─矛盾─   作:恋音

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3-12.秘密の話

 

「──セブルス!ハリー・ポッターとミリ・コワルスキーが駅から締め出されたようです!」

 

 1992年。9月の最初から僕は教師生活で1、2を争う事件を押し付けられた。

 

 

 

 朝から今夜の新学期や新入生の組み分け準備をしていた教員達に激震が走る。ちょうどお昼頃、イギリス魔法省からフクロウが飛んできて、マグル避けなどの魔法が解かれており、生徒も取り残されているため緊急回収をそっちで行ってくれ、との旨だ。迎えが必要、と言葉が出た時点で他の教師からの視線は僕に集中する。まぁ元よりトラブルメーカー二人なので勝手知ったる自分が迎えに行く方がいいだろう。

 

「では私が行きましょう!」

「……どのように?」

 

 今年の闇の魔術に対する防衛術の教師が意気揚々と名乗りを上げたが、それを制する。コワルスキー係は僕だ。手段もすぐに提示出来ないのであれば僕が行く他ない。

 

 箒を二本持ち、一つに僕が乗る。

 コワルスキーは相変わらず箒と相性が悪いので相乗りかヒッポグリフで飛んでもらおう。

 ……僕が箒に乗っていた時のコワルスキーの顔は見事なまでのアホ面だったな。愉快だ。

 

 ある程度まで箒で飛び、ロンドンに姿くらましで飛ぶとキングス・クロス駅まで辿り着く。

 そして駅中では無く、周辺のカフェにまっさきに向かった。

 

『へー、めっちゃいい所じゃん』

『でしょ?オーナーさんが親切だから、迎え待つ時間に丁度いいかなって』

『キャラメルラテがある!僕これがいいな』

『マグル側で待機なんて何を企んでるのかと思ったが、たまにはいいな』

 

 たまに、どころか何度も足を運ぶ事になったカフェだ。

 コワルスキーがエミリーならば、ここにいるだろうと踏んだのだが、予想通りすぎて呆れが出てくる。

 

「いらっしゃいませ」

「……迎えだ。子供が二人いるだろう」

「あぁ、あの子たちですね。いい子で待っていましたよ」

 

 ひとまず、僕以外が迎えに行く可能性も考えて居場所もちゃんと伝達しろと叱ろう。

 

 

 

 

「それに巻き込まれ体質はミリも大概ですよ!教科書を買いに行った時だって、ロックハートに絡まれたのはどっちかと言うとミリの方だったし」

 

 事情説明をすれば今年避けては通れない人物とのトラブルにあっていることに気付いた。見るからにコワルスキー好みの教師だったな、と考えて同情を寄せる。

 

「ロックハート……今年の闇の魔術に対する防衛術の教師だな。何をしたコワルスキー」

「何もしてないわ」

「先生、今回ばかりはミリが本当です。なんか、エミリーの元恋人だったとかでミリの事ロックハートの子供だと思っているみたいで」

 

「………………??」

 

 驚きすぎて言葉すら出てこなかった。

 

「先生?」

「恋人……?あれに…………???」

 

 これに?

 そのエミリー本人をガン見して学生時代を思い返してみても、そんな記憶一切ない。なんなら僕が一番長く居た。

 

 なるほど、新手のストーカーか?

 だが、ロックハートが学生時代に居ればコワルスキーは間違いなく絡んでいた筈。

 

「少なくともミリの年齢とエミリーの享年が違うので絶対有り得ないって話してたんですけど」

「そうであろうな。絶対、有り得ん。あの傍若無人な傍迷惑浮気性の変態が唯一を作るわけが無い」

「わぁ、なんだかミリみたい」

 

 その通りだが。

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

 恐らくロックハートが苦手なのだろうな。

 コワルスキーは他者からグイグイ来られると困惑する。そのせいもあるだろう。

 

 だが、どこか違和感がある。

 この変態がこんなにも人を避けようとするか?

 

 顔だけはコワルスキーの好みだ、間違いない。

 

 ただ……。

 

「なんだか、顔色がおかしいな」

 

 今学期を思い出せば思い出すほど元気が無い。

 

「先生」

 

 ルーナ・ラブグッド。今年入学したコワルスキー好みのレイブンクロー生だ。彼女は僕のローブを引っ張った。

 

「Ms.ラブグッド、その手を離したまえ。レイブンクロー1点減点」

「あのね、エミリーがスネイプ先生にって」

「…………何?」

 

 『エミリー』?

