─矛盾─   作:恋音

91 / 126
4-3.天使と魔法生物オタク

 

 クラウチの詮索は厳しく、何度も弁明しても中々納得してくれなかった。

 一晩では終わらず、アズカバンでお泊まりになってしまったのだ。

 

「一週間くらい泊まり込んでもいい!?」

「この魔法生物オタクが!!!!」

 

 保護者代表シリウスが、面会にきて罵倒を吐いた。

 

 ブラック家、マルフォイ家、ウィーズリー家、挙句にスキャマンダー家までやってきた。

 さすがにダンブルドアまで出張ればクラウチも私を拘束して置けなかったのだろう。ちっ、度胸のないヤツめ。

 

「いやだ!ダンブルドアが迎えに来ても私はアズカバンでディメンターちゃん達を調べるんだい!」

「ミリ、いい加減に来ぬか!」

「やだやだやだやだ!!!」

「チィッッ!!……そういえばセブルスがミリに会いたいと言っておったような」

「──出ます。お世話になったわクラウチ」

 

 ちなみにプチアズカバン、大変面白い経験をさせていただきました。

 

 

 

 

 

「ってことで、楽しい思い出作りにうってつけ!」

「心配して損した……」

「まぁ魔法生物のこともあったから、最大一週間くらいだろうなって思ってたのよ」

 

 クィレルが居てくれて本当に良かったわ。

 必要な餌自体は1ヶ月以上スーツケースに入れてるとは言え、魔法が使えるクィレルならビューンヒョイで危険な子にもあげられるから。

 

「ハリーも急にごめんね、大丈夫だったの?」

 

 スーツケースに入れっぱなしだったハリー。スーツケースはシリウスが回収してくれていたようだけど、スーツケースの宝物になってしまっていた。

 

「うん、大丈夫。シリウスもスーツケースのこと知ってたみたいで。忙しくてすぐに帰っちゃったけど、中にクィレル先生がいるのにびっくりして、『世話係がいるなら平気そうだな、この種類は見たことないし……』って言ってたよ」

 

 たしかに、シリウスが世話を手伝ってくれていた時代とは魔法生物の種類は倍に増えている。

 

「ミリがアズカバンで楽しんでいる間、荷物の準備は僕とレギュラスさんでしておいたよ」

「すっごく助かったわ!」

「リストにある教科書とかは揃えたんだけど、魔法生物関係のやつとかドレスローブとかは揃えてないんだ」

「魔法生物はこっちで手続きしてるから大丈夫………………ドレスローブ?」

 

 はて?どうしてドレスローブが必要なんだろう。

 私が首を傾げていると、コンパートメントにはいつものメンツが続々集まってきていた。

 

「ポッター、コワルスキー、ここにいたのか」

「ドラコ」

「聞けよポッター。ウィーズリーの服装センスがどうかしてる。1800年代くらいに流行ったようなフリルタップリのドレスローブ」

「僕だって同じように思ってる」

 

 ドラコの苦虫を噛み潰したような表情を見て、ロンがげんなりした表情を見せた。

 

「こんにちはドラコ。美しさが増したせいなのか分からないけれど、雨音が聞こえ無くなるくらい麗しいね」

「ありがとう」

「こんにちはハーマイオニー。どうしちゃったの?あまりにも美しすぎて女神が舞い降りて来たのかと思っちゃった。ホグワーツ最高」

「はいはい」

「ロン、ネビル、元気そうね。あら、後ろに詰まってるのクラッブとゴイル?」

「ひとまとめにするなよ……。あの二人、太くなりすぎてコンパートメントに入り切らないっぽいよ」

 

 愛しのドラコとハーマイオニーに挨拶すれば、私は早速気になっていることを聞いてみた。

 

「なんで、ドレスローブ?」

 

 ドラコは私の顔を見ながら、驚いた顔をした。

 

「知らないのか?」

「うん」

「まぁ、多分だけど。──コワルスキーが知ったらすこぶるうるさそう」

 

 えへへ、そんな褒めないでよもう。

 

 

 

 ==========

 

 

 

 ホグワーツに辿り着くまでに、雨はごうごうと鳴き声を上げていた。

 

「初代ーー!!」

「うわぁ!!??」

 

 ビシャーーン!!!

