「こ、怖がっだ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
「死んだかと思った〜〜〜〜〜〜〜!」
双子が嗚咽混じりの悲鳴を上げ、私に抱き着く。
青い顔をしたリーが私のローブの裾を力強く握り、左手をセドリックが握った。
なんだ、なん、なんだろうこの、そこはかとなく湧き出てくる不快感。
「可愛くない子にまとわりつかれても嬉しくないわね……」
「冷たい!」
「酷い!」
「なぁ……ミリ……本当にバジリスク……そのトランクの中に……?」
「どうしてバジリスクの前で目を開けるだなんて無謀なことを……!」
可愛くない子に言われても何も響かないのでまとわりついた4人を引き摺るように来た道を戻る。
「ミリ・コワルスキーの大馬鹿者!チャーリーの同類!」
「褒め言葉ね」
「まさか蛇退治じゃなくて捕獲だとは思わないじゃん!」
「やだ、魔法をろくに使えない私に魔法が全然効かない蛇ちゃんを殺させようとしたの?無駄よ、機関銃持ってこなきゃ」
「はは、未だに震えてる……待ってミリ……足動かない……」
「リー、その状態で掴まるなら体重乗せるくらいしっかり掴まって。ほら、おいで。担ぐから」
「そのトランクの秘密にびっくりしたんだけど、まさかバジリスク並の魔法生物って他にも居る、とか?」
「もちろんよ。今度スーツケースに招待しましょうか?……そんなにめいっぱい首を横に振らないでも」
上から下に降りるのは楽でも下から上に登るのは苦労するだろう。さてどうするかな、と考え視線を地面に向けると、3本学校の箒が転がっていた。
んー?
スン、と鼻を鳴らして辺りの匂いを嗅ぐと、先程までセブルスが刻んでいた月見草の匂いが微かに感じ取れた。
「箒で登ろう、双子と僕が飛ぶから、リーとミリは後ろに乗ってくれ」
「助かるわセドリック。私、箒にちっとも乗れないから」
私とリーは双子のどちらか(どっちがどっちかは分からない)の後ろに乗って、上へ登って行った。
流石クィディッチ選手ね。
配管の上に戻るとゴースト達が出迎えた。
「おかえり初代、どうだった?」
「バッチリ」
何故かニヨニヨしているピーブズとマートルに首を傾げる。
「お前の変態センサーに合わせて索敵範囲外から様子を伺う姿を見るのはすっげぇ楽しかった。ピーブズガチいいもん見れた」
「あぁ、やっぱりセブルス居たんだ。可愛い天使の残り香があってね」
「残り香」
「そう、ベリーキュート。香水にしたい」
「……きもぉ」
セブルスが何を思って追いかけて来てくれたのか分からないけれど、心配性の彼の事だからきっと二次災害にならない範囲で追いかけて見守ってくれていたのでしょう。
彼も秘密の部屋の場所は知っているし。
「地上だ……!」
震える足で歓喜の声を上げる4年生4人。生き残った事に安堵しているが、それはそれとして言いふらしたい気持ちも大いにあるのだろう。
だけどもうちょっとだけ待ってね。
「ねえ2代目」
「うん?」
「どうした?」
「まだまだ冒険したいわよね」
「「いえもう結構です!」」
「さぁセドリック、お父様を呼んでちょうだい」
==========
イギリス魔法省魔法生物規制管理部とダンブルドアに両方から怒られつつ、私は報告した。
ちなみにスーツケースの中にいたクィレルは予告もなくバジリスクが入ってきたことに関して、『やばい気配がなんとなく増えたのがわかったので小屋の更に奥で丸く縮こまっていたが?』と謎のドヤ顔で生存報告してくれた。
バジリスクに軽い食事だけあげてのことである。
ちなみに餌あげに付き合わされた双子は悲鳴を上げ現在地面に倒れ伏している。この軟弱者ども。
「……なるほど、そういう流れで」
「以上が発見から現在までの報告です」
エイモス・ディゴリーに伝える。ダンブルドアは頭を抱えていた。
「ダンブルドアのあんな姿は見たくなかったよ」
「僕も」
目撃者でもあったためリーとセドリックが肩を寄せ合いながら語っていた。
一連の流れと言ってもすごくシンプルで、ミセス・ノリスの尊い犠牲からバジリスクと判明したことと、ゴーストと協力して秘密の部屋を発見したこと、マルフォイの館で知り合い(トムのこと)に話を聞き、蛇語が鍵になると知り、決行したという。とってもシンプル。
「ルシウス・マルフォイであれば確かにスリザリンの怪物について知っていてもおかしくは無いか」
「それでバジリスクを飼いたいのだけど、許可を頂けるかしら」
「頂けると思うか?」
「えぇもちろん」
だって危険性で言えばどっこいどっこいの魔法生物を既に飼育しているんだもの。
バジリスクの危険度は特別視するほど大きくない。
