─矛盾─   作:恋音

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3-28.いたずら

 

 

 ハーマイオニーは走り出した。

 もう外出の出来ない時間だったが、ハーマイオニーにとってシリウス・ブラックとは『めっちゃ危険な人物』で『ハリーやミリを傷付ける闇の魔法使い』で『あとなんかめっちゃ臭い』という印象を抱いていた。そのため、校則や罰則、減点よりももっと優先すべきと判断して駆け出したのだ。

 

 正直、ハーマイオニーの足は自分でも遅いのはわかっている。それでもハーマイオニーを外に出させたのは『適切な説明ができる』ことの他に『ミリの言う天使を逃がしたかった』のでは無いかと推測した。

 

 ちょっと不満はある。

 けど、絶対譲らないことが分かっているのでハーマイオニーは争う時間すらタイムロスだと考えて走り出したのだった。

 

 

 

「スネイプ先生!スネイプ先生!!」

 

 ドンドンガンガンバンバン!

 叩くというか破壊の勢いで、地下にあるスネイプの私室のドアをノックという名の襲撃。

 異常事態の到来を知らせるには十分な破壊音に、スネイプが部屋からすっ飛んできた。

 

「Ms.グレンジャー?」

 

 優等生ともあろうものが外出禁止の時間帯に。

 さて減点でもしようかな。そう考えたスネイプの思考を叩き潰すかの勢いでハーマイオニーは簡潔に言い放った。

 

「──ミリの部屋にシリウス・ブラックが!」

「すぐ行く。リーマス!起きろ!」

 

 笹食ってる場合じゃねぇ。

 そう言いたげにスネイプは部屋の中にいるリーマスを叩き起し、リーマスは吐きそうな体調の中起き上がった。

 

「ゔぇ……産まれそう……」

「絶対出すなよ」

 

 スネイプは守護霊の呪文を唱え、マクゴナガルと校長に伝言を飛ばした。根回しのできる男だ。

 

「ルーピン先生、今日はスネイプ先生のところに泊まってらしたんですね」

「あぁ、うん。持病でね、ポーションマスターの付きっきりの看病だよ」

「そっか、今夜満月ですもんね」

 

 リーマスが頷きかけてギョッと目を見開いた。あれ?今なんか誤魔化す余地のない言葉が聞こえたな?

 

「ほら、ルーピン先生って満月付近で授業おやすみされるでしょう?前にスネイプ先生が臨時で行った授業内容から察してまして」

「そっ……か」

「あとお名前も……」

「ごめん、それはちょっと不本意」

 

 学生時代狼バレした苦い思い出を噛み締めた。めちゃくちゃ苦い、脱狼薬の味だ。

 

「あ、私タイムターナーがあるんです。シリウス・ブラックが来る前に戻れば……!」

 

 ハーマイオニーが首にぶら下げた装飾品を見せた。

 それは、細く繊細な金の鎖に吊るされた、小さな砂時計がデザインされている懐中時計で、光に反射して揺れるそれは、どこか魔法生物の目のようにも見えた。

 

 スネイプは無言で渋顔を作る。

 

「……まぁ、様子を伺ってからでも構わんだろう」

 

 言いにくそうな顔をして、スネイプは先陣を切った。

 近道を利用しつつ、3人はあっという間にグリフィンドール寮へ辿り着いた。

 

「ミリ!」

 

 ハーマイオニーが扉を開けると、そこに広がっていた光景は──。

 

 

 

 

「ああ……その眼差し……鋭いのに、どこか遠くを見ているみたいで……とてもじゃないけど、真っ直ぐ見返せない……」

「……えっ、俺の目のこと? ちょ、待ってくれコワルスキー?」

「声も……低くて深くて、何もかも見透かされてしまいそう。聞いてるだけで胸の奥が爆音で鳴り響いて何も聞こえなくなっちゃう……」

「やだ怖い!!」

「指も……整ってて、冷たそうに見えるけど、ふと優しさが滲む感じがして……。ああ、なんて美しいくて儚いの」

「うわああああ!コワルスキーはこんなこと、こんなこと言わない!」

「目も素敵ね。やだ、恥ずかしくなってきちゃった。目を閉じても思い出せるその美しく冷たい瞳をさ。あぁ、恋しちゃいそう」

「解釈違い!解釈違いだ!コワルスキーは俺に対してそんな乙女な顔をしない!!うわああ助けてくれピーター!!!」

 

