─矛盾─   作:恋音

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3-26.釣りと護衛

 

「ねぇハリー、考え直して。お願いだよ」

「そうだぜハリー。わざわざ死にに行くようなもんじゃないか」

「お願いだから、冷静になって。ハリー、貴方がブラックを探したりすれば……自分で餌になりに行くようなものだわ」

 

 ハリーはクリスマスが開けてから『シリウスに会いたい』と願うようになっていた。

 というのも、クリスマスの朝、マルフォイ宅にハリーのクリスマスプレゼントが届いたのだ。

 

 ファイアボルト。

 どうやら最新のくっそ高い箒だった。

 

 

『シリウスだね』

『シリウスしかいないわ』

『絶対シリウス』

 

 ルシー、シシー、私の順である。即答だった。

 

 クイニー母さんも『シリウスがピーターを殺してリリー達をヴォルデモートに売った』という話を知っていたので、危険だから辞めるようにとハリーに忠告したのだけど、ハリーもMr.オリオンから話を聞いていたため警戒心がなく。ルシーが呪いをかけてないですよ、と証明してくれたことによってようやくハリーの手元に新しい箒が渡ることになった。

 

 

 

 そして現在。

 傍から見ればそんな『罠』とも取れるアクションを見せるシリウスに警戒している子供たち。

 無警戒の大人とハリーに対してガミガミと警告をしている。

 

「でも、シリウスって可哀想だと思うんだ。多分、どうしようもないくらい馬鹿なんじゃないかな」

「あぁハリー!貴方はどうしてそうなの!」

 

 ハリーの真剣な表情とんでもなく可愛いし、ハーマイオニーが天を仰ぐ姿のなんと美しいことか。

 そうだよ。シリウスは馬鹿なんだよ。

 Mr.オリオンに踊らされてハリーのこんなに可愛い成長を見れない愚か者だよ。

 

「コワルスキー、お前もなんか言って止めろ」

 

 ドラコが眉間に皺を寄せながら私の袖をクイッと引いた。麗しい……!

 

「ハリー、ひとついい提案があるの」

「ん?」

「まず、ハリーの後見人は未だにシリウスのままだから……」

 

 私は皆を安心させるようにこくりと頷いた。

 

「──後見人をまずレギュラスに変えたらいいわ。そしたら多分向こうからのこのこ出てくる」

「コワルスキー!」

 

 べしん!と思いっきりドラコに叩かれた。

 

「お前ってやつは、お前ってやつは!!」

「ミリはハリーが可愛くないの!?危ない目に合わせたいわけ!?」

 

 ドラコとネビルが私を責め立てる。

 

「目に入れても可愛い」

「うげぇ、本当に入れそうでやだ」

 

 ロンの呻き声の横から、黒髪の可愛いスリザリン生が近づいてきた。

 

「ねぇ、今悪夢みたいな単語が聞こえた気がしたんだけど、気のせい?」

「パンジー♡おはよう、今日も可愛いね?あれ、そのカバンはじめてみたかも。クリスマスに貰ったのかな?パンジーの趣味だけどパンジーは選ばないデザインだわ」

「きも……」

「くぅ…っ!罵倒最高……!」

 

 パンジー・パーキソンったら可愛くって辛辣。そういう所が癖にくる。

 

「パーキソン、聞いてくれ」

「いいけど……」

「この馬鹿がポッターの後見人にレギュラス・ブラック様を指名してる」

「馬鹿じゃないの?」

「はい、私は馬鹿です……愛……」

 

 馬鹿って名前に改名してもいい。

 セブルス筆頭に、様々な可愛い天使たちに馬鹿馬鹿言われてるともう本当に世界一愛しい渾名だと思うの。絶対。

 

「ブラック家の!当主様よ!?」

「凄いよねぇ」

「じゃないでしょ!まず純血貴族でもお目通り叶わない様なお人だし!それに……」

 

 パンジーは小声でハリーの目を見た。

 

「ブラック家は皆、例のあの人の手先と言われてるのよ?」

 

 真剣な顔だった。パンジーは可愛いことにハリーに『例のあの人に狙われたのはハリー。その手先に会うのは危険でしょ』と言った。

 

「ぎゃんかわ。尊い」

 

 善良の暴力を振るわれて私が死んだ。尊いにも程があるから国が力を上げた保護して欲しい。いや、私が保護する。

 

「将来は一緒に暮らそうね……」

「コワルスキー現象」

「お前の現象には気象預言者なんか要らないな」

「気象予報士もね」

 

 パンジー、ドラコ、ハーマイオニーという可愛いトリオのお詞。胸に刻む。インクで。

 

「でもさ」

 

 ハリーはにっこり世界を魅了する笑顔で言った。

 