 城に入るまでに苦労して避けていた雨水だったが、ピーブズの水風船のおかげで頭に巨大な水を被ってしまったのだった。

 

「へへ、初代討ち取ったり」

「ピーブズ!」

「あれ、怒った?珍しい」

「ハーマイオニーの服に水がかかっちゃうでしょ!?」

「そっちかよ……」

 

 ピーブズは数個の水風船を抱えたままぷかぷかと浮かんでいる。

 

「コワルスキー!」

 

 すると、カンカンに怒ったマクゴナガル先生が私を指名した。

 

「ピーブズの手網くらい握りなさい!」

「えぇ…………私なの……?」

「当たり前です」

 

 びちゃびちゃと髪の毛を濡らしながら見上げるとピーブズはべーっといたずらっ子の笑みを浮かべていた。

 

 マクゴナガル先生さぁ、私がエミリーだって気付いてから審査が厳しくない?テストも課題も、やけに難しいし。

 

「ピーブズ〜。可哀想な私のためにも、降りてくんない?」

「やーだね!いいじゃん、あんたにしか当ててないんだしぃ?よぉし、じゃあセブルス・スネイプに向けて水風船打ち込んでこよ!」

「──それを私が見逃すと思わないでよね!?」

 

 ぴゅん、と飛んでいくピーブズを慌てて止めるために駆け出す。

 マクゴナガル先生は『ついでに着替えでもして戻ってきなさい』と叫んだ。たしかにこんな濡れ鼠じゃ、組み分けもしっかり見えない。

 今年はメアリーの親戚やコリンの弟が入ってくるらしいからどこに振り分けされるのか見たかったし振り分け前に待機室に忍び込んで今年も挨拶したかったのにさぁ。

 

「セブルス覚悟ー!」

「だからピーブズ!」

 

 セブルスに向かって風船を投げようとするピーブズを止めるために間に割り込めば、可愛いセブルスが私に魔法を飛ばした。

 

「〝シッカティオ〟」

「うわぁ!」

 

 びしょ濡れだった髪も服もすべてカラッカラに乾燥した。洗濯乾燥呪文。ちなみにこれはリリーのオリジナル開発した魔法です♡

 

「ご苦労ピーブズ」

「貸しだぜ?」

 

 ピーブズはふふんとドヤ顔をして壁の向こう側に行ってしまった。

 

「こんばんはセブルス……どうしたの?可愛いけど、しんどそうな顔をしているわ」

「……コワルスキー、聞きたいことがある」

 

 セブルスは疲れているのか、顔色がいつも以上に悪かった。

 

「ミリ・エミリー・コワルスキー。お前はハリー・ポッターが危険に巻き込まれる時、どう行動する?」

「絶対守るよ。もちろん、巻き込まれないように防ぐのが一番だけどね」

「たとえそれで、己が危険な目に遭ってもか」

「当然じゃない」

 

 とても、苦しそうで苦い顔をしていた。

 

「セブルス」

 

「……なんだ」

「私はハリーみたいな子供達が危険な目に合うのはごめんなの。ハリー達を危険に巻き込むなら、セブルスでも許せないかもしれない」

 

 私の言葉を聞いたセブルスは、ホッとしたように眉間のしわを緩めた。

 うっ、可愛い。

 

「コワルスキーらしいな」

「でも、セブルス、忘れないでよ?」

 

 子供たちを守ることは最優先だけど、忘れて欲しくないことがあるのでセブルスとしっかり視線を合わせた。

 

「セブルスが危険な目に遭うのも嫌よ。私は貴方の相棒で、すっごく大事な存在なの。忘れないでね」

「……、あぁ、忘れたことは無い」

 

 セブルスの微笑み、あまりにも尊すぎて愛しさが爆発してしまった。今年はいいことが沢山起こりそうな気配しかしないわ。

 

「愛してる……!」

「そうだろうな」

 

 脳みその後ろの方が沸騰した。

 

 

 

 

 

 私が大広間に戻った時には組み分けはほぼ終わっていた。

 

「いまLの行?」

「おかえり」

「それよりお腹空いたよ」

 

 ロンがお腹をさすりながら呻いている。

 

「マッドリー、ローラ!」

「マクドナルド、ナタリー!」

 

 おっ、メアリーの親戚グリフィンドールに振り分けされたんだ。

 すると残り三人くらいで組み分けは終わった。

 

 興奮冷めない1年生を微笑ましく眺めながら、可愛くない校長が簡潔な挨拶をして、テーブルにご馳走が並んだ。

 グリフィンドール寮付きのゴースト、ほとんど首なしニックが私を見ながらいった。

 

「さっき厨房で問題が起きましてね」

「えっ、すごい嫌な言葉。ニコラス、何があったか聞いてもいい?」

「ピーブズが祝宴に参加したいと駄々こねましてね。太った修道士はチャンスを与えてはと言いましたが、血みどろ男爵がダメ出しをして」

「まさか、癇癪起こしちゃった?」

 

