シリウスを捕まえる。
その作戦を決行する事を遠回しに伝えつつハリーが部屋に泊まりに来てもいいかセブルスが許可を取りに行ってれた。
ダンブルドア先生『まぁミリなら平気じゃが、シリウスも可哀想に』
マクゴナガル先生『正気ですか?Ms.コワルスキーと一瞬とは言え同室になって』
「お前の信頼度はどうなっている?」
セブルスのありがたいお言葉である。
ハリーはあれから忙しく。
新しいファイアボルトに乗り回しクィディッチの試合や練習、リーマスと一緒に守護霊の呪文の練習、可愛い小言を言うハーマイオニーの説得、怒るドラコに謝ったり、巻き込まれたくないと訴えるロンをなだめ怯えるネビルを慰める。聖人かな?
私はハリーの護衛役。
ハリーが泊まりに来ることは無かったのだけど、基本的に寮の外では一緒にいる。リーマスとハリーが一緒にいる時はスーツケースに潜り込んでお世話が出来るから自分の時間の確保も一応出来るよ。
クィレルが危険な魔法生物以外の世話とか餌の下準備や管理をしてくれているから大いに助かってる。魔法使えるって、楽だね。
そしてピーター……スキャバーズというらしいネズミはロンにベッタリだ。
ハリーがロンと一緒に行動するように言ったのは、おそらくピーターとして部屋で護衛をするということだ。
ぬるっとした再会。私がピーターの存在を知らなければネズミに発狂乱舞して愛を捧げる変な人になっているところだったわ。ふぅ、やれやれ。
そんなある日、学校終わりにハリーとロンとネビルが私の部屋に現れた。
泊まりだけは嫌だって言ってたのに。ロンが。
「ハリー、どうしたの?」
「今日泊まってもいいかな」
「もちろん!聞くまでもないわ」
「ミリならそう言ってくれると思ってた」
ロンの服のポケットからスキャバーズが顔を出したので愛しの友人に挨拶をした後部屋に招き入れた。
「うわ、殺風景過ぎない!?」
「ものというものが無さすぎて、ベッドと机くらい?」
「あ、トムの日記だ」
私の部屋を見て驚いている三人。
「ところで急にどうしたの?」
「んー。なんというか、勘?」
「勘かぁ。魔法使いの勘は侮れないものね」
ほなしゃーない。というか私としてはハリーが来てくれてハッピーだし、今ならロンも歓迎できる。ピーター小さくても可愛いのね。ちゅっちゅっしちゃお。
早く貴方とおしゃべりしたいのよ。
ねぇ知ってるピーター、私、貴方のお墓参りだけは行ってないの。不思議だよね。なんだかいつも、壁を挟んだ気配も姿も分からないところでいた気がして。
「ねぇ、ミリは何をしてたの?」
「これから魔法生物達のお世話をしようかなって。一緒に行く?」
「うげ、今日ハグリッドの授業やったって言うのに、よく追加で世話なんて出来るよな」
「ロン。貴方はチェスの大会があった後にチェスをしないの?」
「しないけど」
「しないんだ!?」
「とにかく、魔法生物は行かない」
しないんだ……。
今日は満月でリーマスの体調もよろしくない。リーマスがいないという事はセブルスも薬作りで忙しいということ。
だから泊まりに来てくれるのはすごく助かるし、安心だ。
もしシリウスを釣り上げる必要があるなら今日じゃ無い方がいいだろうし。
「じゃあちょっとお世話してくるから……」
「じゃあトムとお話してるね!」
「あ、ハーマイオニーも呼んでこようよ」
「いいのかな?」
「多分」
「ハリー達が行くのはまずいからスキャバーズに行ってもらって。スキャバーズ、お願い……──嫌がらないでよ、こんな世界一可愛いネズミ居ないってば、大丈夫。うふふ、嫌がる姿もとんでもなく可愛いわね、食べちゃいたい」
「怖いよミリ」
スキャバーズはぴょいとロンから飛び跳ねて扉から出ていった。
後姿も可愛すぎるの本当になんなの……。
「ミリって魔法生物以外でも対象なんだ?」
「スキャバーズは特別」