 

 何を考えているのか分からない顔でラブグッドが訴えた。

 

「よくわからないンだけどね、ロックハート先生に連れて行かれちゃったから、エミリーがスネイプ先生かピーブズにって。何を伝えればいいのかな?」

「いや結構。それだけでよろしい」

 

 分かりやすいSOSが出せたのか。

 なるほど、本当に余程嫌らしい。

 

「ラブグッド、少し待っていなさい」

「ピーブズを呼んできてもいい?ピーブズも呼ばなきゃいけないもン」

 

 勝手にしろ、と吐き捨てて教室へ向かうとロックハートを口説きにかかろうとするコワルスキーの戯言が聞こえたので苛立つ気持ちを拳に込めて扉を叩いた。

 

 ピーブズのせいにして無事回収した能天気の馬鹿の視線が非常にうるさかったが、薬学教室に戻ればラブグッドはピーブズを回収したようだった。

 

「エミリー大丈夫?顔が青いよ?」

「だい、じょうぶよ」

 

 真っ青と言っても違いない。さぞかし、僕の前でエミリーと言われ焦っているに違いないのだろう。いい気味だ。そのまま無駄に隠そうと努力してくれ。茶がすすむ。

 

 ラブグッドを返し、ピーブズとコワルスキーを残せば苛立ちを隠さずに問いただした。

 

「その、馬鹿みたいに、真っ青な顔に、心当たりはないのか?」

「え。私、そんなに顔青い?」

「うん。すげーよ?言うなればニックと同じくらい」

「えぇ〜〜?うーん。最近、なんだか寝ても寝てないような気がして。寝不足なの」

 

 ロックハート以外に何か懸念事項があるのか。

 それでもロックハートに困っているのには違いないだろう。そう考えていたとこでピーブズから聞き捨てならない言葉を告げられる。

 

 

「って言うか、セブルス。ロックハートに関してはお前も他人事じゃ無いだろー?」

「なんだと?」

「なんだっけ。学生時代あったじゃん、お前のこと恋のライバルだと勘違いしたあいつが、お前のこと敵視してたやつ」

 

 あったな、みたいな顔をしているコワルスキーが視界に入る。

 なんだ、それは。

 コワルスキーはもちろんだが、ピーブズでさえも覚えている割とおおごとな事件が学生時代にあった?

 

「結局シリウスがエミリーを助けたから無事だったけど、ピーブズとしても今のミリを一人にさせらんないよ。ミリはエミリーそっくりだし、今は『子供』みたいに見てるけど、絶対襲ってくるぜあいつ」

 

 そんな記憶、一切ない。

 

 心当たりのない記憶が他者には存在していて、自分には存在しないのであれば。恐らくオブリビエイトを掛けられている可能性が高い。

 

 それに気付いて血の気が引いた。ピーブズが居てくれて本当に良かった。

 

 そしてコワルスキーの様子から彼女は出来事を覚えている。その為苦手意識があるのだろうという想像は容易に出来る。

 

「Mr.ロックハート……?」

 

 無意識に口に出したコワルスキーの言葉に目を見開く。確か、教師にロックハートと言われるやつが居たな。

 油断出来ない為、コワルスキーをしばらく罰則と称して教室に避難させることにすると、コワルスキーは案の定喜んだ。まぁ、そうだろうな。

 

「罰則に喜ぶなど、随分変わり者のようだ」

「変わり者で結構!私は天使の為になる事なら喜んで罰則でもなんでもやるわ!むしろご褒美」

「……初めてでもあるまいに」

 

 僕にオブリビエイトをかけられているのであれば、コワルスキーにもかけられていた筈。彼女だけは覚えている不思議な状況に、もしかしたら僕のオブリビエイトは効いてないんじゃ無いかと探りにかかった。

 

「罰則?確かに初めてでは無いけど…──スネイプ先生からの罰則は初めてよ!」

 

 嘘偽りない申告に、なぜだか優越感が止まらなかった。

 本当に馬鹿だなぁ。

 

 

 

 

 

 人避けをし、コワルスキーが寮に戻るタイミングと鉢合わせ内容に僕の部屋に来る小さな生き物。

 

「少し聞きたいことがある」

 

 僕のつぶやきにネズミが人の形を取った。

 

「お前は……ロックハートについて何を覚えている?もう、お前くらいにしか聞ける相手が居ないんだ。──ワームテール」

「ロックハートって今年の教師でしょ?」

「あぁ」

 

 だが、と加えてピーブズから聞いた話を告げた。驚いたような顔をしていたので初耳だったのだろう。

 やはり覚えてないか。

 そうだ、ロックハートは在学期間が僕らと被っているのにも関わらず、記憶が一切無いのだ。

 

