─矛盾─   作:恋音

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3-8.我よからぬ事をたくらむ者なり

 

 

 ハリー達はピーブズのアドバイスの元、授業が早く終わったのをいいことに『悪戯仕掛け人』について調べに向かった。

 

 ハリー、ロン、ハーマイオニー、そしてドラコにネビル。ハリーが遠慮なく巻き込めるメンツを巻き込んだ。

 

「おや子供たち。授業はどうしたんだ?」

 

 グリフィンドール憑きの幽霊。ほとんど首なしニックがぞろぞろと歩く彼らに声をかけた。

 

「ニック!授業が早く終わったんだ」

「授業が……?彼が、早めに切り上げたって?」

「うん。ルーピン先生はボガートの授業をしてたんだけど、ミリが変になっちゃったのとスネイプ先生が乱入してきたことで有耶無耶に」

「………………ほう。初代が」

 

 ニコラスの面白そうな笑顔に子供たちは不思議そうに彼を見上げる。

 

「サー・ニコラス、随分ご機嫌だけど」

「あぁいや失敬。ただ、リーマス・ルーピンが来てくれて本当に良かったと思っているだけだよ」

「ルーピン先生をよく知ってるの?」

「もちろん、よーく知ってるとも。学生時代は特にね。話題の中心にいるような人物だったから」

 

 ドラコが尋ねる。

 

「サー。ご存知でしたら教えて欲しいのですが、悪戯仕掛け人について知りたいのです」

「悪戯仕掛け人……。なぜ、それを知りたいと?」

「ピーブズに調べてみろ、と言われました。もちろん僕じゃなくてポッターが」

 

 ニコラスが顎に手を当てて少し考え込んだ後、彼は悪戯を仕掛けるように笑顔を再び見せた。

 

「きっと彼の言うことは『初代悪戯仕掛け人』の事だろう」

「フレッドとジョージより前にやってた人がいるってことだね?」

「おったまげ、あんなヘンテコなことやるやつってあの二人以外にもいたんだ」

「悪戯仕掛け人は、うーんそうだな。ハリー・ポッター、君にはとても縁深い者だ。そして君たちも知っている人達だよ」

 

 

 

 

 

 

「あ、ハグリッド!」

「ハリー!お前さん達どうしたんだ」

「ハグリッドって前からこの学校の森番してたんだよね?」

 

 バックビークの世話をしていたハグリッドが顔を覗かせた。そこまで珍しい組み合わせでも無いので、全員の頭を撫で回したあと小屋に招待する。そして硬いケーキをお茶請けとして出した後、彼は質問に答えた。

 

「おう、しちょった。ロンの親父さんがイッチ年生の時には既にな!」

「じゃあ、悪戯仕掛け人について知ってる?あ、フレッドとジョージの事じゃなくて、初代の方」

「お前さんら、どこで話を聞いてきた?スネイプが話すわけねぇしな……」

「なんでスネイプ先生の名前が出てくるんだ?」

「……忘れとくれ」

 

 やばい、という顔をしたハグリッドにこれは何か知っている、と勘づく。

 ネビルは除くが、彼らは1年の時にニコラス・フラメルの賢者の石を探る際ハグリッドを大いに利用したことがある。グイグイと距離を詰めた。

 

「ねぇハグリッド、こうは考えられないかしら?」

「ハーマイオニー、何を言われても俺は答えないぞ!殺されたくないからな……」

「ハグリッドは教えてない。ただ、昔のことを懐かしんで独り言を言うだけ。私たちは先に帰るわ」

 

 ハーマイオニーはそう告げるだけ告げて、子供達に『行きましょう』と手を引っ張った。

 じゃあね、という挨拶をしたあと小屋の外に出ればぬかるんだ地面の上を歩いて小屋の窓へこっそり向かった。

 

 ハグリッドは悩んだ。悪戯仕掛け人のことをどこまで言うべきか。

 ハグリッドはジェームズ達と仲が良いため、余すことなく知っている。そう、スネイプも悪戯仕掛け人だったということを。

 

 でも、言えばろくな目に遭わない。そんなのこれまでの7年と教員生活で分かりきっている。

 

「……悪戯仕掛け人はジェームズが発足したんだったな、リーマスも監督生ながら一緒にやっとったが、ストッパーにはなれなんだな」

 

 許せリーマス、絶対に子供たちは『ジェームズ』だけの名前では納得せんのだ!

