─矛盾─   作:恋音

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2-6.レイブンクロー生と親戚

 

「だからね初代、ピーブズはイタズラがやりたいわけ!」

 

 1年生時。そしてエミリーの卒業から考えると数年のお預け状態だったピーブズがやんややんやと文句を言った。

 去年はハリーの墓参りに付き添ったりしてできなかったし、今年もギルデロイが居るから目立つマネはしたくないのよね。

 

 そんな私の考えを見越してか、ピーブズは『あいつ邪魔だよな』なんて呟いた。物騒。

 

「ピーブズ?かわい子ちゃんに傷のひとつでもつけてみなさい」

「ジョーダンだろ!?かわい子ちゃん!?初代目ぇ腐ってる?かわい子ちゃんって言うのは、ピーブズを見て怯えてる新入生とかを言うんだぜ?」

「それはそう」

 

 それはそうね本当に。

 1年生の喜怒哀楽が可愛くて仕方ない。もはや後輩通り越して赤ちゃん。

 

「あと邪魔=DADAの教師ってちゃーんと出て来るあたり、自覚してんじゃん」

 

 痛いとこ付いてくる。

 でもピーブズが目の敵にしているというか、最近のストレス源なのは明らかだろうし分かるよ。

 

「初代は!悪戯したくないの!?」

「それは私もしたいけど、ほら、今代のホグワーツには2代目がいるじゃない?」

「おー!まー!えー!とー!やりたいの!せっかく魔法使えるじゃん?超高度な魔法使ってクソガキ共をあっと言わせちゃおーよ」

「魔法使い歴1年に無茶言わないでくれる!?せめて魔法薬学とかにしてよ!」

 

 最近ネビルに教えているおかげか分からないけど、1年生や2年生の授業内容だったとしても新発見が多くて楽しくって仕方ないんだから。

 ネビルは薬草学が得意ってのもあって、類似点が多い魔法薬学もハマれば強いって思ってたのよねー。彼の欠点は焦りからくるパニックだけど、私が傍でサポートしてるから今のところ順調よ。

 

 あとセブルスもいるし。ごめんこっちが大半の理由だった。

 

「それにまぁ、魔法薬学だったとしても」

 

「ピクシーズもいるし、お世話の人手が足りてないのよ。ピーブズ手伝って」

 

 エミリー時代の2倍ほど大きくなったスーツケースの中。回るだけでも大変なのに、お世話にも手間取られているからスーツケースの中にいる時間が3倍くらいに伸びている。

 個人的には魔法生物に囲まれるだけなので幸せ極まりないのだけど、お手伝い役が欲しいのよね。

 

「あっ。ルーナ!」

「あ、ミリ」

 

 レイブンクローの制服に身を包んだくすんだブロンドの髪をした美人1年生ちゃんが森を眺めていた。ルーナ・ラブグット。Love、Good。

 

「こんにちはルーナ。今日も可愛さで世界貢献してて尊いね。困ったことがあったら私になんでも聞いてね、ルーナの為なら地の果て海の果て行ってしまうんだから」

 

 ルーナとの出会いはシンプル。禁じられた森のセストラルの傍でフラフラしていたルーナをナンパしたのだ。

 セストラルに目を付けるとはセンスがいい。ちなみに服装もめっちゃオシャレで異彩を放っている。最高だと思う。

 

「困っては無いンだけどね」

「うんうん」

「この間、変身術のクラスで男子が2人、あたしのことおかしなルーニーって呼んできたの」

「ほう?」

「でもクラスの女子が『この子はあのミリ・コワルスキーの好みなのよ?可哀想だと思わないの?』って言ってくれて」

「……うん?」

「ミリが去年ハリー・ポッターの悪口を言った闇の魔術に対する防衛術教授を素手でボコボコにして学校やめたって伝説が流れてるもンだから、みんな怯えてね。それ以来、靴が無くなったりしなくなったのよ」

 

 私の名誉と引き換えに天使の幸せが守れるならなんでもいいわ……!

