──……なんで僕がミリの身体を乗っ取ってることに気付いていたんだい?
日記に書かれた言葉に私は思わずニヤリと笑った。
──初歩的な事だよホームズ君
──初歩的な事で間違えているけどそこはワトソンだよ。後、そんなセリフ存在しない
──あれ?
翌日。
夜食用に用意していた食事が消えて返信が書かれてあったので日記にお礼を書いた。するとトムからすぐに返事があった。
なんだか既視感のあるやり取りね。
でも何故分かったかって本当に簡単なことなんだけど。身体的な疲労感と、毎晩扉に髪の毛挟んでるから。
扉を開けたら形跡が分かるようにしてるの。ここ最近何度か扉に挟んでいた髪の毛が落ちていたし。
透明になれる猿であるデミガイズのイズが夜な夜な抜け出したのかと思ったけど、スーツケースに開けられた形跡が無かったから。
──そろそろ授業なの
──今日の授業は何?
──魔法薬学!愛しのセブルスの授業なの
──僕も連れてって。気になる
セブルスに興味があるだなんてセンスがいいのね、トム。
「うーん……まぁいいか。クィレルー、お昼何がいいー?」
「お任せで……」
「やだ、今朝の餌やりの疲労まだ取れてないの?草原エリアなら比較的安全だから体力つけてみたら?」
スーツケースの蓋を開けて言えば、クィレルが声のない悲鳴を上げていた。
よし、閉めよう。
談話室におりると、授業の準備を終えたグリフィンドール生何人かと挨拶を交わした。
「ミリ、おはよう。日曜は部屋に篭もりっぱなしだったけど、大丈夫だったの?」
「おはようハーマイオニー。全て問題なしよ。ただちょっと、魔法生物の世話を新米に教えてたの。それにしても朝一のハーマイオニーは健康にいいわね……」
「おはよ〜」
「おはようネビル。ローブがひっくり返っちゃってるわ。戻してもいい?」
「やぁコワルスキー!君この前の休みに骨抜きにされたんだってな?」
「おはようシェーマス。身も心も骨抜きよ」
幸運な事故を起こしちゃったので土曜の治療も日曜のリハビリも最高に楽しかったわ。
「皆おはよう……」
「ハリー、おはよう。なんだか気分が優れないような顔をしているけど大丈夫?」
「……ごめん、ミリ。ちょっと話があるんだけど」
「え、眉を下げたパンジーみたいな顔してるハリーもどえらい可愛いんだけど。額縁にかざりたいなっ、額縁職人呼んで階段に飾らなきゃ」
「うわぁー、悪いと思う気持ち何も浮かばなくなっちゃった」
私に対して悪いと思わなくていいんだよ。
むしろハリーに与えられる全ての感情と事象がフェリックスフェリシス薬。
「実は、えっとその。ここ最近の問題あったじゃん?」
「ハニートーストの蜂蜜を頭から被ったこと……?それとも寝癖が爆発して髪の毛2倍くらいになってたこと?それとも課題をしたのに暖炉にシュートしちゃったこと!?」
「君の2年生のハイライトそれでいいの?そうじゃなくて、駅に入れなかったり、ブラッジャーがめちゃくちゃになったり」
「あぁ……天使とカフェデートと天空デートが出来たり天使の魔法薬飲めたりするボーナストラックね」
「うーん……」
ハリーは可愛く首を傾げていた。つむじも可愛い。そんな姿も愛おしいね。若干私より低い身長のハリーが私の身長と並ぶ瞬間が楽しみでもあり恐ろしいよ。
「とにかく、あれら全部ドビーのせいだったんだ」
「……なるほど。ハリーを学校に行かせたくないって言ってたし、怪我させて戻したりしようとしたってことね」
「理解力早過ぎない?」
ハリーはだから巻き込んでごめんと言いたかったのだと言った。
「今は思ってないけどね。むしろ巻き込まれて嬉しそうなのが」
「流石私のハリー。よく分かってるわ」
ちなみにセブルスに骨抜き&骨生え薬のリテイクを頼んだら20点の減点と共にシレンシオだったわ。最近無駄なやり取りを無くすためか間髪入れずにシレンシオをしてくるし、毎回呪文を好みに受けれるなんて幸せ。
魔法史のつまらない授業中にトムにそう書いたら『頭おかしいよ、本当に』って返事をされてしまった。
12月に入り、クリスマス休暇までおよそ2週間となった。週に一回のコワルスキークッキングの常連の五人。今日はハニーティーと少し早めのクリスマス系のお菓子や軽食でアフターヌーンをしていた。
ドラコとハーマイオニーは優雅に、ハリーとロンは勢いのままに、ネビルは少しずつちまちまドラコ食べている。
そんな最中、マクゴナガル先生にホグワーツに残るか聞かれたのだけど、ドラコがそれを制した。
「ポッター、ウィーズリー、グレンジャー、ロングボトム、コワルスキー」
「なあにドラコ」
「どうしたの?」
ドラコは紅茶を一口飲んで困惑した表情を隠せずに言った。
「父上が、クリスマスにマルフォイ家に来ないかって」
「──よろこんで!!!!!」
