─矛盾─   作:恋音

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2-13.闇を制する魔法族

 

 ドビー曰く。扉を開けた瞬間鼻血を出して倒れ、1時間ほど客間で休んでいたとの事だった。

 

 私が倒れた瞬間、子供たちは大慌てだったのだけど、ルシーが呆れたように私を捕獲したあとここに連れてきてくれたようだ。

 

 私はルシーにボロ雑巾の様に手荒く扱って欲しいのだけど、根っから紳士な彼はその願望を叶えてくれないの。そういう冷たいところも好き。逆にレギュラスやセブルスは優しいから手荒く扱ってくれるのよね。はぁ、愛。

 

「お嬢様、こちらでございます」

「ありがとうドビー。あぁ、安心してね。魔法生物大好きな私にわざと嫌われるような扱いを、マルフォイ家は取らないと思うから」

「はい……?よく分かりませんが、ドビーはミリお嬢様のお手を煩わせたことを謝らなければなりません!」

 

 こんなにはっきり会話ができる魔法生物ってやはり不思議な感じだわ。下僕屋敷妖精とゴーストはもしかして類似なのかそれとも亜人種なのか。うーん、悩んだって答えが出ないので今はひとまず皆と合流しようかな。

 

「旦那様!お嬢様をお連れしました!」

「あぁ、ドビーは下がりなさい」

 

 暖炉のある暖かな食堂にはいると、緊張気味の子供たちとルシー達が話していたようだった。

 美しさの暴力に再び卒倒しそうになったけれど、ここで気絶したらもったいない。グッと耐えた。

 

「Ms.コワルスキーも来たことですし、食事にしましょう」

 

 私が椅子に座ると、ルシーの合図で机の上に今まで見た事もないような豪華な食事の数々が並んだ。

 

 ルシーは優雅に微笑んでいて、シシーは少し固い表情。どちらも美の形容詞だし代名詞だし守護であり述語。えぇ、もはや国の言語。

 

 この世に生まれてくれて嬉しいわ。

 

「シシー、私食事マナーに詳しくないのだけど、大丈夫?」

「えぇ、いいわ」

 

 ドラコから『お前本当に母上を愛称で呼んでるのか』って視線を向けられてしまった。そんな視線で見られるなんて興奮しちゃうわ。

 

「ところでMs.コワルスキー。貴女、言わなきゃいけないことがあるんじゃなくて?」

「ヒェッ!」

 

 睨まれて思わず背筋を伸ばした。

 その視線で私をがんじがらめにして欲しい……!

 

「是非踏んで下さい!」

「コワルスキー!!!」

 

 ドラコから叱られてしまったわ。

 

「……えっと、久しぶり?」

「私は、貴女に対して怒りを覚えていますから。それをゆめゆめ忘れぬように」

「はぁい♡美人に忘れられない感情を植え付けるだなんて、とんでもなく罪深くて幸せなことなの」

 

 流石に喜んでしまった。

 シシーはふい、と顔を背けて私から視線を逸らした。うふふ、ツンデレ可愛いね。美しいのに仕草がいちいち可愛くってたまらない。もっと怒って。

 

「Ms.コワルスキー、他の子達に怯えられていますよ」

「あ、ごめんねハーマイオニー、ハリー。その他」

「扱いが雑じゃ!?……あ、大声ごめんなさい」

「あー、Mr.ウィーズリー。他の子にも言えることだがMs.コワルスキーより失礼なことはしないと思いますので、そこまで過剰に緊張せずとも良いですよ」

「そうよ皆、自覚しているけど私は貴族に対する態度じゃないでしょ?ルシーもシシーも貴方達には優しいから心配しないで」

 

 流石に子供相手に余裕を無くす様な心の狭い人じゃないわ。

 

「さぁ、今は食事を楽しみましょう。ホグワーツで起こったこと等も教えてくれませんか?」

 

 ルシーの合図に楽しい楽しいクリスマスパーティーが始まった。

 七面鳥やカルパッチョの他に名前も分からないなんか高そうで高級そうな料理も沢山並ぶ。なんだかお高い味がするわ。

 

「マルフォ……ドラコのお父様とお母様は魔法界でどのようなお仕事をされているのですか?」

「私は主に財政関係の仕事をしていますよ。ホグワーツの理事や聖マンゴ魔法疾患傷害病院の寄付をしたりして……。そうですね、マグルでいう『政府の税金』を担っているという説明の方が分かりやすいでしょうか」