 いつの間にかルーナの平和に貢献していたよう。そんな己を誇りに思っていたら、ポルターガイストで背中を押し飛ばされた。

 

「っ!とと、どうしたのピーブズ?」

「べっつにぃ?ピーブズはエミリーが変態なの知ってるし」

「エミリー?」

 

 ルーナが不思議そうな顔をしてピーブズの言った名前を復唱する。

 

「私のミドルネームはエミリーって言うのよ」

 

 そして私の友達はそう呼んでいた。

 エミリーと呼ばれるのも懐かしいな。ピーブズが私の名前を呼んでくれた事に少し嬉しがっていたら、目の前の天使はとんでもなく可愛い提案をしてくれた。

 

「あたしもエミリーって呼んでいい?」

「かっ、かわいい!!愛おしい!ラブ!」

「だって特別みたいで楽しそうだもン。いいでしょ?エミリー」

「もちろん!!!!」

 

 妹がもし居たらこんな感じだったんだろうなぁ。可愛いなぁ。

 許されるがままルーナを撫でていると、遠くからロルフがやってきた。

 

「はぁいロルフ。元気?今日もニュート伯父さんやアベルに似てとんでもなく美しいわね。その年からその美しさって、誘拐の危険性とかない?ちゃんとボウトラックル居る?」

「や、やぁミリ。じいちゃんから嫌になるくらい言われたよ」

「私も入学の時言われた〜。知ってる?ティナ様と一緒に死刑になりかけた時に救われたんだって」

「何それ聞いてない」

 

 ロルフ・スキャマンダー。エミリーの従兄のアベルの息子でもあり、私のはとこでもある。うーん、説明が複雑。つまりはまぁ親戚ね親戚。

 

「ルーナ、ミリならいくらでも頼っていいからね」

「いいの?」

「もちろん!……ところでロルフってルーナと仲良かったの?」

「ミリのおかげでね」

 

 私2人が関わることでなにかしたっけ?

 

「ミリとハリーのためにコンパートメント確保して置いたのに来ないから寂しかったけど、おかげでルーナと出会ったからラッキーだよ」

 

 首を傾げていたらロルフが答えをくれた。

 あぁ、そういうことか。

 

「仕方ないじゃない。駅に入れなかったんだもの。誰かの悪戯みたいにね」

 

 流石にびっくりしたんだから。

 

 まぁ驚くハリーの可愛さにそれどころでは無くなったんだけども。

 

「それでドラゴン通学って、本当にどうかしてるよ」

「失礼ねロルフ〜!」

「わっ、頭撫でるのやめて!」

「ロルフ、貴方はとっても可愛いわ。親譲りのくるんと巻いたくせっ毛もキュートだし、何より仕草がルーンカーフみたい」

「褒め言葉には思えないけど、ミリは父さん曰く魔法生物オタクだからきっと褒め言葉だね」

「最上に」

 

 私がロルフを揉みくちゃにしていると何が面白かったのかルーナもコロコロと可愛らしく笑っていた。幸せの空間。可愛いの過剰摂取。

 

「ロルフは両親がコミュニケーションを苦手とするからかしら。貴方仲良しの友達多いんじゃない?」

「うん?あー、でも学年問わずレイブンクローで仲良くしてくれる人はいるかも」

 

 そういえばロルフはレイブンクローなのよね。

 アベルもニュート伯父さんもハッフルパフだったのだけど、本人の性質がレイブンクローを選んだみたい。まぁ、アベルも相当優秀だったし、伯父さんも研究色の強い業種だから正直レイブンクローでもおかしくないね。

 

「──やいやいやいやい!コワルスキー!」

 

 物思いにふけっているとそこまで可愛くないレイブンクローの2年生。つまりはまぁ私と同学年のアンソニーがやってきた。

 