 ハグリッドは百味ビーンズのゲロ味を食べたような顔をして、呟いた。

 

「……ポッターのお父さんとルーピン先生?」

「ってことはさ、きっとスネイプ先生も知ってるよね。同級生なんでしょ?」

「ハリー、あなたのお父さんもグリフィンドール生よね。マクゴナガル先生に聞きに行きましょう。寮監だもの」

「それから双子にもね。あいつらがなんで悪戯仕掛け人を名乗ったのか、すっげー気になる」

 

 

 

 

「マクゴナガル先生!」

「あら、どうしましたMs.グレンジャー。何か不具合でも?」

「いえ、それは大丈夫です。勉学とはあまり関係ないのですが、聞きたいことがありまして」

 

 授業終わりのマクゴナガルを捕まえたハーマイオニーに、子供たちは小走りで追いつく。

 マクゴナガルはグリフィンドール生徒の中にスリザリン生が混ざっているのを見て胸が暖かい気持ちになっていた。

 

「悪戯仕掛け人とスネイプ先生の関係生について聞きたいんです」

 

 暖かい気持ちがどっか吹っ飛んでしまった。こんなに肝が冷える思いをするとは。

 

「…………そうですね。悪戯仕掛け人、と言う話はもちろんよく聞きました。私はあくまでも教師でしたので詳しい話は出来ませんよ?」

「それでも構いません!」

「悪戯仕掛け人は……。私は4人知っています。ジェームズ・ポッター、リーマス・ルーピン、ピーター・ぺティグリュー、そしてシリウス・ブラック」

 

 名前に覚えがあるためハリー以外の子供たちの顔が真っ青になる。

 

「そんな……!あのシリウス・ブラックが!?」

「スネイプ先生に聞きました。シリウス・ブラックはジェームズ・ポッターとエミリー・コワルスキー大好き人間だから、僕とミリは十分注意するようにと」

「ハリー、なんでそんな大事なこと先に言わないの!?」

「ミリが知ってるからいいかなって……。ミリ、僕のことを僕より大事にしてくれるから」

 

 一人能天気に危機感がないハリーの後ろで、ロンとネビルとドラコが肩を竦めた。

 今年は絶対一人にさせないでおこう。そうしよう。目と目で語り合った。

 

「それになんだか、スネイプ先生の目が」

「先生が?」

「こう……不機嫌そうに見えるんだけど、呆れというか、『どうでもいいや』って投げやりに思ってるようなきがして。そこまで危なく無いのかなって」

「ハリー、あなた能天気過ぎるわ」

 

 マクゴナガルはなんとも言えない顔をして、咳払いをした。

 

「悪戯仕掛け人とセブルスの関係性は同級生であり切磋琢磨するライバルでもありました」

「写真で見たことあります!」

「そして彼は、悪戯仕掛け人の最大の被害者でもあります。彼がスリザリン生を代表して、もはやいじめとも取れるような悪戯をその身で受けていました」

「えっ……」

 

 もしかしたら仲良かったのかな。そう考えていた子供たちは突然の暴露に固まってしまった。特にハリーは自分の親のことだ。

 

「口からスコージファイの泡が止まらなくなった時は本当に焦りました……。ポッタ……ジェームズが真っ青になって担ぎあげて来ましたけど」

「それ、残りの3人はどうしてたんですか?」

「ブラックは大爆笑、ぺティグリューはオロオロと焦っており、リーマスはそんなジェームズとブラックを叱っていましたよ」

 

