバレてない。セブルスの直筆サインなんて、何個あってもいいですから。
「ところでフリント、もしかしてドラコ居る?」
「人で見えないはずなのになんで分かるんだこの穢れた血め!」
スリザリン選手はガタイがいいのでドラコの小柄な体は隠れてしまっている。
名前が呼ばれたとわかって人の壁をかき分けドラコが現れた。く、天才的に美し可愛い…!迷い込んだ天使?
「あ!マルフォイ!」
「ポッター!」
「マルフォイも選手に選ばれたの?」
「あぁそうなんだ!シーカーに選ばれて、父上から箒も頂いたんだ。先月出たばかりの最新型でね」
「すごい!見せてくれない?」
「もちろんだとも!」
ハリーとドラコが手を繋いで興奮したように飛び上がっている。
下級生である2人の仲良さそうな姿をみたオリバーとフリントはポカンと目を丸くした。ふふん、うちの天使可愛いでしょう!
「けっ、穢れた血とはなんという暴言をコワルスキーに吐いてる!」
「一瞬呆然としてしまったが穢れた血に穢れた血と言って何が悪い!」
「はいはい、キャプテンたち。そんなことどうでもいいからさっさと練習でも始めたら?」
「「どうでもいいだと!?」」
喧嘩していたオリバーとフリントが同時に声を荒らげた。
「お前、とんでもない侮辱されたんだぞ!?」
「俺の言葉をどうでもいいで流す気か!?」
「だって好みじゃないからどうでもいいじゃない……。それよりこの可愛い天使達の姿を1秒漏らさず目に焼き付けたいから少し黙って貰える?」
ハリーとドラコはお互い目を見合せてコソコソと話し合いをし始めた。
「ねぇマルフォイ、君、あの言葉使ってみない?」
「えぇ……。ちょっと興味はあるけど」
「いいでしょ、ね?」
聴力が優れてて良かった。ハリーの『ね?』って言葉がとんでもない威力を放っている。
可愛い。オリバーとフリントの言葉なんて聞こえない。
「こ、コワルスキー!」
「なぁにドラコ。おはよう。愛おしい顔ね」
「このっ、け、穢れた血め!」
「………………!」
ずきゅん。私の心臓にロンギヌスの槍が突き刺さった。あ、心臓とまるかもしれない。
「ミリ?」
「……コワルスキー?」
「……さようなら父さん母さん、私は、今日が命日でもいい。今世に悔いなし」
「どうしようめっちゃ泣いてるよマルフォイ!」
「コワルスキー嘘、嘘だから!」
「嘘でも罵倒されて嬉しい……っ!最近なかなか罵倒されなくて悲しかったの…………!うそそこに天使が生きていると言うだけで嬉しい」
「こいつぁ救いようのない変態だぁ」
ところでルシー、チーム全体に出資するのはちょっとやりすぎじゃない?
「……はぁ。愛しい」
「おかえりミリ・コワルスキー。お前のせいでマルフォイのおぼっちゃまを揶揄う時間も無いよ」
うるさいな双子。
「ルシーにはちょっとやりすぎって叱っておくから、オリバーは朝食食べてきなさいよ」
予約をしていた所を譲るのは業腹かもしれないけれど、朝食を抜いているなら話は別。そしてセブルスの後押しがあるなら尚更別。セブルスがいいよ!って言ったのなら私はそちらを正義とするわ。
「ルシー?」
「誰だ?」
「ルシウス・マルフォイだけど?」
「そのルシウス・マルフォイ氏を愛称で呼んだのかお前は……!?」
フリントが恐ろしいものを見るような目で私を見てきた。
「本人からの許可はちゃんと貰ってるし、シシーからの許可も貰ってるよ?彼、婚約……じゃなくて妻子持ちだしね」
「まてコワルスキー!お前母上も愛称で呼んでるのか!?」
「えっ、うん、もちろん。私があんな美形夫婦口説かないと思った?あまりに美形過ぎて情操教育に悪いからドラコ大丈夫かなって心配していたのだけれど、ドラコも可愛さパワーで相殺した結果世界って平和になったのね」
「スケール」
「それにしても貴族って全員こうなの?金銭感覚バグってる?この前もうちにパンの依頼が大量に来たらしいってジェイコブ父さんから手紙で教えて貰ったけど……。チップ文化が必要だからって100パーセントのチップ普通払う?」
「で、でも。お前の家のパン美味しい!」
「幸せ……今週のコワルスキークッキングも楽しみに待っててねドラコ。愛してるわ」
そういえば、ジェームズも5年の時位にスリザリンに負けたからかチーム全員の箒を購入していたし、チップ100パーセントをしていたなぁ。
あぁ、ジェームズのクィディッチ熱ってハリーも引き継いでいたのね。ルシーもクィディッチが好きだったし。
「そういえば、貴方達父親に似てたのね」
「「今!?」」
結構色んな人から似てるって言われるのに!?と2人は言っているけど、見た目はそこまで似てないわよ?
特にジェームズなんて可愛げの欠けらも無いんだから、大天使ハリーと似てるわけが無い。