「シリウスが居ればいいんだけど……」

「貴様が代わりにアズカバンに入るのであれば可能だが?」

「それは無理な話だね……僕ならすぐ死ぬ」

 

 コワルスキーと関わりがあった生徒はほぼ漏れなく僕とも交流がある。大小はあれど。それだけの時間を共にすごした。

 だと言うのに記憶が無いのがおかしい。

 

「先ず、学生時代にロックハート先生ってのがいたのは覚えている」

「僕もだ」

「もし仮にオブリビエイトを掛けられてその事件の記憶を失っているのであれば、きっと年下のギルデロイ・ロックハートより教師のロックハート先生の仕業だと思う」

「だろうな。話を聞く限りギルデロイ・ロックハートの魔法の技術は、お粗末なものだ。アレが学生時代に、高難易度のオブリビエイトを使えるとは思えん。あるとしたら……記憶丸ごと無くなるくらいの力技であろう」

 

 僕の認識もピーターの認識も間違っていないようだった。

 

「ワームテール。手間をかけてすまないが、ロックハートの部屋に潜伏できるか?」

「あぁ、いいね。ミリーが薬学教室に長時間滞在するなら僕は同じ空間に居ない方がいいし」

「自ら寄っていかない場所があるのは分かりやすくて助かるな」

「だね」

 

 

 

 

 

 後ほど、ハロウィンのバジリスク対処で教師陣が騒がしい内にピーターが情報を持ち帰ってくれた。その報告を聞いたのはクィディッチの試合でハリー・ポッターが骨折し、コワルスキーが骨抜きにされた事件があってからだ。

 

「ヤバいやつだよ」

「知ってる」

「他者から功績を掠めとって記憶を消して自分の手柄にしてるっぽい」

「ヤバいやつじゃないか」

「だから言ったんだよ」

 

 本当にヤバかった。

 

「最悪なこと言っていい?」

「断る」

「セブルスへの恨みを込めたメッセージが見つかったよ」

「……ルシウスが呪い避けに詳しかったか」

「呪う能力は無いとは思うけど、聞いた方がいいかもね。クリスマス辺りにアポ取ってみたら?」

「そうする」

 

 僕は現時点でコワルスキーに一番好かれている教師だ。ロックハート先生(・・)が敵対心を抱くなら確かに僕だ。くっそ厄介。

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

 決闘クラブ。

 学生時代、合法的にポッターを叩きのめすいい機会だったから遠慮なく利用した挙句、最終的に『互いにやりすぎです!』と決闘クラブ停止になった苦い思い出のある行事だ。

 

 開催者はロックハートで、恐らく私怨で僕が助手として選ばれた。

 不愉快極まりない。

 

 だが、ロックハートには目もくれず僕に愛を囁くコワルスキーと、そんな僕に同情する生徒の声援に優越感が心を支配した。

 

 すまないなロックハート。僕のことしか見えない馬鹿な相棒に変わって謝るよ。心の中で。

 

「──エクスペリアームス」

 

 武器よ去れ。

 心から強力な魔法を放つとロックハートは無様に飛び散った。

 これまでの恨みつらみを込めたつもりだが、どうやら込めすぎた様だ。

 

 タフなのか言い訳をしながら生徒たちの決闘に移る。寄りにもよって学年一の秀才たるグレンジャーと、回避力の高いコワルスキーを指名するとは。

 グレンジャーではなくドラコやポッターであればコワルスキーはわざと当たって負けたであろうが、当たれない威力で放たれる魔法を常に回避するコワルスキーのせいで決着がつかない。

 

 本当に見極めるのが上手い。どこで判断しているんだか分からないが、コワルスキーの観察眼と瞬発力は魔法生物飼育学のプロとして必須事項でもあるのだろう。

 

「グレンジャー、中止だ」

 

 僕もそれをやられた事があるので、悔しくて仕方ないであろうグレンジャーのフォローをするとロックハートが動いた。

 

 

「そうですね、今ここには多くの生徒達がいます。私たちの関係をきちんと伝えておかねばなりませんね……」

 

 まずい予感がする。

 コワルスキーを引き離そうと手を伸ばそうとすれば、コワルスキーは目の色が変わった。

 

「──ステューピファイ」

 

 物理的に目の色が変わった訳では無い。

 ただ、彼女の夏みたいなキラキラ輝く瞳は一瞬で冬の様に冷たく濁った。

 

「コワルスキー……?」

「あぁごめんよ、セブルス。少しだけ待っててもらえるかな?」

 

 名前を呼べばおかしな点が二つ。

 