「なんてこと!じゃあ政治家にも等しいって事ですか?」

 

 ハーマイオニーが恐る恐るながらも好奇心に身を任せ質問をしている。可愛いね。

 

「ドラコのお父さんは、マグルのことに詳しいんですか?」

「Mr.ロングボトム、マルフォイ家は中世から常に純血主義を掲げていますが、マグル嫌いという訳では無いんですよ」

「そうなんですか?」

「むしろ裏でマグルの通貨や資産に手を出してましたし」

「……そういえばマルフォイ家の初代当主のルシウス・マルフォイ一世ってマグルの女王であるエリザベス一世と仲良しって話を本で読んだことあるかも」

「Ms.コワルスキー、本当にそれどこで読んだんですか?割と機密事項ですよ?」

 

 どこて読んだのか覚えてないから多分ポッター家ね(確信)

 というかルシーとシシーの純血主義って『美形を愛しているから自然とそうなった主義』でしょ?多分マルフォイ家は中世どころか初代からその基質だったんじゃないかな。

 

「まぁともかく。マルフォイ家は……あー……家族優先ですので。シシーとドラコの為なら私はなんでもやりますよ」

「貴方……」

「父上……」

 

 はいはいラブラブ。

 もっといちゃついて欲しい。あまりにも尊すぎる。

 

「そういえばMr.ウィーズリー。貴方は叔父に会ったことがありますか?」

「叔父さんですか?幼い頃に1度だけ。あ、でもスリザリンに進んだ叔父には会ったことがありません」

「え、ウィーズリーの親戚にスリザリン生が居たのか!?」

「らしいよ。勘当されちゃったみたいなんだけど」

 

 シシーが無言でいるのをチラチラ気にしているようだけど、シシーのあれは己が壁になって天使を真顔で観察しているだけだから気にしなくていいのよ。言わないけど。

 

 ルシーがこまめに質問に答えたり、逆に質問をするおかげか皆の緊張が解れてきたみたいだった。

 

「あの、僕魔法界のことに全然詳しくないんですけど、こんな豪華なお家のマルフォイさんより凄い家ってあるんですか?」

 

 純血貴族達は顔を互いに見合わせて、ひとつ頷いた。

 

「「「あるよ」」」

 

 ルシーの代わりに子供達が同時に返事をした。

 

「ブラック家だろ」

「……さっきミリが出禁になったとか言ってたやつ?」

「…………そのはず」

「ブラック家は魔法界の王族とも言われていて、純血貴族ならほぼ全てブラックの血が流れていると言っていい。そもそも母上もブラック家だし」

「え、じゃあドラコのお母様ってお姫様って事?」

 

 ハーマイオニーの独自の解釈にシシーが驚いた顔をした後、少し照れるように微笑んだ。

 

「そんな大層なものじゃないわ。私はあくまでもブラックの名前を持っていただけ。本家は伯母が嫁いだ先の方よ」

 

 シシーの伯母様がMrs.ヴァルブルガなのよね!Mr.オリオンと再従兄弟姉妹だと聞いているわ。近すぎもせず遠すぎもせず、やはりブラック家の美形血筋は最高……!

 

「ブラック家か……」

「でもハリー?私たちもそこまで他人事じゃないわよ?」

「え?」

 

 ハリーの首かしげる姿可愛すぎるわね……。

 ヘドウィグの仕草に似てきているのかもしれないわ。え、純白の天使?

 

「覚えてる?夏休みに一緒に写真を何枚か見たじゃない?」

「あ、うん。僕の両親とスネイプ先生が一緒に写ってたやつだよね」

「「「「!!??」」」」

 

 初耳だったのか子供たちは声に出さないものの驚いた顔をしていた。

 

「あの写真にセブ、スネイプ先生とは対極の真っ黒な髪のイケメンいたじゃん」

「あのすっごくかっこいい人!」

「シリウス・ブラックっていうの。ブラック家の本家よ」

「………………え?」

「在学中、貴方の父親と良くつるんで馬鹿騒ぎしてたのが彼ってわけ。つまり、貴方の第2の父みたいなもの」

 

 あいつの性格のことだ、絶対ハリーのこと自分の子供だと錯覚しているに違いないわ。

 

 私の可愛い子に対していい度胸ねシリウス・ブラック……!親権は渡さないんだから!

