─矛盾─   作:恋音

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4-7.過去の信頼

 

 こんにちは。

 三校交流何とかかんとか試合で四人目の代表選手代理として選ばれました。

 ミリ・エミリー・コワルスキーです。

 

「どうやって年齢線を越えたの?」

「しかしやるなぁ、死んだ叔母さんの名前で出場を狙うなんて」

 

 最初はそんなことを言われていたのだが、私は魂からの叫びを吐き出した。

 

「私が本当に年齢線を越えてたら、間違いなく天使の名前を書いてたわ」

「そもそも私が可愛らしい天使の戯れの場にいてこっそり抜け出すとでも思ったの?」

 

 さぞかし説得力のある言葉だったのでしょうね。

 素直な生徒たちは『それもそうだ』って顔をして解散していった。私の愛が証明された瞬間よね。

 

 

 

 

 

「じゃあ、誰が入れたんだろうね」

 

 日曜の朝、不躾に刺さる視線と怯えた視線を受けながら、私は遠い目をした。

 

「ネビル、いいことを教えてあげる。今から改名しない?」

「絶対嫌」

 

 ネビルは私を見捨てた。

 

 グリフィンドールは私を見るたびに同情の視線を向け、ハッフルパフは恨めしそうにこちらを見る。レイブンクローは我関せずという感じだけど、スリザリンは顔を青くして私を見る。

 

 ボーバトンはせっかく仲良くなれたのにマダムとフラー以外からは『裏切り者』という視線を受け、ダームストラングからは『穢れた血』という侮辱的な視線も同時に受ける。

 

 

 どんな視線でも可愛い子から向けられるなら大歓迎です!!!!

 

 目立ちたがりって訳じゃないんだけどね、特にハッフルパフのかわい子ちゃんやボーバトンの麗しの方々に視線を向けられる度、ヨダレが止まらないのよ。本当に。 

 

 向けられる視線の一つ一つが宝物すぎて、興奮しちゃう。

 

 え?視線だけでなぜ話しかけないのかって?

 

「──棄権しろコワルスキー!」

「だから、できるならしてるっての!」

 

 激おこのブラック家当主、シリウスが睨んでいるからだよ。

 

「魔法契約が結ばれてるから最後まで参加しなきゃならないって、ダンブルドアも言ってたじゃない」

「だからってお前!狙われてるかもしれないんだぞ!?お前がこれを書いてないのはボーバトンの校長も証言してる!」

 

 うるさすぎて物理的に耳が痛いよ。

 私はため息を吐いてスプラングルを口に入れた。

 

「そもそも!名前の書かれた羊皮紙!これは──俺が印をつけておいたものだ!俺は、お前に欠片たりとも渡して無い!」

「そうね、例え書くとしても私は間違いなくシリウス以外から受け取るわ。こうなることは容易にわかるし」

「他人事かてめぇ!」

 

 ギャンギャン喚くわんこのせいで、誰も話しかけようとしてくれない。ネビルもさっさと退散してしまったし、私達の周囲5mには誰もよってこないのだ。

 本当にうるさいし邪魔。

 

 立候補に必要な羊皮紙は特製のものを教師から貰わねばならない。そしてその羊皮紙には教師の魔力か何かが埋め込まれていたそうだ。

 識別程度だったんだろうけどね。

 

「お前の筆跡でもねーだろ!」

 

 シリウスが見せてくれた羊皮紙には『Emily Kowalski(エミリー・コワルスキー)』と書かれている。

 正直、筆跡はめちゃくちゃ似ていた。

 

 Eの文字が少しおおきくて、私が書くよりほんの少しだけ横に伸びている可愛い文字だ。

 

「それ貰ってもいい?」

「あ゛?」

「その羊皮紙」

「てめぇ……嵌められたかもしれない危険なものを欲しがるな!」

「まぁまぁまぁまぁ」

「何がまぁまぁだいい加減にしろよ!」

 

 私はシリウスからひったくって懐の中にしまった。

 

 これでよし。

 

「お前みたいな魔法もろくに使えないやつが危険性の高い競技に出場してどうなると思ってるんだ!死ぬつもりだろ!?」

「死なないって」

「お前のその言葉だけはこの世のどんな言葉より信用ならねえな!」

 