マクゴナガル先生も話を聞いてしまったため、ハーマイオニーと私という親マグルの2人を見ながら卒倒した。
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クリスマスの前になり、去年は起こらなかったお知らせが掲示板に貼られていた。
シェーマスとディーンが興奮したように教えてくれたのは『決闘クラブ』の再開だった。
懐かしいなぁ。
よくセブルスとジェームズが合法的に魔法を相手に打ち込めるチャンスだからとやっていたっけ。
もちろん介添人はリリーとシリウスだ。もちろん私も選ばれていたのだけど、実技劣等生は魔法の杖もただの棒っきれ。悲しいわ。
──そういうわけだから今夜は全校生徒が大広間に集まるみたい
──懐かしいね。決闘は得意だったよ
──素晴らしいわね、トム
──そういえば先週のアフタヌーンも最高だったよ。僕はいちごパイが好きかも。本当はもう少し食べたいけれど
時折憑依させてアフタヌーンの残りを味わうトムにそう報告をする。
トムは最近悪さをしない。それどころか食事を強請ってくる。そこまで喜んでくれるのなら嬉しいわ。ぜひコワルスキー家の食事に招待したいくらい。
──あのさ、ミリ。もし良ければなんだけど、血をくれないかな。魔力が少ないから憑依時間が少なくて途中で途切れるんだ
──そうなの?
──もちろん何か企んでるんじゃないかって警戒する気持ちも分かるから、ミリの判断に任せるけど
「えい」
ザクッと解体用のナイフで手のひらを切り裂くと、それを日記に垂らした。
──待って多い多い!君何したの!?
──ナイフ(血文字)
──まさかナイフで思いっきり切ったのか!?馬鹿なのかそれとも阿呆なのか、ミリは思慮深さを少しは持ちなよ!
血が欲しいと言ったからあげたというのに。
あげたらあげたで文句を言うんだから困るわ。
その日の夜8時、大広間の長いテーブルは取り払われ一方の壁にそって金色の舞台が出現していた。何千本の蝋燭が空を漂い、舞台上を照らしている。
「誰が教えるのかしら……?」
ハーマイオニーがワクワクしながら待っていると、舞台上に現れたのはなんとセブルスとギルデロイ!
「は、はわ……そんな……。こんなに幸福なことがあってもいいの!?」
天使と天使のマリアージュ!この世の始まり!なんということでしょう、決闘をするセブルスの姿がもう一度見られるだなんて!
「皆さん集まって。さぁ集まって。私が良く見えますか?私の声が聞こえますか?」
よく見えるしよく聞こえるし一挙一動漏らさず観察してるよギルデロイ。
するとギルデロイは私と目が合ってウインクをした。可愛い。心臓が飛び出ちゃう。
どうやら話を聞けば、ギルデロイの助手としてセブルスが選ばれたようだった。
そのセブルスは過去最大級の不機嫌を表情に表していて、上唇がめくれ上がっている。何その新しい表情。ジェームズにもしたことないのに。
「せっ、スネイプ先生ーーーッ!美しいとこ見せてーーーッ!」
ルーモスを使ってペンライトの様に横に振った。応援してるよセブルス!ぜひ!その美しい手から美しい魔法を思う存分見せて欲しい!むしろ私が浴びたい!
「エミッ」
「ロックハート、早く始めぬか。我輩は忙しいのでな。……それとも、早めに負けるのが怖いのであろうかる」
「ねっちょりミルクチョコレートボイス助かる……!口からまろびでる言葉の全てが耳にへばりついちゃう」
「スネイプ先生頑張って!」
「スネイプ先生〜!こんな変態に負けるな〜!」
「スネイプ先生可哀想……こんなのに好かれて……」
困惑している1年生を尻目に、2年生や上級生が野次を飛ばす。
静粛に、とセブルスが言わなければ私の尊厳と引き換えにセブルスへの応援は終わらなかっただろう。ビッグラブ。
ムッとしたギルデロイが早速決闘を始めようとする。そんな可愛い姿とセブルスの少し機嫌が上昇した顔を見ているだけで幸せ。
さん、に、いち。
そう歩いた彼らは振り返って即座に赤い閃光がはぜた。
「エクスペリアームス!武器よ去れ」
あまりにもそれは美しすぎた。声も、姿も、光も。杖を振るう時の癖が学生の頃から変わってなくて、よく聞き馴染んだトーンなのに1段階低くなった声色。光ははっきりいって目にダメージを与えることが出来るけれど、あまりの眩さに涙が止まらない。
「…………ロン、顔を見せて」
「嫌だよ。どうせ君落ち着く顔、って言うつもりだろ?」
「正解」
大正解過ぎるわ。
私、魔法になりたいわ。セブルスが放つ魔法に。
吹き飛ばされたギルデロイはどうやら武装解除呪文が来るのが分かっていたらしく、生徒たちへ見せるためのデモンストレーションでやられ役を買って出ていたらしい。えっ、そんな精神まで美しいの?