 

「……つまりミリみたいな人って事?」

「ん゛っ、ふふ、そう、かもしれませんね」

 

 あんなやつと一緒にされたくない〜!

 

「ルシー、先に写真渡しておくわ……。後でシシーと一緒に見てね」

 

 1年間のドラコ達の写真特集だ。特別可愛いものを沢山詰め込みました。

 スリザリンにいる時だったりグリフィンドールに混ざっている時だったり、授業や休憩、睡眠中、いっぱいあるよ。

 

 写真を入れた封筒を渡すと、ルシーとシシーは少し目を輝かせソッとポーカーフェイスを被り直した。

 

 不服とばかりにほっぺたにお肉を詰め込むと、ルシーが話を戻すように口を開く。

 

「ブラック家の話ですよね。現在の当主はそのシリウス様の弟君であるレギュラス・ブラック様が務められています。若い方ですが、前当主様がサポートについてらっしゃるので、ブラック家の権力は未だ変わらずですね」

 

 レギュラスの方が当主に向いてるって昔からずっと思っていた。えぇ、あんなちゃらんぽらんのド派手な環境音男なんかよりね。

 

「あ、Mr.オリオン・ブラックとマルフォイと言えば」

「はい?」

「結局ルシー。トムってどうしたらいいと思う?」

 

 あ、ルシーが固まってしまった。

 皆が首を傾げているが、明らかに何かを知っているルシーの反応を待つ。トムの日記を渡してくれたのはそもそもルシーだし。

 

「……あれはアーティファクトです。Ms.コワルスキーなら上手く使いこなせると思っていましたし、元々の所有者も貴女なら許してくれると確信しています」

「んー、ルシーが言うなら良いんだけど。自我があるじゃない?今のところ助けてくれたみたいだけど、決闘クラブで何が起こったか教えてくれないのよね」

 

 明らかに記憶が飛んでいたからトムが乗っ取って何かをしてたと思うんだけど、トムが何も教えてくれないのよね。もちろんセブルスも。

 危険なことをしていたら刺し違えてでもセブルスなら止めてくれるだろうから問題は何も無いと思うのだけど。

 

「ミリ。決闘クラブの時変だったけど、何したの」

「別の人に体を貸してたのよ」

 

 私は少しだけ悩んだ後、スーツケースから日記を取り出した。

 

「直接本人と話してみてよ」

 

 ガリっと指を噛んで本に押し付けると、日記に──乗っ取れってこと!?ふざけてる!?と書かれ、しばらくしたら私の意識は深く深く沈んでいった。

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

 ルシウス・マルフォイは同志であり友人で大事な後輩でもあるエミリー・コワルスキーが、再び現れた事に対してすぐさま妻に報告した。

 

「ナルシッサ、シシー!」

「どうしたの貴方……」

 

「Ms.コワルスキーが、居たんだ……!エミリーだよ、私たちのよく知る、エミリー・コワルスキーが蘇ったんだ!ドラコの同級生だそうだ!」

 

 泣き出しそうな喜びは、段々ナルシッサ・マルフォイにも伝染して行った。

 

「Ms.コワルスキー、が、ほんとうに……?」

「あぁ……!あぁ!間違いない!」

「信じますよルシウス……。そんな、あぁ……!」

 

 会いたい。

 そんな言葉が口からこぼれ落ちる。

 

 世間体や立場を気にして結婚式などに呼べなかったこと、ずっと色々と後悔が募っていた。

 こんなことなら亡くなる前にもっと話しておけば、一緒に過ごしておけばと。

 

「エミリー……エミリー……!」

 

 嗚咽と共に喜びが口から止まらず。ナルシッサの人生で1番美しい姿を見た。

 

 

 ──まぁ、どこかの誰かに紛れ込ませる予定だった日記を直接コワルスキーに渡したのだが。

 

 うん、多分どこかのか弱い一般生徒が犠牲になるくらいなら歴代最高級の変態が逆に被害を出すくらいが丁度いい。

 

 

 その日記が再びマルフォイ家に持ち込まれた。

 トム・リドルが己の上司であり恐怖の対象であるヴォルデモート卿だと言うのは日記を渡された時から知っていたが。

 

「…………この馬鹿が」

 

 ミリ・コワルスキーの体から明らかに別の人物の表情が顔を出した。

 

