「こんなのってないよォ……」
机に突っ伏しておいおい泣いていると可愛い女の子達にきゃあきゃあ騒がれてるシリウスがのそのそやって来た。
「端的に言って死んで欲しい……」
「その単語だけはやめろシャレになんねぇだろうが」
「シリウス!」
「よぉハリー。今年1年よろしくな」
ハリーは嬉しそうに顔を上げて微笑んでいる。くっそー、可愛いハリーが喜んでいることへの幸福とレギュラスでもMr.オリオンでもなくてシリウスだったことへの期待からのどん底で体が宙に浮いてる……。
「ワールドカップでも思っていたけど、身綺麗にしたら、とんでもなくハンサムな方だったのね……」
「わかったシリウス、今から私はお前を肥溜めにぶち込むから」
「俺から身綺麗を取ろうとするな」
やだぁ、これだからイケメンはよろしくないんだよ!可愛い天使たちの視線を釘付けにするんだもん!やだ!
「おっ、スネイプいるじゃん。あぁスネイプ!会いたかっ──」
「──阻止!阻止阻止阻止!全力阻止!」
私はセブルスの方向に向かっていくシリウスに足払いをかけて思いっきり転けさせてやった。魔法では勝てないけど、腕力もステゴロも私の方が強いんだからね!
「コワルスキー!それ貴族!純血貴族!」
「しかもブラック家の当主だって!お前ほんとに大概にしろよ!?」
「マルフォイ、止めてくれ……今すぐ……」
背後で純血共が騒いでいる。
可愛くないので一旦無視して、私はシリウスを踏み抜いた。
「私の目が緑のうちは、セブルスにぜっっっったい近寄らせないんだからね!!!!???」
「くっ、アズカバン上がりの可哀想な俺に手心はないのか」
「こちらだってアズカバン上がりだから条件は一緒なんだよこのスットコドッコイキス魔野郎!なんだったら相棒補正がかかるので私の方があんたより上!」
「てっっっめぇ……!出してやるつってんのに自ら閉じこもってたコワルスキーに言われたかねぇんだがな!?土台条件がちげぇわ!」
いがみ合っていると頭をスパーンと叩かれた。
「貴様ら、うるさい」
「セブルス♡」
「スネイプ!」
「周りの視線も考えず、貴重な式典を前にしてギャンギャンガーガーと、貴様らは躾のなっていない野生動物か?えぇ?両者ともに無視されたくないのであれば、少しは仲良く過ごしたまえ」
愛おしい……びっぐらぶ……。
好かれていることが標準装備で『無視する』が武器になってるセブルス・スネイプ(愛されの図)が尊くて仕方ない。
「仲良くしましょ、シリウス」
「あーこれこれ……流石コワルスキー、なんて芯の通ったぶれ方……泣けてきた……」
セブルスは眉間に皺を寄せハリーの方を見た。
「良いかポッター。このふたりを同時に御するのは貴様か我輩かミネルバくらいしか居らぬことを肝に銘じて今年度を過ごすことだ」
「スネイプ先生……!」
キラキラお目目のハリーめちゃくちゃ可愛いな!?い、愛しい……!
