─矛盾─   作:恋音

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4-4.防衛術の教師

 

「あれ、私なんかやっちゃった?」

 

 ムーディさんに化けていた可愛いバーティが恨めしそうに私を見ている。

 

「……私は生粋のドMだと思ってたんだけどそんなふうに睨まれたら加虐心生まれちゃいそう」

「ヒッ」

「コワルスキー!!!!」

 

 小さな可愛い悲鳴に目を見開けば、私とバーティの間にセブルスが滑り込んだ。

 

「なあにセブルス♡♡♡♡♡嫉妬?」

「もうそれでいいから下手に犠牲者を増やすな馬鹿」

「スネイプ先輩……っ!たかだか半純血のクソ野郎だしななんて思ってすみません」

 

 バーティはセブルスの背中にビタァ!とくっ付いた。やばい、可愛いのと可愛いのがくっ付いてる。

 

「……どうしたものか」

 

 ダンブルドアが悩ましい声を上げてるけど、そんなことどうでもいい!あまりにも、視界がハッピー……!

 

「ミリや」

「後にしてダンブルドア」

「なぜ分かった?マッド・アイ・ムーディが、別のものに化けられておる、など」

 

「……???愛よ?」

「…………そうか、愛か」

 

 愛だから仕方ないじゃない。

 変身術かポリジュース薬か分からないけど、私が天使の気配に気付かないわけなくない?

 

「あっ!!」

 

 私は気付いてしまった。

 

「バーティのお父様ってクィディッチワールドカップで私をアズカバンに入れてくれたあのクソ頑固ジジイ!?名前一緒だわ!!!???」

「──今か!??あとややこしくなるから黙っておるんじゃミリ!」

 

 背後の生徒たちから『ついにとうとうこいつやったか』って声が聞こえてくるの。まるで私が犯罪を犯して当然みたいな反応やめて貰えないかな。天使以外。

 

「セブルス、そのまま彼を保護しておってくれぬか。後で魔法省に連絡を入れよう」

「承知しました……。おいコワルスキー、スーツケースを貸せ」

「おっけー、よろしくね」

「ミリのトランクは牢屋ではないんじゃが……」

 

 ダンブルドア、トランクじゃなくてスーツケースね。イギリスな言い方しないでよ、私アメリカ人。

 

 セブルスにスーツケースを渡せば、顔を覆うバーティがついて行った。

 一応、と言いたげにマクゴナガル先生も後を追う。

 

「ミリ、ハウス」

「犬じゃ無いんだけどぉ!?」

 

 ダンブルドアの命令に渋々グリフィンドール席に戻った。

 

「どういうこと?ムーディって今朝うちのパパが助けに行ったとかって話してたけど」

「そうなの?」

 

 混乱は収まらず、私はロンの言葉に首を傾げた。

 夏休み中何も情報を入手してないし、なんならムーディって見た目は全く可愛くないから気にしたことも無かったから何も分からないや。ハリーが可愛くてアズカバンがテーマパークみたいなことしか覚えてない。

 

「おっほん」

 

 ダンブルドアが杖で喉を軽く叩き、わざとらしく咳払いをした。

 大広間に漂っていたざわめきが、まるで魔法で抑えられたかのように静まる。

 

「さて──。多少のトラブルはあったが、君たちがこれから迎える出来事に比べれば、ほんのささやかな綻びに過ぎん。むしろ、これから数か月にわたって我が校を彩ることになる、大いなる催しの前触れと考えてくれてよい」

 

 大きな間を取ってから、彼は楽しげに目を細める。

 

「今年、ホグワーツで三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)を行う」

 

 その瞬間、張りつめていた空気が一気に爆発した。

 ほとんどの魔法界育ちの生徒たちは歓声をあげ、椅子を軋ませて立ち上がる。グリフィンドールのテーブルではウィーズリーの双子が飛び跳ねんばかりに騒ぎ、ハッフルパフからも大きな拍手が起こった。

 

 一方で、私やハリーのように魔法界の常識に疎い者は、互いに顔を見合わせてなんのこと?と首を傾げるばかりだ。

 

「さて、この試合がいかなるものか。知らない諸君もおろう」

 

 ダンブルドアはそう言って三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)がなんなのか説明し始めた。

 

 三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)はホグワーツ、フランスのボーバトン、そしてスカンジナビアのダームストラング。三大魔法学校の代表選手が一堂に会し、誇りと魔法の力を競い合う親善試合らしい。

 

 もっとも親善と言っても過去には命を落とす者も多く、あまりの危険さゆえに長らく中止されていたようなのだが。今回、国際魔法協力部と魔法ゲーム・スポーツ部が再開を決定し、厳重な安全対策のもとで催されることになった、と言っていた。

 

「ボーバトンとダームストラングの校長が代表選手の最終候補生を連れて10月に来校し、ハロウィンの日に代表選手3人の選考が行われる。厳粛な審査に基づいての」

 

 ダンブルドアの声に合わせて、学生たちは息を呑む。

 優勝者には栄えある優勝杯、そして学校の名誉と、一千ガリオンという大金が授与される。

 

 大広間のあちこちで、すでに立候補を夢見る声が飛び交っていた。

 だがそこでダンブルドアは、ひょいと人差し指を立てる。

 

「……ただし」

 

 その一言で場の熱が少し冷める。

 

「選ばれるのは十七歳以上の者に限られる。規定は絶対じゃ。例外は認められん」

 

 肩を落とす声があちこちから響き渡る。

 もちろん、今にも応募用紙を握りつぶしそうなフレッドとジョージも例外ではなかった。

 

「はい、ダンブルドア。ひとつ質問いい?」

「……一応聞くだけ聞いとこうか」

「可愛い子は──」

「さて、闇の魔術に対する防衛術の教授についてはもう少し待っていただくことにしようかの」

 

 無視!!!!