「…………マクーザの魔法生物課から国境をまたぐ魔法生物がいるという報告はあった」
「そうよね。外国では杖の使用でさえ申請をしなきゃいけないんだから、もっと危険な魔法生物の申請はしなきゃよね」
「下ろすよ、意地でもね。君以外にバジリスクレベルを御せる魔法族はそう居ない。それこそニュートでさえ怪しいだろう」
「安心して!裏技を使うけど
私に限りグッと難易度が下がるのがトムの存在だろう。彼が私に憑依してバジリスクに話しかけられるのだから。
それに最初はトムがバジリスクに命令していた様だし簡単だろう。
「ミリや、後でその話者に心当たりあるという点について細かく教えてくれぬか」
「いーや!」
「なぜじゃ!」
「だって私が唯一使える魔法道具と言っても過言じゃないもの!箒に嫌われた私の魔法相性の悪さを!唯一解消出来るのに!」
なんだったらハリー曰く私の体でステューピファイ使ったらしいじゃん!?私使えたことないのに。
自分より自分の体で魔法使うの上手いやつがあってたまるか。
「どうせ『ペロッこれは濃厚な闇の魔術の気配。やめるんじゃ、これは壊すべきじゃミリ……(キリッ)』とかするつもりでしょ!?いや闇の魔術使ってるとは思わないんだけど」
「わしは話者について話を聞きたかっただけなんじゃがなぜ魔法道具の話になったんじゃ?」
「
「そうじゃよ」※ヴォルデモートだと思っている
微妙に話が噛み合わないような気がするのだけど、何故?
互いに首を傾げるも、割り込むようにしてエイモスが話を変えた。
「ところでバジリスクの生態についての報告も上げてくれると助かるのだけど」
「もちろんよ。あ、論文とか苦手だから別の方に書いてもらう形になるけどいい?」
「それは構わないよ。分かるよ、文章苦手。両方できるニュートがおかしいんだ」
「エイモス……!なんて話が分かるの……!」
理論立ててやるのも出来るけど、感覚に任せて数打ちゃ当たる戦法で魔法薬作る方が得意だし、魔法生物学者って感覚派よね。
伯父さんが本を作っていることも、改めて考えればすごいわ。
「ミリ、君のトランクには他にどんな魔法生物がいるんだい?」
「ぜひ案内してあげたい所だけど、まだ仕事が沢山あると思うの。それにエイモス、貴方は優秀すぎて未熟な子供じゃないからウチの子の警戒が激しいと思うわ。この前のダンブルドアみたいになる」
「やめておくんじゃエイモス」
間髪入れずダンブルドアが止めた。
新規で入った子は違うけど、エミリー時代からいる子は大型連休の度に同級生達とお泊まり会をしていたし悪戯仕掛け人達が頻繁に手伝ってくれていたから子供慣れしてるのよね。子供に対する警戒心が低いし、新米たちを押さえ込んでくれる。ワンプとかマンティとか特にね。
その分大人に対する警戒心は強いのだけど。
「だが、危険生物の生息地を比較的安全に見ることが出来る。こんな体験を逃しては先祖に顔向け出来ない!」
「いいわエイモス!気に入った!1日開けておいて、今度案内するから。セドリック、貴方も行くでしょ?」
「嫌です」
「行くってエイモス」
「嫌って言ってるだろ!?あのフレッドとジョージが地面にぶっ倒れてるんだぞ!?」
あいつらはほら、軟弱者だから。
「君は本当に、エミリー・コワルスキーにそっくりだね」
「え?」
エイモスはそんなことを言っていた。
「父さん、エミリーって?」
「ミリの親戚だよ。子供じゃないと思うけど、顔がそっくりだから近親だろう?」
「エミリーは……えっと、叔母、です。一応ね」
「(本人じゃろ、て顔)」
「(余計なことを言わないで、って顔)」
エイモスはウンウンと頷いた。
「私も魔法省の端くれだからね、エミリー・コワルスキーの最期はよく知ってるよ。グリフィンドールの生徒で、卒業のほんの数分前。彼女は……名前を言ってはいけないあの人に殺されてしまった」
「「「「…!」」」」
名前を……。あぁ、ヴォルティーグって神様の名前と同じだものね、神様と同じ名前を早々口に出せないよね。
「ミリの叔母が…?」
「私は直接的に話したことがある訳では無いが、一瞬下級生だったし、いつでも目立っていた魔法生物学者の化け物を知らない生徒は居なかっただろう」
「すげー。ミリ・コワルスキーと同じじゃん」
「そうだよ、ミリの噂は去年の俺たちもめちゃくちゃ入ってきたもんな」
「君の叔母さんは、君に似ていつも明るく……そしていつもセブルスにくっ付いてた」
「んぐっ」
「セブルスってあのセブルス・スネイプ?」
「うわぁ…………可哀想に」
「2代揃ってまとわりつかれてるのかスネイプ先生」