 あ、今日のスープかなり美味しいな。最近ハーマイオニーが下僕屋敷妖精の所へせっせと通っているから、もしかしたら彼女のおうちのスープかもしれない。ハーマイオニーを構築したスープのレシピ、入手しなきゃもったいないよねぇ。

 

「コワルスキー、聞け!」

「聞いてる聞いてる、ハリーが可愛いってことでしょ」

「誰がハリーの話をした!今はお前の話をしてるんだ!」

 

 ギャンギャン喚くシリウスに私はため息を吐き出す。

 

「私が、というかエミリーが選ばれちゃったんだから、いいじゃない」

「良くない!」

「じゃあ私じゃなくてまかり間違ってハリーが選ばれてたらどうするのよ」

 

 私の問いかけにシリウスは額に青筋を立てた。

 

「ヴォルデモートに狙われるのはハリーもコワルスキーも大差ねぇだろうが!!!!」

 

 シリウスの大声に周囲がザワっと揺れた。

 そりゃ、ヴォルデモートといえば私がセブルスたちと学校に通っている最中も名前を馳せていた闇の魔法使いの筆頭者。

 

 私は静かに瞳を閉じて、再びシリウスを見た。

 

「……なんで??」

「はぁあーーーー!!!!????」

 

 クソでかい声に耳がキーンと痛む。

 思わず手で塞いだのに、貫通してくる叫び声だ。

 

「むしろ逆になんでここで『言ってる意味がわかりません』って顔出来るんだよ!?」

 

 なんでもなにも、私とヴォルデモートにおおきな確執ってある?なくない?

 

 そりゃ、ヴォルデモートが後生大事にしているMr.オリオンに1度喧嘩を売ったことあるけど、今世では割と良好よ?

 

「心当たりが無い……」

「うっっそだろお前…………」

 

 ご馳走様でした。

 私が食事を終わらせて立ち去ろうとすると、シリウスはそれでもギャンギャンギャンギャン。

 

「あのねシリウス、私に対して過保護になるだなんて、らしくないんじゃない?」

「…………。分かった」

 

 シリウスは、冷静になったのか声のトーンを落とした。

 

「──今から、お前を死なない程度に叩き潰す」

 

 ぞわりと背筋が冷たくなり、振り返れば杖を折れるくらいの力で握りしめたシリウスがたっていた。

 

 あ、あらー?なんか、めちゃくちゃ本気で怒ってません?

 

「インペリ…」

「ステューピファイ!」

 

 愛しのセブルスが、咄嗟にシリウスの杖を吹き飛ばした。

 

 えーーー!かっわいいなぁ!!??

 可愛すぎてどうしようって感じ!

 

「ブラック!冷静になれ。相手はコワルスキーだ、警戒心と危機感とまともな考えから逸脱した相手だぞ」

「……っ、確かにそうだったな」

「そんなに褒められるだなんて……照れちゃう……」

 

「(な?という視線)」

「(諦めの表情)」

 

 セブルスの普通じゃなくて特別な枠の中に私がいることがあまりにも幸せ……♡

 

「……。それからブラック。お前の魔力の圧で生徒たちが怯えている。キレる気持ちは分からなくもないが、少しは周りに配慮しろ」

「あー……」

「仮にもブラック家の血筋であろう。イギリスの純血のようにブラックの血が混ざっているのならともかく、ここには国外の者もいる。濃い魔力は悪影響を及ぼすことをきちんと念頭に置いて欲しいものですな」

「チッ、いちいち嫌味くせぇ言い方しやがって。へえへえ、スネイプセンセーの言う通り」

 

 シリウスは不貞腐れた様子だったけど、周りを確認して怯えている生徒が目に入ったのか落ち着きを取り戻した。

 

 子供たちが身を寄せあって小声で話し合っている。

 

「ちゃらんぽらんのブラック当主だと思ってたけど、やべー怖い」

「なんであの剣幕で怒られててコワルスキーはケロッとしてるんだ……?」

「これが魔力酔いってやつかな……気持ち悪い……」

「私Ms.コワルスキーに対してセドリックの邪魔したと思って怒ってたのに、それどころじゃない」

「ブラック家怖い……」

 

