「Ms.コワルスキー。校長がお呼びです」
「……ミリ、何したの?」
「いい?すぐに謝るのよ?それから感情じゃなくて事実だけを言うの」
「今までありがとう、君との学校生活、なんだかんだ言って楽しかったよ。アメリカでも元気でな!」
「行ってらっしゃい、気を付けてね」
「お前は何度教師に呼び出されば気が済む?」
ハリーとハーマイオニーとドラコは愛した。ロンだけは許さない。
マクゴナガル先生が呼んでくれたので可愛い子ちゃん達に別れを告げて抵抗もなくついて行った。
「……Ms.コワルスキー」
「なんですか?」
「貴女は、その、最近随分あの教師ふたりと仲が良い様ですけど……」
「そう、仲良しなんです!ふふふ、仲良しってとっても素敵な響き。いくら先生だからってあの愛しの天使はあげませんからね!」
「いえそれは別に要りませんけど」
「!!??!!??」
要らないの!?
血で血を洗う苛烈な争いになると思っていたのに!いらないの!?
「信じられない……!」
「子供たちならともかく、33歳の大きな大人は別に誰も欲しがらないと思いますよ?」
「うっそ、33歳って響きすら愛おしいのに!?」
そんなに大きくなったの?大好きすぎる。誕生日には毎年お祝いしてるとは言えど、改めて年齢聞いても愛しさが爆発する。
愛とは、爆発……!
「コンフリンゴってことよね」
「何を言っているのか分かりませんが、違うということだけは分かりますよ」
マクゴナガル先生のピシャリとした発言に唸ってしまった。うぅ。
「Ms.コワルスキー、貴女は本当にエミリーに似ています」
「でしょうね」
「そしてエミリーとセブルスとリーマスはとても仲良しでした。知っているかもしれませんが」
「もちろん!」
マクゴナガル先生は少し言い淀んで立ち止まると、私と視線を合わせた。
「私が懸念しているのは、ミリ、貴女がエミリーの代わりにされていないかということです」
「……はい?」
「貴女はエミリーではなく、1人のミリという唯一無二の存在です。セブルスもリーマスも、彼等は友を失った傷は未だに癒えていない。Mr.ポッターとは違って、貴女は恐ろしい程に似ているから」
視線を少しウロウロと迷わせて、ぐっと私を見てくれた。
「貴女は尊重されるべき1人の人間です。代わりになどなってはならない。もし、2人が貴女に『エミリー』としての役割や立ち振る舞いを求めるのなら。私は貴女を守るために、貴女の大事な人に杖を向けます。よろしいですね?」
マクゴナガル先生はぶれない瞳で私にそう宣言した。
それは決意を固めた言葉で、私を大事に思ってくれていて、公平で、個人として扱ってくれている。
「か、」
「か?」
「かっっっっ……こいい……!え、常々マクゴナガル先生はかっこいいの部類だと思っていましたが、めちゃくちゃかっこいいですね?かっこいいに胸がときめくなんて思ってもみなかった!」
かっこいい、って。かっこいいんだ!
