─矛盾─   作:恋音

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3-2.愛しのお泊まり会

 

 ハリーの家に泊まるなんてボーナスステージを迎えたと思ったらセブルスの家に泊まるなんて更なるボーナスステージが出迎えた。

 

 セブルスが迎えに来てくれるまでの一週間はそりゃ天国みたいな時間だった。

 ハリーと一緒に起きて朝食を作った。普段なら焦げたやつ渡されてたよ、なんてハリーが言うけれど、料理好き1家腕の見せ所。

 私の料理の虜になったチュニーが作り方をねだったのでひとまずバケットの焼き方とマフィンの焼き方を伝授したわ。料理上手なのかみるみる腕を上げていて教えがいがあったの。義妹がこの夏来るらしくって、自称美食家のおデブちゃんだから自信を持って出せると喜んでいた。

 

 バーノンさんは魔法界のことについて少なからず興味がある様で、レース用の箒やグリンゴッツの事を聞いていた。話題のラインナップが確実にマグル目線じゃなくて魔法界目線だったから、誰かに聞いたことがある話題だったんでしょうね。マグルでも分かりやすいように掻い摘んで説明していくうちに、バーノンさんはポッター家の事も興味を抱いたよう。

 そんな、親の七光りでまともに定職につかない小金持ちの事なんか気にしなくていいのよ。闇祓いになれる素質は圧倒的にあるのに当主を引き継ぐからってフラフラ進路から逃げた男のことなんて。

 私がそう言えば、彼はなんだかホッとした顔をしていた。ハリーにはむくれられた。可愛い。

 

 そう言えばハリーの従兄弟のダドリーなのだけど、彼はアレね。一目惚れタイプの人ね。

 ジニーにも勘違いされていた事なのだけど、どうやら私ははたから見たら恋愛的な意味でハリーの事を好きで外壁から攻めようとしている様に見えるらしいの。ダドリーが嫉妬してハリーに当たられ無いように、私がいかにハリーを我が子のように大事にしているかを語ったわ。ほんとうはハニトラでもしようと思っていたのだけど、別に好みじゃない人に対して嘘だったとしても愛を囁くのはポリシーに反するの。

 あと少しは運動した方がいいのよ?折角なのでハリーも含めて一緒にランニングに誘ってみた。秒でバテる男の子達を引っ張りながら運動したのはいい思い出ね。

 

「ミリってびっくりするくらい馴染むの早いよね」

「そう?」

 

 ハリーとダドリーと一緒に庭の草むしりをしながら過ごしているとそんなことを言われた。

 

「そう言ってくれるのはすごく嬉しい。けどほら、アメリカ人ってこんなものじゃない?」

「ごめんもう少し範囲拡げるね、コワルスキー家がおかしい」

 

 それだけアメリカがグレイトって事…?

 

「ダドリー、帽子を被りなさいな。熱中症になるわよ?」

「お、おう。ありがとう」

「ハリーも水分しっかり取ってね、そうでなきゃ水分保有量の限界まで調べるような課題が進みすぎて干からびかけることになるわよ?えら昆布食べさせて湖の中に沈めなきゃいけなくなっちゃうから」

「なるほど、それはキミの故郷の友人の話だね?ちゃんとキミみたいに人間に擬態しないと駄目だって教えてあげて」

「うん、今度伝えておくわ」

 

 ジェームズの話だったんだけどな。

 

「ミリは、その、好きな人とかいるのか?」

「もちろん!」

「もちろ…っ!?」

「ダドリー、この発言はあまり気にしなくていいよ。ミリ聞き方を変えるね、キミ恋愛的に好きな人いるの?」

「…………いないわね」

 

 ほら見ろって言いたげにハリーが肩を竦め、ダドリーが嬉しそうに笑う。

 

「でも好みのタイプはあるわよ。細マッチョで、陰があって、他人思いの人。あ、いやわがまま猫ちゃんも捨てがたい……いえ偉そうなのも……顔が良ければなんでもいいわね」

「多分後半は変態として好きなタイプだね?」

 

 だって、好みのタイプなんてなんぼあってもいいですから!