「──レギュラスさんがいつでも頼っていいって言ってたよ」

 

 

 

 

「──スネイプ先生!ポッターがコワルスキー!!!」

「僕はコワルスキーじゃないってば」

 

 

 

 ==========

 

 

 

「概ね賛成では、ある」

 

 セブルスと遊びに来ていたリーマスが、ドラコの訴えを聞いた上で結果を出した。

 

「嘘ですよね先生……?」

 

 裏切られた!と言いたげなドラコの視線を受けたセブルス。その横でリーマスが可愛く苦笑いをした。

 

 ドラコが、小さく崩れ落ちる。

 

「割り込んでごめんね、条件がふたつあるんだ」

 

 リーマスは、静かに指を2本立てた。

 

「レギュラスに正式に書面で申請し、あくまで『一時的な代理』としての後見人登録を行うこと。それとホグワーツ内の滞在中は必ず私たち教師かミリの傍にいること」

「──それってつまり……」

「シリウスを釣るのが目的でも、ハリーの身の安全を最優先にしなければ却下する、ということだよ」

 

 リーマスの目は優しく、それでいて、聖母と似たものを感じさせた。

 

 そして。

 

「やったね、ハリー!これで合法的にレギュラスと文通できるね!!」

「目的が違ってきてる!!」

「待って、ミリが動いたら法が揺らぐから!!」

 

 ドラコとハリーがほぼ同時に私に訴えた。法って何かな?世界可愛い子保護法?聞いたらハリーはちょっと悩んだ上で『そんなとこ』と答えた。

 セブルスは額を押さえながらため息を吐く。

 

「何が嫌って、『割と理屈が通ってること』ことが、余計に腹立たしい」

「セブルス、大丈夫?」

「……まず、ブラックを冷静にさせるためには、混乱に混乱をぶつける必要があるな」

 

 セブルスは私の肩をぽんと叩いた。

 

「任せた、混乱担当」

「任せて!」

「全然褒められてないと思うんだが!?」

 

 ドラコ、それは違うのよ。セブルスの言葉っていうのはね、天に咲く黒薔薇の花びらであり、万象を統べる叡智の結晶であり、黙っていても誰かを論破してしまう魔法の音なんだから。私みたいな凡人は頷くのよを

 

「我輩からも条件がある」

「は、はい」

「寮や部屋では、たとえ手洗いであろうとも必ずウィーズリーと行動することだ」

「ロンと?」

「同室であろう?」

 

 どうしてロンと?

 私が首を傾げているとセブルスはこちらを見て鼻で笑った。グゥ、心臓がコサックダンスを踊ってるわ。セブルスの微笑みとは、私の心臓を秒で爆破した。今の音、雷じゃないよ。感情の起爆音。

 

「談話室ではコワルスキーと共に過ごせ。コワルスキーは一人部屋でもあるから、忌避感がなければそちらで寝泊まりすることを推奨する」

「女子寮は立ち入り禁止なのですが……」

「校長とミネルバの許可は我輩がとってやる。ポッターとウィーズリーのみ許可をする」

「ネビルは?」

「……ロングボトムも追加で許可をくれてやる。本来であればその中で寝泊まりするのが1番安全なのだがな」

 

 セブルスは私のスーツケースを視線で指した。

 へへ、魔法生物ちゃんたちが沢山いるスーツケースにならいつでも招待するからね。

 

「でもクィレル先生を巻き込む感じに……は!」

「ポッター?ポッター?今なんて言った?」

 

 ドラコがハリーの肩を掴んでブンブン振り回している。子犬と子犬がじゃれ合っているような感じで天使と天使が戯れている。お戯れはおよしになって、私の心臓が爆発して天に召されそう。召してもいい……。

 

「それから、これをウィーズリーに返しておくように」

「え?」

 

 セブルスが渡したのは、小さなネズミだった。ハリーの手のひらに乗ったそれは、ころころしてて、つぶらな瞳でこちらを見上げて、ちょこんと座って、ひげがひくひくしてて、毛並みがふわふわで、しっぽがちょっとだけ震えてて、手が……小さくて小指が欠けていて。

 

「っ!!!!????」

 

 ピーターだ!?

 え、ネズミ姿のピーターも可愛すぎるね!?

 

 えっ待って、リーマスの目が見開いてる。思考がショートしてる。

 わかる、私もだよ。

 

 その姿をひとことで言い表すなら……なんだろう……。

 

「……ネズミ界のアイドル」

 

 思わずつぶやいたら、リーマスが『違う、そうじゃない』と反対した。そうよね、アイドルなんてレベルじゃないわよね。奇跡よね。

 




次回、シリウス、SAN値チェック
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