─矛盾─   作:恋音

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4章〜炎のゴブレット〜
4-1.ブラック家の親戚


 

「じゃあ、今期もハリーの事預かっていくわね」

「ありがとうミリ。助かるわ」

「正直言うと、もう魔力が暴走する事も無いでしょうし、オブスキュラスの可能性も低いしで無理に連れていくこともないんだけどね」

「っ、それは……」

「──でもハリーと夏休み過ごせるの幸せなので我儘だけど誘拐しちゃうわね。うち、私が末っ子だから皆過保護で。ハリーがいると末っ子ポジションが変わるから助かるの」

 

 と、言うわけで。シリウスに目をつけられる前に無理やり合意的な誘拐を繰り広げた夏休みである。

 

 リーマスは一部を除き狼バレすること無く教員生活を終えた。ピーターはマーリン勲章の取り消しで、今は各方面から逃げているらしい。きっとリーマスと一緒にいるのだと思う。

 

 セブルスは相変わらず忙しい。だけど、彼の空いた時間で脱狼薬の改良を行うというハイパー尊い仕事人間の活動をしていて、結局私も巻き込まれるんだけど、喜んで巻き込まれに行ったわ。

 

 

「ねぇミリ、ルーピン先生が人狼なの知ってた?」

「えぇもちろん。可愛い天使で、魔法生物なんて、人類でもっとも完璧な存在だよね……」

「ルーピン先生可哀想」

 

 リーマスは3年の終わり、ハリーとハーマイオニーとドラコ、そしてロンとネビルを集めて自分が人狼であるということを語ってくれたのだ。

 

『噛まれたのは私がまだ小さい頃だった。今は、セブルスが脱狼薬を調合してくれているけど、あれがなかった頃、私はひとり叫びの屋敷で過ごしていた』

『入学の際、校長が暴れ柳を植えてくれてね。そこに叫びの屋敷に繋がっている通路がある。だから1ヶ月に1度、私は城からこっそり連れ出され変身するために屋敷に連れ出された。私が危険な状態にある間、誰も私に会わないように。──そのころの私と言ったら、それは恐ろしいものだった。噛むべき対象の人間から引き離され、代わりに私は自分を噛み、引っ掻いた』

『さて、私には同室がいた。三人の素晴らしい友が。シリウス・ブラック、ピーター・ぺティグリュー、それから、言うまでもなくハリーのお父さん、ジェームズ・ポッター』

『そんな三人の友人が私が月に1度姿を消すことに気付かないはずがない。ハーマイオニー、君と同じように』

『私はバレたことで疎遠になるのが怖かった。でも、それどころか彼らは喧嘩をしてでも私のためにあることをしてくれた。生涯、最高の時になった』

『三人と、そしてリリーは動物もどき(アニメーガス)に。そしてあと二人の聡い友人は、私の為に脱狼薬を開発してくれたんだ』

『だからシリウスもピーターも未登録の動物もどきなんだ。私は、ピーターのことを信じている。それはきっと、あのセブルスだって同じことだろう。私たちの運命は、光だとか闇だとか、そういう隔たれた場所には居ないんだ』

 

 一単語たりとも忘れてない。

 ありがとう、私の記憶力。

 

 ハリーはベッドにゴロゴロと転がり私を見た。

 

「脱狼薬って難しいのかな」

「とんでもなく、ね。そもそもまだ完成してないから、改良と開発を進めなきゃ行けないんじゃないかな」

「大変そう……」

「ハリーの一学年上のレイブンクロー生にマーカス・べルビィの、伯父?父?多分年齢的に伯父だと思うけど、ダモクレス・べルビィとかも一緒に開発してるはず。もちろん私もね」

「…………妄想?」

 

 妄想じゃないもん……。

 

 

 

──ピンポーン

 

「ミリ、出てもらえる?」

「はぁい」

 

 クイニー母さんに呼ばれたのでベッドから起き上がってベルが鳴った玄関に向かった。

 

 そして開いた扉の向こう側に、二人の人物がいた。

 

「来ちゃった♡」

「来ちゃいました」

 

「いらっしゃいレギュラス♡どうしたの♡」

 

「俺も見んかい」

 

 愛しのレギュラスが邪魔なオブジェクトの後ろで微笑んでいた。

 

 

 

 

「あら……?シリウス君」

「お、お久しぶりですMrs.コワルスキー」

「お勤めご苦労様。そう、良かった。冤罪だったのね」

「……はい。ですが正直、私は何が何だかあまり分かっていません。ピーターが裏切ったのだとばかり思っていて、彼を追い詰めていましたから。でも、蓋を開ければなんだか」

「ピーター君が、そう」

 

 クイニー母さんに挨拶をするシリウスを尻目に、私はようやく直視できるようになったレギュラスに話しかけた。

 

「それで、ハリーに何か用事があったの?」

「あぁうん、ハリーは一応私が後見人になりましたしね。ハリーは毎年Ms.コワルスキーの家で過ごしているのかな?」

「はい、ほぼ。と言っても去年はスネイプ先生のお家にいました」

「確かに先輩はMs.エバン……Mrs.ポッター側の後見人みたいなものですしねぇ」

 