「ハリー、可愛い、大天使……」
「あんなにジェームズに似てるのになんでコワルスキーの天使の括りに入ってんだ?」
「は?目、ついてる?ハリーのあの可愛さがジェームズに似てる?写真でも見比べて見なさいよ、ふざけた平均男に比べて、見てみなさいよ私のハリーを。天井突破レベルに可愛くて清くて尊いハリーを」
「脳みそついてる?」
「──ミリ、シリウス」
「「仲良し!」」
ハリーのちょっと怒な気配に私とシリウスは咄嗟に肩を組んだ。
「……ここはリリーの方に似てる」
シリウスのちいさな感情が零れていた。
「所でセブルスとシリウスに聞きたいことがあったんだけど、バーティってどうなったの?」
「あー、あれな」
「……今はそのような事を話している暇など無い」
セブルスは踵を返して去っていった。
「あいつ、なんであんなにぴりぴりしてんだ?」
「緊張してるセブルスも可愛い……」
「お前に同意を求める方が間違いだってことをようやく思い出した」
シリウスは私の肩に体重をかけて説明し始めた。
「バーテミウス・クラウチ・ジュニアは、父親のシニアにアズカバンを出され、アズカバンには母親が代わりに入って死んだらしい」
「地獄?」
「そんでもって家に監禁されていたんだが、逃げ出して姿を眩ませて居たそうだ。今はシニアは脱獄させた罰として死ぬほど仕事を回されて、ジュニアの方は……正直扱いに困ってる。アズカバンに戻すにも、父親のせいとはいえ脱獄した実績があるからな」
「シリウスも脱獄したくらいだしね」
「だから、今は魔法省預かりだ」
ふぅん。
悪いようにされてないのならいいんだけど。
「ちなみに、興味は無いと思うがムーディはジュニアが持ってたトランクの中で閉じ込められていた。ポリジュースの材料にもなるしな。今は魔法省でジュニアの監視役として働いている」
「本当に興味が無いわ、羨ましいとは思うけど」
私もバーティの一挙一動を観察しておきたい。
「あのさ、ずっと聞きたいことがあったんだけど」
ロンが小さく手を上げた。
「お、どうしたロン。私が答えられることならなんでも答えよう」
「……二人って付き合ってる?」
「ない」
「絶対ない」
「なんか、シリウスさんと初めて会った時ミリがいつも通りメロメロしてたし……」
「ロン、気を付けて。私の好みはシリウスじゃない。シリウスの他の家族や、ドラコの方が好き。もはや比べるのもおこがましいくらい。──イケメンが嫌い」
本当に嫌い。面食いハーマイオニーがこっそりシリウスの顔面を観察しているのが分かってるから尚更嫌い。
「じゃあなんであんなにキラキラしてたの?」
「いい質問ねネビル。答えはひとつ、シリウスを混乱の渦にたたき落とすために我が精神を犠牲にした渾身の作戦だったのよ」
「俺ほんと可哀想」
雑談をしていると、生徒たちは玄関ホールに向かうように指示があった。どうやらお客人が到着する時間がまもなくらしい。
式典用の帽子を被ると、寮監の先生たちが整列をさせていた。
「じゃあ私はスネイプのそばにいるから、ハリー、困ったら私かスネイプに頼るんだよ。もちろんお友達も」
「ありがとうシリウス」
「コワルスキー、大人しくしてろよ」
「分かったから、そっちこそ私の愛しのセブルスにちょっかいかけないでよね」
互いに釘を刺しつつ、寒空の中他の生徒を待っていると空からパステルブルーの馬車が姿を現した。十二頭の天馬──アブラクサンが金色のたてがみを振り回し、真っ赤な綺麗な瞳でこちらを見た。
「すごい……!」
やがて衝撃音と共に馬車が地面に降り立ち、中から背の高い女性が出てきた。
「これはこれは、マダム・マクシーム。ようこそホグワーツへ」
「ダンブリードール、おかわりーありませーんか?」
「お陰様で上々じゃ」
「わたーしの、せいとでーす」
マダム・マクシームと呼ばれた女性の後ろから、寒そうにショールを巻いているボーバトンの生徒達が馬車から出てきた。
「カルカロフは、まーだきませんか?」
イギリスって寒いわよね。分かるわ。
私は、1年のクリスマスの時にピーターから教えてもらった体温を上げる魔法を、彼女達にぶつけた。
「……?あたたかーいでーす」
「外でお待ちになって出迎えなさるかな?それとも城中に入られてちと暖を取りますかな?」
魔法、使えるようになってよかった。死んだかいあるわ。
