─矛盾─   作:恋音

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3章〜アズカバンの囚人〜
3-1.夏休みのお泊まり会


 

 ハリーはホグワーツに行ってから劇的に生活が変化した。

 ホグワーツでの生活は夢のような日々で、なんでも話せる友人、頼りになる友人、様々な友人ができた。

 

 そして、ちょっとおかしな友人も。

 

 

「お邪魔します!」

「い、いらっしゃい……」

 

「ダーズリーさんにはお泊まりの機会をいただけて本当に感謝しています。こちらはおすすめのお茶とお茶菓子です」

「これは丁寧に、ありがとうございます。昨年もアレを預かってくれて、平穏な一年を過ごせました」

「いえそれはこちらこそ!楽しい夏休みを過ごせましたから」

 

 2年生の途中で珍しくダドリーから手紙が届いた。その内容は『去年ウチに来た女の子のことを教えてくれ』というもの。去年の夏休みはミリの両親がハリーを預かるという話で、かけがえのない時間を過ごせたが毎年毎年お世話になるのもどうだろうかと悩んでいたところでこの手紙だ。

 そしてなんやかんやあって、ミリがダーズリー家に泊まりに来るという意味のわからない状況に陥った。

 

 なんか失礼なことやらかすんじゃないかとヒヤヒヤしていたのだが、ミリはどうやら一般人ですという顔でダーズリー家に馴染んでいた。

 

「チュニー、荷物はどこに置けばいい?」

「たったそれだけなの?魔法使いって不思議ね……。2階に部屋を用意したから。ダットちゃん、案内してあげて」

 

 おじさん、おばさん、その人ホグワーツでもトップレベルに普通じゃない人だよ。

 

「わ、わかった!2人とも来いよ、案内するから」

 

 ハリーの分もこの度2階に部屋を用意してくれたようだ。まぁそれもそうだろう、普通じゃない事を嫌がるこの家が、甥を階段下に入れている状態を他人に見られるなんて耐えられないだろう。

 ダドリーはどうやらミリに一目惚れをしていた様だというのが見て取れる。可哀想に。ハリーは初めて従兄弟に同情した。中身を知ってるから。

 

「それにしても、本当にこの家よくハリーの癇癪に耐えたわね……」

「どういうこと?」

 

 階段を上るミリの背中にハリーが問いかけると、ミリはなんてことない顔をして答えた。

 

「私は生まれながら魔力がとことん低くて魔力の暴走が起こったことは無いのだけど、ハリーくらい魔力が高ければちょっと泣くだけで屋根は吹き飛んでいたわ」

「そうだったの!?」

「えぇ。ここではレパロを使える魔法使いは居ないし、修理だけでさぞ大変だったでしょうね」

 

 この会話が聞こえていたペチュニアは無言で渋顔を作ったあと頷いていた。

 

 

 

 

「ふぅん、じゃあここがハリーの家なんだ」

 

 ミリをトムが乗っ取り、ハリーと会話をする。もう1人の友人だった。

 

 ハリーとトムは週末の仲で、週末に毎回行われるコワルスキークッキングのお茶会に決まって出てきていた。どうやらミリに胃袋を掴まれているようで、曰く『こんな美味しいご飯を食べられなくなるなんて人生の損害だよ。まぁ日記だけどね』だそうだ。

 ドラコは父親の頭の上がらない存在に、ハーマイオニーは秀才に、ロンは気安い感じが気に入っている様で、今のところ大きな問題は出てきていない。唯一ネビルが先輩っぽいところに怯えているけれど、トムの勉強の教え方が分かりやすくてありがたがっていた。

 

 ハリーはこんな不可思議なことに特別な疑問を持たず、まあミリだし、という感想で納得していた。

 

「ミリって一体何を企んでるの?」

「逆に僕がトムに聞きたかったよ」

「一応言っておくけど、僕と会話している時間が1番多いのってミリより君たちだからね?」

「僕も分かんないよ?いつの間にかロックハートと仲良くなっていたし」

「それね、僕も意味わからない。あれだけ僕がミリのフリして威嚇したのに、ミリから寄っていくんだもん。ふざけてるよこの小娘」

 

 トムの怒りも理解ができる。

 ハリーは日に日に顔を青くして元気が無くなる姿の原因がロックハートだと思っていたし、トムの話だとその予想は当たっていた。

 あのスネイプも気を使っていたのか罰則でミリとロックハートを二人きりにさせないように手を回していたし。

 

 周囲の心配などお構い無しに突き進んでいく。

 

「それで、確かミリとギルデロイが協力して論文を書きあげたんだっけ」

「らしいよ。新聞に載ってた」

 

 夏休みにはいる寸前、ミリがサラザールスリザリンの遺物であるバジリスクを保護したという旨を大々的に発表した。もちろんミリからではなく、たまたま一緒に居た双子や魔法省からだったが。

 

「月刊魔女?に載るのはすっごく名誉のあることなんだってね」

「多分バジリスク以外の魔法生物の飼育の事も載ったんじゃないかな。僕はミリと同時に存在出来ないから、危険を考えてトランクの中には入ったこと無いけど」

 

 もちろん寮杯は圧倒的にグリフィンドールの勝利だ。ミリの功績があまりにも大きすぎたのだ。

 

「マーリン勲章も近々貰えるんじゃないかな」

「そうなの?」

「予想だけどね。イギリス魔法省は逃したくないだろう。もちろんアメリカが止めると思うけど……ところでハリー。2人っきりになった時に聞こうと思っていたことがあるんだ」

 

 ハリーは首を傾げる。トムの表情をしたミリは額の傷を見た。

 

「君、ヴォルデモートと何か関わりがある?」

「トム、ヴォルデモートのこと知ってるの?」

「……昔の彼の姿はね。それこそ50年は前だ。だから今の状態は全く知らない」

 