「レイブンクローに毒牙をかけないで貰えるか!」

「花を愛でるのに毒は不要よ?」

「お前の愛はアルコールみたいなもんなんだよ!有害!」

「アルコールも度数を高めれば消毒薬よ」

「屁理屈の塊か?」

 

 アンソニーはするりとロルフとルーナの前に躍り出て、両手を広げて庇った。

 

「おお!」

「おおー」

 

 1年生2人が勇ましいアンソニーを見て感動したように声を上げた。

 

「アンソニー、どうやら私クィレルを素手でボコって辞めさせたみたいな噂が流れてるみたいなの」

「えっ事実じゃないのか?」

「冤罪よ」

「曰く、ポッター達が必死に止めて命だけは奪わなかったとか。クィレルのニンニク臭に嫌気がさした犯行だったとか」

「犯行って言わないでくれない?」

「毒薬を無理矢理飲ませたとかも言ってたな」

「薬よ」

 

 微妙に否定できない所があるから丸ごと否定出来ないのだけど。

 ニンニク臭キツかったし。

 

「彼、吃りはそこそこ酷かったけど板書は綺麗だし説明が論理的だし、トロールに対しての才能もあるし、学生時代も成績優秀者だったみたいだし。個人的には嫌いじゃないわ」

「そうなの?」

 

 流石レイブンクロー生。魔法のかかりにくい山トロールちゃんに対して魔法で言うこと聞かせれてたんだから。しかも待機もさせてたってことでしょう?

 魔法生物の扱い方についてはちょっと文句を言いたいところだけど、従わせる腕は優秀だったんでしょうね。

 

「と、とにかくコワルスキー!お前はこの2人に関わるな」

「なんの権利があってアンソニーが制限するの!」

 

 アンソニーは私の発言を聞いてドヤ顔をした。おっ、と。なんだその顔は。

 

「そーかそーか。君はマグル生まれだったなぁ。そうしたら苗字を聞いてもピンと来ないもんなぁ」

 

 アンソニーの後ろでやれやれと呆れた顔をしているのはマイケル・コーナーとテリー・ブート。さも他人事ですみたいな顔して眺めている。

 

「ちょっとマイケル、テリー!貴方達もなんとか言ってちょうだい」

「無理。そいつロルフが入ってきてからずっと鼻高々なんだよ」

 

 ロルフが?

 私が首を傾げるとアンソニーはドヤ顔をたもったまま『教えてやろう!』と胸を張った。ひっぱたいていい?

 

「ロルフ・スキャマンダーはあの幻の動物とその生息地の著者、ニュート・スキャマンダーの孫なんだ!」

「はぁ」

 

 知ってるけど?

 

「そしてそのニュートさんの奥さんの旧姓はポンペーティナ・ゴールドスタインという!」

 

 知ってるけど?

 

 アンソニー・ゴールドスタインは煽るような表情で私にぐいっと顔を近づけた。無性に腹の立つ顔だ。百味ビーンズを口の中に全部入れて口移ししてやろうかな?

 

「いくらバカでマヌケで脳足らずなコワルスキーでも、そこまで言ったら分かるだろう?」

 

 その発言に私はロルフと顔を見合わせた。ロルフは天を仰いだ。

 

 どうやらアンソニーを救う方法が見つからなかったらしい。

 

「アンソニー、世間知らずな貴方にひとつふたつ教えておいてあげる」

「ん?」

「ひとつ、ティナ様は旧姓で呼ばれるよりスキャマンダーとして呼ばれる方が嬉しそうに微笑んでくれること」

「んん?」

 

「そしてもうひとつ」

 

 私はアンソニーと肩を組んでにっこり微笑んだ。クイニー母さん由来のキュートな顔立ちだぞ。

 

「私の祖母の旧姓ね、クイニー・ゴールドスタインって言うの」

 

「……………………はぇ?」

 

 急に脳が追いつかなくなったのかアンソニーは腑抜けた声をあげる。

 