 

 シリウスがベッドから転げ落ちて逃げ惑う中、ミリは恍惚としたように頬を染め、どこか遠い誰かを見つめていた。

 

 その誰かが誰であるかなんて──本人以外、知りようもない。

 

「……なぁにこれ」

 

 ハーマイオニーの声が震える。

 

「とんでもねえコワルスキーだよ……」

 

 ロンの言葉が妙に重かった。

 

 

 

 ==========

 

 

 

 蕁麻疹出てきそう。

 どうもコワルスキーです。夜這いした重要人物、シリウスがのこのこ釣られてやってきた。

 

 ので、ピーターにヘイトが向かないように混乱担当として頑張りすぎた結果、ちょっと泣かせちゃった。

 

「えぐ、えぐ、コワルスキーはこんなこと……おおん……」

 

 床に水たまりを作ったシリウス。

 一時的なルームメイトはドン引き。

 そしてやってきたセブルスたちのなんとも可愛いことか。

 

「あぁ、(セブルスとリーマスが)戸惑った姿もなんて可愛いの!その艶やな(レギュラスの)瞳を思い出すだけで胸が高まるし、(オリオンさんの)声で私の名前を呼ばれるだけで、開いちゃいけない扉が開きそう」

「閉じて……」

「(リリー、)結婚しましょう。幸せにするわね」

 

 俯いておんおんと泣いてるおかげで私は空を見上げながら愛しの天使たちを思い出していた。

 はぁー。何が悲しくてシリウスなんか口説かなきゃいけないんだろ。

 

「セブルス!ブラックが現れたと──……。……、後はお任せしましたよ」

「ミネルバ!」

「マクゴナガル先生!」

 

 急に現れたマクゴナガル先生、状況をみた瞬間速攻で扉を締めようとした。

 セブルスとリーマスの止め方が必死。可愛いね。

 

「ミリ、少しだけいい?」

「もちろん!」

 

 ハリーがちょいちょいと私の肩を叩いたので喜んで位置を譲る。

 するとニコニコ笑顔で、可愛い可愛いハリーがシリウスと目を合わせた。

 

「こんばんは、シリウス。僕、ハリー・ポッターです」

「……!ハリー!ハリー、会いたかった。久しぶりだなぁ、随分大きくなったな……!」

「ダーズリー家とか、森でであったわんちゃんはシリウスだったの?」

「あぁ!そうだよハリー!」

「僕、貴方に聞きたかったんだけど」

 

 ハリーは少し言いづらそうにして聞いた。

 

「僕の両親をヴォルデモートに売ったのはシリウスなの?」

「──違う!誰が、誰がジェームズを売るものか、私とジェーは無二の親友だ!ハリー信じてくれ」

「うん、信じるよ」

「へ?」

 

 信じてくれるの?と言いたげなキョトンとしたシリウスの顔。わぁ、可愛く無い。

 

「そうだ、ピーターだ!ジェー達を売ったのはピーターなんだよ!あのクソ野郎が」

「チューしよっか」

「ひっっっっ!!!!!!」

 

 シリウスが怯えてハリーに擦り寄る。

 私はシリウスに抱きついてさりげなくハリーから剥ぎ取った。

 

 うーんくさいよー。小汚い可愛くない男が可愛い私のハリーに近寄らないで頂けます?

 

 

「あのねシリウス。僕、オリオンさんに話聞いてきたんだ」

「おり、は?親父????」

「レギュラスさんにも話を聞いてね」

「れぎゅ??????」

 

 そういえばMr.オリオンとレギュラスと何の話していたんだろ?