 50年前の日記の記憶、という存在だったな、ということを思い出しハリーは己の身に何が起こったのかを説明した。

 そして1年の頃に起こったことも。

 

「ミリはヴォルちゃんって言ってたっけ。あれ、もしかしてヴォルデモートだったんじゃないかってドラコ達と話してるんだ」

「……十中八九そうだろうね。でもおかしいな、僕……いやヴォルデモートが消滅したのは君たちが1歳の頃だろう?」

「確かに!ミリがヴォルデモートと出会うには子供すぎるよ。消滅してから会ったのかな?」

「……そうだね。きっとそうだ」

 

 むしろそれしか有り得ない。うん、と頷いて1番納得出来る範囲に落ち着いた。

 真実はもちろん違うのだが、それを訂正する人物は居ない。

 

「…………。」

 

 ふと、顎に手を当ててトムが考え込む。

 そしてハリーに問いかけた。

 

「シャー……(ハリーはもしかして、蛇と話せたりするんじゃない?)」

「……っ!」

 

 ハリーの驚きの顔にトムは嫌な予感を確信に変えた。あぁ、ハリーったら僕と同じ状況なんだ、と。

 

 ハリーも己が蛇語を話せると誰にも言ったことはなかった。というか言えばミリにまとわりつかれると分かっていたし、ミリが切望するのであれば珍しい事だろうと分かっていた。

 

「トムも話せるの……?」

「もちろん。黙っておくのは最適解かな。ミリうるさいから」

 

 たしかに。

 頷こうとしたその時、ダーズリー家のベルが鳴った。

 

「ミリに戻すね」

「うん、ありがとう」

「…………うわ、急にハリーの可愛い顔が出てきてびっくりした」

 

 ミリに戻り、どんな会話をしたのか話そうとした時、ペチュニアからハリーのことを呼ぶ声が響いた。

 

 そういえばミリがいるから暴力的なことはされてないなあ。なんてハリーが思いながら玄関に向かうと、そこには全身真っ黒の男が入口に立っていた。

 

「ハリー、セブルスが用事だそうよ」

「スネイプ先生が?」

 

 魔法薬学の教授だ。1年の頃は苦手意識を持っていたが、もう2年もミリに愛を囁かれ続けている被害者。むしろ同族と言ってもいい。

 お互い苦労してるな、という視線を向け合うのは暗黙の了解と言っても過言では無いだろう。

 

「こんにちはスネイプ先生、どうしたんですか?」

「可愛い子の気配……!うわ、セブルス!?可愛いね、焦ってきたの?」

「………………ポッター、なぜコワルスキーがいる?」

「今年の夏はこっちでお泊まりです」

「…………………………苦労するな」

 

 気持ちがこんなにも通じ合ったのは初めてだ。

 

「それで、どうしたんですか?」

「あぁ。まぁコワルスキーも居るのであればちょうどいい。ペチュニア、少しきな臭い話をしてもいいか」

「どうぞご勝手に!」

 

 ハリーは母親とスネイプが幼なじみだということを去年知った。そして母親の姉妹であるペチュニアも恐らくは幼なじみだったのだろう。

 

「単刀直入に言えば、貴様らは外出を控えて貰いたい」

「え、嫌なのだけど……」

「シリウス・ブラックが脱獄した」

「……!」

「えっと、シリウス・ブラックってあー、ブラック家の……顔の凄い人?」

 

 急に告げられた言葉に少しムッとするも、脱獄なんて物騒な言葉に少し勢いが収まる。

 ミリが何かに気付いた様子だったが、ハリーは写真を思い出しながらその人物であっているかスネイプに問う。鼻で笑われた。

 

「知性のしれた解答だな。アズカバンという牢獄から脱獄した凶悪犯、シリウス・ブラックは世間的に言えばポッター、貴様を狙っていると言っても過言では無い」

「えぇ……?」

「貴様の両親と、コワルスキーの叔母は在学中シリウス・ブラックと同級であった。その為、魔法省から狙われるならこの2人であろう、と」

「なんでこの時期に急に脱獄を……?アッ」

「ほう?何か心当たりがあるようだなMs.コワルスキー?」

「……いや、ほら、私、最近バジたんの発表したじゃない?時期は冬だったけど、新聞はつい最近で。その、私とリアムとエミリーってそっくりだから……新聞の私を見て……」

 

 あちゃー、と言いたげにミリとスネイプが額に手を当てて天を仰ぐ。

 

「(そういえば、この二人ってどことなく仕草が似ているよね…………)」

 

 お互い眉間に皺を寄せて考え込んでいた。

 

「それでスネイプ先生、私たちはどうすればいいわけ?」

「まずは家に居れば安全である。だが、いつ何時命を狙われるのか分からない為、早めに魔法界へ避難することを推奨されて居るが」

 

 漏れ鍋や隠れ穴など、ハリーにとっては馴染みのない単語が避難先に上げられる。

 

「…………私のスーツケースの中の方が安全じゃない?」

「言うな」

「あっ。それかスネイプ先生の家に行くって言うのはどう!?いい案じゃない?どうせ狙われるなら狙われる対象まとめておいた方がダンブルドアも文句言わないって」

 

 出たよミリのとんでも提案。

 個人的には何もよろしくないので、ハリーはスネイプと共に断ろうとした。

 

「──バジリスクの抜け殻とアクロマンチュラの毒液が大量にあるのだけど」

「1週間待て。ペチュニア、1週間後迎えに来る」

「なんで貴方達って相談も無く急に色々決定事項を押し付けるのよ!」

 

 おばさんの怒りはご最もだよ。ハリーは1人そんなことを考えた。

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