 一応セブルスの名誉の為に、細かいエピソードは語らないでおこう。深夜の出歩きなど、彼らの被害者でありながら共犯者だったことは。

 

「……懐かしいですね。もう、あの頃は戻ってこないと考えると」

「マクゴナガル先生…………」

「エミリー・コワルスキーのことは知っていますか?」

「はい。一応すがたも。スネイプ先生のボガートが、亡くなった時の彼女だったんじゃないかと思っています」

「……そうでしょうね。セブルスとエミリーは大変仲が……うーん。まぁ、仲が良く」

 

 渋ったな。

 ミリのことをよく知る彼等には渋る理由が何となく分かった。絡まれるのを諦めた節だろう。

 

「決まってハロウィンになると、悪戯仕掛け人の4人と、あの二人で対決していたんですよ。毎年の恒例行事でした。リーマスも3年時にはとんでもない巻き込まれを見せていましたが」

「そうだったんですね。そうですか、ハロウィンに……」

「奇しくも命日となってしまいましたが、彼らにとってハロウィンは特別な日でした。あぁ、ポッターの母のMs.エバンズはエミリーと同じ部屋だったんですよ」

「それで部屋でくつろいでる写真がいっぱいあったんだ……!」

 

 マクゴナガルは悲しげに目を伏せた。

 

「セブルスもリーマスも、彼らにその話題は酷です。あまり吹聴しないようにお願いしますね」

「「「「「分かりました」」」」」

 

 

 

 

 

 ぽつりぽつりと会話が続けられる。

 

「スネイプ先生もルーピン先生も、仲の良かった友達をほとんど無くしていたのね」

「スネイプ先生がポッターの父上達と仲良かったのかはさておき、だけど」

「あ、双子」

 

 グリフィンドールの談話室へと向かう子供達に、目的の人物が現れた。

 ドラコとしても流石にグリフィンドール寮に入る訳には行かなかった為、ホッと息をこぼす。

 

「やぁロニー坊や」

「お友達を連れてどうしたんだい?」

「悪戯仕掛け人について聞きたいんだ!」

 

 ロンがスバっと切り込むと、2人は顔を見合わせた。

 

「「それって俺達のこと?」」

「違うよ、君たちの前の方」

「ポッターの両親の世代にも悪戯仕掛け人が存在したんだ。ウィーズリーの双子とは在学時期が被らないし、どこでその名前を知って、どうして使うようになったんだ?」

「……なぁ兄弟、どう思う?」

「……そうだな、あれを貸すと厄介だ」

「でもきっと」

「そっちの方が面白い」

 

「「だよな!」」

 

 双子は虎の巻を取り出した。

 

「アーガス・フィルチの没収品置き場に面白いものがあったんだ」

「俺たちはこれを利用して悪戯をしてる。その敬意を込めて、悪戯仕掛け人って名乗っているのさ!」

「教えてやろう」

「合言葉は」

 

 

 我ここに誓う 我よからぬ事をたくらむ者なり

 

 

 

 ==========

 

 

 

 ミリ・コワルスキーことエミリー・コワルスキー。すこし落ち着いてよく考えてみよう。

 

 うん!

 

 何が起こったのか本当に分からなくなってきた!

 

 

「えぇっと……?」

 

 

 リーマスの闇の魔術に対する防衛術の授業を受け、ボガートの生態と怖がる子供たちの可愛い姿を観察していれば、私の番になって狼人間に変貌したまでは分かった。

 

 そしたらセブルスが突然現れて、ハリーに向かっていったボガートの標的をずらして。

 気付けばセブルスに抱えられて廊下を突き進んでいる。

 

「げぇっ、セブルス何やってんの?」

「ピーブズ。この馬鹿2人の回収だ」

「いや、見りゃわかるけど。授業は?」

「我輩の分もリーマスの分も切り上げさせた」

 

 廊下をたまたま浮遊していたピーブズがセブルスと会話をしている。

 

 えっと、本当にこれ、どういう?