感動していると、ギルデロイと目が合った。
「おいで!決闘のやり方を教えてあげよう!」
「ぐあ!私が手とり足とり教えたい……!」
「ハーマイオニー・グレンジャー、君も来なさい」
私はギルデロイの使命でハーマイオニーと対戦することになった。
よし、ハーマイオニーの魔法全部受け止めちゃうもんね!
「お辞儀をして。杖を構えて。3……2……」
合図と共にハーマイオニーの攻撃が始まった。
学年一の学力を持つハーマイオニーの攻撃は多彩で、2年生でよくそこまで知っている魔法があるものだと感心するほど。
え、本当にマグル生まれ?
貴族と言ってもおかしくない量と質の魔法ですけど。
「レダクト!マフリアート!もう!どうして当たらないのよ!」
ひょいひょい避けているとハーマイオニーの可愛い怒り声と共に魔法が飛んできた。
「ハーマイオニーったら可愛いんだから」
「……はぁ。グレンジャー、中止だ。この馬鹿相手では話にならんぞ」
「スネイプ先生……!私悔しいです、こんなに、こんなに勉強してるのに、身体能力だけで決闘にならないなんて……!」
「(その気持ちは大変よくわかるって顔)」
もう少し弱めの魔法が来たら喜んで当たるのだけど、残念なことにハーマイオニーの魔法強力すぎて避けざるを得なかったわ。
「エミリー、本当に素晴らしいですね!」
ギルデロイが私の肩を抱きとめた。
「そうですね、今ここには多くの生徒達がいます。私たちの関係をきちんと伝えておかねばなりませんね……」
ぞわりと背筋が警鐘を鳴らした。
「コワルス……!」
セブルスの焦ったような顔が目に入った瞬間。私の意識は明らかに途切れた。
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「──ステューピファイ」
ミリ・コワルスキーが突然、ロックハートを向いたままロックハートに向けて魔法を放つ。
「ミリ……?」
ハリーが信じられない行動に首を傾げる。
ミリが自ら可愛いと言っている人物相手に杖を向けるとは思わなかったからだ。
「……うん、流石は血だ。杖も何とか馴染む」
「コワルスキー……?」
「あぁごめんよ、セブルス。少しだけ待っててもらえるかな?」
ミリはつかつかと魔法を向けた相手に対して歩み寄ると、ロックハートの喉元に杖を向けた。
「ひとつ、君に好意を持たれたとて、生徒相手に襲うような下等な人間に微塵も好意を抱くわけが無いということ」
「そしてもうひとつ。ミリに、私に気安く触れるな、ギルデロイ。次にこの体に触れてみろ、その時は僕の知識の最大限邪悪な魔法で相手をしてあげよう。DADAの教師なんだろう?教えておくれよ、出来るものなら」
とっさの攻撃も防げないくせに、とミリはクスクス笑う。
一体、誰だ……?
コワルスキーをよく知る人物は脳裏にそんな言葉がよぎったであろう。
もっとも、彼女をよく知らないロックハートは殺されかねない状況に恐れをなしたが。
「貴様は、コワルスキーを守ろうとしたのか?」
「……あぁ、セブルス。そうだとも。状況判断が早いね。そうかそうか、警戒意識は僕ではなくギルデロイに向かっているということは、なるほどね。なんだ、ここまでミリの貞操が無事だったのはそういうことか」
杖を振り回す誰かの姿を皆は凝視する。
「ナイトがいたのか」
遊ぶように笑った誰かはスネイプを見て言った。
「それにしてもセブルス、君全然可愛くないね!」
あぁ、こいつはミリ・コワルスキーじゃない。
彼女なら死んでもそんな言葉を口にしない。
「むしろ、陰険で嫌われそうな顔をしているよ。また会おう、ミリのナイト」
グイッとスネイプに顔を近付けた誰かがそういうと、コワルスキーは目を閉じた。
そして開いた瞬間、彼女はこう言った。
「え゛っ!!!???目の前にどえらい天使がドアップでいるんだけど私これ死んで魂抜けてる!?」
本物だァ。
本物の変態だった。
パーセルタング出そうと思ったけどオチの問題上出せなかった。全部コワルスキーが悪い