ハロウィンも終わり、リーマスの人狼体調不良も終わった。
リーマスの月イチの体調不良では代理でセブルスが人狼の授業をしてくれた。ちゅ、可愛くて愛した。リーマスだと授業しにくいから、少し早めて人狼の授業をしたようだった。優しいね。好き。
『コワルスキー』
『うぇ!?はい!』
『魔法生物学者のお前に問う。人狼に出会った時の対処は?』
『まず、仲間を呼ばれないように口を封じさせます。また高度の魔法使いであれば動物もどきで動物に。ただ、何も道具がなければ対処のしようが無いので、高い木の上に登る、もしくは大きい人狼の体躯では入れない小さな場所に入って静かにするのが現実的……かな?あとはまぁ、出会った時と言うか出会わない根本的な解決策は『満月の夜に出歩かない』って事?』
『では。コワルスキーに問う』
『はい?』
『人狼が人間体の時、貴様の好みであったらお前はどうする?』
『愚問ね!!!!毎日愛を囁くし魔法生物とかわい子ちゃんの組み合わせなんてもう毎日エブリディハッピーだしできるなら満月でも私が閉じ込めて面倒を甲斐甲斐しく……私が閉じ込めて……?あぁ、その手があった』
『恐ろしいことを思いつくな。グリフィンドール2点』
私の回答のせいかおかげか、子供たちは非常に複雑な顔をしていたし。おそらく今後セブルスが行う人狼の授業では脚色がついた上で『コワルスキーが変態的に興奮していたため、あやつに目をつけられている人物は人狼の感染に特に気を付けるように』と言われている事だろう。愛おしいね。
きっと学生時代ジェームズが行った人狼に同情を寄せさせてリーマスにヘイトが向かないようにする方法を真似たんだろう。友達想いのいい子すぎる。神聖。
「やぁ、Ms.コワルスキー」
11月の初旬。
今日は警報レベルの大雨と横風が響く日だった。
朝は冷え気味な体を温める為スーツケースの中でクィレルと一緒にランニングして魔法生物達のお世話をする。クィレルに『娯楽が欲しい』と言われたので今度魔法生物の本を送るようにしようと思う。クィレル専用の建物とかも欲しいよね、きっと。
朝食はスリザリンで摂っていた。今日はクィディッチの試合が悪天候の中行われるみたいで、教師たちはバタバタと準備をしているためモソモソ食べていたのだけど。そんな私に声をかけた人物がいた。
「おはようセドリック・リア充爆ぜろ・ディゴリー」
「何か複雑な言葉聞こえてきたな」
可愛いチョウ・チャンにモテているイケメン何か爆ぜてしまえばいいんだ。イケメンはやはりダメだね。
「石化騒ぎの時以来ね」
「あんなスリリングな体験は初めてだったよ。まぁ今回はマダム・ポンフリーが無事で良かったかな」
「今回?」
「僕が1年の時にも石化騒ぎがあってね。ところで、父から聞いたよ。マーリン勲章の勲二等のメダルを貰ったんだってね?」
「うん!別にマーリン勲章自体に興味は無いんだけど、伯父さんと同じマーリン勲章だし愛しの伯父さんから直接貰えたから幸せ!」
「の割に、噂広がってないよね?グリフィンドールの得点も大幅に上がってるのに」
「そうなの」
ハリーとハーマイオニー以外皆全然信じてくれないし、私も別に自慢することじゃないから知ってる人少ないのよね。
歴代最年少、とかって言い分。あの、ほら、前世含めたら全然最年少じゃない可能性の方が高いから……。ちょっと嘘ついてる気がして嫌なのよね。
「そういえばこの前」
「急に話が飛んだね」
「紅茶が飲みたくなって、でもティーセット出すの面倒じゃない?」
「……うん?」
「コップの中にミルクと茶葉を入れて談話室の焚き火でマグカップごと温めたのよね」
「待って」