「シリウス君今日は泊まるの?」

「いや、一応ホテルはこれから取ろうかと」

「いいじゃない。泊まってしまいなさい。──あの子を、長年会わせようとしなかった負い目もあるの」

 

「ハリーとレギュラスが庇護者と保護者って、どうしようも無く愛しくて神聖……」

「相変わらずですねぇ」

「ブラック家に行った時はトムに代わってて何もお話出来なかったけど、ようやく出来て光栄すぎるわ」

「私もですよ、Ms.コワルスキー。ところで……」

 

 

 私の首をぎゅっと力強い何かがしめた。

 

「──兄のこと無視するのはウザイのでやめてあげてください?」

「あ、シリウス居たんだ」

「お前なぁ!お前俺の事派手な背景かなんかだと思ってるだろ!」

「うん」

「うん!!??」

 

 シリウスが発狂したように私にまとわりついて来たのだ。重たい。

 

「ミリって、シリウスに一目惚れしたんだっけ。もしかしてシリウスと結婚するの?」

「「絶対嫌」」

「姉上?」

「……しようかシリウス、結婚。後で離婚するから」

「やめろやめろやめろ!本当に絶対嫌だから!」

 

 レギュラスの『姉上♡』って呼び方最高に膝に来た。ほら、膝が笑ってるや。

 

「……?コワルスキーいい匂いがする。なんか作ってた?」

「うん。下のパン屋手伝ってたよ」

 

「すみませんMs.コワルスキー。兄との距離感バグってます。近過ぎます」

「え……いや、シリウスだから別に……なんか、どうでもいいなぁって」

「そういう奴なんだよレギュ。忘れたか?」

 

 レギュラスの困った顔可愛すぎない?あと混乱しているハリーもすごくベリー可愛い……。

 

 気付けばシリウスとはほぼゼロ距離に近い距離にいたけど、好みじゃないのでこの距離でも心臓は凪のように穏やかだ。

 

「おっきいアクセサリーつけてる感じだから。大丈夫、これ多分今が私ってだけでタイミングが合えばセブルスだろうと抱きつきに行くよ。──全力で止めるがな」

 

 私の目が緑のうちはセブルスやリーマスやピーターに抱きつくなんて業の深い事、させるわけが無いわ。

 

「それにしても、本題に移ってもいいかしら?様子を伺いに来た、とは純粋に思えないんだけども」

「流石Ms.コワルスキーですね」

「『話したいことあるんだけどなぁ、話すタイミングないな』って顔をレギュラスがしてたから」

「……。」

「お前キモイな、そのキモすぎるとこ愛してる」

 

「ハリー、レギュラスが後見人になって良かったね」

 

 こんなアホが後見人じゃなくて本当に良かったよ。

 

「僕、もう何が何だか分からないよ。ミリも変態だしシリウスも困ってるし、なんでそんなに仲良しなのかとか、本当に意味が分からないんだけど」

「私エミリーなのよ?知らなかったっけ?」

「奇遇だね、僕もエミリーなんだよ」

「ジェーがハリーにコワルスキーの名前を付けようって話をしたってことを話してもいいか?」

「レギュラスの本題に移ってもいいかな?」

 

 レギュラスは疲れた顔をしていて、いつもより3割増くらいに憂いを帯びていた。セクシーセンキュー。神様、そしてMr.オリオン、ヴァルブルガ様、レギュラス・ブラックという麗しい存在をこの世に生み出してくれてありがとうございます。

 

 むしろ存在が世界。ワールドイズレギュラス。

 

「えっと、とりあえずハリー」

「はい」

「君に13回分の誕生日プレゼントを、ブラック家から用意しているんです。まずそれがひとつ」

「誕生日プレゼント……!」

「それからウィーズリーの子が居たでしょう、ピーターを匿って、いやピーターに騙されていた子。ピーターのせいでペットを失った状態ですから、代わりのペットをプレゼントしようかと思いましてね」

「まだ決まってないんですか?」

「そこでハリーと、Ms.コワルスキーにアドバイスをもらおうと思って伺いに来ました。もちろん、二人の顔を見たかった、というのもありますよ」

「ムリィ…………」

 

 あまりに美しくて、私の中の言語機能が「ごめん無理」って言い出した。

 

「ムリィ……ムリィ……ヨロコンデ……ハワァ……ムリィ……」

 

「コワルスキーの変態にこんなにも泣けてくるとは思ってもみなかった。うわぁ、変態だ」

 

 レギュラスはクイニー母さんにニコリと微笑んだ。

 

「挨拶が遅くなりました。愚兄がお世話になっております。弟のレギュラス・ブラックと申します」

「クイニー・コワルスキーよ。昔からよく聞いてるわ」

「今回訪問させていただいた理由がですね、Ms.コワルスキーにブラック家の血が混ざっている、という話を聞きまして。ゴールドスタイン家にブラック家の出身者が混ざった記録はないので、話を伺いに来ました」

