そんなこんなで今回どうぞ。あんまし話動かないですね今回…IS学園入学まであと三、四話ぐらいだ…頑張れ私……
あ、そうだ(唐突)正直一夏君のシスコン具合はマジな方でヤバイと思うけど、お前どう?
ヴォルフガングは織斑千冬と軍部へ帰る途中、シュトルヒ・フェット並びにラウラ・ボーデイヴィッヒに掻っ攫われ、先ず二、三発ぶん殴られた。
医師曰く、ガキが自分から進んで傷を作るな。
軍人曰く、私と教官が教えた事柄は一体何処にやったとの事。
そして少年はめっちゃ怒られた。馬鹿みたいに怒られた。すんごい怒られた。深夜三時半まで説教は続いたが、ラウラはそれでもまだ足りないと呆れ、フェットに至っては依然静かにブチ切れたままである。
「フェット、手っていつ治る?」
「お前次第だ。馬鹿をしなけりゃすぐに治る」
「利き手が無事なら勉学に励めるな───そら、さっさと紙とノートを出せ。今日は特別に法学では無く、簡単な心理テストだ。この後にはカウンセリングも控えてる、さっさとこなせ」
「うーへー…、ラウラ先生厳しい…」
一方で織斑千冬は、待っていた友人───フィオナ・イェルネフェルトに───に掻っ攫われた。彼女は今日何が起こっていたか、その全てを知っている。その上で多くは語らず、先ず謝罪と感謝を述べた。
少年の為に奔走してくれた事に感謝を。今回自身は動くことが出来なかった事に謝罪を。
結局、少年の手は血に塗れた。しかし二人は挫けず、狼狽する事もない。
織斑千冬は決意を固めたが故に。フィオナは少年の受けた実験の痛ましさと、その内情を事細かに知っているが故に。
逆に尚のこと、燃える。何とも引き上げがいのある者だろうか、意地でも日陰から日向へ引きずり出してやると躍起になる。
「先ずカウンセリングだ。これは今日中にラウラが行うだろう」
「社会福祉運動とかも一度やらせてみましょうか」
その後の話をしよう。今回の襲撃には
その者達は即座に拘束され、現在は取り調べの真っ最中。中々口が硬いらしく、有益な情報は得られないままだ。
少年を襲撃した実働者達は、辛うじて生存した二名のみが病棟に搬送されたが、
しかし結局、いつも通りの日々が帰って来た。一夜限りの波乱で、この話は進展を見せぬまま終い。然もありなん。手掛かりを得ようにも一向に得られないのが現状なので、仕方ないのだ。
すぐさま戻ってきた平穏な日常に、ヴォルフは内心小さく舌打ちをする。別に平和が嫌いなわけではない。特に戦争が好きというまた訳でもない。少年が好むのはあくまでも「戦い」でしかない。
だがそれも、それしか知らない故の嗜好である。
今回少年の専用IS───“ストレイド”を非公式的に起動させたアブ・マーシュ、つまりレイレナード社には今回の一件を通しある疑問が生まれた。
いつもと変わらぬ個人開発室には、モニターの光のみが急速に点滅を繰り返し続ける。延々と流れる文字列の全てを、アブ・マーシュは把握し一つの結論を導き出した。
「……データ取得完了っと」
茶髪の青年は顔をしかめ、調整の為回収したストレイドを見る。鴉のようなそれは、ただ黙して鎮座したままだ。
「…少年のIS適性がDからB相当まで一足飛びと考えた方がいい、か。
…幾ら何でも早過ぎないか? というかこの成長性の高さは不味いなぁ。“デザインド”のデータはもう流れてるだろうから尚まずい…」
“デザインド”…男性IS操縦者を人体改造によって生み出し、尚且つそれを「織斑計画」の成功体を目標に改造を続行する試み。
それは既にドイツ軍部に解体されている。残された研究記録や犠牲者の遺体は、皆丁重に荼毘に付された。
研究記録は勿論、遺体すらも灰にせざるを得なかったのには理由がある。
デザインドの犠牲者達は皆一様にして身寄りのない子供、ストリート・チルドレンだった。これが不味かったのだ。
言ってしまえば、デザインドは男でもISを操縦出来るという実例を造ってしまったのだ。人体に過大な負荷をかけ、身体を改造し続ければ出来るのだと、その証明をNO.53───“ヴォルフガングという少年”で形にしてしまった。
実験データが流れ出せば、今後身寄りのない子供だけが狙って誘拐され、人体実験の素体にされていくのは確定的と言っていい。…言い方は悪いが、遺体という「前例の資料」も露呈すれば尚のこと状況は最悪だ。
だからこそ、ドイツはその処分を厳密に行った。
しかしこの世に完璧や完全など存在しない。確実に“デザインド”のデータは「裏側」それも「奥の奥」で流れ出していると、アブ・マーシュは確信を持って断言出来る。
