─矛盾─   作:恋音

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3-4.魔法生物の詐欺師

 

 組み分けの直後、私はすぐさまディメンターに会いに向かった。出入口にいると聞いていたし流石に正門に行くのは目立つしはばかられるから裏門の方に行く。

 

「ディメンターちゃ」

「待った!」

 

 ガシリ。

 抜け道を使って裏門まで来たと言うのに、私に追いついて腕を掴んだ人が居た。

 

「やっぱり、君なら行くと思ったよ」

 

 リーマスだった。

 走ってきたのかな?息切れしてて可愛いね。乱れた息に色気がありすぎて世界平和通り越して傾国。リーマス争奪戦が起こる気がするわ。

 

「ディメンターに会いに行こうと言ったって、教師として止めさせてもらうからね」

「リーマス・ルーピン先生…!く、どうしてここがわかったの……!?」

「正門か裏門だと思っていたからね、正門にはセブルスに向かわせたよ。裏門は私だ」

「ひぇ……顔がいい……」

 

 気軽にメロついちゃう。

 でもディメンター、あの子たちの生態が気になるし仲良くなりたいの。特急での様子を見る限りいけそう。

 

「君の、えーっと、名前だけ聞いてもいいかな」

「……ミリ・エミリー・コワルスキー」

「……っ!そう、素敵な名前だね」

「この名前来世も来来世も大事にする」

 

 素敵な名前だなんて言われちゃった。嬉しい。

 

「ミリ」

「ヒョエ!」

「お願いだ、危険なものに近付かないで欲しい。君が危険にあえば、君の大事なものや大事な人だって危険に晒される。それは望むことじゃないだろう?」

「うっ」

「ホグワーツ特急だってそうだ。君は興奮したようにディメンターとコミュニケーションを取ろうとしていた。ミリに悪影響が無いことはとても良かったよ。でも、君のお友達はどうだった?」

 

 そう言われて思い出す。

 ハリーとネビルは特にディメンターの悪影響を受けて気絶とは言わないものの沈みこんでいた。チョコを食べて回復したようだけど、念の為医務室に行くくらい。

 

「しんどそうだったわ……」

「そう。よくわかっていて偉いねミリ」

「ばぶぅ」

 

 内なるバブが無意識のうちに出てきてしまった。

 大人の色気を兼ね備えたリーマス何、兵器?

 ママみがあってオギャリティだわ!私がマルフォイ家に泊まりに行ってなかったらきっとこの段階で気絶していたに違いない。

 

「君が囚人ではなくホグワーツの生徒である以上、ディメンターに前例を与えてはならない。君の耐性が普通だと思ったディメンターが、他の生徒にも同じ距離感で接したらどう思う?」

「大変、です……」

「そう、大変なことになる。君のお友達は君のように耐えられないだろう。だから校長は止めたんだ。ミリ、もう少し自分の特異体質を理解しなさい」

「はい……」

「うん、いい返事だ」

 

 リーマスはそう言って私の頭を撫でる。落ち込めばいいのか浮かれたらいいのか私の感情が行方不明だよ。戻っておいで、心。

 

「ふふっ、なんだかミリーが戻ってきたみたいだ」

 

 ギクギクッ。

 

 私のギクつく感情には気付かずにリーマスは私の肩を掴んで腰をかがめたまま、視線を斜め下に向けていた。子供と視線を合わせようとするその仕草可愛すぎる。

 

「ミリは、エミリーとはどういう関係なんだい?」

「えっと、叔母よ。父の名前はリアムっていうの」

「リアムさんの……!私は君のお父さんと叔母さんの友人だったんだよ」

 

 リーマスの友人になってるリアム兄さんとエミリーズルくない?

 あっ♡私だった♡

 

 私、リーマスの友人でもありルーピン先生の生徒なの?え?業?

 

「ミリーが君の歳くらいの時はもう平気で徹夜するし無茶するし地獄みたいな薬作るし大変だったんだよ」

 

 脱狼薬のことだね。

 仕方ない、不味いものしか入れてないもの。徹夜は勘弁して欲しいかな。

 

 そういえば動物もどきになるためには工程の問題で1ヶ月くらい喋れなくなるんだけど、あの3人は悪戯で悪名を轟かせていたから悪戯の失敗で喋れなくなったんだろうと言われていたな。

 あとリリーは夏休みを使ってしれっと習得していたのは天才だと思った。

 

 セブルスと私は脱狼薬を、ピーター達は動物もどきを。皆、リーマスのためになりたくて必死に頑張っていた。方向性は違って衝突だってしたけど。

 