え、かっこいいのジャンルの新しい光が見えた気がする。
「マクゴナガル先生……かっこいいですね……?」
「ありがとうございます。褒められていますよね?」
エミリー時代の先生は独身だったけど、いまの先生は結婚されてるし、言っちゃ悪いけど結構なお年。それでも結婚するほど、人に魅力的に写る意味が分かった気がする。やばい。人として誰も勝てないよこの人。
「あのね、マクゴナガル先生。私たちって結構な問題児だと思うの」
「否定はしません」
「そんな私たちに、先生は呆れたり軽蔑したりせずにまっすぐ叱ってくれるでしょう?でも一人一人を尊重して、隠したいことは隠してくれて、見て欲しくないところは見ないふりをして、でも真っ直ぐ、性別も年齢も出身も血筋もぜーんぶひっくるめて見てくれる」
私は先生の手を取った。
「だから私たちは、みーんなマクゴナガル先生のこと大好きなの。先生で、もう1人の母親で、友人で、尊敬する魔女なの」
「照れますね……」
「リーマスのこともそう。あれだけセブルスが大怪我して、私が庇ったのもバレてるはずなのに、全員の嘘をあえて飲み込んで。悩んだだろうに、何も悟らせないで私たちの好きなようにさせてくれた」
「……まちなさいコワルスキー、なんの事を」
「実技ができないから雑務で卒業させようとしてくれたの、覚えてる。覚えてるわ、マクゴナガル先生」
瞳の混乱の色が見えた。
目は雄弁とは言うけれど、ここまで人に伝える気持ちを隠さない人もいないだろう。私は言語が違う生き物と共に過ごしているからより一層伝わってくる。
私、先生が寮監でよかった。本当に心から思う。
「……エミリー、コワルスキー?」
「なぁに、マクゴナガル先生」
私が笑顔で返事をすれば、マクゴナガル先生の瞳から涙が溢れ出て止まらなくなってしまった。
「やだ、そんなに泣かないで先生」
「コワルスキー……貴女、本当に……」
「すごい、セブルスもリーマスもこんなに泣いてくれなかった」
「そこじゃないでしょう!」
叱ってくれる先生は、そういいながら泣き崩れた。
「あなたも守りたかった。ごめんなさい、一人であの男を相手にさせてしまって」
私を抱きしめたマクゴナガル先生は、1分くらい時間が経ってようやく手を離してくれた。
「ごめんなさい、校長先生に呼ばれていたのに時間が経ってしまいましたね」
「大丈夫、校長可愛くないから」
「人の判断基準を見た目にするのはおよしなさい」
「無理ね。14年どころか前世からこの価値観で生きてるもの。煮込み続けて最高潮」
誇り高き変態とは私の事よ。
マクゴナガル先生はうっすらと笑って私を校長室へ向かうように促した。
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「よく来たの」
「あれ、ニュート伯父さん?どうしたの、こんな場所に」
校長室に向かえば親戚でもあるニュート伯父さんが立っていた。しわくちゃになった姿でも立ち振る舞いが美しすぎてどうして私はニュート伯父さんと同じ時代に生まれなかったのか心から悔しくて仕方ないわ。
「ミリ、お主無視をするでない」
「こんにちは校長。──それでニュート伯父さん、今日もとっても素敵な姿で眼福だわ。早めに来たクリスマスプレゼントかな?」
「相変わらずだね。君に会いに来たよ」
「世界中の愛の結晶?」
愛おしさで爆殺してくるんだけど。えーーーすきーーー!愛おしー!
「今日来たのは君のマーリン勲章の件で来たんだ」
「伯父さんが?」
「そう。授賞式があるんだ。と言っても大臣から受け取るだけなんだけど、ある程度の貴族も来るからドレスとかも用意しなきゃね」
「え、このあとすぐ?」
「んー。それが。シリウスがいるだろう?魔法省全体がドタバタしてるし君は狙われているから、危険だという声があってね。だから今、この場で、マーリン勲章だけ渡して授賞式は別の時期に行うみたいだよ」
なるほど。
「シリウスのやつ、迷惑しかかけないね」
「そうだねぇ」
「仕方ない。セブルスとリーマスに愚痴っておこ。あ、そうだ伯父さん。手に入りにくい餌があって、きゅうりを仕入れて欲しいのだけど、お願い出来る?魔法界に少なくって」
「いいよ。カッパでも手に入ったのかい?」
「うん、そうなの」
シリウスの話題なんてどうでもいいので一旦端に置いて、私は伯父さんとキャッキャと魔法生物トークに移った。
「ミリ、わしを忘れるでないよ」
「あぁ、ダンブルドア。いたわね」
「本当に眼中に無いのう。マーリン勲章を学生ながら手に入れたその才能と努力にグリフィンドール300点」
「ヤッター。嬉しいー」
「えっ、そんなに貰えるんだ!?私も学生時代に取っておけば良かったです」
つまり、セブルスから減点300点分は引き出せる貯金ができたってことね。やったぁ。
「ミリ、マクゴナガル先生に泣かれるくらい愚かな真似をして校長先生に保護者を呼ばれたって話本当?」
「誤解です」
300点持ち帰ったグリフィンドール生に出迎えたのは、『とうとうこいつやったか』みたいな談話室の雰囲気だった。誤解。本当に誤解。