 それにしてもセブルスのとろんとした言い方可愛いし美しいしどうしよう。

 

「愛してる……!」

「ところでブラック、コワルスキーの出場の件でお前にコワルスキー家からの了承を取りに行ってもらいたいのだが」

「うげ……やだって、俺リアムさん苦手」

「ポッターに似てるのだからお前の得意分野だろう。マリウス様もお前なら多少甘い、はず、だ」

「余計ダメだろ」

 

 ガン無視する姿も大好き。

 

 

 ==========

 

 

 

「ミリってすごいメンタルね」

「へ?」

 

 ある程度の授業が再開され、私の周りにはいつものメンツが集まっているけれど、視線は依然として変わっていなかった。

 

 つまり最高ってことよね。

 

「ハーマイオニー、どうしたの?」

「だって、見る度見る度ブラック先生にあんなに責められて」

「そうだぜ?スリザリンの奴らなんか見てみろよ、あのブラック家がミリのこと責めてるのに、その剣幕のせいで逆に心配し始めてるじゃん」

「最初は便乗しそうになってたのにねぇ」

 

 私は少し考えたあと、3人に問いかけた。

 

「それってシリウスが怖いってことよね?」

「むしろ怖くないの?」

 

 ハーマイオニーは可愛く呆れた。

 すると、魔法薬学の授業が被っているスリザリン生が目の前から現れた。

 

「こんにちはドラコ!今日も可愛いね」

「コワルスキー……。お前頭悪いのか?」

「成績は平均って所かな?」

「そうじゃなくて。シリウス様のことだよ」

 

 ドラコに様付けされるなんて罪深過ぎない?

 

「それ、僕らも話してた」

 

 ロンが肩を竦める。

 

「ブレーズなんか、特にノリノリでアンチコワルスキーに属してたのに、シリウス様があまりにもガチ殺ししそうでソッと手を引いてたんだからな?」

「たしかに、ザビニとパーキソン辺りなら乗ってきそうね」

「だろう?」

 

 頭いいふたりの脳みそ溶けちゃう可愛い会話に私は誰に感謝を述べたらいいのだろう。

 

「シリウスって私の好みじゃないから、好みじゃない人に言われてもふーんそうってなるのよ」

「逆にスネイプ先生に言われてたら?」

「心から受け止める。なんならもう愛おしさ爆発させて死んでたかもしれないわ」

「シリウス様がお可哀想だ」

 

 セブルスに『棄権しろ』とか『死ぬつもりだろ』とか言われたら脳みその語彙力溶けてイエッサーしか言えなくなっちゃう……。

 

 もちろん、セブルスはそれを言わないだろうけどね。

 

 そんなことを考えていると、ハリーがソッと私の手を握った。

 あっ、えっ、可愛いね?

 

「死なないでね」

 

 泣きそうな顔でハリーが言った。可愛いよ。

 

「……………すぅ、ちょっと待って、今、エクパトが目から出てきそう」

「エクスペクトパトローナムのことエクパトって略すなよ」

 

 ロンの声がうるさい。

 

「僕、ミリのこと家族だと思ってるよ」

「ぴょえ……!」

「父さんも、母さんももう居なくて。それで、ミリが、ミリが死んじゃったりしたら……僕は……どうしたらいいか……」

「賢者の石丸呑みしてくる」

「それはやめてね」

 

 泣き顔から一気に真顔になったハリーに止められた。一生愛す。

 

「思い出すわ、リリーが一生懸命腹を痛めて産んだところを私が頬に手を当てて『頑張ったね』って額にキスをして、そのままハリーを一緒に抱き上げたあの頃の記憶を……」

「解散解散、こいつは心配するだけ無駄」

 

 

「コワルスキー、変態はそこまでにしてさっさと席に着け」

「可愛いねセブルス、ハリーとセブルスと一緒に永遠に一緒に暮らそうね」

「では教科書の38ページを開くが良い(無視)」

 

 嫉妬してるのねセブルス、そんなに心配しなくてもリリーの幼なじみはセブルスだし、私もセブルスのこと大好きよ!

 

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