「…ま、いいか」
だがアブ・マーシュはその一言で割り切った。
「へー、どうでも良いんだ。案外冷たいんだね」
その声に返答したのは、本来ならばあり得ないはずの高い声。
声の持ち主は茶髪の青年の背後にいた。彼女は眠たげな目で個人開発室の全体を舐め回すように見渡していた。
彼女は独特極まる服装だった。機械的なウサギのつけ耳に、青いワンピースにエプロンを足した何とも奇妙な格好だ。
「good evening.シノノノノノノノ博士」
「挽肉にするぞお前」
「ヴルストは勘弁かな」
篠ノ之束。世界を揺るがした天災がそこにはいた。けれどもアブ・マーシュはなんとも無いかのように、机の引き出しからチョコ菓子の袋を取り出した。
その双眸は胡乱げだ。込めた感情を言語化するのであれば「面倒くせぇな電話でいいだろ構ってちゃんかお前は」だろうか。
「ahh…冷たいだっけ?」
しかしそんな事はおくびにも出さない。言ったら自身がどうなるかは明白なので、話題を元に戻す。
乱雑に菓子の袋を開け、中に入っていたプチシューを二つ取り出し、一つは己の口の中へ、もう一つは望まぬ来客の方へと投げた。
…投げられた方のプチシューは哀れにも地面に落ちたが、関係なく青年は話を続ける。
「正直その辺にいる孤児がどうなろうと俺はどうでもいいのよ。
今回の戦闘データを見て確信したよ。あの少年は必ず俺の創作欲を刺激してくれる。だから俺は彼に機体を作り、与えるだけの話…けど、レイヴンと結んだ契約があるから、最低限の報告はするつもりだ」
プチシューをむぐむぐと咀嚼しながら呑気そうに語る。恐らく、本当に顔も知らぬ誰かの事など、本当に心の底からどうでもいいのだろう。報告など単に友と結んだ契約だから行うだけに過ぎない。
義憤に駆られる素振りなど欠片も無い。例えば己が非難されたとしても、この青年は涼しい顔で「怒らないとダメなのか?」と言って終わらせる。
そういった所では、この青年は天災と少し似ているのかも知れない。
さてその天災───篠ノ之束であるが、彼女は何でも無いかのようにこう告げた。
「その子のことなんだけどさ。あいつ、欲しいデータが取れたら殺すつもりだから」
その宣言に、“天才”の眉間にシワがよる。顔もやや険しくなった。それに意を介さず…というよりか、元々他人に無関心であるが故、人の顔をあまり見ていないせいだろう。
束は聞き手の感情の変化を気にも止めず、話を続ける。
「正直、あいつはヤバイよ。すごくヤバイ。今すぐにでも殺したいくらいに。中にどんな怪物が収まってるか分かったものじゃないからね」
「…そんな化け物から欲しいデータは?」
「まぁ、男性が操縦できる理由とか、性差による違いとか、他にも色々と取りたいデータはあるけど。今一番欲しいデータは…」
ぴ、と天災の指が黒いISを指し、こう言った。
「そのISのコアとあいつの関係だよ」
コア───つまりISコアとは読んで字の如く、ISの中枢を担う物体。深層には独自の意識があるとされているが、コア自体の情報は一部を除き一切開示されておらず、完全なブラックボックス。
コアを作成可能なのは開発者である束のみ。しかしある時期を境に束はコアの製造を止めたため、ISの絶対数は467機となった。
「束さんは自分の作ったコアの全てを把握してる。そして当然コアにも個体差が存在する。その中でも一等個性的で厄介だったのがそのコアだ」
なるほど、と青年は内心舌打ちをする。自身はいつからこんなにも不幸になったのかと。
そんなことなど露知らず、天災は語りを続ける。その面持ちはどこか不機嫌そうではあるが、微かに喜びが混じっているように見えた。
「あの子は一番個性的でね。その理由は単にへそ曲がりなのか、捻くれ者なのか結局私には分からなかった。でも唯一、あいつに使われた時その子は本当に嬉しそうにしていた。今日でそれを確信したよ」
いつになくやや真面目な口調だった。だが青年は眠そうに何度か目蓋を閉じたり開いたり、しまいには船を漕ぎ始めている。
話が終わったと察すれば伸びをする。連日のデスクワークのおかげか、身体中から乾いた音が断続して響く。
「お前はその理由が知りたいと…少年にストーカー行為は褒められたもんじゃないよ、通報待った無しだな」
「あいつに時間割くならお前と話す方が断然マシだね。大体そんなこと束さんが箒ちゃん以外にする訳無いじゃん馬鹿じゃ無いの、いっぺん生まれ変わり直せば?」
吐かれた悪態にあくびを一つ。そして目をこすりながら適当な返答をする。