 ミリ・コワルスキーは僕のファーストネームを呼ばない。心の中では呼んでいるだろうが、それを知っている人物が今コワルスキーの中にいることが分かる。

 そして、僕を待たせるなんて真似はしない。何が起きても最優先の筈だ。

 

 ロックハートに向かって悪態を吐く。

 殺されるのではないかと怯えるロックハートの姿を見て、あえてそう見られるように振舞っているのが分かった。

 

 コワルスキーは好みの人間に強く出れないし断れない。だからロックハートを避けられないのだ。

 故に、他者が引き剥がすか鉢合わせしないようにするか、ロックハート側から避けさせる様にする必要がある。

 

「貴様は、コワルスキーを守ろうとしたのか?」

「……あぁ、セブルス。そうだとも。状況判断が早いね」

 

 肯定が返ってきて尚更、この誰かはコワルスキーを守りたい欲求から出てきたのがわかる。

 

「なーんだ、ミリにもナイトがいたのか」

 

 少し残念そうな顔をして、寂しそうな顔をして小さく呟いた。

 そしてからかう様な笑みを浮かべた誰かは『君可愛くないね』とコワルスキーが言わなそうな言葉を言い放った。

 

「え゛っ!!!???目の前にどえらい天使がドアップでいるんだけど私これ死んで魂抜けてる!?」

「大馬鹿者!」

 

 縁起でもないこと言うな。本当に冗談にならんだろ、お前の死ネタは。

 

「コワルスキー、先程までの行動を述べよ」

「ハーマイオニーと決闘してました!」

「……なるほど?」

 

 記憶は無いらしい。

 コワルスキーに聞いてもあまりいい情報は無いだろうな。

 

 

 

 ==========

 

 

 

「──セブルス!グレンジャーとコワルスキーがマルフォイの館に招かれた様ですが!」

「ミネルバ、なんでも我輩に持ってくれば解決するとでも!?」

 

 あとそこまで心配しなくてもいい。相手が変態仲間だから。

 

 急いでルシウスに連絡を取り、アポを取れた。年が明けて久しぶりに会いに向かえば子供達はナルシッサが見守っている様子でルシウスだけが僕の元に現れた。

 

「やぁセブルス!数年前に見た姿より随分顔色と艶がいいね。健康を無理矢理気にしてくれるお友達でもいるのかな?」

「…………ルシウス」

 

 晴れやかすぎるあからさまな笑顔にとても気持ちが淀む。

 

「冗談だよ。さ、聞きたいことは何かな?」

「グレンジャーとコワルスキーを招待したと聞いたが、真意は?」

「息子の友人だからね。他意は無いよ」

 

 ニッコニコだ。不気味な程に機嫌がいい。

 

「ところで、ロックハートと言ったかな」

「……!」

「随分な噂がある様だね。被害者はこちらで保護しているよ。なんせ……あのMs.コワルスキーが嫌がる人物だし、決闘クラブでは随分だったようじゃないかい?」

 

 休暇中に聞いた話でもうそこまで動いていたのか。流石はマルフォイ家だと息を飲んだ。

 

「……。決闘クラブでは、どうやらコワルスキーに別の人物が乗り移る自体が起こりました。その心当たりとなる魔法について何かご存知ないかと」

「あるよ」

 

 即答された言葉に思わず目を見開く。相変わらず心情が読めない表情だ。

 

「Ms.コワルスキーは我が君が乗り移ってるよ」

「…………は?」

「正確に言うと、我が君の若い頃、なんだけど」

 

 ちょっと衝撃が強すぎて言葉にならない。

 

「我が君の学生時代の記憶を埋め込んだ日記があるのだけど、持ち主の魔力を使って持ち主を乗っ取るんだよ。そういう魔法道具」

「……危険、とは思ってない様ですな?」

「まぁ。Ms.コワルスキーに甘い我が君の、若かりし頃ですから。日記の方もきちんと取り込まれてますよ、彼女の魅力に」

「はぁ」

「元は乗っ取るつもりだった様ですが、胃袋を掴まれたと。彼女の料理の腕は彼に合わせているようなものですからね」

 

 違和感に気付く。

 ルシウスの言い方はまるで、エミリーとミリが同一人物だと言っている様なものでは無いか。

 

「ルシウス、まさかとは思いますが」

「遅いよセブルス。君なら私の様子を一目で気付くべきだ」

 

 貴族のポーカーフェイスを見破れと?