 もしかして厨房えらいことになってたとか、ピーブズのポルターガイストなら有り得て息を飲んだ。

 

「いえ、そこまででは。屋敷しもべ達があなたのレシピで作ってるのを見てまして。おかげで逃げてしまいました」

「うーん……」

 

 おそらく、私の使い魔になってしまえればピーブズの立場はしっかりするものになるし、パーティーとかにも参加できるようになるだろう。

 私、1回契約に失敗してるしなぁ。もう少ししっかり計画立てないと、ピーブズが認めてくれない。

 

 どうしようかなぁ。頭いい人に助けて貰うしかないよね。

 

「屋敷しもべ妖精ってホグワーツにもいるって言うの?」

「うん、いるわよ。特に厨房にいるんだけど、多分100匹位はいるかな?」

「私、1人も見たことない!」

「そりゃ、ハーマイオニーは校則をしっかり守ってるもの。夜中とか、早朝とか、生徒が出歩き出来ないタイミングでするの」

 

 ハーマイオニーの質問に答えていると、ハーマイオニーはぷくっと頬を膨らませた。

 きゃわいい。

 

「そんなの奴隷みたいだわ!ちゃんと給料や有給みたいな対価を払わないと!」

「あはは、人から見たらそうかもね」

 

 私はかわいいかわいいハーマイオニーの頭を撫でた。

 

「屋敷しもべ妖精っで、すごく高貴でプライドが高くて、気高い生物なの」

「……どういうこと?」

「例えば、ハーマイオニーがやりたいこと、そうね、勉強を頑張っているとするじゃない。なんのため?」

「私のため、だけど」

「そう。ハーマイオニーは自分の誇りのために頑張っている。例えばボランティア、貴女は人のために何かをして助けたいという心で行っているとするじゃない」

 

 ハーマイオニーはこくりと頷き私の話を聞いた。

 

「それを見て、例えばセブルスが『グレンジャー、貴様はやりたくないことを行うなど、実に高尚な趣味をお持ちだ。教科書を1ページ捲る事に箒でグラウンドを一周する機会をやろう。なぜ喜ばない?なぜしない?』って言われたらどう思う?」

「腹立つわ。するのも喜ぶのも私の勝手だし、そもそもそんな風にご褒美を貰えるためにやってる勉強じゃないもの。……ご褒美でもないけど」

「じゃあもうひとつ、ミミズっているじゃない」

「えぇ」

「ミミズの糞が土壌を良くするのは分かる?」

「もちろん」

 

 魔法界もマグルも関係ない例題を出せばハーマイオニーだけじゃなくて周りの生徒たちも聞き耳を立てた。

 

「畑のためになる糞を出すミミズに対して、『ありがとうミミズさん!これ、お給料!』って現金を渡す。……どう思う?」

「すごく無意味なことをしているわ」

「そうなの!」

 

 その前提を踏まえて、私は屋敷しもべ妖精について説明をした。

 

「彼らはお金とか、社会とか、そういう仕組みに入りたがらないの。言葉が伝わるから人のように思えるけど、彼らは屋敷しもべ妖精というひとつの独立した生命体で、人とは違う価値観で生きている。ミミズの恩恵をあやかっている農家のように、サメの恩恵をあやかっているコバンザメのように」

「……片利共生ってこと?」

「うん、それがすごく近い。屋敷しもべ妖精は古くから魔法族の家に仕える存在で、『仕える家の格』こそが誇りなの。彼らにとっての自由って『家に仕えなくていいから勝手にしてくれ』って放置されるようなものでね、まー、なんて言うか。とっても嫌がられることなのよ」

 

 彼らは魔法族と違った強力な魔力を持つから、自分の魔法を制限する呪い(主人の命令を絶対に拒めない縛り)をかけているから、パワーバランスとしては人間が強いんだけどね。

 でも屋敷しもべ妖精がいなければ、万年人手不足の魔法界やお屋敷管理は回らない。

 

「何が言いたいか簡潔に言うと、屋敷しもべ妖精のことを外野からあーだこーだ議論する事こそ彼らの立場を蔑ろにしているようなもので、彼らのしたいことややりたいことをちゃんと聞いて、その意見も尊重すべき。それが今と何も変わらなくてもね」

「まるで民主主義ね」

「そうね、だから私は屋敷しもべ妖精達には、レシピや道具をプレゼントするの。お礼を言うの」

 