「ウィンガーディアムレビオーサって凄いのね。茶葉だけ浮かせられるんだもの。おかげでアチアチのミルクティーを飲むことが出来たわ。魔女でよかった」
「さては今喧嘩売られてる?イギリスに対する宣戦布告?」
もちろん天使たちに提供するならそれなりに丁寧な作り方はするけど、私だけ飲むならいいやって思って。時短。コップは熱すぎたけどね。
「炎系の魔法生物に比べたら温いもんだし」
「そこじゃないね」
「で、その話をしたらドラコがぶっ倒れちゃって」
「Mr.マルフォイみたいな繊細な子にそんな話をしたらそりゃそうなるよ!」
本当に申し訳なかったわ。私の内なる獣がドラコの精神を蝕むとは思ってもみなかったの。
「──で、今日行う予定だったスリザリンとグリフィンドールのクィディッチは、急遽変更になってスリザリンからハッフルパフに移動したってわけ」
「君が原因か!!!」
本日のクィディッチはハッフルパフ対グリフィンドール。ハリーもセドリックも同じくシーカーだ。
「私はハリー命だから応援はしないけど、怪我はしないでね?私はセドリックのこといけ好かない爽やか腹黒イケメン君だと思ってるけど、そんないけ好かないセドリックが怪我でもしたら愛しのチョウ・チャンが泣いちゃうんだもの」
「…………肝に命じておくよ、心配ありがとう」
「個人的には構わないんだけどね」
と言うかこんな大嵐の中じゃ中止してもいいくらい。きっと傘は役に立たないわ。
サンドイッチを頬張るとセドリックが困ったように見下ろしていた。
もぐもぐ。もぐもぐ。ごくん。
「……?セドリック、いつまでいるの?」
「コワルスキーのお世話係はどこだ!?」
「あのセドリックを怒らせる才能ってある意味すごいよな」
「たしかに、彼の怒った姿見た事ないもの」
「怒ったディゴリーとか、今日はディメンターでも降るかもな」
「クィディッチってことはハリー・ポッターも居ないし、今日は誰がお世話係なの?」
ガヤガヤと可愛くもなければ美しくもない人達が陰口を叩いている。やれやれ、人気者って困るわね。
「ミリ」
「なぁに♡リーマス♡」
「選手の邪魔をしないの。こっちおいで」
「はぁーーーい♡♡♡♡♡♡」
準備が終わってひと段落着いたのか、リーマスが現れた。飛びついちゃう。
セブルスの姿は見えないけれど、ほかの先生たちも朝食の場にぼちぼちと現れた。
おいでって言い方メロすぎるわ。メロケモーノじゃない。魔法生物で可愛い天使で愛しの友人って、最強生物といっても過言では無いわよ?
「……スリザリン一色の応援しないだけまだマシだけど、選手に迷惑かけないようにね」
「今のスリザリン、ドラコ以外美しさの欠片も無いもの……。不作」
「こら!」
「っっ!!!し、心臓がドコドコドラムを掻き鳴らしているわ!愛してる!!」
「知ってる」
リーマスに膝まづいて愛を捧げていると、そこを通りかかったマクゴナガル先生は呆れたように私を見下ろした。
「……リーマス、貴方も大変ですね」
「まぁ、えぇ」
「コワルスキー。貴女は律する立場に本来はいなければならないのですよ?」
「非常に厳しい…………。生まれ変わっても性癖は変わらないの」
「確かにそうですね」
マクゴナガル先生の反応にリーマスがキョロキョロと私とマクゴナガル先生を見比べた。
驚いた顔も可愛いね。愛おしすぎて空だって飛べちゃいそうだわ。
「……ところでミリー。君ってクィディッチ苦手だったよね。見に行くの?」
「…………苦手よ、とっても。でもハリーの活躍は逃さずみたいもの。リリーと私の子よ?」
「ジェームズと、リリーの子だね」
そんな馬鹿な。
それじゃ、汗ばんだリリーにキスされて『あなたの子よ』って言われて、この腕にハリーを抱いた記憶は……?