 

 

 ==========

 

 

 

 ハロウィンが近づき、三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)の興奮は冷めないままハロウィンまでの時間は過ぎていった。

 

 魔法生物飼育学では、シッポ爆発スクリュートという最高極まりない生物と初対面を果たし、生徒たちの叫び声と爆発音と歓喜の笑顔が絶えなかった。数占いでは、未来を読み取るどころか数式に頭を抱え、意味わかんない!と呻く声が教室に響き渡る。占い学とくらべればマシだと思うけど、どうしてもね。

 

 どの授業も内容は通常通りのはずなのに、生徒たちの意識は常に試合のほうへ引っ張られていた。

 

 そして闇の魔術に対する防衛術はお休みとなり、代わりに自習課題が課せられる。生徒は皆、渋々羊皮紙に羽ペンを走らせた。私はというと、興味の赴くままに人狼の習性と対策についてレポートをひたすら書き連ねた。

 内容がやたらと書き込みすぎたのか、あとでセブルスに「趣味で書きすぎだ」と言われてしまったわ。趣味です。

 

 

 やがてハロウィン当日。

 午後六時にボーバトンとダームストラングが到着する予定だと知らされており、迎え入れの準備のため、私たちは五時前には大広間へ集まるよう指示を受けていた。生徒たちの間では「どんな生徒が来るのか」「外国の制服は格好いいに違いない」などと想像が飛び交い、落ち着きがまるでなかった。

 

「どうやら闇の魔術に対する防衛術の先生が到着したらしいわよ」

「そうなんだ。さっすがハーマイオニー、耳が早いね」

 

 大広間に向かうハーマイオニーについて行きながら可愛い会話に耳を傾けていた。

 

「それにしたってマッド・アイ・ムーディってどうなったの?」

「さぁ……?それより三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)が楽しみすぎて、みんなそれどころじゃないから」

「17歳になった人達はみーんな立候補するらしい。今後の就活にも便利だし、なんてったって──一千ガリオンだ」

 

 その声には、普段うちは貧乏だからと言っている彼らしい必死さが滲んでいた。

 

「一千ガリオンあったら……僕兄貴たちに負けないくらいの新しい杖を買うんだ。いや、それとも箒を揃えるのもいいし……」

 

 握った拳が震えているのがわかる。

 取らぬ狸の皮算用なんて言葉が東洋にあるけど、ロンは未だ14歳だよ?

 

「ロンが代表に選ばれることはまずないから安心なさい。杖なら私が買ってあげるわ」

 

 その提案は嫌だったらしい。少しムッとした様子を見せた。

 

「双子なんてさ、どうにかして年齢を誤魔化そうと一生懸命策を練ってるんだから。あの二人が諦めるわけないよ」

 

 ロンが呆れ混じりに言うと、ハーマイオニーが眉をひそめる。

 

「フレッドとジョージならやりかねないわ。でも、ダンブルドアに通用すると思ってるのかしら」

「無理だね〜。17歳以上で良かったよ、おばあちゃんなら僕を無理矢理にでも立候補させてた」

 

 ネビルの安心した様子の声。

 そんな他愛のないやり取りをしながら、大広間へ入っていく。

 

 頭上の天井はすでに夕暮れ色に染まり、無数のキャンドルが揺れていた。長いテーブルのあちこちで生徒たちが集まり、興奮した声を潜めることなく飛ばし合っている。

 

「代表になるのは誰だと思う?」

「やっぱりクィディッチの選手とか!」

「いや、頭の切れる奴じゃないと死ぬだろ」

 

 スリザリン席では純血貴族に囲まれたドラコがこちらをちらりと見て小さく手を振っていた。グリフィンドールの面々が手を大きく振り返している。仲良し可愛いね……ちゅき……。

 

 そんなざわめきの中、ダンブルドアがようやく現れて言った。

 

「浮き足立っておるじゃろうに、わざわざ時間を取ってくれて感謝する。さて、こんな大事な日に事前に集まってもらったのにはわけがある」

 

 大広間の空気が一気に引き締まった。

 ざわめいていた生徒たちは次々と顔を上げ、どよめきを飲み込む。

 

「新しい、闇の魔術に対する防衛術の先生を紹介しようと思う。大変優秀な方でな──おそらく、皆の中にもその名を聞いたことのある者が多かろう」

 

 ダンブルドアの視線が私に向いて、バチコン、とウインクをした。

 

 ま、まさか……!?

 わたしの好みを熟知しているあのダンブルドアだから、天使級の逸材を呼んでくださったとか……!?

 

 リーマスみたい、て、天使とかやってきちゃったりするの……?

 

 思考が一気に最高潮に達する。

 

「スリザリンのように魔法界に馴染み深い皆ならほとんどが名前を聞いたことのある者じゃ。と言っても、本人は気さくで昨年のルーピン先生や、魔法薬学のスネイプ先生と同じくらいの先生じゃ」

 

 ま、まさか……。

 

 ピーター……いや、まって、もしかして。

 当主を譲って少し暇になったスリザリンの大貴族で大天使の──!!

 

「では紹介しよう」

 

 ダンブルドアの合図と共に現れたのは、黒いつややかな髪に凛とした背筋。どこか浮世離れした──

 

「レッ……!」

 

 吐き気がするほどのハンサムな顔がそこにあった。

 

「──シリウス・ブラック先生じゃ」

 

 

 

「なんでてめぇなんだよぉ!!!!!!!(500db)」

「うるせぇぞコワルスキー!」

 

 

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