─矛盾─   作:恋音

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4-8.代表選手の集まり

 

 セブルスの授業の途中、代表選手の呼び出しがかかったとコリンから伝言を受け取った。

 コリンは弟もグリフィンドールに入ったみたいで、今は立派なお兄ちゃんをしている。

 

 メッセージャーコリンに呼ばれていけば、フラーと他の代表選手、日刊預言者新聞の記者とカメラマンらしき男、ルード・バクマン、そしてシリウスもいた。

 

「フラー、今日も美しいね……!その美しさは人類が作り出した最高傑作と言われても過言では無いわ」

「ミリー。今日も元気そうでーすね」

「色々言われてるらしいから心配してたけど、君には心配は無用だったね」

 

 フラーの魅了される美しい声を聞いていると、セドリックが割り込んできた。

 イケメンには用が無いのよ、でも一応心配してくれてたみたいなので私はセドリックに挨拶をした。

 

「こんにちはセドリック。今は心配してくれてないってこと?」

「うん、してない。君のメンタルは僕が知ってる中でも指折りだからね」

「骨抜きと骨生えの経験はあるけど指を折った経験が無いの。どんな感じ?」

「ミリ・コワルスキーのトランクって感じ」

「なるほど……それは最高ね?」

 

 クィディッチ選手の代表選手は部屋の隅で立ってむっつりしているけど、私はシリウスの方を見た。

 

「それで、私はどうして呼び出されたわけ?」

「……杖調べと、ついでだ」

 

 もう1人の代表選手と同じくらい不機嫌そうな最悪のシリウスが答えてくれる。

 

「やぁミリ・コワルスキー。今回は亡霊騒ぎで大変だったようだな。何、気にすることはない」

「ルード・バグマン?だったかしら」

「話には聞いていたが、君は本当にクィディッチには興味が無いらしいな。イヤイヤ、責めているわけじゃないんだよ。君の保護者代理のシリウス・ブラックがグリフィンドールのクィディッチ選手だったと言うのに、好みが違うのが不思議でね」

「クィディッチ選手なのは知ってるけど」

 

 もう嫌ってほどに。

 口ぶりからクィディッチの選手だったようだし。

 

「……そう言えばセドリックも選手だったっけ?」

「ミリ、君は好み以外ほんとうに興味無いんだな……」

「ありがとう」

「改めて、ルドビッチ・バグマンだ。よろしく頼むよ」

 

 バグマンと握手をすれば、杖調べについて教えてくれた。

 要は、不良品だったり不正がないかを調べるための鑑定。杖を使う試合では、必ず執り行われるらしい。

 

「それからこちらはリータ・スキーターさんだ。日刊預言者の記者の方で……」

 

 リータ・スキーターと呼ばれた女性はバグマンを押して私の目の前にニコニコ笑顔で微笑んだ。ガッチリしたカールも、宝石で彩られたメガネも、作られたような笑顔も。

 

「あなたが最年少の代表選手ざんしょ?」

「どうかな」

 

 呼ばれた名前がエミリーである以上、割と最年長かもね。

 

「まぁまぁまぁ素敵ざんすわ。早速別室でインタビューを……!」

「──私が許すと思うか、リータ・スキーター」

 

 その言葉を鋭く断ち切ったのはシリウスだった。

 氷のような視線に射抜かれ、スターキーは目を泳がせる。

 

「インタビューの様子も、記事も、全て私が監修する、という条件で許していることを忘れないでいただこう。貴様の記事の評判は把握している」

 

 まるで決闘でも挑むような声音。どうやら裏で何らかの駆け引きがあったらしい。スキーターはたじろぎ、『おほほ、そうざんしたね』と引き下がっていった。

 

「へぇ、シリウスが評判を把握してるだなんて、よっぽど優秀な記者なのね」

「…………ミリのそれ、嫌味?」

「私の言葉の何処に嫌味要素があったの!?」

 

 セドリックが横から口を出した。

 流石に純粋な賞賛を馬鹿にされるとは思わなくて流石に憤慨した。

 

「ギルデロイに論文の添削頼んだ時も、ギルデロイに呆れられるくらいには文章書けないんだもの!記者なんて、私の苦手分野の特化者よ?」

「お前は文章どころかスペルまで怪しいだろ」

「うるさい、黙ってシリウス。……だからまぁ、うん、文字書きは尊敬してるの。はぁ、こんな真っ黒男じゃなくてギルデロイに会いたい……」

 

 ギルデロイのあの美しい言葉遣い。

 英語であそこまで繊細で艶やかで彩りのある優しい文章。何食べたら書けるんだろう。才能の塊すぎる。

 

「ま、待つざんす!まさか、ギルデロイ・ロックハートの事を話してるざんしょ!?」

「ギルデロイのこと知ってるの!?」

「当たり前ざんす!!!ギルデロイ・ロックハートといえば1年ほど前に急に頭角を現したライター!冒険小説ばかり書くからと目にも止めて無かったざんす……っ!くっ、アタクシ、負けてられないざんす!」