「この2.3年間ずっと言ってなかったじゃん。初耳すぎるよ」
ネビルとロンが私を疑うような視線で指摘する。
それはね、私も思ってた。
2年間違いなく、姿を隠し通していたピーターの慎重で優秀で賢くて命大事にすごく天才的な作戦勝ちよね。私、ウィーズリーには基本的に興味なかったんだもの。ビル以外。
「ビル、素敵……」
「なんでそういう思考回路になったんだよ……」
最高。
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「なぁコワルスキー」
「何、シリウス」
「俺とお前の関係性ってなんだ?別に俺はお前の好みでも無ければ、俺もお前のこと特別視してないし」
「たしかに、シリウスはジェームズにゾッコンだものね」
「言い方」
「でも簡単よ?」
「私たち、友達じゃない。それ以外に言葉は要らないと思うの」
「友達……」
「なぁに、庶民のお友達は要らないとでも言うの?」
「……いいや。最高だと思っただけだ」
特別じゃない特別。
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気配がする。
ハリーとハーマイオニーとピーター(要は天使)じゃないことは確かね。
浅い眠りに着いていた私は瞼をゆっくり開けた。
「……。」
ぼやけた視界は真っ暗な空間と、人の輪郭だけ捉えた。野生動物みたいな匂いが鼻につく……。
「だ、れ……」
「あぁ、コワルスキー……。コワルスキー、コワルスキー」
──あ、これシリウスだ。
「ずっと、ずっと、会いたかった。あぁ、ミリ。本当にコワルスキーにそっくりだ。ハリーはジェーによく似てるし、ミリはコワルスキーによく似てる。まるで2人が蘇ったみたいだ」
私もコワルスキーなんだけどね?
シリウスはボロボロの格好で私のベッドの横で私を見下ろしていた。
あのね、シリウス。
私一応貴方の友達だし心配かけただろうから忠告してあげるんだけど、心の中で。
子供の部屋に入ってブツブツ呟いてるの、ハッキリ言って怖いよ。せめて子供になってから出直して。私みたいにね。
「スキャバーズ……」
私はカラッカラの声で名前を呼んだ。
「……ッ!?」
その時──シリウスのほっぺにネズミの体躯での飛び蹴りが決まった。
う、美しすぎて100億点……!
シリウスは筋力の無さのせいか思いっきりふらついてバターンと倒れた。すごい、すごいわピーター。スキャバーズの姿でどうしてそんな綺麗な飛び蹴りができるの?
不様な姿をさらしたシリウスのうるさいもの音のせいで、子供たちも起き始めてしまった。
「ミリ……?」
「ごめんハーマイオニー、スネイプ先生かリーマス先生かマクゴナガル先生を呼んできてくれる?」
優先順は言った順ね。
「ワームテール……?ワームテール!なぜ!なぜお前がここにいる!?ハリーを狙いに来たのか!?それともミリか!?ジェームズのみならず!あぁそうか、お前がコワルスキーをあのハゲに売ったんだな!?」
シリウスのトンチンカンな推理が炸裂する。
セブルス、混乱担当が動かなくても混乱してるっぽいよ。
……でも、ピーターがこのままだと傷付けちゃいそうだなぁ。
「もしかして、シリウス・ブラック!?」
「そうみたい」
「おったまげ、ほんとに来るのかよ!?」
ハーマイオニーは無言でこくりと頷いてさっさと抜け出した。その代わり、ロンもネビルも杖をシリウスに向けている。
「シリウス……?」
「ハリー!」
可愛いハリーに向かってシリウスが近寄るのを、私は一瞬で阻止した。
混乱担当、行っきます!
「──シリウス、貴方なんて素敵なの?結婚しましょ?顔がどちゃくそに好みだわ……!」
「コワルスキーはこんなこと言わない!!!!!(発狂)」
それは無いよ、って顔したスキャバーズが視界に写った。奇遇ね、私も無いと思ってるの。好みじゃないわ。