失礼極まりない。まるで私がはた迷惑な存在みたいじゃん。セブルスから望まれて私は傍にいたの!今は望まれてるか分からないけど……割と強制的に捻りこんでるけど……。
「さてミリ!君の偉業を公表したいのだけど、こちらで手続きをするからそろそろ名前を出さないかい?」
「んーっと、そうね、魔法生物だけなら」
「まるで魔法生物以外でも功績があるみたいに言うな?」
「魔法薬も少しね。でも協力者というか、むしろ私が協力者であり材料の出資者でもあるから、他の人にも聞かなきゃ……」
「そうか……。じゃあバジリスクだけでも頼むよ」
エミリー時代に避けていた論文をしなければならないというのは少し憂鬱だ。
「ひとまず、生態とバジリスク本人の聞き取りと、健康状態や毒物に関してまとめておくから。飼育許可取りだけお願い。夏休み入るまでにはまとめるから」
「頼んだよ」
エイモスとがっちり手を握りあった。話が合う人で良かったわ。エミリーの時は魔法生物に関して全て伯父さんを通していたから特に必要無かったのだけど、割と私は自ら望んでイギリスに来たし伯父さんにハチャメチャな迷惑はかけられない。
「それはそうと、ダンブルドア。アクロマンチュラもそろそろどうにかしないといけないんじゃない?」
「えっ」
「ハグリッドが巨大コロニーを作ってるじゃない。あれ、バジリスクに協力してもらって追い込み漁しようか?」
「……えっ」
「オススメは数匹ずつバラバラの場所で生息させる事ね、魔法生物規制管理部がいるのだから確認だけでもしてもらったら?バジリスク出す?」
==========
──バァン!
扉を開けて突撃した。両手にピーブズとマートルを護衛として引き連れ、私は目的の人物の前にやってきた。
「ギルデロイ!私の魔法生物について論文を書く手伝いをしてくれない!?」
決闘クラブから避けられて居たのだけど、それだと寂しいということに気付いたのでこちらから絡みにやってきた。
「クィレル……?どうしてここに」
「ロックハート……?ミリ!また私みたいに拾ってきたな!?」
「失敬な、まだ現役教師よ」
「で、これがバジリスクなのだけど、この子の論文を書きたいのよ」
「シャー!」
「ひぃ!?」
「ギルデロイ、授業お疲れ様。論文書いて来たんだけど見てもらってもいい?」
「もちろんだとも!…………。あ、これダメだね」
「1枚も読んでないのに!?」
「主観的な感想が多すぎる。もう少し客観的な結果だけを書くといいよ。やり直し」
「ムキィ……!」
「──出来た!」
ギルデロイの文章能力は素晴らしい。流石本をいくつか出しているだけあって、たとえ論文だろうとレイブンクローの名に恥じぬ聡明さで専門外だろうジャンルも完璧に添削してみせた。
「お疲れ様ミリ」
「うっ、ギルデロイの顔面の可愛さ!あまりにもバジたん級……!」
「目を見たいからって手鏡持ってバジの目を見た時は流石にびっくりしたよ」
ちゃんとサラザールの言った通り瞳の色とか確認したかったんだもの!
ギルデロイはともかく、クィレルは魔法の腕もそれなりにあったからバジたんの運搬や環境整備には気を使ったわ。
セブルスのマンドレイク回復薬、飲めて幸せ。
感覚も覚えたし、擬似的に死ぬ体験ができて幸せ。前世からナンバーワンに輝く死因だったもの。夢みたい。
「エイモスの話だと日刊預言者新聞と月刊魔女の両方に取り上げて論文を発表するみたい。発表は本当にギルデロイに任せていいの?」
「あぁもちろん!ミリの凄さを語ってくるよ」
「頼りにしてるわギルデロイ」
学生という事を鑑みて、論文作成に携わったギルデロイ、そして魔法生物飼育学という点からケトルバーン先生が論文発表に行ってくれるそうだ。
「ミリは新聞には乗ったことないだろう?コツを教えてあげよう」
「是非!」
「撮られる時は私を思い浮かべなさい。あと、アンケートにも是非私の名前をね」
「もちろん。楽勝ね」
バジリスク関連でやることも終わり、後は新聞での公表と夏休みが待っている。
もちろん、バジリスクは生徒達皆の秘密なので、羨望の眼差しで見られる事が多くなった。ギルデロイファンからの妨害はその分少なくなってしまったけどね。シュン。
ギルデロイのファン、皆可愛い子が多いから……。
「ジニーと今夜一緒にご飯を食べる約束をしているの。楽しみだわ」
「急に話が飛んだけど、楽しんで来るんだよ」
「えぇ!」
「そういえばミリは夏休みどうするんだい?」
来年は3年生になる。
3年生になるということは……選択科目とホグズミードに行けるようになるということ!
「私はね────」
プリペット通り四番地──
「お邪魔します!」
「いらっしゃーい」
今年の夏休みはハリーの家に泊まるって約束取り付けてたのよ。