 

 スキーターは鼻息荒く、拳を握りしめた。

 どうやら彼女にとって、ギルデロイは同業の宿敵でもあるらしい。

 

 流石ギルデロイ、最高だわ。

 

「で、質問ざんす──」

 

 そう言って聞かれ始めたのは『三校対抗試合に参加しようとしたきっかけは?』『今回名前が出たエミリー・コワルスキーのことをどう思うか?』など、オーソドックスなものばかりだ。

 

 

「エミリーが名前を入れた、と噂されてるようざんすけど、ミリから見てエミリーはどんな人だったざんしょ?」

「………………むっずかしい質問するわね」

「そうざんす?」

 

 私から見た私とは……?

 

「リータ・スキーター、その質問は無意味だ。ミリとエミリーが会ったこと、あるわけが無いだろう」

 

 私が困ったりエミリーを決めつけようとした瞬間ブラック家の長男が全力で威嚇する。おかげでスキーターはチラチラと顔色を見ながらのインタビューになったのだった。

 

 そしてそうこうしている内に、ようやくお偉いさんと話していたダンブルドアが部屋に入ってきた。

 ダンブルドアに続いてクラウチやマダム・マクシーム、ボーバトンの校長もやってきた。

 

 この4名とバグマンが今回の試合の審査員らしい。

 

 ダンブルドアはスキーターに『魅力的な毒舌じゃった』と褒め、丁寧に一礼した後、それぞれ席に着いた。ダンブルドアにも褒められる毒舌って、さすがに興味しか湧かないから今度見てみよ。

 

「オリバンダーさんを紹介しましょうかの。試合に先立ち、皆の杖が良い状態かを調べてくれる」

 

 オリバンダーと呼ばれた老人は窓際でひっそりとたっていた。

 老人はまずフラーを呼び出し、部屋の中央で美しい所作で手渡したフラーの美しい杖をジロジロくるくると眺めて仔細に調べていた。

 

「24センチ……しなりにくい……紫檀に、芯は……」

「ヴィーラの髪の毛でーす」

 

 フラーのお祖母様のものらしい。

 ヴィーラは魔法生物として最高にメロメロにさせてくれるものなのに、そのうえで美しいって、もう、推すしかない。

 リーマスとフラーは天使と魔法生物のハイブリッドいいとこ取り過ぎてヨダレが止まらないのよ。物理的にも。

 

「コワルスキー、よだれ」

「っ!」

 

 シリウスの小声の忠告に拭う。

 危ない危ない、真面目な顔をしなければ。

 

 フラーは美しい所作で私の隣に座り直した。仕草の一つ一つが魅力的っ!もう!愛した。

 

「ディゴリーさん、次はあなたじゃ」

 

 オリバンダーさんがセドリックの杖を受け取ると、ユニコーンの尻尾が使われている杖だと言うことを語っていた。オスのユニコーンの毛を1本入れた時は角で突き刺されるところだったと。

 

 うちのユニコーン達はいい子だからそんな危ないことしないけど、ユニコーンの毛を抜くだなんて物騒ねぇ。

 

「次はクラムさん、よろしいかな」

 

 クラムって名前だったね。クラムはグイッと突き出し、ローブのポケットに両手を突っ込んで顰めっ面で突っ立った。

 

「ふむ……」

 

 ブツブツと呟いたオリバンダーさん。クラムの杖はドラゴンの心臓の琴線を使っているようだった。

 

「次、コワルスキーさん」

「はぁい」

 

 私が前に出て、あまり言うことを聞いてくれない杖をオリバンダーさんに差し出した。

 

「ふむ、ホグワーツの子だと思っていたが、どうやらこちらもグレゴロビッチの杖のようじゃな」

「えぇ、そうなの」

「杖芯は……オカミーか?珍しいもの……イチイの木、しなりが強く、31センチと長め……。手入れはしておらんようじゃの?」

「そもそも杖に手入れをするという概念があったこと自体びっくりよ。そういう、魔法界の基礎を学べる手段が魔法界には不足してると思うわ」

 

 フラーが小さく『子供ね』と呟いて、マダム・マクシームもくすくす微笑んでいた。けど、ボーバトンの2人は声に出さず笑い、セドリックとダンブルドアはため息を吐いた。

 

 フラーの笑顔、可愛い。本当に綺麗。崇拝するしかないわ。

 

「……これは、余程他者に使われたくない杖のようじゃ。同じくイチイの杖の使用者であれば認めるじゃろうが、オカミーの子供を守る性質と相まって、コワルスキーさん以外ではろくに使えん」

 

 オカミーは伸縮自在の魔法生物。

 銀でできた卵を守る、子供想いの生物だ。

 

「私の杖ってイチイだったのね……、で、イチイっていう何?」

 

 私が疑問を口に出すと、オリバンダーさんは私に杖をかえしつつ、にこりと微笑んだ。

 