ピーターみたいに優秀なこが1年生の時におぼえたと言っても、私が使えるようになったのはつい最近なのだけどね……。実技劣等生の称号までは払拭出来ないわ。
「急に、あたたかーくなりましたので、外で大丈夫です。それから、ウーマは」
「こちらの魔法生物飼育学の先生が喜んでお世話するじゃろう」
「わたーしのウーマたちの世話は、あー、力いりまーす」
「……いやいや、ホグワーツの先生なら平気じゃろう。それに生徒もおるし」
「生徒が、でーすか?」
「──ミリ・コワルスキー、来なさい」
「はーい!」
校長直々のお呼び出しに私は咄嗟に出てきた。
「ダンブルドア、ダンブルドア」
「ミリや、天馬の世話は可能かな?」
「試してみてもいいかしら?気持ち的にはいける!」
ダンブルドアが微笑んで頷いた為、ゆっくりアブラクサンの方向に向かうと、伸ばした手をスンと嗅がれた。
「行けるわ」
「ふむ」
「お肉は食べれる?いや、飲みものしかダメそうね、胃の機能が制限されてる気がする。よーしよしよし、匂いが気になる?貴方達が来るってわかってたらもうすこし匂いを落としてきてたんだけど、鳴き声はセストラルやユニコーンに似てるかな?」
大きく筋肉質な体をゴン、とどつくようになでれば、気持ちよさそうに目を細めた。
「……リーエムの筋肉増強薬飲んだら肉体ケアもできるかな?」
「で、ミリや。ハグリッドにも世話は出来るかの?」
「うん、大丈夫!むしろケトルバーン先生よりハグリッドの方が向いてる子達だわ。確かに力がいるから」
ダンブルドアはマダムに向かって『見よ、わしの生徒を……』みたいなドヤ顔をしている。腹立つから後でブーブークッション仕込んでおこう。
「マダム、ご滞在中のお世話は私かハグリッドにお任せ下さい」
「なんという、ことでしょー……。一介の生徒が、わたしのウーマをここまで、おどろきまーした」
アブラクサス・マルフォイ様ってもしかして金色の髪の方だったのかな。めちゃくちゃ会ってみたかった。でも今はとにかく天馬に会えたことが最高にハッピー。
遠くでセブルスとシリウスが目を覆ってるのが見えた。
「可愛いねぇ君たち……やっぱり魔法学校で飼育されてる危険生物は学生の気配が多いから穏やかな性質になる子が多いのかな……」
私が天馬とボディタッチをして遊んでいると、ゴロゴロとくぐもった音が聞こえてきた。リーが湖を指さすと、そこから船が飛び上がってきた。
ボーバトンの細さとは対極に、乗船員はモコモコと分厚い毛皮のマントを着ている。
「ダンブルドア。やぁやぁ、しばらく。元気かね」
「元気いっぱいじゃよ、カルカロフ校長」
ところで天馬さん、おたくの学校の生徒、ショールをとった姿があまりにも美しすぎて大変なんだけど、どうしたらいい?
どうやらクィディッチの選手のクラムが来ているようで、生徒たちは彼らに一目見ようと一言会話しようと盛り上がっている様子。
私はそんな様子を尻目に、私はボーバトンの生徒とレイブンクローで話していた。
『とっても可愛い、フラーっていうの?素敵ね。英語では喝采って意味なの、まるで貴女の誕生を世界中が祝福しているみたいだわ。私ミリって言うの。フランス語も少しは分かるから、困ったら頼ってね』
『まあ、フランス語お上手だわ。でも英語も勉強したいの、ミリ、教えてくださらない?』
「うっ、崇拝……。愛おしい……。好きって言葉をあなたに使うのが失礼なんじゃないかと思って崇拝って呼ばせてもらうわ、崇拝」
「英語、むずかーし、ですね」
「貴女にとっては崇められたり見惚れられたりするのは飽きるほどでしょうけど、私みたいな凡人に出来ることは祈ることだけだわ」
一言一言が可愛い。圧倒的美人から繰り広げられる拙い子供のような英語、ギャップで風邪が治りそうだわ。
「それにしても、あなた、でしょ?」
隣からさらにもう1人の美女が私の頬をつついた。
「寒かったの、あっためてくれーた人」
「すごいわ、バレないようにしたのに」
「まぁ、貴女だったーの?ありがとう!」
「とてもあたたかーいです」
私、ボーバトンに住む。
「私アメリカ人なの。それで寒いのに弱くってね。私の大事な友達が、わざわざ当時の先生に教わって掛けてくれたの。最近になって出来るようになったから、出来てよかったわ。貴女たちみたいな世界の宝物が、寒さで凍えて美貌を隠すだなんて世界の損失だもの」