 

「ま、今のところ危険は無さそうですよ。まぁ優秀な番犬が付いているとでも思ってください」

「あの方を番犬など言うのはお前くらいだ」

「良かったですねセブルス」

 

「……あぁ、とんでもなく」

 

 

 

 

 

 

 クリスマス休暇が開けて、コワルスキーに何をやらかしたのか聞いても心から『自覚なしね!』と言っているのが分かって、相変わらず馬鹿で鈍感で己の身への興味が薄すぎることにため息を吐いた。

 

 罰則中、適当な手口で正確な作業が出来るコワルスキーの感覚派の所に嫌味を言えば、なんて事ない雑談のようにコワルスキーとマンドレイクの会話になった。

 

「そういえば、実技が終わっている私とフィルチって似てるのよね」

「どこからフィルチの名前が生えてきたのか分からないが、ミセス・ノリスのマンドレイク回復薬がそろそろ出来上がるであろう」

「え、ほんと?」

 

 マンドレイクが春頃に収穫できるのはエミリー時代の学習内容だ。

 だが、お前が死んでから生まれた栽培方法が教科書に薬草学に書かれている事は知らないらしい。詰めが甘い。

 

「ほう、どうやらコワルスキーはマンドレイクの収穫時期を把握している様だが、近年開発された『保温魔法を利用した促進栽培方法』をご存知ない模様」

「えっ、何それ何それ!」

 

 無理矢理成長させる為の方法はあったが、栄養が足りず失敗に終わっていた。

 そんな失敗をカバーする為、強力な栄養剤入りの土壌が開発された。

 

 特製のコンポスターに入れなければならないが。

 

「今度論文を読んでみるわ!」

 

 是非読んでみるといい。

 僕の魔法薬学と、ピーターの魔法道具の合作だ。

 

 僕らが開発しただなんて思ってないマヌケ顔に思わず笑みが浮かんだ。悪戯を仕掛ける懐かしい気持ちだ。

 でも、コワルスキーも何か悪戯を企んでいるような顔をしていた。嫌な予感がする。

 

「そろそろバジリスクたんをどうにかしようと思って。秘密の部屋にカチコミ行ってくるわ。石にされたらよろしくね」

「は!?」

 

 セドリック・ディゴリーの登場でコワルスキーに逃げられてしまったが、ディゴリーの質問に答えていく。

 

「ところでスネイプ先生」

「何かね」

「最近なんだか、あ、もちろんいい意味なのですけど。肩の力が抜けましたね?」

「……?」

「僕らより上の学年は時々話しているんですけど。眉間のしわが無くなってきたといいますか。なんだか急に酸素を得たような。息をようやく出来ているような」

 

 ディゴリーはそこまで言うと『失礼なことを言っていますね!すみません!』と慌てたように謝った。

 

「そうだな……。無くしものを見つけたんだ」

「大事なものだったんですね」

「あぁ、とても。半身とも言うべきものをずっと無くしていた。最近、ようやく見つけた」

 

 

 

 

 

 

 

「げぇ、セブルス……」

 

 マートルのトイレに急いで向かえば、どうやったのか分からないが開いていた。

 まぁ、バジリスクを動かしたであろう人物がコワルスキーの中にいる以上過剰な心配はしていないが。

 

「ピーブズ、何人入った?」

「五人だよ。……なんでお見通しなわけ?」

「なら箒は三つでいいか……」

 

 自分もまたがって、出入口に箒を三本落としておく。帰り道のことなど何も考えていなかったのだろう。いや、むしろコワルスキーの実力と発想を信じるのであれば『バジリスクに乗って地上まで出よう!』などと言いかねない。

 残りの四人の学生にそれはちょっと酷だろう。

 

 ドラゴン通学するやつならやらかすぞ。誓ってもいい。

 

「ねー、セブルス。行くんなら行けば?」

「いや……。コワルスキーに見つかって巻き込まれるのは避けたい」

「ピーブズ知ってるぜ?お前らの魔法生物飼育学、学者になってもおかしくない位だって事」

「そもそも我輩だけはバジリスクに石化させられるわけにはいかないだろう。回復薬を作らねばならんのだから」

「正論。ピーブズ正論大っ嫌い」

 

 こそこそしてる僕が面白かったのか一通り爆笑した後、ピーブズはフラフラとどこかへ消えていった。

 

 ピーブズ(とどうせマートル)はコワルスキーの正体に気付いているだろうな、と当たりをつける。マートルは僕の方を優先するが、ピーブズは間違いなくコワルスキー側につくので下手に気付いていることを言えない。

 

 そして、張り詰めた気配が消えたのと、ウィーズリーの双子の安心したように泣きわめく声が聞こえてきたのを確認し去った。

 

 

 

 コワルスキー。

 君は知らないだろうけど、僕は少しだけ、君に一番最初に巻き込まれないのが不満なんだ。ほんの少しだけね。

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