「ルーピン先生は、エミリーのこと大事だった?」

「もちろんだよ!」

 

 セブルスに聞いたって答えてくれないであろう質問も、リーマスは躊躇うことなく答えてくれた。

 私もリーマス大事……びっくらぶ……。

 

「彼女が亡くなって、私は……。あ、いや、湿っぽい話は良そうか」

 

 リーマスは空元気で取り繕った。可愛い。

 

「エミリーも貴方のこと絶対に今でも大事で大好きだわ。この命に誓ってもいい」

「保証が大きすぎるね?」

 

 クスクスと笑い始めた。

 そんなキュート。大好き。愛してる。ラブユー。

 

「ミリ、面白いことを教えてあげよう」

「え、なになに?」

 

 最大の秘密を暴露するような顔をして、リーマスは小声で私に教えてくれた。

 

「私の初恋は、君の叔母さんだったんだよ」

「\ドッッッッ/」

「まぁちゃんと恋をする前に現実を叩きつけられて一瞬のうちに卒業したんだけどね。あれだけ美人の女の子が私のことを好きだと言ってきて距離感おかしくさせちゃうんだから、恋しても仕方ないよね」

 

 耳元で心臓がどえらい音を奏でている。

 銅鑼?

 

「しかも面白いことに、私だけじゃなかったんだよ。私が特別仲良くしていた友人はミリの叔母さんかハリーのお母さんに初恋全部奪われちゃってるから」

「ひっ……ぇ」

 

 他って、どっち!!!???

 セブルスとジェームズはリリーが初恋なのは知ってる。

 

 じゃあ残りの仲良くしていた友人って、ピーターかシリウスじゃん!?

 

「まぁもちろん……彼らも初恋は一瞬のうちに消え去ったんだけど。初恋詐欺の最初の被害者だったよ私たちは」

 

 >>彼ら(複数形)<<

 

「…………オモシロイネ」

「だろう?家に帰ったらリアムさんに教えてみてよ。きっと彼なら大爆笑するよ」

「だと思う……」

 

 兄さんなら私がエミリーだということも含めて大爆笑するに決まってるよ。

 

「りっ、ルーピン先生は、その、あの、未練とかって無いの……?」

「友として彼女がいない事には大いにあるよ。ただまあ、初恋としての未練は無いかな。私はミリーにとって特別だったのか分からないけれど、愛されていたのはすごく分かったから」

「そっ、かぁ」

「秘密だよ。さぁ、寮に戻るんだ。今年は1人で出歩くのは止した方がいい……」

 

 寂しそうに笑うリーマスに、喉の奥に骨が突き刺さったような歯がゆい気持ちが心の深いところで溢れ出す。

 

 寂しい想いをさせてごめんなさい。

 

 

 

 

「──尚更言えなくなっちゃたんだけどピーブズ!」

「急に巻き込み事故するのやめてよ初代」

 

 トリックスターのプライドはどこに行ったの。

 

 

 ==========

 

 

 

「ミリの時代が来たね」

 

 ハリーの覚悟を決めたような顔で告げられたので、私はこの時代を作ることを誓った。

 

「マルフォイ、解放するわよ」

「スリザリンを代表してグリフィンドールに宣言しておく。僕らはこの授業に関しては死ぬ覚悟だ」

「……可哀想だね」

「仕方ないじゃない!ドラゴンやバジリスクを飼育出来る変態がいるんだし、魔法生物飼育学が必須科目の人、多いんだから!」

 

 グリフィンドールとスリザリンの合同授業。そう、3年からは選択授業が解禁されて魔法生物飼育学が選択できるようになったのだ。

 

 ちなみに他にも選択科目はあって。エミリー時代はマグル学を取っていたのだけど、今回はハーマイオニーと一緒に数占いを選択したの。ハリーとロンは占い学だけどね。

 

「占い学じゃ散々だったから、ハグリッドの授業がまともだといいんだけど」

 

 ハーマイオニーのため息混じりの言葉に微妙な表情を浮かべた。

 

「占い学と数占い学って同じ時間帯だったけど、ハーマイオニーの受けた占い学ってどんな感じだったの?」

「最低な授業」

 

 うーん。占いに興味なくって全然選ぼうと思ったこと無かったけど、そこまでの酷評なら気になってきた。

 

「ドラコは何を選んだの?」

「あぁ、マグル学だ」

 

 合同授業なのをいいことにドラコに絡みに行くと意外なことにマグル学という選択だった。

 