「アブラクサス……」

「の、息子です。ルシウスと申します」

「そう、ルシウス。この状況どういうことか分かる?」

 

 ルシウスは頭を下げたまま『マルフォイの館であること』『クリスマスでミリを含め招待したこと』『突然ミリが直接本人と話してよと言ってこのような暴挙を』と。簡潔に説明した。

 

「……君、苦労してるね」

「いえそんな……」

「つまり、僕がどういう人物でどういう状況なのかをこの子達に説明しろ、ってことでぶん投げられたのか。本当に乗っ取って欲しいのかこいつ」

 

 ハリー達は警戒した表情を浮かべている。ミリはそんな周りを観察するような冷たい目で見ないから、自分たちのことを慈しむような目で見るから。

 

「初めまして、ミリの学友達。僕はトム・リドルと言うよ。簡単に言えばミリとは別の人物で、ミリの合意で無理矢理交代させられた哀れな美青年だよ。…ここ、笑うところだからね?」

 

 誰が笑えるか。

 ルシウスは心の中で文句を言った。

 

「あの、その状態でミリに負担は無いんですか?」

「それは……まぁ大丈夫」

「決闘クラブでロックハートをボコったのって君?」

「赤毛の君、いい所に気付いたね。そうだよ、ミリったら、明らかにギルデロイのこと苦手な癖に顔が好みだからって拒絶出来ていないんだ。代わりに恐怖を植え付けた方があちらから拒否してくれて早いだろうと思ってね」

「コワルスキーの本屋での顔はだいぶ酷かったからな……」

 

 トムと名乗った男はスラスラと答えを述べる。

 

「君たちもミリに苦労させられてるんじゃない?僕でさえこんなに振り回されて可哀想な目にあってるのに、生身の君たちが可哀想だよ」

「「「「「そうなんです!」」」」」

 

 子供たちは勢いよく同意した。

 

「まぁ、Ms.コワルスキーですから」

「そうだねシシー」

 

 状況を何となく理解したナルシッサがルシウスの心情や疑問に対して簡潔に答えた。

 

「でも憎めないしご飯美味しいし、胃袋掴まれちゃうから困るんだよ。まぁ僕はこのとおり胃袋はミリのを使ってるんだけど」

「分かります……!美味しすぎるのがいけない!」

「僕ら週1でミリの料理食べてるんだ、おかげで市販のお菓子とか買えなくなっちゃったよ」

「百味ビーンズは楽しいけど、やっぱ美味しいもの食べたいもんね。分かるよ」

 

 トムはするりするりと生徒の輪の中に入っていく。最初あったはずの警戒心も5分経つ頃にはほぼ無くなっていたことが手に取るように分かった。

 

 人心掌握に長けたヴォルデモートの記憶だ、生半可な態度じゃ内側に入れてしまう。

 

 

「もっとも、あの闇の帝王でさえ心の中に入れてしまえたMs.コワルスキーです」

「そうね……」

 

 その闇の帝王より年若い愛情に飢えた経験不足の青年が、ミリのダイレクト愛情を特別な立場で受けてみろ。

 火を見るより明らかだ。

 

「Mr.リドルは」

「トムでいいよ」

「トムはルシウスさんより偉いの?」

「彼の父上と学友なんだ。だからかな」

 

 ルシウスはだから日記を託した。

 あとコワルスキーならワンチャン『ルシーから貰ったものなら保護して無くさないように飾って置かなきゃ!』とかしそうだったから。1番安全だ。

 

「ルシウス」

「はい?」

「ミリの事を守れ。これは命令だよ」

「──お断りします」

 

 ルシウスは即答した。

 

 

「彼女に鳥籠は似合いません」

 

 我々は同志である。

 お互いの大切なものを守り合うのが、同じ立場として正しい。

 

 きっとコワルスキーはルシウスの為にドラコを守るし、同じくルシウスもミリの為にハリー達を守るであろう。

 

「それに知らないのですか?」

「何が……?」

「Ms.コワルスキーは、未来の貴方様も敵では無いのですよ」

「……………………え、ほんとに?」

 

 あぁ、コワルスキーはこの日記の正体に全く微塵も気付いていない。そんな所もまた、魅力の一つなのだ。これだからコワルスキーは憎めないし、愛しいのだ。

 

 もちろん、ナルシッサとドラコの次に。

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