 

「シリウスはヴォルデモートを殺そうとしたから、オリオンさんに止められたんだ。だから僕分かってるよ」

「へ??え??ん????」

 

 常時ならともかく、混乱した様子のシリウスでは上手く言葉を読み込めないらしい。

 なるほどねぇ、シリウスの冤罪はわかってたけど、Mr.オリオンってヴォルデモート信者なんだ。いや、なんとなくわかってはいたけれど。

 

 というかむしろ称えられるべきってMr.オリオンその人なんじゃ……?一目見たときから思ってました、崇拝。

 

 ていうか昔のMr.オリオンって怖かったな……いや、怖いっていうかもう、荘厳。あの目、あの声。もうあの人が宗教。個人崇拝の完成形。マントの裾が翻るだけで拍手したくなる感じ。レギュラは詩。Mr.オリオンは神話。

 シリウスは、えっと……木の枝。

 

 

「……ブラック」

「……!スニベリー!あぁ、変わってないな!スニベリー信じてく、いや、ちょっと待って、コワルスキーがくっついてるのだけちょっと待って、なぁ、俺は天使じゃないよな?」

 

 

「天使じゃないって何?」

「何となく意味は分からなくは無いけどもね」

「オリオンさんとレギュラスさんが好みなんだから、肉親のシリウスも好みだよね」

 

 子供たちの可愛いコソコソ話を癒しとして私はシリウスの利き手に捕まっている。

 

「セブルス……吐きそう……」

「リーマス!我が友よ、あぁ、会いたかった……!だが、気をつけろ!ピーターがいる!ピーター、ジェーを裏切ってあのハゲに売りつけておきながら!のうのうと俺を犠牲に!!!」

「(ピーターったら)可愛いよね」

「ぴょえ」

 

 怯え始めた。

 

「──シリウス」

 

 その時、鈴を転がすような美しくて可憐な声が響き渡った。え、愛おしい。

 

「ごめん、ごめんよシリウス。でも信じて、僕は君たちの敵になんてなるつもり無いんだ」

「ピーター!!!」

 

 数年ぶりに聞いたピーターの超えだけでもうなんか頭の奥がグワングワン揺れてくる。いや、もはや脳ではない、ゼリーだ。ピンクのぽやほやふやっぽいした。幸せの塊〜。

 

「わかった、シリウス。私と一緒に幸せの箱で過ごそう」

「ピーターのことより今はコワルスキーの方が精神に来る……怖い……助けて」

「仕方ないよ。……ミリーと違って、ミリはシリウスみたいな人が大の好みなんだ」

「(声にならない悲鳴)」

 

 怖いよぉ、と小さく鳴きながらグスングスン蹲るシリウスに、ピーターがヨシヨシと軽く頭を撫でた。

 

「──これ、どういう状況じゃ?」

 

 遅れてやってきたダンブルドアの呟きだった。

 

 

「ブラック、ひとまずダンブルドアとミネルバに話すがいい。二人なら悪くせんだろう」

「う、うむ?」

「まず、ぺティグリューがいる時点で一考の余地ありですけど……」

 

 引き気味の教師ふたりに、セブルスはグイグイとシリウスの背中を押した。

 セブルスに歓喜余って抱きつこうとしたけど、シリウスの抱擁に得するものは居ないのでひょいと避けた。避け方も可愛いねセブルス。

 

「ルシウスとオリオン様がお前の無実証明のために動いている。さっさと行け」

「????????」

「シリウス、また後で会いましょうね」

「ひっっっ!!!!!」

 

 完全に怯えたシリウスはマクゴナガル先生やダンブルドア先生に抱きつくように逃げた。

 

 

──バタン。

 

 扉がしまって気配がさった頃、ひとかたまりになって混乱した様子の子供たちを置いて大人たちは──。

 

 

「っ!っ、く、ふ、んんんっ」

「笑笑笑笑笑笑笑」

「あの顔、あの、んぶふっ」

「あっはっはっはっはっはっ!!!」

 

 哀れなシリウスの姿にしばらく笑いが止まらなくて大変な目にあっていた。

 ごめんハリー、ハーマイオニー、ちょっと私たち笑い転げるから説明待ってね。本当に。最高の肴すぎて笑いが……!

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