「僕は純血貴族だから、マグルに疎い。マグルを凌駕する技術と知識を得るには学ぶのが一番さ。相手を知り己の実力を知っていれば、マグルとの棲み分けや今後技術面で凌駕される事も無いだろうし」

「えっっ、愛おしい……」

「ほれお前さんら!はよ来んか!」

 

 ハグリッドの声に皆が慌てて集まる。私は怪物的な怪物の本を広げて中身を確認した。

 

「ミリ、どうやって大人しくさせたの?」

「可愛いねラベンダー。背表紙を撫でるといいわ。指で簡単に撫でるだけでいいの」

 

 びっくりした表情のラベンダーの疑問に答えると、聞き耳を立てていた他の生徒もそっと撫でていた。

 

「うわぁっ!」

 

 撫でる前に開いちゃったネビルの怪物本が口を開いている隙に拳を本の中に入れ込む。

 

「よしよし。……それでラベンダー、怪物的な怪物の本は紙や布や皮膚は噛めるけどそこまで力は無いから石や枝、拳を噛ませると撫でやすくなるわ」

「そう……実践をありがとう……。ネビル大丈夫?」

「うん」

「ドジだなロングボトム」

「引っ張りあげてやるよ」

「ありがとうクラッブ、ゴイル……」

 

 クラッブとゴイルがネビルを起こしたので、大人しくさせた本をネビルに渡した。

 

「きゃあ!」

 

 突然ラベンダーの可愛い悲鳴が上がった。

 怯えたように私の後ろに隠れたラベンダーを皮切りに、全員が私の後ろまで下がった。

 

「ヒッポグリフ!」

「どうだ、美しかろう!」

「えぇとっても」

 

 馬と鳥を混ぜたように思える。美しい羽に力強い嘴。

 首には決まって首輪がしてあり、頑丈な鎖は全てまとめられてハグリッドが持っていた。

 

 何匹もいるけど、どの子も気高く私たちみたいな矮小な人間を見下ろしている。

 

「ヒッポグリフは怒りやすいんだ」

 

 ハグリッドは敬意を忘れるな、と細かく忠告してくる。

 頭を下げ、ヒッポグリフからのアクションを待つのだと。

 

 1番初めの授業でヒッポグリフを持ってくる難易度の高さはもちろんあるけど、初手サンダーバードをしたケトルバーン先生より何倍もマシね。

 

「よーし、誰が一番乗りだ?」

 

 皆が私に視線を向けた。

 可愛い子からの視線、あまりにも嬉しすぎる。

 

 のだけど。

 

「おっ、ミリ、やるか?」

「いいえハグリッド。私はやらないわ。何かあった時にサポートに動くだけにさせてちょうだい」

 

 もちろん私も交流したい。

 こんなに群れになっているヒッポグリフと交流できるのは珍しいもの。

 

 でも、私は前例になってはいけない。

 

 

 前任のケトルバーン先生が私に魔法生物と交流させない理由は、魔法生物に対する危険性を下げて見せる恐れがあるからだ。

 私が簡単に魔法生物のレベル5と触れ合っているから、周りも簡単に見えてしまう。

 

 

── ミリ、もう少し自分の特異体質を理解しなさい

 

 

 リーマスに言われているもの。

 私の傲慢が巻き込んでしまった被害者に。

 

 私はジェイコブ父さんの魔法生物に愛されやすい体質と、クイニー母さんの開心術の才能を受け継いだ。だから魔法生物とのコミュニケーションはニュート伯父さん以上に取れる。

 

 私みたいに簡単に触れ合うことは出来ない。

 悪戯仕掛け人が比較的簡単に触れ合うことが出来るのは、私と常に一緒にいるせいで匂いが混ざったから安心感を抱いたまでのこと。

 

「お願いハグリッド」

「……うーん。わかった。ほれ、じゃあハリー、前に来い」

「み、ミリのばかぁ!」

「ハリーもヒッポグリフとは触れ合ったことあるでしょ。大丈夫大丈夫。行ってらっしゃい」

「ミリの子とは話が違うじゃん!」

 

 今まで見た中で1番人懐っこい魔法生物とは確かに比較にならないかもしれないけど、ハリーなら大丈夫よ。

 

 涙目のハリーも可愛いね。

 

 

 

 

 

 

「──さて、全員交流が終わったからミリも触ってみろ」

「喜んで!」

 

 疲れている子以外と心行くまで触れ合えたので、本当に幸せだった。

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