 

 私達が騒いでいると、高級住宅地のこの場所に犬の鳴き声が響き渡った。視線を向ければ放し飼いのボサボサで痩せ細った真っ黒い犬がいた。

 

「犬だね」

「犬だな」

「ちょっと魔法生物っぽいかも。ミセス・ノリスと似てるわ、どこかで魔法生物が交わっていそう」

「そうなの?」

 

 少し警戒気味のワンチャンにおいでと手招きしたらおっかなびっくり近寄ってきた。

 

「可愛いね、動物と全然触れ合えたことないから新鮮かも。触ってもいいかな?」

「困惑してる……?けど、嫌そうではないから大丈夫だと思うわ。あぁでも洗ってあげましょう。毛皮用のシャンプー持ってくるから」

 

 ここまで痩せこけてボロボロだと野生の犬だろう。ここらの治安で飼い放ししている様な住民は居ないだろうし。

 

 ワンプやイズ達を洗う様の洗浄液をスーツケースから持ってくる。私は魔法がほぼ使えないから、基本的に手作業なの。

 

 クィレルに挨拶だけして庭に戻ると尻尾をブンブンプロペラのように振り回しながらハリーにじゃれついている犬が居た。

 

「こぉら!」

「キャイン!?」

 

 汚い体でハリーを汚すんじゃありません。私はそう説明して洗浄液を体に落とすとワシワシと洗い始めた。

 

「ミリ、手馴れてるな」

「ワン!?」

「ダドリー覚えておいて。魔法界には魔法をろくに使えない劣等生がいるってことを。そしてその劣等生は生物のお世話では全て機械など使えず手作業になるってことを」

 

 とっても悲しい。

 犬を洗っているとお腹からものすごい音が鳴った。あぁそうか。お腹も空いてるよね。

 

「ハリー、私のスーツケースから火の入った鶏胸肉を3枚くらい持ってきてくれない?」

「いいよ、どこら辺にある?生肉の所じゃないよね?」

「保存庫なんだけど……中にいる奴に聞いたら分かるから」

 

 首を傾げたあと良い子のお返事をしたハリー。そしてバタバタと急ぎ足で戻ってきたかわちい天使ちゃんは焦りそのままに悲鳴に近い声を上げた。

 

「クィレル先生居たんだけど!!??」

「拾ったの」

「拾った!!!???」

 

 

 

 ハリーが犬に餌をあげ、洗った後の片付けをしていると可愛い子の気配がしたのでパッパッと終わらせる。

 すると門にたどり着いたのは私の可愛い天使代表セブルス・スネイプだった。パチリと開かれたその黒曜石みたいな瞳が私の目を捉えた。

 

 

「こんにちは!あなたの心の片隅にこびりついた茶渋みたいな私です」

「ポッター、重曹」

「スコージファイしてください」

「よせ喜ぶ」

 

 もちろん喜びます!

 セブルスが私とハリーを捕獲する説明をしようとした所、庭先で転がっている黒い犬を見てぴったりと固まってしまった。バジリスクはいないけど一体どうしたの?

 

 セブルスと犬が見つめ合う。

 ややあってセブルスが私を見ながら口を開いた。

 

「コワルスキー、説明」

「さっき拾ったの」

「…………元あった場所に返してきなさい」

 

 深いため息をついて眉間にシワを寄せると、セブルスは犬をジロジロと観察した。犬は、尻尾を足の隙間に入れて怯えたような風貌だ。

 

「この黒い肉球の生物はダーズリー家の飼い犬と言うわけではなさそうだな」

「ハリー、ミリ、このおじさん誰なんだ?」

「先生」

「天使」

「んんー?」

 

 セブルスとのにらみ合いに愛しさが爆発したのか、信仰を重ねたのかわからないが、犬は敵に遭遇したムーンカーフのごとく逃げ出した。

 セブルスが『保護する必要があるのか』などと独り言でぶつぶつ言っているのを死ぬ気で聞き耳立てながら楽しい夏休みの続きに入った。

 

 

 

 

 

 セブルスの家は、魔法界の端のほうにあり人が訪れるには少し不便だった。学生時代の家はマグルにあることから、卒業後に移住した場所なのだろう。少し息を吸えば肺いっぱいにセブルスのエネルギーが満たされるのを感じる。ここがエデン……?

 

「コワルスキー、バジリスクとアクロマンチュラ」

 

 単刀直入とばかりに話題を出したセブルスのなんとかわいいことか。それだけウキウキと楽しみにしていたのね。スーツケースの中にあるから、改めてハリーと一緒に招待をした。

 

「……なぜクィレルが?」

「拾ったの」

「拾っ……、はぁ」

 

 お、そのため息私もちょうだい。

 セブルスの溜め息コレクションでも作ろうかな?