 神様みたいなものだから。信仰やお礼やお供え物こそが彼らにとって1番大事だと思う。

 

「ですから、初代は魔法生物に好かれるんでしょうね。屋敷しもべ妖精も大雑把な分類は魔法生物ですから」

「やだ嬉しい!」

 

 ほとんど首なしニックの褒め言葉にニッコニコだ。

 

「ミリってば鈍感魔法生物オタク……」

 

 ネビルの呆れた顔。褒められてるに違いないことはわかったわ。ありがとう。

 

 

 

 

 

「──さて、皆よく食べ、よく飲んだことじゃろう」

 

 食事も終盤に差し掛かり、ダンブルドアが再び話を始めた。

 

 フィルチの持ち込み禁止一覧に新しくいくつかふえたとのこと。

 それから──。

 

「今年の寮対抗クィディッチ試合は取りやめじゃ」

「えぇ!」

 

 クィディッチワールドカップからクィディッチ欲が高まって今か今かと楽しみにしていたハリーはその言葉に驚きの悲鳴をあげる。可愛いね。

 

「これは十月に始まり、今学年の終わりまで続くイベントのためじゃ。わしは、皆がこの行事を大いに楽しむであろうと確信しておる。ここに大いなる喜びを持って発表しよう──」

 

 しかしその時、発表しようとするダンブルドアの言葉を遮るような雷鳴が轟き、大広間の扉がバタンと開いた。

 

 戸口に1人の男が立っていた。

 コツコツと鳴る足元。片足は偽足のようで片手も大きなビー玉のような目玉がぎょろぎょろと動いている。

 旅行用のマントを着た彼は、壇上のダンブルドアに話しかけていた。

 

 傷だらけの顔は、傷をなくしてもきっと好みでは無いだろう。

 

 

「闇の魔術に対する防衛術の新しい先生をご紹介しよう、ムーディ先生じゃ」

 

 でも、どうしてだろう。

 どうして。

 

「ムーディって、マッド・アイ・ムーディ……?」

「多分、日刊預言者新聞の人だと思う」

 

 どうして。

 

 私はがたんと立ち上がって教員席まで歩いた。

 

「どうして……っ」

「ミリ、どうしたんじゃ?」

 

「──可愛くないのに可愛い!どうして!?なんで!!???」

 

「は……??」

 

 私は脳みそが混乱してどうにかなってしまいそうだった。

 

「こんな、くっっっそみたいに汚い見た目と顔で、何処にもときめく要素が微塵もないのに!見た目も何も可愛くないのに!可愛い!!!可愛い気配がスる、どうして、どうして……!?可愛くないのに可愛い……!天使の気配がする!胸が、ときめいておかしくなってる!」

 

 ギョッとしたムーディ先生は1歩だけ私から逃げるように下がった。

 

「可愛い!!!!なんで!!???助けて!!!」

 

 脳みそがおかしくなっちゃった!!

 私が頭を抱えていると、ダンブルドアとマクゴナガル先生が杖をムーディ先生に向けていた。

 

 そしてムーディ先生の死角からセブルスも杖を握っている。

 

「…………すまぬ、ムーディ」

「なっ……!?」

「お主は誰じゃ?」

 

 驚く顔も可愛くないのに可愛いな!??

 

「──〝レベリオ〟」

 

 背後から、セブルスの呪文が炸裂した。

 

「きゃあ!!」

 

 すると、ムーディの顔面が変わり、みるみるうちに光り輝くような美しくもあり可愛い顔が出てきた。歳は少し下くらいの、気品ある顔。

 

 

「──可愛くない面の中からどちゃくそに美人が出てきたんだけど!!??うそっ、可愛い、えーーー可愛すぎる」

 

「〜〜〜〜〜っ!!!これだからコワルスキーは嫌なんですよ!!!チィッ!!!!」

 

 舌打ちですら美しいの何?その舌打ちを時計の秒針にして毎秒聞いていたい。

 

「バーティ?バーティじゃない?やだもお、生きてるなら生きてるって言ってよ!獄中死したって中で聞いた時はもうハチャメチャに驚いてたんだから」

 

「セブルス・スネイプ!!!」

「やめろ!我輩を担当にさせるな!」

「チィッ!!」

 

 バーティの顔面ってさ、教科書に載せて愛の始まりって単元にしたほうがいいと思うんだよね。

 

 

 

「……アルバス、彼女は好み限定の変身術クラッシャーすぎませんか?」※変身術教師

「……わしも全く同じことを思っておったよミネルバ」※元変身術教師

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。