 

「どこ行くの?」

「必要の部屋」

「ああー、あそこね。じゃあ今のすきにガキどもと遊んでこよーっと」

 

 ぽけっとしている間に、セブルスはリーマスと私を抱えたまま必要の部屋まで向かった。うろうろと何回か歩けば、見慣れた扉が現れた。

 

「うぐっ」

「ぐえっ」

 

 ドタン、と地面に落とされ。バタン、と扉が閉められた。

 

「──さて、貴様らはその足りない脳みそで考えてもらおう。何、ほんの少しで良い。さすればこのような愉快な状況はもう少し分かりやすくなるであろう……」

「セブルス……?あれ?なんで?なんでミリのボガートが狼人間で、僕じゃ、でも顔の傷は。どうして……?」

「あぁリーマス、我が友よ。哀れな貴様にヒントを差し上げよう。──あのボガートは、貴様だった」

「違う!」

 

 セブルスの意地悪な言葉に思わず否定してしまった。

 

「違う、私が怖かったのは狼人間じゃない!愛しくて、可愛くて、大事で。私が怖かったのは、私が怖かったのは……!」

 

 違う、違うの。

 

 私がリーマスのことを怖がるなんてとんでもない。

 

 私が怖かったのは……リーマスが1人になってしまうことだ。大事な友達が、居なくなってしまうことだ。

 

「怖かった、怖かったよ。私の不甲斐なさのせいで、リーマスもセブルスも傷付いて、そのせいで……、だから。狼人間が怖いなんて違う、違う……!」

 

 リーマスが意図せずセブルスを傷付けて。それを覚えていて。優しい彼はどれだけ罪悪感を抱くだろうか。

 セブルスがその怪我で死んでしまったらどうなるだろう。

 しかもそれを仕組んだのは、傷つける意図がなくても友人達だ。

 

 友情が崩壊してもおかしくない出来事。

 私は最悪の未来が訪れるのが怖かった。

 

 狼人間はただのきっかけで出来事の具現化。

 そしてそれを浮かべてしまって、リーマスが傷付くなんて。そんな恐ろしいことったら無い。

 

「私は……っ、別に嫌われたっていいしむしろご褒美だけど。でも、私のせいで友達が、離れ離れになるだなんて」

 

 怖いよ。

 リーマスを加害者にしないで。セブルスを被害者にしないで。善悪に分かたれて離れ離れになることが一番怖い。彼らの友情が、無くなってしまうことが怖い。

 

 

 

「ミリー?」

 

 リーマスがそう呟いた。

 

 私はリーマスとゆっくり目を合わす。

 

「本当に、ミリー……?ぼくらの、エミリー?」

「リーマス…………」

「そんな、嘘だ。ありえない。こんな奇跡みたいな事……──は!!」

 

 リーマスは何かに気付いて顔を真っ青にした。

 

「──セブルス!君ってやつは!?なんでもっと早く、ちが、もう少し早く気付いていれば!う、うわあああ!!!」

 

 狼なのに脱兎の如く逃げ出してしまった。

 

 え、えぇ。今、感動の再会だったじゃん?

 何で急に逃げ出した?

 

「さて、コワルスキー」

「ぅはい!」

「言うことは」

「…………えっと、セブルス、その。いつから?」

 

 口ぶりから、私がエミリーだととっくに気付いていたみたい。

 

 セブルスは悪戯を企むような顔をしていた。

 

「ミリ・コワルスキー、初めての罰則はどうだったかね?」

「ドラゴンと夜間の出歩きが見つかって禁じられた森でクィレルに飛び蹴りしたやつ?すごく新鮮な体験だったけど」

「──違う」

 

 え?

 

 私が首を傾げると、セブルスは言った。

 

 

「僕との初めての罰則は、1年時の一番最初の授業の後だ。覚えておいでかね?」

「…………っ!?」

「僕は貴様を許さない。死んでも許さないと決めている。せいぜい、頑張って思い出すことだな」

 

 

 

「──悪戯完了」

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