 

「やぁセブ……スネイプ。地獄へようこそ」

「非常に残念ながら我輩は学生時代に似たようなことを多く経験しており、慣れておる」

 

 セブルスは机の傷や棚の落書きやグラスの数などを見て目を細めた後、杖を振り慣れた手つきで、見えない場所から紅茶を取り出した。

 クィレルがびっくりしたような顔をしているが、何せ、このスーツケースはエミリー時代からの長い付き合い。当然エミリー時代に入ったことがある、むしろ毎日いたセブルスが場所を把握していないわけがない。

 

「…………クィレル、貴様は素材の場所を把握しているのか?」

「あ、ぁ。把握しているよ。素材だけなら危険はないし、ここで世話の補助をしているから」

「ほう、流石はDADAの教師殿だ。補助とは立派であるな」

 

 補助どころか、1週間2週間なら問題なくお世話できるスキルをいたずら仕掛け人は持っている。瞬間冷却薬をかけた紅茶をセブルスはグイッと飲み込んだ。

 

「スネイプ先生、ここに来たことがあるんですか?」

「……このスーツケースはエミリー・コワルスキーの遺品である」

 

 優しく机を撫でたセブルスはまるで天女のように、はたまた大いなる母のように、愛おしげに笑った。

 

「エミリーは」

 

 突然の名前呼びに心臓が爆発しそう。

 

「……馬鹿だった」

「想像つきます」

「そして底抜けに明るく、変態で、寮の垣根も取っ払ってしまう大馬鹿者で。コワルスキーと同じく、魔法生物飼育学に優れた魔女だった。まぁもっとも、杖を振っても、うんともすんとも言わず、箒にも逃げられる女を魔女と言ってもいいのか疑問ではありますがな」

「うーん、想像が容易」

 

 ハリーの相槌にも愛しさを感じる。何よりセブルスに語られるエミリー幸せすぎない?あぁ私だった。世界一幸せ(ガチトーン)

 

「もう知っているだろうが、ポッター。エミリーと貴様の両親は同級生だった」

「はい。シリウス・ブラックも、ですよね?」

「左様。──そしてシリウス・ブラックは、ジェームズ・ポッター大好き人間でもあり、エミリー・コワルスキー大好き人間でもある」

 

 後半はちょっと初耳だなぁ。

 

「貴様らはジェームズとエミリーに非常に似ている。故に魔法省が厳重な保護をと改めた」

「そうだったんですね……」

 

 これ、セブルスに私がエミリーだってバレてる可能性ってないかな?

 いや無いかぁ。私、エミリーよりおしとやかだし優秀だし、魔法生物の飼育範囲パワーアップしてるし、何せ魔法が使えるし。同一人物だとは思われないでしょう。

 

「ポッター、我輩は非常に同情している。同じ学年、しかも同じ誕生日として生まれたという決死のストーカーを相手せねばならぬ事を」

「それは偶然だと思いますけど、うぅん、ミリの事知れば知るほど作為的な何かを感じちゃうなぁ」

「冤罪反対!流石に生まれる日を作為的に変えたりはできないわ!運命よハリー」

「うーん」

 

 どうして悩むの!?

 私が頭を抱えていると、セブルスは鼻血が出るほど可愛いにっこにこの笑顔で私を見つめた。

 え、何、偽物……?いやこの気配は本物のセブルス……。

 

「コワルスキー、貴様は本当に我輩の友に似ている」

「フレンドッ!」

 

 心臓がギュインギュインと悲鳴を上げた。

 

「我輩の……もう二度と会うことが出来ない最愛の相棒に」

 

 足と腰と心臓と脳みそと手が『嬉しいです!』と『ごめんなさい!』って悲鳴を上げていて立っていられ無くなっちゃった。ダメだ、ここで気絶したら時間がもったいない……!

 私が悶えている間にクィレルがセブルスの肩を叩いた。

 

「スネイプ、あのコワルスキーが真横に居たせいで感覚が麻痺してるんじゃないかい?私は下の学年だし、被っている時期が少なかったが、あれは割と最悪じゃないか」

「何も否定はしないが、慣れるとジャズの入ったBGMみたいな物だ」

「あぁ、膝から崩れ落ちてるミリの事って無視でいいんだ……、先生たちエミリーのせいで扱いが手馴れてるんだね」

 

 私、この調子で残りの夏休みを乗り切れるのだろうか。不安になってきたわ。

 




コワルスキーなんも気付いて無いです
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