ルシーの家でのクリスマスパーティーも終盤に差し掛かり、緊張していた彼らも和気あいあいと話していた所、ロンのお兄さんが現れた。
「ロン!」
「チャーリー!ビル!」
チャーリーがロンを抱っこして、その流れで私を抱っこする。
「久しぶり、ミリ・コワルスキー!ドラゴンの様子はどう?」
「久しぶり、チャーリー。ノーベルダならとっても元気よ!」
「あ、あとマーリン勲章おめでとう!バジリスク飼ってるってほんと!?いやフレッドとジョージにも話は聞いたんだけどね、やっぱりミリ・コワルスキー本人から話を聞かないとって思ってさ!」
チャーリーの右手にロン、左手に私という不思議な状態。
力持ち過ぎない?
「う、羨ましい……!筋トレは何を!?あぁ、魔法に頼らなくても解決できるパワー!最高過ぎない?」
「ミリが美形以外にこんなに興奮してる姿ってそうそうないかも」
「ロン、私は確かに美人や可愛い子を愛しているわ。でもそれは生き様ってやつよ」
「生き様」
「私の趣味は魔法生物飼育学」
「趣味」
「チャーリーやエイモスやハグリッドはそうね、いわば同志だわ」
「同志」
ロンは哀れにも私の言葉を繰り返すマシーンになってしまった。哀れ。
「──あぁ、君がミリか」
その途端、雪がしんしんと降り積もる静寂の静けさの在ったその空間を燃え尽くすような熱の美しさが場を支配した。
情熱なんて生易しいものではない。灼熱との言うべきか。
クリスマスの鈴の音の中にいたはずなのに、いつの間にか燃え盛る炎の中にいた。
ぱちぱちと爆ぜる音は何の音なのか。ガラガラと崩れるのはなんなのか。
「やぁ。」
その一言だけで呪文の詠唱が始まった。なんのって?私専用のアバダだよ。
「僕はウィリアム・ウィーズリー。弟妹達と仲良くしてくれてありがとう」
見た瞬間に魅了系の何かをかけられていた。目に、いや違う、魂に。
ひとつまばたきするごとに理性という名の魔力がごっそり持っていかれる。
あの髪、あの瞳、あの角度、あの余裕のある所作、もう全部が、合法的に脳を焼いてくる火傷級の色気。
美しいと言うのに、儚さではなく生命の力強さを感じる。
パワーオブビューティー。この世のハンサム(美)は彼のためにあった。
「はわ、はわわわわわ」
「ミリ?」
こてんと首を傾げるその波動から流れる可愛さの気配。やめて、仕草が可愛いのどうにかして!
系統はリーマスに似ているだろう。でもその美しさは、リーマスのママみではない。これは美しさという武器で周囲を鼓舞するような……!
「──建国顔!」
「ごめんビル。気にしないで」
オリオン様が敵国顔でレギュラスが傾国顔だとする。
まぁー、私の国、ガッタガタだわ。
「ロン、彼女大丈夫なのかい?」
「うん。いつもだから大丈夫」
ロンのあしらう声が聞こえたけど多分気の所為ね。
ふとした違和感がある。
私はその美しいご尊顔を眺めた。
「なんだ、ろう?ビルって、うーん、ブラック強い?」
「おや、よくわかりましたね」
ルシーとシシーが客人の出迎え、ということでやってきた。
「ルシウスさん、招待ありがとうございます」
「いえいえ。……Ms.コワルスキー、オリオン様に似ていると思いませんか?」
「……大ざっぱな分類は」
「彼らの母、モリー・プルウェットはブラック家とは遠縁ですが、父であるアーサー・ウィーズリーは、ブラック家の娘を母に持ちます」
そういうことか。だから血が濃いのね、美の濃度も納得。
「なるほど〜。純血ってよく分からないけど、血が混ざってるとかえって美のバリエーションが豊富になるのね。納得の遺伝子サラダボウル!」
私は小さく頷いた。いやもう、納得しかない。歴史が育てた眼福ってやつだ。やはり純血主義しか勝たない。
「ブラック家には、本家であるオリオン様の本家筋とは別に、大きく分けてもう二系統の血筋があります」
「二つ?」
「ええ。ひとつはアーサー・ウィーズリーやロングボトムなどに繋がる血筋。もうひとつが、我々──ナルシッサやポッター家に近い血筋です」
「シシーは元々ブラックだったものね」
「そうですわ。とくに、私の叔母様はオリオンさまとご婚姻なされたので」
「もちろんブラック家の血が流れていると言うだけで分家というわけではありませんよ。ですが、ブラック家の血というのはそれだけ濃く、強く、イギリスの地に馴染みがある血なのです」
あ〜〜もう、頭が追いつかない。でも分かったことはひとつある。
ブラック家の血統は美のサラブレッド。
まじでこの家系、血が強すぎるのよ。視覚の暴力。いやもう逆に感謝状出したい。
もちろんシシーにアンドロメダさんとベラトリックスさんっていう姉妹がいるのは知ってる。
いつか会ってみたいものだと心から願っている。神様!頼んだよ!