「あぁアンソニー!私たちってきっとこうして出会うべく出会ったのね!当然ロルフも含めてなんだけど。私と貴方って…………し・ん・せ・き♡」

「いっ、嫌だーー!!!!」

 

 逃げ出そうとしたアンソニーをがっと掴んで逃げないように羽交い締めにした。

 

「ねぇアンソニー親戚のお話聞いてくれないの?」

「吐き気と熱と頭痛と胃痛と神経痛が!」

「アレルギー??」

「し、信じられない!だいたいコワルスキーなんて家名聞いたことが……!」

「アメリカのマグルだもの。だいたいアンソニーのゴールドスタインってイギリスの分家でしょ?ティナ伯母様もクイニー母さんも、そもそもアメリカ生まれアメリカ育ち。たまたまティナ伯母様がイギリス人と結婚したからイギリスにいるだけで、お2人が姉妹な時点で私の方がロルフと近しいのよ」

「姉妹!?」

「そもそも私の普段身に付けているスーツケースなんてニュート伯父さんに貰ったものだし」

「なんだと!?」

「アンソニー、貴方って本当に可哀想ね。ホグワーツの天災たる私の親族だなんて自ら名乗り出てくれるだなんて。同学年に知られればどうなるか……」

「ひっ」

「秘密にしておいた方がいいんじゃなくて?」

 

 アンソニーは壊れたように頭を上下に振った。

 

「ロルフ、ルーナ。覚えておくといいわ。ホグワーツの秘密はね──みーんな知ってる秘密なの」

「──やーーーーい!アンソニーとミリは親戚ーーー!うわーーーい!知らせてこよーーっと!」

 

「ピっ、ピーブズぅうううう!」

 

 そばにいた噂拡散機ことトリックスターピーブズが久しぶりのいたずらにウッキウキで広げに行った。

 

「アンソニー、眠れるドラゴンをくすぐるべからずだよ」

「眠れるドラゴン専用の目覚まし時計かお前は」

 

 私がドラゴンだなんて最高の慣用句ね。

 マイケルとテリーの優秀さにウインクをすれば、スっと視線を逸らされた。

 

「俺が……コワルスキーと……親戚……?」

 

 そんな絶望されるとそれはそれでショックなんだけど。アンソニーは可愛くないからどうでもいいのだけどね。

 

 

「そうだ、ルーナ、ロルフ、アンソニー。いやまぁアンソニーは正直出来るか分からないけど」

「喧嘩?」

「魔法生物のさ、お世話のバイトを……」

 

 

「──ミリ?ミリ!授業以外では久しぶりですね!」

「(びくっ)」

 

 心臓が口から出てきて戻ってきた。

 

 やばい、目立ちすぎた。

 振り返ればギルデロイが楽しそうに嬉しそうに立っている。

 

 くっ、可愛い。

 

「こっ、こんにちは、ロックハート先生」

「エミリー大丈夫?」

 

 ルーナの愛しすぎる呼び掛けにギルデロイは目を輝かせた。

 

「……エミリー?」

「ミドルネームなの!」

「ちょうど良かった!エミリー、貴女にお願いしたいことがあったんです。ファンレターの宛名を書く作業なんですけどね」

 

 逃げられない気配を察知。

 そして私も断れない〜〜〜〜可愛い子のおねだりなんて聞くに決まってんじゃん〜〜〜〜!

 

 助けての視線をアンソニーに送ると愛しの親戚は舌を出した。後で覚えてろ。

 マイケルは手を振り、テリーは肩を竦めた。三者三様、助けるつもりはないらしい。

 

「る、ルーナ!ピーブズかスネイプ先生に!」

「エミリー。無粋な名前を出さないで貰えますか」

 

 ピーブズ、無粋だってさ。

 よりにもよって普段助けてくれる人達がいない。

 

 抵抗(してない)も虚しく、あっという間にギルデロイに絡みつかれてDADAの教室に向かうことになったのだった。

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