「あら、セブちゃんから聞いたのかしら?」

「セブちゃん……?」

「セブ……ルス?」

「セブルスが??」

「セブちゃんってスネイプ先生のことなの!?」

 

 四者四様の反応を返すとクイニー母さんは『違うみたいね』って顔をして頷いた後、「聞かなかったことにしてね」と言った。聞かなかったです。はい。

 

「えーっと、ミリがブラック家の血が混ざっている、っていうのは本当よ。でも私やエミリーには混ざってない、と言えば分かるかしら」

「……ミリ・コワルスキーの母親?たしかマグル、っと、ノーマジでしたよね」

「ちょうどいいわ。ミリ、ハリー、おじいさんのところに案内してあげて」

「はぁい」

 

 おじいさん、と言ってもクイニー母さんのおじいさんでは無い。

 

 私の生みの親であるイオ母さんの父親。血縁上の祖父の所へレギュラスを案内した。

 

 

 

 

 

「マリウスおじい様!」

「ミリ。……っと、ハリーだけじゃなくて随分でかい虫を付けとるな。どれ、剥がしてやろう」

 

 拳銃取り出したマリウスおじい様を慌てて止める。

 

「おじい様、紹介するわね。天使のレギュラス」

「ご紹介に預かりました。レギュラス・ブラックと申します」

「それから犬」

「誰が犬だ。……お久しぶりです」

 

「シリウス、マリウスおじいちゃんと会ったことあるの?」

 

 ハリーはおじい様の膝の上に座った。可愛い。愛おしい。マリウスおじい様も満更じゃ無さそうなのよね。わかるわ、ハリー可愛いもの。

 

「葬式でな。少し顔を見た程度で、挨拶を交わしたことは無い」

「……エミリーの?」

「っ!」

「分かるよ、スネイプ先生とルーピン先生も、似たような顔してる。僕の両親と、エミリーの話をする時の顔、一緒なんだ」

 

「…………っ、申し訳、ございません。俺が、私があの男を危険だと分かっておきながら!誰に言うのでもなく、胸の内に秘めた結果……!私はっ、あの時を忘れたことは」

 

 

「レギュラス、マリウスおじい様はブラックって苗字なのよ。私はどこから繋がってるのか分からないけど、レギュラスなら分かるでしょう?」

「コワルスキー!!!!俺の!!後悔とか!!なんかそういう雰囲気を無視するな!!おいこら聞いてねぇだろ!!」

「マリウス、って名前はブラック家と同じような命名だし。そもそもイオ母さん、めちゃくちゃヴァルブルガ様に似てる系統なんだよね。顔がド好み。こんなに好みなの、イギリス王朝ブラック家しかありえないと思うの。どう思うレギュラス」

「コワ!ルス!キー!?」

 

 BGMがレギュラスの息遣いの聞き取りを邪魔するけど、私は寛大なので許してしんぜよう。

 

「……お前らの母方の祖父、ボルックス・ブラックがいるだろう」

「ヴァルブルガ様の父親ってこと?」

「わしの兄だ。わしはスクイブで、家系図から消され、アメリカに避難した。さて、ここまで言えば分かるか?」

 

「…………。はとこだ」

「はとこだァ……」

「ゴリゴリに近ぇじゃねぇかよ」

 

 私はガッツポーズを手の上に掲げた。最高すぎる。レギュラスのはとこ、そしてなんと、シシーともはとこなのだ。

 

 要は、ボルックス・ブラック、マリウス・ブラックの大爺世代が兄弟。

 

 その子世代であるヴァルブルガ様、シグナス・ブラック(シシー達姉妹の親)、イオ母さんはいとこ同士。

 

 更にその子供であるレギュラスや、シシーたち姉妹、私、あとついでにシリウスがはとこ同士。

 

「小童共、わしはあくまでもスクイブだ。うちの孫をブラック家に巻き込むんじゃね……」

「えっっっっ」

 

 マリウスおじい様の言葉に私は顔を下げる。

 

「……私、ブラック家大好き。純血バンザイ。喜んで関わりに行く。逃げられても」

「僕もうわかる、君の純血好きってブラック家の顔ってことだね?」

 

 ハリーの私に対する解像度がたかくて胸がときめいちゃう。

 

「……。そういう子だよお前さんは」

「心中お察しします」

「己の親の顔の系統でブラック家を確信していたってところか本当にキモくてやだ」

 

 

 ==========

 

 

 

 実は二人は血縁確認だけではなく、クィディッチの試合観戦に誘われてイツメンの子供たちと共にVIP席で見ることになり。

 

「ミリ・コワルスキー!貴様の杖から闇の魔術を使用した形跡が発見された!至急取り調べを受けてもらおうか!」

 

「私が闇の魔術なんて高度な魔法を使えるわけがないでしょ!拳一択よ!」

 

 疑われてバタバタするのは、また後の話であるのだけど、そんなことにはまだ気付かず、私は夢のような時間を過ごすのだった。

 




はとこでした。
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