──パーティーはその後も和やかに進んだ。
チャーリーに強請られ、そして大人たちの期待もあったため庭をお借りして魔法生物のお披露目会をした。バジリスクは流石に目の処理とかが出来ていなかったし、危ないだろうからドラゴンのノーベルダを出したわ。
チャーリーが瞳を輝かせて、「ここまで人に懐くだなんて!」とテンションMAXで走り寄り、ノーベルダとハグを試みて背中を軽く炙られていた。
夕食はとんでもなく豪華だった。
マルフォイ家の下僕屋敷妖精たちが作るごちそうは、もう芸術。魔法が込められたような香りがふんわり漂って、舌がまるごと感謝状を書き出しそうな美味しさだった。パン屋を営んでいるジェイコブ父さんや料理上手のクイニー母さんは、イギリスの料理に期待していなかったのに、想像以上のものが出てきてレシピを細かく聞いていた。ドビーが困ってたわ。
食卓では、ビルが呪い破りという肩書きについて語ってくれた。
エジプトの墓荒らし(合法)として呪文や呪いを解除する彼の話は、ファンタジーを通り越してもう神話の領域。
「この前は、箱に触れた瞬間に3日間ワニになったよ」
「大丈夫だったの?というかよく解けたね」
「そういうのって、解除するのすごく難しそう……」
「魔法は全部、意志の痕跡だからね。解くにはその人の思考を逆算することから始まるんだ」
……か、かっこよすぎて脳がワニになりそう。
一方で、チャーリーは炎傷痕を見せながら、ドラゴン飼育の苦労話を披露していた。
「尻尾でぶん殴られて壁にめり込んだ日が、だいたい『この子はここに慣れてきたな』って合図だね」
「チャーリー、それ笑いながら言うセリフじゃないのよ……!?」
曰く、壁を突き破らない程度に力加減が出来ているからだそうだ。分からなくもない。
その隣でハリーとネビルが、オーガスタさんから家を守る方法についてレクチャーを受けていた。
結界呪文の基礎から、敵の足取りを鈍らせる魔法的な仕掛け、さらには悪意を跳ね返す言葉まで、家を守ってきた魔女の叡智が惜しみなく語られていた。
「家には守りの魔法がつけられることは絶対なんだ……」
「そうだよ。間違えた手順で入ってきたら……カエルになっちゃうんだ」
「ネビルそれって……」
「うん、実体験」
一方、別の意味で驚かされたのはドラコだった。
彼は最初、戸惑いながらもチュニーやバーノンさんたちに近寄り、ぎこちない笑顔を見せながらマグルの乗り物の仕組みについて興味津々に質問していた。
「空を飛ばない車、ってどうやって動くんですか?」
「そりゃあ、エンジンで……って、そういうの授業で習ってないのか?」
「エンジンも電気も、概念は知っているのですが全然理解が出来なくて」
「あぁ、代わりにじゃあクィディッチについて教えてくれないか?」
「もちろんです」
あんまりにも素晴らしい尊さに天を仰いだ。わーてんじょうたかーい。
そしてハーマイオニーはナルシッサやルシウスのそばで、好奇心全開の質問マシーンになっていた。
「純血貴族が受けてきた教育って具体的にどう違うんですか?」
「ふふ……義務ではなく期待という名の圧があるのよ、グレンジャー」
「私たちは、魔法を教わるよりも魔法をどう守るかを先に学ぶのです」
「わあ、面白いですね……。魔法と社会的立ち回りがセットなんですね?もし文献があれば読んでみたいです!」
夜はふけていく。
新学期が始まって、ハリーが全員を巻き込んで『シリウス・ブラックを捕獲しよう!』という作戦を立てなければ、平和な1年になるだろうなと思っていました。はい。