「そこまで来ると病気だよ」
ドン引きの表情だったわ。
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雨はどんどん激しくなってきて、傘もカッパももはや意味が無くなっていた。
フィールドにハッフルパフのキャプテンのセドリックとグリフィンドールのキャプテンのオリバーが握手をして試合を始めた。
「見えないな……」
雨が激しく、選手にも雨が反射する為ぼんやりとした輪郭しか見えない。スニッチが所々見えるけれど、ブラッジャーは上手く見えなかった。
リーマスの小さなつぶやきは雨の中でも聞こえるのに、試合のホイッスルすら聞こえない。
「大丈夫かな……」
「ジェームズの子だよ、きっと大丈夫」
「あ、ダメ。より一層不安」
ジェームズの乱暴なクィディッチの試合を思い出すと不安が蘇ってくる。
そう言えば、結局ジェームズの墓参り行かなかったなぁ。まぁ今度あいつにはなんか、ハリーの写真でも自慢しに行けばいいかぁ。
それともセブルスとハリーが仲良くしている姿を見せに行った方がいいかな。嫉妬で墓の中から蘇ってきそう。
「リーマス、コワルスキー」
雨の中、真っ黒のローブを身にまとった可愛い天使が私たちの元にきた。
「セブルス」
「試合がタイムアウトになった。もう少しして再開になるだろう」
「そっか」
セブルスが呪文を唱えればリーマスと私の身体から雨が弾き飛んだ。
「すごい。便利だ。今度教えてよ」
「構わないが、インパービアスの応用だから教えなくてもリーマスなら出来る。コワルスキーには無理だろうがな」
好きです。
セブルスの魔法を身にまとえるだなんて光栄すぎると思っていた所だったけど、かすかに試合再開のホイッスルが鳴り響いた。
ハリーの姿を必至で追いかける。雷鳴が耳の奥でギャンギャンと騒ぎ立てている。
「……なんだか、すごく嫌な予感がするかも」
立ち込める暗雲のせいか、ぽつりと呟いた私の気持ちに即座に反応したのはリーマスとセブルスの2人。
「アクシオ、箒」
「警戒するに越したことはないであろう」
「えっ、えっ」
いつでも飛び立てるように、いつでも何か出来るように。箒や杖を構えた2人の姿に私は思わず目を白黒させる。
「……そんなに不思議そうな顔をされても。ミリー、僕らが君の言葉を疑うと思う?」
「疑うとかじゃなくて、単に気のせいかもしれないのに」
「野生の勘というのもバカには出来まい」
「私の親友たちがこんなにもびっぐらぶ」
私、前世で世界でも救った?
こんなにも幸せでいいの?
愛しの天使への愛を再確認し、どうか嫌な予感が外れてくれますようにと願っていたが──クィディッチは私に嫌な気持ちにさせる天才だと思わせてくれる。
急激に空気が冷たくなって、空の隙間に黒い影が見えた。
「……
ハリーとセドリックはスニッチを追いかけて空へ空へ登っていく。
その先の空に、ディメンターがいた気がした。
雲に隠れ姿は見えなくなってしまったけど、雲の向こうに絶対にディメンターが居る。
私ならともかく、ハリーは……!
「セブルス!リーマス!ディメンター!」
私は言葉を告げると同時にスーツケースを開いた。
「リーフ!」
ヒッポグリフのリーフを呼び寄せ、私はリーフに跨った。
「エクスペクト・パトローナム!!」
リーマスの守護霊とセブルスの守護霊が空に向かって飛んでいく。
私もそれに追随するようにリーフに乗って飛んだ。
「ダンブルドア!ディメンターの気配が多すぎる!保護して!」
ハリー、ハリーお願い無事で!
願いも虚しく、私の視界には箒から手を離して自然落下するハリーの姿が目に入った。
「リーフ、お願い。ハリーのところ!……っ、ハリー!ハリー!」
叫んでも何も反応がない。セドリックは……スニッチを捕まえている。
「ハリー!」
私の大事なハリー。絶対、怪我なんてさせない。
手を伸ばして掴まえて、体に負担がかからないように必死になった。
「リーフ!徐々に減速!」
「コワルスキー!落ちながら抱え込め!!」
雨音の中で聞こえるはずが無いのにセブルスの声が聞こえた。
私は迷わず、リーフから飛び降りてハリーの頭を中心に抱え込んだ。
誰かと落下するなんて、1年の天文台以来だわ!
「ハリー……!」
意識を失っているハリーの身体は、恐ろしいほど冷たかった。
ふわりと浮かぶ。その隙を見逃さず、私はリーフに飛び乗る。おそらくセブルスの魔法だろう。
「ギュイ……」
急激な重量変化にリーフは唸り声を上げた。
無茶させてごめんねリーフ。後でご馳走あげるからね。
ハリーを無事確保できた時は既に地面と近い状態。リーフはゆっくりとグラウンドまで降りた。そして大量のディメンターを追い払うように校長が杖を振るい、眩い白銀色が一面を覆う。
「ミリー!無事!?」
「リーマス!ハリーが、ハリーが凄く冷たい!意識も飛んでて!」
駆け寄ったリーマスが泣きそうな顔で私を見つめた。
「マダム!」
私は意識を失ったハリーを抱き直し、頼りになる校医の元へ駆け込んだ。
ハリー、無事でいて。
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「違う、違うんだよミリー。僕は、君にも死んで欲しくないんだ、無理をして欲しくないんだよ……。お願いだから、誰かの為に命を簡単に投げ出さないで欲しいんだ、ミリー……お願いだ……」
届かない小さな祈りが一つ、雨音に掻き消えた。