「悪いけど俺グノーシス主義だから」
「死ねって言ってんだよ変態」
そんな会話の最中でも、天才の思考は始まっていた。ヴォルフガングという少年を、己に火種を灯し得る存在をいかにこの天災から庇護しようか。
そしてどうやってこの天災の鼻を明かしてやろう。そう密かに心に企みを始めたアブ・マーシュだった。
✳︎
この組織は運営方針を決める「幹部会」と「実働部隊」の2つに分けられている。
席に座る者達は皆「幹部会」の者。その全てが老年、壮年期者で、若者はごく少数しか存在していない。息の長い組織特有の現象だ。
「BFFが我々の傘下を抜けたか」
「あの陰謀屋は何を考えている…これで欧州圏の操作は不可能になったか」
「…そも、何故王小龍が社長に就任出来た。都合の良い傀儡すら作れない程無能ではなかった筈だろう、先代社長にして我が同胞は」
頭を悩ます老いた声達。中には甲高い声もあった。どうやら彼等にとって不測の事態が起こっているらしい。
「いやいやいや、此処でBFFについて話し合っても仕方ないよね? 居ない人のことを話しても時間の無駄だ。そんな事より、以前話した兵器について開発認可をもらいたいんだけど」
そんな話の腰を折ったのは若い男の声。侮蔑極まる声色と、慇懃無礼なその態度は、老人達の怒りを買うのには十分だった。
「口を慎め、アイザック・サンドリヨン」
「若輩者ながら我々の席に至った事は評価する。しかし相応の振る舞い方すら出来ぬなら、即刻消えて貰うだけだ」
アイザックと呼ばれた緑髪の男は微笑みのまま肩を竦めた。余裕綽々としているその佇まい。人の神経を逆撫でする事に関しては、恐らくこの青年に並ぶ者はいないだろう。
「おや、それは怖い。でも関係ないね、君達が何と言おうと僕等の知った事じゃないんで、まぁ案は提出しておくから精査の方はよろしく」
男は言うだけ言って、会議机の上に数枚の書類を提出し、その場を去った。
「まてサンドリヨン! 話はまだ終わっ───」
最後の声はドアが閉まる音に絶たれた。緑の男は肩を竦め、呆れたような溜息を吐きながら無機質な廊下を歩いていく。
その背後を付いてくるのはフードを目深に被った、背丈の小さい何者か。男はそれに背を向けたまま、声を投げかけた。
「あの会議、どう思う? アンジー」
『意味の無い時間です』
アンジーと呼ばれたフードの者は、先の老人達の集いをその一言でバッサリと切り捨てた。それにアイザックは笑みを浮かべつつ“真理だね”と評した。
「まぁ、何でも構わないよ」
そして彼は一枚のガラス窓から景色を眺める。何の変哲も無い摩天楼。疎らに灯る電灯はさながら地上の星だ。
実に見応えのある夜景だが、青年の表情は感動から程遠い。侮蔑、嘲笑の感情がそこには破顔という形で表されていた。
暫しの後、アイザック・サンドリヨンは溜息を吐きながら、静かにまた廊下を進み始めた。そして憎悪にも似た感情にじませた声色で、ただ一言。
「───滅茶苦茶にしてくれればね」
実に破滅的な願望が、声となって漏れ出した。
アイザック・サンドリヨン
私的には「財団」とは戦争ある限り生まれる存在、一種の現象のような個人と考えています。彼はいわば「IS世界の財団」のようなものです。
今回はデモムービー的な登場。本格的に動くのは後半からかなぁ。因みに以前の「消えた脳髄、脊椎、遺体」ですが余さずこいつが待ってます。わぁ、ロクなことにならねぇぞ絶対。私は知ってるんだ。
現在アブさん、ウサギ博士両名にマークされてないので完全野放しの状態だよ、やばいね。
アンジー
何で室内でフードなんて被ってるのかな(すっとぼけ)。ところでACVDのLivさんの周りをくるくる回ってるアレ、ソルディオス・オービットにしたら面白そうだよね。他意はないよ。本当だよ。
幹部会
レイヴンに「死んでじゃないの〜?」って予想されてたけど生きてたよ。クレイドルに住む人々みたいな方々。つまり人類種の天敵基準では死んだ方がいい奴等だからお先真っ暗コースだよ、辛いね。 でもみんなで力を合わせれば安心だよ。震えて待ってろ(豹変)
〜ゲームの腕前とか〜
首輪付き…FPS以外は超ド下手。
織斑姉弟…弟の方はそれなりにうまい。姉は多分ポンコツレベルで下手。
黒兎隊双首領…ラウラ、クラリッサ共に廃人ゲーマーLv99
フィオナ…それなりにうまい
レイヴン…軍略ゲーム、FPS以外クッソ下手
天才組…寧ろゲームを作る側。
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