「イチイはとても珍しい木材じゃ。死と再生を象徴し、持ち主に生死の力を与えるという評判があるが、他の杖と同様に持ち主が持つ以上の力を与えるわけではない」

 

 何故かダンブルドアとシリウスから視線を向けられた。

 

「イチイの杖は、闇の魔術にも強力な守りの呪文にも同様に適しており、決闘において恐るべき力を発揮する」

「でも私、魔法をろくに使えないわよ?3年生くらいから実技は諦めてるわ」

「うむ、実力であろう。残念じゃったな」

 

 ガックリ肩を落とした。はは、そうね、持ち主が持つ以上の力を与えないって、言ってたものね……。

 

「ちなみに、ヴォルデモート卿の杖はこのイチイ材で作られておった」

「へー」

 

 私の杖、どうして使えないのよ……。トムが乗り移った時は問題なく決闘で使えていたってハリーが言ってたから、素質自体はあるはずなのに。

 そもそもエミリー時代にはうんともすんとも言わなかったじゃない。

 

「お願いだからもう少し魔法使いっぽいことさせてよ……。さもなくば決闘が拳と銃弾になっちゃうじゃない」

「切実じゃな…………」

 

 オリバンダーさんが気の毒そうに頷いた。

 

「ところでオリバンダーさん、私ユニコーンの尻尾の毛を定期的に下ろせるんだけど、いる?」

「……!!!!!」

 

 オリバンダーさんは目をキラキラと輝かせた。

 

「ドラゴンの心臓の琴線はちょっとよく分からないけど、魔法生物の素材ならある程度なら頑張れるわ。不死鳥は流石にダンブルドアに言ってほしいけど」

 

 ダンブルドアの顔が『やめてくれ』って言ってた。

 

 全員の杖を調べ終えたオリバンダーさんは、私の杖を撫でながらにっこり笑った。

 

「うむ、どの杖も問題なし。安心して挑むがよい」

 

 太鼓判を押されて、一同ほっとしたような空気になった。

 

 そして新聞に載せる写真を撮ったり、細々とした手続きを終えるとぼちぼち解散の運びとなった。

 私はその流れでクラウチにバーティの事を質問しようと口を開きかけたのだけど──。

 

「コワルスキー」

 

 不意に声をかけてきたのはクラムだった。

 低めの声は妙に真剣にも感じる。

 

「その、今回は不運だったな」

「そうでも無いのよ、おかげでフラーの活躍を特等席で見れるもの!」

「そうか……?」

 

 それなら良かった、と言いたげに頷いていた。

 

「同じ杖職人だと聞いた。イギリスの者は皆オリバンダーのところじゃないのか?」

「ああ、それね」

 

 私はひらひらと杖を持ち上げて答える。

 

「まず、私はアメリカ人なの。イギリス人では無いわ。これは私……じゃなくて叔母が入学する時に、伯父さんに買ってもらったやつなのよ」

「叔母?」

「そう。この場で言うならエミリー・コワルスキー。まあ私もエミリーなんだけどね!」

「コワルスキー…!」

 

 呆れたようなシリウスの鳴き声がかすかに聞こえた。

 

「グレゴロビッチの杖は、力強い。実技が苦手と言ったが、杖は大事にするといい。その、まだ成長途中だし、もし試合中危険な目に合えば、ゔぉくや他の代表選手に助けを求めるように」

「……流石スポーツマンね、ありがと」

 

 私はにっこり笑って、ついでに小さく肩をすくめた。

 

「ま、でも大事にしたくても、あんまり言うこと聞いてくれないのよ、この子」

 

 本当に。

 前世から、ちーーーっとも言うこと聞いてくれない。おかげで魔法薬学の腕がメキメキ上がるってものよ。

 

「杖が主を選ぶ。君が気に入られれば、必ず応えてくれる」

「そういうもの?そう言えば、誰かに似たこと言われたなぁ」

「ところでコワルスキーは、男として育てられたとか、本当は男だったりとか、するのか?」

「…………私そんなに男っぽく見える?」

「見えないから困っている」

 

 聞いた話によると、『コワルスキー』って家名の言い方はクラムの国では男の人に言う呼び方らしい。

 

「文化の違いってやつね。コワルスキーって呼びにくければ、ミリで良いよ」

「そうか。ではミリ、よろしく頼む。こちらもファーストネームでいい」

「ありがとう、ところでクラムのファーストネームって何?」

 

 クラムは目を見開いて、仰天した後「ほんとうにクィディッチに興味無いんだな」と呟いて名前を教えてくれた。

 

「ビクトールだ」

「忘れる可能性があるからハリーに名前聞いておくわ。任せて」

「???ま、かせた?」

 

 ちなみにセドリックにめちゃくちゃ羨ましがられたのだけど、羨ましいと思うなら行動しなさいよ。口説かなきゃ損でしょ。全く。

 

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