あまりにも愛おしすぎて微笑みが止まらない。どうか私を愛の奴隷にしてください……。
「あらー?お客人ですねー?」
フラーが可愛らしく首を傾げるとマダム・マクシームの隣にクラウチが座っていた。そしてその横に、もうひとりが座る。ワールドカップで双子と話していた人だ。可愛くない。よし。
「時が来た」
ダンブルドアが大仰にそういうと、国際魔法協力部部長バーテミウス・クラウチ・シニアの紹介と、魔法ゲーム・スポーツ部部長のルード・バクマンを紹介する。
どうやらルード・バクマンは人気のようで、大きな拍手が巻き起こっている。
このふたりが、今回の対抗試合の準備をしたようだった。
「代表選手は彼らの考えた課題を三つ、1年間に渡って行われる。魔力の卓越性、果敢な勇気、論理推理力、言うまでもなく危険に対処する能力などじゃ」
そしてダンブルドアは杖を取りだし、フィルチが持ってきた木箱を三度叩く。
すると、木でできたゴブレットが現れ、縁から溢れんばかりに青白い炎が踊っていた。
「よいか、わしがこの周囲に年齢線を引く。17歳未満のものは何人足りともその線を越えられぬことは出来ぬ。そして名乗りを上げたいものは、
ゴブレットには魔法契約に拘束されるから、選ばれたからには最後まで競技しなければならないらしい。
長ったらしい忠告が終わって、フラーが私に語りかけた。
「あなたは、代表選手に名前、いれまーすか?」
「ううん、入れないわ。天馬のお世話したいし」
「それなら、よけーれば、うちの馬車でお泊まりしませんか?皆、貴女、好きです」
「ぎょわ……!え、そんな光栄なことをしてもいいの?神々の宴に参加して、そんなに名誉な……!」
「英語むずかしー、ですけど、喜んでるは分かるですー。マダム・マクシームに、聞いてきますー」
ボーバトンの人達は全員ゴブレットに名前を入れるようで、私は女神たちに囲まれてしあわせな時間を過ごすことが出来る光栄に、心踊った。
「ふっ、すまんな非モテボーイ共。留学生の天使ちゃんたちを、同性特権で独り占めさせてもらうわ!」
「引っ込めコワルスキー!」
「クラムに目もくれず口説きやがって!」
「変態女!」
「どうも!褒め言葉だわ!」
お近付きになりたい男たちの妬みが聞こえてくるのを無視して、私は高笑いをした。あー、幸せ。
「マダム・マクシーム。うちの生徒がお世話になるの。何、一日だけでいい。一応念の為、ミリから目を離さぬように誰かと共に行動しておってくれ」
「わっかーりました。ミリ、貴女を歓迎しまーす。英語が苦手な子達に、英語を教えてくださーい。それからウーマのお世話も、よろしくです」
そこから私は幸せな時を過ごした。四六時中、と言ってもゴブレットの発表があるまでだけど、ボーバトンの子達とキャッキャウフフな時間を過ごした。魔法生物のお世話もあったけれど、マダム・マクシームが興味を持っていたので招待しつつ楽しい時間を過ごさせてもらったわ。最高よね。
ハーマイオニーからは『ボーバトンにばっかり!』と嫉妬されて、咽び泣いたわ。
セブルスがジロジロとずっと見てきたりして、不審がられてたけど、視線が愛しすぎたのよね。
そういえば、17歳未満の年齢の生徒達が変装してだまそうとしていたけれど、こぞって教師陣に叩きのめされていた、と聞いた時は笑えたわ。
そして運命の代表選手の発表の時が来た。
「ダームストラングの代表選手は──ビクトール・クラム」
ゴブレットの炎が赤くなり、炎の舌先から焦げた羊皮紙が飛び出してきたのだ。
ダンブルドアが読み上げた名前に興奮していたのも一瞬で、次の選手の名前が飛び出してきた。
「ボーバトンの代表選手は──フラー・デラクール」
フラーは優雅にたって代表選手教員テーブルの方へ歩いていった。
ルイーズとアリスが腕に顔を埋めて泣き始めた。あぁ、私が慰めてあげたいわ。
「そしてホグワーツの代表選手は──セドリック・ディゴリー!」
セドリックが選ばれ、嬉しそうに前へ行く。
だけど、これだけで終わらなかった。
「さて、これで三人の代表選手が決まっ──」
ダンブルドアが言葉に詰まったのもそのはず。
炎のゴブレットが再び赤く燃え始め、火花が迸った。突然空中に炎が伸び上がり、燃えた羊皮紙がダンブルドアの手に収まる。
やがて、小さな沈黙の後、ダンブルドアは咳払いをし読み上げた。
「──エミリー・コワルスキー」